社債と株式は、どちらも会社が外からお金を集める手段です。違いを一言でいうと、社債は「期限が来たら返すお金」、株式は「返さない代わりに会社の持ち分を渡すお金」です。
中小企業の経営者にとって本当に差が出るのは、集めた後の話です。社債は利息が経費になる一方で、償還の資金を用意し続ける必要があります。株式は返済が要らない一方で、議決権と将来の売却代金の一部を相手に渡します。いずれ会社を売るか引き継ぐつもりなら、この差は売るときにもう一度表に出てきます。
この記事では、社債と株式の違いを5項目で比べたうえで、税金の差を計算例で示し、少人数私募債・増資・銀行借入のどれを選ぶかの判定表と、M&Aのときに残る影響を整理します。
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社債と株式の違いを5項目で比較
まず全体像です。ここでの「株式」は、会社が新しく株式を発行してお金を受け取る増資を指します。
| 項目 | 社債 | 株式(増資) |
|---|---|---|
| 会社から見た性質 | 負債(借りたお金) | 純資産(出してもらったお金) |
| 返済 | 償還期限に元本を返す | 返済しない |
| 相手に払うもの | 約束した利息(業績に関係なく払う) | 配当(利益が出て、払うと決めたときだけ) |
| 経営への口出し | 議決権なし | 持株数に応じた議決権あり |
| 会社の税金 | 利息は損金になる | 配当は損金にならない |
| 主な手続き | 取締役会などで募集事項を決め、引き受けてもらう | 株主総会の決議、払込み、資本金の変更登記 |
| 会社を売るとき | 会社の債務として残り、売却価格から差し引かれる | 株主として売却代金の一部を受け取る |
社債は会社法上の言葉で、「会社が行う割当てにより発生する当該会社を債務者とする金銭債権」と定義されています(会社法第2条第23号)。発行するときは、金額・利率・償還の方法と期限などの募集事項を決めます(会社法第676条)。
一方、株式を発行すれば、引き受けた人は株主になります。返済の約束は無い代わりに、株主総会で議決権を持ち、会社を売るときには持株数に応じて売却代金を受け取ります。お金を出してくれた人と、将来の売却代金を分け合う関係になるのが株式です。
社債と株式で税金の扱いが変わる理由
会社の側で最も大きい違いは、社債の利息は損金になり、株式の配当は損金にならないことです。配当は税引後の利益から払うので、同じ額を払っても会社の手元に残るお金が変わります。
計算例:3,000万円を社債と増資で集めた場合
3,000万円を5年間使う前提で、会社の負担を比べます。法人税・住民税・事業税を合わせた実効税率は約25%と置きます。
| 項目 | 社債(年利2%) | 増資(年2%相当の配当を払う) |
|---|---|---|
| 毎年払うお金 | 60万円(利息) | 60万円(配当) |
| 損金になるか | なる | ならない |
| 税金が減る額(60万円×25%) | 15万円 | 0円 |
| 毎年の実質負担 | 45万円 | 60万円 |
| 最初にかかる登録免許税 | 0円 | 10万5,000円(資本金に1,500万円を入れる場合) |
| 5年後に返すお金 | 3,000万円 | 0円 |
増資の登録免許税は、増えた資本金の額の0.7%(最低3万円)です。払込額の2分の1までは資本金に入れず資本準備金にできるので(会社法第445条)、1,500万円だけ資本金にすれば税額は10万5,000円になります。
毎年の負担は社債が軽く、5年後の資金繰りは株式が軽い。これが社債と株式の違いの中心です。配当を払わない会社なら、増資の毎年の負担はゼロになります。
社長や親族が社債を引き受けても、個人の税金は軽くならない
以前は、オーナーが自分の会社の社債を引き受け、利息を20.315%の分離課税で受け取る方法が使われていました。平成28年1月1日以後は、同族会社が発行した社債の利子で、同族会社の判定の基礎となる株主とその親族などが受け取るものは総合課税になっています。役員報酬と同じように累進税率がかかるので、税金を理由に社長が社債を持つ意味はほぼ無くなりました。
少人数私募債で社債を発行するときの手続き
中小企業が社債を出すなら、実際にはほぼ少人数私募債です。取引先・役員の知人・従業員など、身近な人に引き受けてもらう形です。
- 勧誘する相手を50名未満にする。50名以上に勧誘すると「募集」になり、有価証券届出書が要る(金融商品取引法第2条第3項、同法施行令第1条の6)。過去6か月以内に出した同じ種類の社債の勧誘先も合算される
- 各社債の金額が1億円以上か、社債の口数が50を下回るなら、社債管理者を置かなくてよい(会社法第702条ただし書)
- 取締役会設置会社では、募集事項の決定は取締役会で行う
- 利息の支払いの都度、源泉徴収をして納付する
少人数私募債は、銀行の審査を通らずに集められる反面、引き受けてくれるのは経営者を信頼している身近な人です。償還できなければ、その関係を失います。
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社債と株式の違いがM&Aで表に出る場面
会社を売る段になると、どちらで集めたかで交渉の中身が変わります。
社債が残っていると、売却価格から差し引かれる
株式譲渡で会社を売っても、社債は会社の債務として残ります。買い手は企業価値から借入金や社債などの有利子負債を差し引いて株式の価格を決めるので、未償還の社債3,000万円は、そのまま株式の価格を3,000万円押し下げます。
さらに、社債を引き受けているのが親族や取引先だと、経営者が変わる前に返してほしいと言われることがあります。少人数私募債は要項に途中償還の定めが無いことも多いので、売却前に要項を読み、繰上償還できるか、クロージングの前後どちらで返すかを決めておきます。
株主が増えていると、売るときの同意が要る
増資で第三者に株式を渡していると、会社を丸ごと売るにはその株主にも株式を売ってもらう必要があります。買い手は通常、100%の取得を求めます。
持株比率が下がること(希薄化)の影響も大きいです。株主総会の特別決議は、出席株主の議決権の3分の2以上が必要です(会社法第309条第2項)。オーナーの持株比率が3分の2を割ると、合併・会社分割・定款変更などを一人で決められなくなります。2分の1を割れば、役員の選任も一人では決められません。
増資をするときは、将来の売却を見越して、相手の株式を買い戻す約束(譲渡の条件)を株主間で決めておくと、売るときの交渉が楽になります。種類株式で議決権を制限する方法もあります(「種類株式は事業承継で使うべきか」)。
社債と株式と借入のどれを選ぶかの判定表
社債か株式かの二択で考えると、もっと手軽な選択肢が抜け落ちます。多くの中小企業にとって最初の候補は銀行借入で、社債や増資はそれでは足りない条件がそろったときの手段です。
| 自社の状況 | 向いている選択 | 理由 |
|---|---|---|
| 決算が黒字で、銀行が融資に前向き | 銀行借入 | 手続きが軽く、利息も損金になる。社債や増資を使う理由が無い |
| 返済の見通しは立つが、銀行の枠が埋まっている。支援してくれる取引先・知人が49名以内にいる | 少人数私募債 | 議決権を渡さずに集められ、利息は損金になる |
| 回収まで5年以上かかる投資で、返済の予定が立たない | 増資 | 返済が要らない。赤字が続いても配当を払う義務が無い |
| 数年以内に会社を売るか承継する予定 | 借入、または償還期限を売却予定より前にした社債 | 株主を増やすと売るときの同意が要る。社債は売却前に償還しておく |
| 資本金が1億円に近い | 社債または借入 | 資本金が1億円を超えると、中小法人向けの税率の特例などが使えなくなる |
| 手元資金で足り、急ぐ投資が無い | 集めない | 利息も配当も、使わないお金に払うことになる |
判定のポイントは、「返せるか」と「持ち分を渡してよいか」の2つです。返せるなら社債か借入、返せないが持ち分を渡してよいなら増資、どちらも無理なら投資そのものを見直します。
借入・出資・資産の売却を含めた資金の集め方の全体像は「資金調達の方法」で、増資したときの会計処理は「増資の仕訳」で扱っています。
よくある質問
Q. 社債は自己資本比率を下げますか。
下げます。社債は負債なので、総資産が増えて純資産は変わらず、自己資本比率は下がります。増資なら純資産が増えるので比率は上がります。銀行の格付けを気にするなら、この差も判断材料になります。
Q. 少人数私募債の利率はどう決めればよいですか。
法律で決まった水準はありません。銀行借入の金利や、引き受ける人が預金で得られる利息と比べて決めるのが一般的です。高すぎる利率は会社の負担になり、社長の親族が受け取る場合は総合課税で税負担も重くなります。
Q. 社債を株式に換えることはできますか。
新株予約権付社債として発行しておけば、引き受けた人が権利を使ったときに株式に換わります。すでに出した普通の社債を後から株式に換えるには、債権を現物出資する形(DES)になり、別の手続きと税務の検討が要ります。
まずは「自分の会社がいくらか」を知るところから
ジョブカンM&Aでは、専任アドバイザーが事業価値の簡易査定から成約まで一貫して伴走します。相談は無料。売却・買収のどちらでもお気軽にどうぞ。
まとめ
社債と株式の違いは、返済と引き換えに経営権を守るか、返済を免れる代わりに持ち分を渡すかです。
返せる見込みがあるなら、まず銀行借入、足りなければ少人数私募債。返せないなら増資。数年以内に会社を売るなら、社債は売却前に償還し、株主はむやみに増やさない。
どれを選ぶにしても、売却や承継の予定時期から逆算して、償還期限と株主構成を決めてください。
参考
- 会社法(第2条・第309条・第445条・第676条・第702条)https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086
- 金融商品取引法(第2条第3項)https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000025
- 金融商品取引法施行令(第1条の6)https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000321
- 国税庁 タックスアンサー No.1310「利息を受け取ったとき(利子所得)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1310.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.5759「法人税の税率」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5759.htm
この記事は、時点の情報を元に作成しています。
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