減資は「会社が傾いたときにやること」と受け取られやすいが、実務ではそうとは限らない。欠損を整理するため、税負担の区分を変えるため、株主へ払い戻すためなど、目的の異なる複数の場面で使われる。
M&Aや事業承継の前段として検討されることもある。ただし手続きに最低2か月かかるため、スケジュールに組み込んでおかないと後の日程が動かなくなる。
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減資には2種類ある
| 無償減資 | 有償減資 | |
|---|---|---|
| 会社の財産 | 動かない | 社外へ出る |
| 主な目的 | 欠損の填補、資本金の額の区分を変える | 株主への払い戻し |
| 実質 | 貸借対照表の純資産の部の中の振替 | 減資+剰余金の配当 |
🔴 有償減資という単独の制度があるわけではない。会社法上は、資本金の額の減少と剰余金の配当という2つの手続きを組み合わせたものである。そのため、配当の側の規制(分配可能額)もかかる。
手続きの流れ
① 株主総会の特別決議(会社法447条)
決議で定めるのは次の3つである。
- 減少する資本金の額
- 減少額の全部または一部を準備金とするときは、その旨と額
- 効力発生日
⚠️ 定時株主総会で欠損の填補を目的として行う場合など、普通決議で足りる例外がある。該当するかは個別に確認する。
② 債権者保護手続き(会社法449条)
ここが日程を決める。
- 官報に公告する。内容は、減資の内容・一定の期間内に異議を述べられる旨・最終の貸借対照表の開示場所
- 知れている債権者へ個別に催告する
- 異議を述べられる期間は1か月を下ることができない
- 異議を述べた債権者には、弁済・担保提供・信託のいずれかで対応する
🔴 官報は申し込みから掲載まで15日程度かかる。掲載日から1か月の異議申述期間を置くので、準備を含めると効力発生まで最短でも2か月を見る。
⚠️ 定款で日刊新聞紙または電子公告を定めている場合、官報公告とあわせて行うことで個別催告を省略できる。知れている債権者が多い会社では、この省略の可否が実務上大きい。
③ 効力発生と登記
効力発生日から2週間以内に、本店所在地で変更登記を申請する。
日程の組み方
D-60前後 官報の申し込み
D-45 官報掲載 / 個別催告の発送
↓ 異議申述期間(1か月以上)
D-15 期間満了・異議への対応
D 効力発生日
D+14まで 変更登記
株主総会は官報掲載の前に済ませておくのが通常である。M&Aのクロージング日から逆算する場合、この2か月をどこに入れるかで全体の日程が決まる。
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税務で変わること
減資は登記の話にとどまらない。資本金の額は、いくつもの税制で区分の基準に使われている。
| 区分 | 影響 |
|---|---|
| 外形標準課税(法人事業税) | 資本金の額が判定の基準に使われる。区分が変わると課税方式が変わる |
| 法人税の中小法人向けの特例 | 軽減税率、交際費、欠損金の繰越控除などの適用区分 |
| 法人住民税の均等割 | 資本金等の額と従業者数で税率区分が決まる |
🔴 外形標準課税は制度の見直しが行われている。「資本金を減らせば対象から外れる」という前提で判断すると、改正後の基準に当たる場合がある。必ず最新の税制で確認する。
⚠️ 無償減資でも、税務上の「資本金等の額」が会計上の資本金と同じ動きをするとは限らない。欠損填補に充てた場合の取り扱いは別に定めがある。税理士と設計してから決議に入る。
M&Aの前に減資を検討する場面
- 買い手が想定する資本構成に合わせる場合。特に、対象会社の資本金が大きく、税制上の区分が買い手の想定と違うとき
- 株主へ払い戻しを行ってから譲渡する場合(有償減資)。ただし手取りの設計は配当課税と譲渡所得課税で変わるので、税務の検討が先になる
- 欠損を整理して純資産の見え方を揃える場合。ただし欠損填補そのものは会社の財産を増やさない。買い手はそこを見ている
🔴 「見た目を整えるための減資」は、デューデリジェンスで必ず論点になる。目的を説明できる形にしておく。
よくある質問
Q. 資本金を1円にできるか
A. 制度上は可能である。ただし取引先の与信や許認可の要件で資本金の額が見られることがあるため、影響を確認してから決める。
Q. 債権者が異議を述べたらどうなるか
A. 弁済・相当の担保の提供・信託のいずれかで対応する。その債権者を害するおそれがない場合はこの限りでないとされているが、判断は慎重に行う。
Q. 減資と株式併合は同じか
A. 別である。減資は資本金の額を減らす手続き、株式併合は発行済株式の数を減らす手続きで、目的も条文も違う。
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まとめ
- 減資には無償減資(財産は動かない)と有償減資(社外へ出る)の2種類がある
- 手続きは株主総会の特別決議 → 債権者保護手続き → 効力発生 → 2週間以内に登記
- 異議申述期間が1か月を下れず、官報の掲載にも15日程度かかるため、最短でも2か月
- 資本金の額は外形標準課税・中小法人の特例・均等割の区分に使われる。税制は見直しが入っているので最新で確認する
- M&Aで使う場合、目的を説明できる形にしておく。見た目を整えるだけの減資は必ず論点になる
参考
- 会社法(第447条、第449条)
- 会社法施行規則
- 国税庁「法人税基本通達」
この記事は、時点の情報を元に作成しています。
ジョブカンM&A ジョブカンM&A編集部
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