中小M&A資格試験とは|会社を売る・買う経営者が仲介者・FAの「資格」をどう確かめるか、決まっていることと未定のこと

中小企業庁が「中小M&A資格試験」をつくります。仲介者やFAの担当者個人の知識と倫理観を試し、合格者を名簿に載せる制度です。

会社を売る・買う側の経営者にとって大事なのは、この資格はまだ「持っているかどうか」で相手を選べる段階にないという点です。試験の骨格は決まりましたが、正式な試験日・申込方法・受験料の額は、2026年10月時点で確かめられた中小企業庁の資料には書かれていません。試験実施の委託先を募る募集要領で、初回は令和8年度、2027年1〜2月の実施が想定されている段階です。いま「中小M&A資格を持っています」と名乗る担当者がいたら、何を指しているのかを聞き返す必要があります。

この記事では、中小企業庁の検討会資料をもとに、決まっていること・検討中のこと・まだ書かれていないことを分けて整理し、いま仲介者・FAを選ぶときに何を確かめればよいかをチェックリストにまとめます。受験する側の勉強法は扱いません。

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目次
  1. 中小M&A資格試験で決まっていること(中小企業庁の資料で確かめた要点)
    1. 合格しても独占業務はできない
  2. 中小M&A資格試験の合格者登録制度で何が変わるか
  3. M&A支援機関登録制度・中小M&Aガイドラインと中小M&A資格試験の関係
    1. 登録機関に資格の取得を求める方向で検討中
    2. なぜ個人の資格が必要とされたのか
  4. 中小M&A資格試験が始まる前後で仲介者・FAを確かめるチェックリスト
    1. いま(資格の名簿ができる前)に確かめること
    2. 資格の名簿が使えるようになってから足すこと
    3. 売り手と買い手で重点が違うところ
  5. 中小M&A資格試験でまだ決まっていないこと
  6. よくある質問
    1. Q. 中小M&A資格を持っていない仲介者には依頼しないほうがよいですか。
    2. Q. 中小M&A資格は国家資格ですか。
    3. Q. 資格があれば、手数料の高さや契約の不利な条項は心配しなくてよいですか。
    4. Q. M&A支援機関登録制度に登録している会社なら、担当者も資格を持っていますか。
  7. まとめ
  8. 参考

中小M&A資格試験で決まっていること(中小企業庁の資料で確かめた要点)

中小企業庁は2026年3月17日の「中小M&A市場の改革に向けた検討会(第4回)」で、資格試験の概要を示しました。要点は次のとおりです。資料の多くは「想定」「予定」という書き方なので、確定した制度として読まないでください。

項目 資料に書かれている内容 書き方
運営主体 中小企業庁。試験の実施は民間の資格試験実施団体へ委託(毎期、公募で選定) 予定
目的 中小M&A支援人材(仲介者・FA等)の知識、倫理・行動規範意識の習得と定着 確認済み
受験者像 M&A専門業者や金融機関・士業・M&Aプラットフォーム等に所属し、仲介・FA業務に関わる人、これから関わろうとする人。商工団体や事業会社の担当者にも受験を推奨 確認済み
試験科目 M&A実務(市場動向・中小企業政策を含む)、財務・税務、法務、倫理・行動規範の4科目 確定
設問数・時間 60問程度、CBT方式で120分 想定
合格基準 総得点の70〜80%程度。科目ごとの最低基準(50%程度)も設ける。初回は受験者の得点率を踏まえて後日判定 想定
倫理の重み 倫理・行動規範の出題割合は25%程度。著しく不適切な選択肢(禁忌肢)を一定数選ぶと不合格にする設計を検討 検討
試験の免除 弁護士・公認会計士・税理士などの国家資格があっても、立ち上げ期は免除しない 一致
受験機会 立ち上げ期は年3回程度の試験日を設けて一斉実施(受験できるのはそのうち1回) 想定
実施時期 令和8・9年度に試験を実施。初回は令和8年度で、1〜2月の連続した3日間を想定 想定スケジュール

中小企業庁は2026年3月27日に、試験実施事業の委託先を選ぶ企画競争の募集も始めています。制度づくりは「検討」から「実施の準備」に移った段階です。

合格しても独占業務はできない

資料には、合格は弁護士・税理士などの独占業務を可能にするものではない、と明記されています。合格者像も「財務・税務、法務の基礎的な知識をもって論点を見極め、士業専門家と連携できる水準」とされています。

つまり、資格を持つ担当者でも、株式譲渡契約書の法的な判断や、税務の個別の相談を引き受けることはできません。「資格があるから弁護士や税理士は要らない」という説明をされたら、それは制度の趣旨と逆です。

中小M&A資格試験の合格者登録制度で何が変わるか

試験と一体で運用されるのが、合格者の登録制度です。案として次の内容が示されています。

項目 案の内容
登録要件 倫理規程の遵守、違反時の処分(氏名公表等)への同意、登録時講習と定期講習(1〜2年ごと等)の受講
登録のメリット データベースで、倫理規程を守る資格保有者として氏名が公表される。資格証の交付
違反したとき 氏名公表・登録取消し等
更新しないとき 登録の失効

売り手・買い手から見て変わるのは、会社単位ではなく担当者個人の名前で確かめられるようになる点です。

これまでの公的な仕組みは、後で触れるM&A支援機関登録制度のように会社(または個人事業主)単位でした。登録している会社の中で、実際に自社を担当する人がどれだけの知識と倫理観を持っているかは、外からは分かりませんでした。資格の名簿ができれば、名刺の名前をデータベースで引けるようになります。

ただし、登録制度の詳細(名簿の公開範囲、検索の方法、講習の中身)は「今後精査・検討予定」とされており、まだ決まっていません。

M&A支援機関登録制度・中小M&Aガイドラインと中小M&A資格試験の関係

3つの仕組みは、対象と役割が違います。

仕組み 誰が対象か 何を示すか いま使えるか
中小M&Aガイドライン(第3版) 仲介者・FAなど支援機関の行動 重要事項説明、利益相反、手数料、専任条項などで守るべきこと 使える
M&A支援機関登録制度 会社・個人事業主 ガイドラインの遵守を宣言し、手数料体系や支援実績を国に報告している 使える
中小M&A資格(合格者登録) 担当者個人 試験に合格し、倫理規程と講習の要件を満たしている まだ使えない

登録機関に資格の取得を求める方向で検討中

中小企業庁の資料によると、検討されているのは中小M&Aガイドラインに次の2つを書き込む案です。登録機関が担当者に資格を取るよう勧めること、そして契約前の重要事項の説明は資格を持つ担当者が行うことです。委員からも、重要事項説明を資格保有者が行うことを奨励または必須とするようガイドラインに明記すべき、という意見が出ています。

一方、2026年5月に中小企業庁が出した登録制度(令和8年度)の説明資料には、資格に関する登録要件は書かれていません。現時点で、資格は登録機関になるための条件ではありません。ガイドラインに書き込まれるかどうか、書き込まれるならいつからかは、ガイドラインの改訂を待つことになります。

なぜ個人の資格が必要とされたのか

登録制度の情報提供窓口には、中小M&Aガイドラインに反する疑いのある支援の情報が寄せられ続けています。中小企業庁の資料では、重要事項説明をしないまま専任条項や中途解約の違約金条項がある契約を結んだ例、重要事項説明と契約の締結を電話で済ませた例、選ばれなかった支援機関がテール条項を根拠に請求した例などが挙げられています。特に、より深刻なトラブルにつながりやすい営業以外の事案は減っていないとされています。

会社として登録していても、担当者の行動までは揃わない。この反省が、個人の資格と登録・取消しの仕組みにつながっています。売り手・買い手の側から見れば、会社の登録と担当者の確認は別々に必要だということです。

ガイドライン第3版で契約前に確かめる項目は、「中小M&Aガイドライン(第3版)で売り手が仲介・FA契約前に確認すべきチェックリスト」にまとめています。

まずは「自分の会社がいくらか」を知るところから

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中小M&A資格試験が始まる前後で仲介者・FAを確かめるチェックリスト

資格の名簿が使えるようになるまでは、会社の登録と担当者本人への質問で確かめるしかありません。売り手・買い手に共通する確認事項を、時期で分けて整理します。

いま(資格の名簿ができる前)に確かめること

# 確かめること 確かめ方
1 相手の会社がM&A支援機関登録制度に登録しているか 登録制度の公式サイトの登録機関データベースで社名を引く
2 登録取消し等の公表対象になっていないか 中小企業庁・登録制度事務局の公表情報を確認する
3 自社のサイト等で中小M&Aガイドラインの遵守を宣言しているか 相手のホームページを確認する(登録機関には公表が求められている)
4 実際に担当する人は誰か。最初に来た営業担当と同じか 契約前に担当者の氏名と役割を書面で出してもらう
5 担当者が中小M&Aの案件を何件、どの立場(仲介かFAか)で担当したか 担当者本人に聞く。会社全体の実績ではなく本人の実績を聞く
6 重要事項説明を、担当者が対面かオンラインの面談で、書面を示して行うか 電話だけで済ませようとしたら理由を聞く
7 法務・税務の論点で、どの士業と組むか 弁護士・税理士・公認会計士との連携の方法を聞く
8 「中小M&A資格」を名乗っていないか 名乗る場合は、どの試験に、いつ合格したのかを聞く

8は、試験の受験機会が始まる前に「国の資格を持っている」と言われた場合の確認です。民間団体が出しているM&A関連の資格は以前からあり、それ自体は問題ありません。ただし、中小企業庁の中小M&A資格とは別物です。混同させる説明があったら、ほかの説明も慎重に聞いてください。

資格の名簿が使えるようになってから足すこと

# 確かめること 確かめ方
9 担当者が合格者として登録されているか 中小企業庁の合格者データベースで氏名を引く(公開の方法は未定)
10 登録が有効か(講習を受けて更新しているか、失効・取消しになっていないか) 同上
11 重要事項説明をする人が資格保有者か ガイドラインに書き込まれた場合、説明者の氏名と登録を照らし合わせる

資格を持っていることは、最低限の知識と倫理規程への同意を示すだけで、案件を成立させる力や、自社の業界への理解を示すものではありません。資格は「外す条件」に使い、選ぶ決め手は5〜7の答えで比べるのが現実的です。

売り手と買い手で重点が違うところ

立場 重点を置く確認 理由
売り手 4・6(担当者と重要事項説明) 専任条項・テール条項・中間金など、契約前の説明不足がトラブルの中心になっているため
買い手 5・7(本人の実績と士業との連携) デューデリジェンスの範囲や契約条件の詰めで、担当者の知識が価格とリスクに直結するため
両方の仲介を受ける場合 6(利益相反の説明) 仲介者は売り手と買い手の両方から手数料を受け取るため、ガイドラインでも説明が求められている

登録している会社の一覧から候補を絞る手順は、「M&A企業一覧|公的な登録機関の探し方と、比較すべき5つの軸」で扱っています。

中小M&A資格試験でまだ決まっていないこと

報道や解説記事では具体的な日程や受験者数が書かれていることがありますが、中小企業庁の資料で確かめられないものは、ここでは「未定」として扱います。

項目 状況
初回の正式な試験日・申込方法・受験料の額 公表されていない。募集要領では、初回は1〜2月を想定し、受験料は有償で額は中小企業庁と協議して決めるとされている
合格者データベースの公開範囲と検索方法 「今後精査・検討予定」
定期講習の頻度と中身 「1〜2年ごと等を想定」の段階
禁忌肢を実際に設けるか 技術的に難しい場合は、倫理科目の最低基準の引き上げ等の代替策をとるとされている
ガイドラインで資格をどう扱うか(推奨か必須か) 検討中
M&A支援機関登録制度の要件にするか 2026年5月の登録制度の資料には記載がない

経営者がいま決める必要はありません。売却や買収の検討を始めるのが1〜2年先なら、そのころには名簿が使える可能性があります。いま動いている案件なら、名簿を待たずにチェックリストの1〜8で確かめてください。

よくある質問

Q. 中小M&A資格を持っていない仲介者には依頼しないほうがよいですか。

いまの時点では、資格の有無で判断することはできません。試験の受験機会が始まる前なので、持っていないのが普通です。会社の登録状況と、担当者本人の実績・説明のしかたで判断してください。

Q. 中小M&A資格は国家資格ですか。

中小企業庁が運営主体となる資格ですが、資料上、合格は業法に基づく独占業務を可能にするものではないとされています。弁護士や税理士のように、資格が無いとできない業務が生まれるわけではありません。

Q. 資格があれば、手数料の高さや契約の不利な条項は心配しなくてよいですか。

資格は担当者個人の知識と倫理規程への同意を示すもので、手数料体系や契約条項の妥当性を保証するものではありません。手数料体系、専任条項、テール条項は、契約前に書面で確かめる必要があります。

Q. M&A支援機関登録制度に登録している会社なら、担当者も資格を持っていますか。

現時点では、資格は登録の条件ではありません。資格を取るよう登録機関に勧めることや、重要事項の説明を資格を持つ担当者に任せることは検討の段階で、まだ決まっていません。

まずは「自分の会社がいくらか」を知るところから

ジョブカンM&Aでは、専任アドバイザーが事業価値の簡易査定から成約まで一貫して伴走します。相談は無料。売却・買収のどちらでもお気軽にどうぞ。

まとめ

中小M&A資格試験は、仲介者・FAの担当者個人の知識と倫理観を国が確かめ、合格者を名簿で公表する仕組みです。ただし正式な試験日や名簿の公開方法はまだ決まっておらず、いまは資格の有無で相手を選べません。

いま案件を動かしている経営者は、会社の登録状況を公式データベースで確かめ、担当者本人の実績、重要事項説明の方法、士業との連携を契約前に聞いてください。名簿が使えるようになったら、担当者の氏名で登録を確かめる手順を足します。

参考

  • 中小企業庁「中小M&A市場の改革に向けた検討会(第4回)配布資料」(2026年3月17日)https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/ma_shijou/004.html
  • 中小企業庁財務課「中小M&A市場の改革に向けた方向性について」資料2(2026年3月17日)https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/ma_shijou/004/002.pdf
  • 中小企業庁「令和7年度補正中小企業活性化・事業承継総合緊急支援事業(中小M&A資格試験実施事業)に係る企画競争の募集を開始します」https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/itaku/kobo/2026/260327001.html
  • 中小企業庁事業環境部財務課「同 企画競争募集要領」(2026年3月27日)https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/itaku/kobo/2026/dl/260327001.pdf
  • 中小企業庁財務課「M&A支援機関登録制度について」(令和8年5月)https://ma-shienkikan.go.jp/documents/20260529_M&A支援機関登録制度(令和8年度)について.pdf
  • 中小企業庁「中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ」https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/m_and_a_guideline/skills-map.pdf

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