増資の仕訳|払込時の処理、資本金に入れる2分の1ルール、登録免許税とDESまで数値例で解説

増資(新しく株式を発行して資本を増やすこと)の仕訳で迷うのは、次の3か所です。払い込まれたお金をいつ資本金に振り替えるか、資本金と資本準備金にいくらずつ入れるか、そして登記の費用をどの科目で落とすか。

この記事では、よくある5つの場面について、数値入りの仕訳例で処理を整理します。第三者割当増資を選ぶかどうか、株式譲渡とどちらを使うかの判断は「第三者割当増資とは|株式譲渡との違いと、どちらを選ぶかの判断基準」で扱っているので、ここでは会計処理に絞ります。

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目次
  1. 増資の仕訳は3つの時点で切る
  2. 資本金に入れる額は「2分の1ルール」で決める
  3. 仕訳例1:第三者割当増資(資本金と資本準備金に半分ずつ)
  4. 仕訳例2:登記費用と株式交付費
  5. 仕訳例3:資本金1億円の線にかかる増資
  6. 仕訳例4:株主割当増資と、第三者割当との違い
  7. 仕訳例5:DES(債務の株式化)
  8. 資本金に入れる額の判定表
  9. 増資の仕訳を切る前のチェックリスト
  10. よくある質問
  11. まとめ
  12. 参考

増資の仕訳は3つの時点で切る

募集株式の発行では、お金の動きと会社法上の効力が生じる日がずれます。仕訳もその時点ごとに分かれます。

時点 起きること 使う科目
払込期間中(申込証拠金を受け取った日) お金は入ったが、まだ株主ではない 別段預金/新株式申込証拠金
払込期日(効力発生日) 株主になり、資本金が増える 資本金・資本準備金
登記・費用の支払 変更登記、司法書士への報酬 株式交付費

払込期日を1日だけ定める方式で、その日に全額が入る場合は、1本目を省いて払込期日に直接「預金/資本金・資本準備金」と切っても構いません。中小企業の第三者割当増資ではこちらが一般的です。

資本金に入れる額は「2分の1ルール」で決める

払い込まれた額を全部資本金にする必要はありません。会社法第445条は、次のルールを定めています。

  • 原則は、払い込まれた額の全額が資本金になる(第1項)
  • ただし、その2分の1を超えない額は、資本金とせず資本準備金にできる(第2項・第3項)

つまり、資本金に入れる額は「払込額の2分の1以上、全額以下」の範囲で、募集事項を決めるときに選べます。

どちらに寄せるかで変わるのは、主に次の2点です。

  1. 登録免許税。資本金の増加の登記には、増加した資本金の額の1,000分の7(3万円に満たないときは3万円)がかかる。資本準備金に回した分には、かからない
  2. 資本金1億円の線。資本金が1億円を超えると、法人税の軽減税率など中小法人向けの扱いが受けられなくなり、法人事業税の外形標準課税の対象にもなる

資本準備金は、後から債権者保護手続きを経て減らせますが、資本金を減らすより手続きがやや軽いという違いもあります。

仕訳例1:第三者割当増資(資本金と資本準備金に半分ずつ)

取引先に1株5万円で1,000株を割り当て、5,000万円の払込みを受けるケースです。申込期間を設け、申込証拠金として受け取る方式で書きます。

申込証拠金の受領時

借方 金額 貸方 金額
別段預金 5,000万円 新株式申込証拠金 5,000万円

新株式申込証拠金は、貸借対照表では純資産の部に表示します。まだ資本金ではありません。

払込期日(効力発生日)

借方 金額 貸方 金額
新株式申込証拠金 5,000万円 資本金 2,500万円
資本準備金 2,500万円
普通預金 5,000万円 別段預金 5,000万円

登録免許税の計算例

資本金に入れる額 登録免許税
全額 5,000万円 35万円
半額 2,500万円 17万5,000円

同じ5,000万円の調達でも、資本金を半分にするだけで登録免許税は17万5,000円変わります。

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仕訳例2:登記費用と株式交付費

上の増資で、登録免許税17万5,000円と司法書士報酬12万5,000円、合計30万円を支払ったとします。

借方 金額 貸方 金額
株式交付費 30万円 普通預金 30万円

株式交付費は、株式の募集のための広告費、金融機関や証券会社の取扱手数料、目論見書などの印刷費、変更登記の登録免許税など、株式の交付のために直接支出した費用を指します(実務対応報告第19号「繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」)。登録免許税を「租税公課」で落としている会社もありますが、増資の登記のものは株式交付費に含まれる整理です。

株式交付費は、原則として支出時に営業外費用として処理します。企業規模の拡大のための資金調達など、財務活動に関する費用であれば、繰延資産に計上し、株式交付のときから3年以内に定額法で償却することもできます。税務上も繰延資産に当たりますが、任意に償却できるので、支出時に全額を損金にする処理と結果は変わりません。

会社計算規則には、株式交付費を払込額から差し引いて資本金を小さくする余地を残す規定がありますが、当分の間は差し引く額をゼロとする経過措置があり、実務上は払込額の全額が資本金等に計上されます。

仕訳例3:資本金1億円の線にかかる増資

資本金9,000万円の会社が、4,000万円の増資を受ける場合です。

資本金に入れる額 増資後の資本金 1億円以下か
全額 4,000万円 1億3,000万円 超える
最低限 2,000万円 1億1,000万円 超える

2分の1ルールがあるため、この増資ではどう配分しても資本金は1億円を超えます。

借方 金額 貸方 金額
普通預金 4,000万円 資本金 2,000万円
資本準備金 2,000万円

1億円以下を保ちたいなら、増資額を2,000万円以下に抑えるか、効力発生後に資本金を減らす(減資)かの選択になります。減資の手続きと日程は「減資の手続きと期間」で扱っています。資本金の判定は事業年度末の時点で行われる項目が多いため、増資の日程と決算日の関係も確認してください。

仕訳例4:株主割当増資と、第三者割当との違い

既存の株主に、持株数に応じて新株を引き受ける権利を与えるのが株主割当増資です(会社法第202条)。仕訳の形は第三者割当と同じです。

借方 金額 貸方 金額
普通預金 1,000万円 資本金 500万円
資本準備金 500万円

違いが出るのは、会計ではなく、発行価額が時価より低い場合の税務です。

項目 株主割当 第三者割当
持株比率 全員が引き受ければ変わらない 引受人の比率が上がり、既存株主は薄まる
時価より低い発行価額 全員が同じ割合で引き受けるなら、原則として課税関係は生じにくい 特に有利な発行価額なら、引受人に受贈益・所得の課税が生じうる。既存株主の価値が引受人へ移るため
既存株主の承認 非公開会社では原則として株主総会の特別決議 同じく株主総会の特別決議。有利発行なら理由の説明が必要

中小企業で、後継者や役員に安い価格で第三者割当をすると、この税務の論点が出てきます。発行価額の根拠は、評価書などで残しておきます。

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仕訳例5:DES(債務の株式化)

社長が会社に貸し付けている3,000万円を、株式に振り替えるケースです。DES(デット・エクイティ・スワップ)と呼ばれ、債務超過の解消や、事業承継の前に貸付金を整理する目的で使われます。

会社法上は、金銭債権を現物出資する形で募集株式を発行します。弁済期が到来している金銭債権を、その帳簿価額以下で出資する場合は、現物出資財産の価額調査のための裁判所への申立てが要りません(会社法第207条第9項第5号)。

会計上の仕訳(券面額で処理する場合)

借方 金額 貸方 金額
役員借入金 3,000万円 資本金 1,500万円
資本準備金 1,500万円

債務者(発行会社)側の会計処理は、会計基準で明示されておらず、券面額で資本に振り替える方法と、債権の時価を基準にする方法があります。中小企業では券面額で処理する例が多いとされます。

税務上の処理(時価で考える)

税務では、現物出資された債権の時価だけ資本金等の額が増えると整理されています(法人税法施行令第8条第1項第1号)。会社が債務超過で、3,000万円の債権の時価が500万円しかないなら、次のようになります。

  1. 資本金等の額の増加:500万円
  2. 消える債務:3,000万円
  3. 債務消滅益:3,000万円 − 500万円 = 2,500万円

会計上は利益が出ていなくても、税務上は2,500万円の債務消滅益が益金になります。繰越欠損金が十分にあれば相殺できますが、足りなければ法人税がかかります。DESを検討するときは、債権の時価評価と繰越欠損金の残高を先に確認します。

資本金に入れる額の判定表

どう配分するかを決めるときは、次の表で自社の状況を確認します。

状況 資本金に入れる額の目安 理由
増資後も資本金1億円以下に収まる 2分の1(最低限) 登録免許税を抑え、中小法人の扱いを保つ
どう配分しても1億円を超える 2分の1にして、減資を検討 増資後の減資で1億円以下に戻す選択肢を残す
許認可や入札で資本金額が審査項目になる 必要な額を資本金へ 業種によって資本金の額が要件・評価になる
金融機関や取引先に資本金額を見せたい 全額も選択肢 登録免許税は増えるが、登記簿上の資本金が大きくなる
債務超過のDES 券面額で処理するか税理士と確認 会計と税務で金額が変わり、債務消滅益が出る

増資の仕訳を切る前のチェックリスト

  • 株主割当か第三者割当か。募集事項(株数・払込金額・払込期日)は確定したか
  • 払込期日と効力発生日はいつか。申込証拠金を受け取る方式か
  • 資本金と資本準備金の配分を募集事項で決めたか(2分の1以上を資本金に)
  • 増資後の資本金が1億円を超えないか。決算日との前後関係は
  • 登録免許税(増加資本金の1,000分の7・最低3万円)を計算したか
  • 株式交付費を支出時の費用にするか、繰延資産にするか
  • 発行価額は時価と比べて妥当か。有利発行の論点はないか
  • DESなら、債権の時価と債務消滅益、繰越欠損金の残高を確認したか

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よくある質問

Q. 増資の払込みを受けた日と、仕訳の日付が違ってもよいですか。

申込期間を設ける方式なら、払込みを受けた日は「新株式申込証拠金」、払込期日に資本金へ振り替えるので、日付が分かれるのが正しい処理です。払込期日を1日だけ定める方式で、その日に入金されたなら、同じ日に資本金を計上します。

Q. 利益剰余金を資本金に組み入れる「無償増資」の仕訳は。

会社法第450条にもとづき、剰余金の額を減らして資本金を増やします。その他資本剰余金を組み入れるなら「その他資本剰余金/資本金」、利益剰余金を組み入れるなら「繰越利益剰余金/資本金」です。お金は動きませんが、資本金が増えるので登録免許税はかかります。

Q. 増資と株式譲渡では、会社の仕訳はどう違いますか。

増資では会社に資金が入り、会社が仕訳を切ります。株式譲渡は株主どうしの取引なので、会社の帳簿には何も起きません(株主名簿の書換えだけです)。オーナーが手元資金を得たいなら株式譲渡、会社に資金を入れたいなら増資、という使い分けになります。

まとめ

  • 増資の仕訳は、申込証拠金の受領・払込期日・費用の支払の3時点で切る
  • 資本金に入れる額は、払込額の2分の1以上で選べる(会社法第445条)。残りは資本準備金
  • 登録免許税は増加資本金の1,000分の7(最低3万円)。増資の登記のものは株式交付費に含まれる
  • 資本金1億円の線は2分の1ルールでは避けきれないことがある。増資額と減資で調整する
  • DESは会計では券面額処理が多いが、税務では債権の時価で考え、差額が債務消滅益になる

参考

ジョブカンM&A ジョブカンM&A編集部

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