法人税申告書の書き方|初心者向けに別表四・五・一を書く順番と記入例、提出期限と電子申告の義務、自分で書くか税理士に頼むかの判定表(M&Aで見られる箇所つき)

法人税申告書は、1枚の用紙ではなく、「別表」と呼ばれる明細書の束と、決算書などの添付書類をまとめたものです。別表は一から二十一まであり、会社の取引の中身に応じて必要なものだけを作ります。

初めて書く人がつまずくのは、どの別表から手をつけるかです。別表同士で数字を転記し合うので、書く順番を間違えると、別表一の税額が最後まで確定しません。国税庁の「法人税のあらましと申告の手引」は、別表四・五(一)で所得を固め、別表一で税額を出し、別表五(二)で税金の納付状況を整理し、別表五(一)を完成させる順番を示しています。

この記事では、法人税申告書の全体像と書く順番、主な別表の記入のしかたを数値例で整理し、提出期限と電子申告の義務、自分で書くか税理士に頼むかの判定表、M&Aや事業承継で買い手が申告書のどこを見るかまでまとめます。税額の計算の理屈(会計の利益と課税所得がずれる理由)は「法人税の計算方法」で扱っています。

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目次
  1. 法人税申告書の全体像(別表と添付書類)
  2. 法人税申告書を書く順番(4つのステップ)
  3. 法人税申告書の別表四・別表一の書き方(記入例)
    1. 別表四:当期利益から所得を出す
    2. 別表一:所得に税率をかける
    3. 別表五(一)・五(二):税務上の純資産と税金の納付状況
  4. 法人税申告書の提出期限と電子申告の義務
  5. 法人税申告書を自分で書くか税理士に頼むかの判定表
  6. M&A・事業承継で買い手が法人税申告書のどこを見るか
    1. 法人税申告書を提出する前のチェックリスト
  7. よくある質問
    1. Q. 赤字でも法人税申告書は出す必要がありますか。
    2. Q. 期限までに出せなかった場合はどうなりますか。
    3. Q. 税理士に頼むと費用はどれくらいかかりますか。
  8. まとめ
  9. 参考

法人税申告書の全体像(別表と添付書類)

中小企業の申告でよく使う別表と、添付が必要な書類は次のとおりです。

書類 役割 使う会社
別表一 所得金額に税率をかけて、法人税・地方法人税の額を出す申告書の本体 すべて
別表二 同族会社かどうかを判定する。上位の株主と持株数を書く すべて(株主の状況を書く)
別表四 決算書の当期利益に加算・減算をして、税務上の所得を出す すべて
別表五(一) 税務上の純資産(利益積立金額・資本金等の額)を期首から期末まで追う すべて
別表五(二) 法人税・住民税・事業税などの納付状況を整理する すべて
別表七(一) 繰越欠損金の控除 過去に赤字がある
別表十五 交際費等の損金不算入額 交際費を使った
別表十六 減価償却資産の償却額(定額法・定率法・一括償却資産など種類別) 減価償却資産がある
貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書 決算書 すべて
勘定科目内訳明細書 預金・売掛金・借入金・役員報酬などの科目の内訳 すべて
法人事業概況説明書 事業内容・従業員数・月別の売上など会社の概況 すべて

添付書類は法令で定められていて、貸借対照表・損益計算書、株主資本等変動計算書、勘定科目内訳明細書、事業等の概況に関する書類が必要です(法人税法第74条第3項、法人税法施行規則第35条)。

なお、地方法人税の申告書は別表一の下部に組み込まれていて、法人税と同時に申告が済みます。令和8年4月1日以後に始まる事業年度からは防衛特別法人税も加わり、その記載欄も別表一などに追加されています。

法人税申告書を書く順番(4つのステップ)

国税庁の手引が示す流れを、中小企業の申告に当てはめるとこうなります。

ステップ 作る別表 やること
0. 準備 ― 決算を締め、貸借対照表・損益計算書を確定させる。前期の申告書を手元に置く
1. 所得を確定する 別表十五・十六など → 別表七(一) → 別表四 交際費や減価償却などの個別の別表で加算・減算の額を出し、別表四に集めて所得を確定する
2. 税額を出す 別表一 所得に税率をかけ、税額控除を引いて納付税額を出す
3. 租税公課を整理する 別表五(二) 法人税・住民税・事業税の未納額と納付額を整理する
4. 完成させる 別表五(一)・別表二 → 提出 利益積立金額を確定し、貸借対照表の未払法人税等・繰越利益剰余金と一致するか確かめる

個別の別表 → 別表四 → 別表一 → 別表五の順と覚えておけば迷いません。前期の申告書が要るのは、別表五(一)の期首の数字や別表七(一)の欠損金を前期から引き継ぐからです。

法人税申告書の別表四・別表一の書き方(記入例)

簡単な数値例で、別表四から別表一までの流れを示します。資本金1,000万円の中小法人で、令和8年4月1日以後に始まる事業年度の例です。

別表四:当期利益から所得を出す

区分 項目 金額 処分
当期利益 損益計算書の当期純利益 500万円 ―
加算 損金経理をした納税充当金(決算で計上した法人税等) 150万円 留保
加算 役員賞与の損金不算入額(届出の無い賞与) 50万円 社外流出
減算 納税充当金から払った前期の事業税等 30万円 留保
所得金額 500万円+150万円+50万円−30万円 670万円 ―

別表四には「留保」と「社外流出」の列があります。会社の中に残っているもの(納税充当金など)は留保、会社の外に出たもの(役員賞与・配当など)は社外流出です。留保の欄の数字は、別表五(一)に移します。

交際費は、資本金1億円以下の法人なら年800万円までは損金に算入できるので(別表十五で計算)、この例では加算が出ていません。

別表一:所得に税率をかける

項目 計算 金額
所得金額(千円未満切捨て) 別表四から転記 670万円
法人税額 670万円×15%(年800万円以下の部分・中小法人の特例) 100万5,000円
地方法人税額 100万5,000円×10.3%(百円未満切捨て) 10万3,500円
防衛特別法人税額 (100万5,000円−基礎控除500万円)×4% 0円

防衛特別法人税は、法人税額から年500万円を控除した額に4%をかけます。この例のように税額が0円になる会社でも、令和8年4月1日以後に始まる事業年度からは申告が必要です。

中小法人の年800万円以下の部分に15%をかける特例は、令和9年3月31日までに始まる事業年度に適用されます。本来の税率は19%で、800万円を超える部分は23.2%です。

別表五(一)・五(二):税務上の純資産と税金の納付状況

別表五(二)には、法人税・地方法人税・住民税・事業税ごとに、期首の未納額、当期に発生した額、当期に払った額(納税充当金の取崩し・仮払い・損金経理の別)を書きます。

別表五(一)は、期首の利益積立金額に別表四の留保の増減を足し引きして期末を出す表です。完成したら、繰越利益剰余金と未払法人税等が貸借対照表と一致しているか確かめます。合わなければ、どこかの転記を間違えています。

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法人税申告書の提出期限と電子申告の義務

確定申告書は、事業年度終了の日の翌日から2か月以内に、納税地の所轄税務署へ提出します(法人税法第74条第1項)。納付の期限も同じです。3月決算なら5月31日が期限になります。

定款で定時株主総会を事業年度終了後3か月以内と定めているなど、2か月以内に決算が確定しない事情があれば、申請により申告期限を延ばせます(法人税法第75条の2)。ただし、延長した期間には利子税がかかります。延長できるのは申告だけで、利子税を避けるため、税金は2か月以内に見込み額を納めておく会社が多くあります。

会社の区分 電子申告(e-Tax) 根拠
事業年度開始時の資本金が1億円を超える法人(大法人)など 義務。紙で出しても申告書を出していない扱いになる 法人税法第75条の4
資本金1億円以下の法人 任意。紙でも提出できる ―

大法人の電子申告義務は、令和2年4月1日以後に始まる事業年度から適用されています。法人税・地方法人税に加え、消費税、法人住民税・法人事業税も対象です。

法人住民税・法人事業税は、税務署ではなく都道府県・市町村へ別に申告します(eLTAXで提出できます)。消費税の課税事業者なら、消費税の申告も必要です。法人税申告書だけでは申告は終わらない点に注意してください。

法人税申告書を自分で書くか税理士に頼むかの判定表

法人税申告書は、社長が自分で書いて提出しても法律上は問題ありません。判断の分かれ目は、取引の複雑さと、書き間違えたときの影響の大きさです。

自社の状況 向いている選択 理由
設立1〜2期目、役員1人、取引が少なく固定資産もほとんど無い 自分で書ける 使う別表が一・二・四・五(一)・五(二)程度で済む
従業員がいて、減価償却資産や繰越欠損金がある 税理士に頼む 別表十六・七(一)などが増え、前期からの引き継ぎで誤りやすい
決算書は会計ソフトで作れるが、別表は初めて 初年度だけ税理士に頼み、翌年は前期の申告書を見本に自分で書く 別表五(一)の期首の数字が正しく作られていれば、翌年以降は転記の作業が中心になる
資本金が1億円を超える、グループ会社がある、組織再編をした 税理士に頼む 電子申告の義務、グループ法人税制、組織再編の明細書などが加わる
数年以内に会社を売るか、後継者に引き継ぐ予定 税理士に頼む 買い手や後継者は過去の申告書を読む。税務の誤りは株価の減額や表明保証の問題になる
税務調査で指摘を受けたことがある 税理士に頼む 修正の経緯を踏まえた申告が必要になる

判断の軸は「前期の申告書を見本にできるか」です。正しく作られた前期の申告書があれば、自分で書く負担は大きく下がります。逆に、前期の申告書が無い(初年度)か、あっても誤りがある状態で自分で書くと、誤りが毎期引き継がれます。

M&A・事業承継で買い手が法人税申告書のどこを見るか

M&Aのデューデリジェンスでは、買い手は通常、直近3期分の法人税申告書一式(別表・決算書・勘定科目内訳明細書・事業概況説明書)の提出を求めます。決算書だけでは分からない税務上の論点を、申告書から読み取るためです。

書類 買い手が見る点
別表四 加算・減算の中身。役員賞与の損金不算入、交際費、減価償却の超過額など、毎期同じ加算が続いていないか
別表五(一) 留保の残高。会計と税務のずれがどこにあり、将来の税金にどう響くか。税務上の純資産はいくらか
別表七(一) 繰越欠損金の額と期限。株主が変わった後に使えるかどうか(一定の場合は使用が制限される)
別表二 株主の構成。名義だけの株主(名義株)がいないか、親族の持株がどう分かれているか
勘定科目内訳明細書 役員貸付金・仮払金・借入金の相手先、役員報酬の額
法人事業概況説明書 月別の売上と仕入の動き、従業員数の推移

別表四で毎期同じ加算が出ている会社は、買い手から税務の管理が甘いと見られます。例えば、届出の無い役員賞与を毎年払って加算しているなら、損金にならない支出を続けてきたことになります。別表五(一)に大きな留保があれば、その中身を説明できるようにしておきます。

売却を考え始めたら、直近3期の申告書を一度読み直し、説明が必要な加算・減算と留保の中身を書き出しておくと、デューデリジェンスの質問への回答が早くなります。提出書類の全体は「M&Aデューデリジェンスの必要書類チェックリスト」で扱っています。

法人税申告書を提出する前のチェックリスト

  • [ ] 別表四の所得金額が別表一に正しく転記されているか
  • [ ] 別表五(一)の期首の数字が、前期の別表五(一)の期末と一致しているか
  • [ ] 別表五(一)の繰越利益剰余金・未払法人税等が貸借対照表と一致しているか
  • [ ] 別表七(一)の欠損金の繰越額と期限
  • [ ] 防衛特別法人税の記載欄(令和8年4月1日以後に始まる事業年度)
  • [ ] 勘定科目内訳明細書と法人事業概況説明書を添付したか
  • [ ] 法人住民税・法人事業税、消費税の申告の準備

まずは「自分の会社がいくらか」を知るところから

ジョブカンM&Aでは、専任アドバイザーが事業価値の簡易査定から成約まで一貫して伴走します。相談は無料。売却・買収のどちらでもお気軽にどうぞ。

よくある質問

Q. 赤字でも法人税申告書は出す必要がありますか。

必要です。赤字で法人税額が0円でも確定申告書を出します。青色申告の法人は、申告しておくことで赤字(欠損金)を翌期以降に繰り越せます。法人住民税の均等割は赤字でもかかります。

Q. 期限までに出せなかった場合はどうなりますか。

期限後申告となり、無申告加算税と延滞税がかかることがあります。青色申告の法人が2期続けて期限内に申告しないと、青色申告の承認を取り消されることがあり、欠損金の繰越しなどが使えなくなります。

Q. 税理士に頼むと費用はどれくらいかかりますか。

報酬は自由に決められていて、取引の量や顧問契約の有無で大きく変わります。複数の税理士から、申告書の作成だけか、月次の記帳や相談まで含むかをそろえて見積もりを取ると比べやすくなります。

まとめ

法人税申告書は、個別の別表で加算・減算を出し、別表四で所得を固め、別表一で税額を出し、別表五で税務上の純資産を締めるという順番で書きます。

取引が少なく前期の申告書を見本にできるなら自分で書ける。減価償却や欠損金があり、数年以内に会社を売るか引き継ぐなら税理士に頼む。買い手は直近3期の申告書を読むので、説明できない加算や留保を残さないことが売却の準備にもなります。

提出期限は事業年度終了の翌日から2か月以内です。決算を締めた時点で、どの別表が必要かを洗い出してください。

参考

  • 国税庁「令和7年版 法人税のあらましと申告の手引」https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hojin/aramashi2025/pdf/01.pdf
  • 国税庁「C1-1 法人税、地方法人税及び防衛特別法人税の申告(法人税申告書別表等)」https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/shinkoku/01.htm
  • 国税庁「令和8年4月以降に提供した法人税等各種別表関係」https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/shinkoku/itiran2026/01.htm
  • 国税庁「法人税申告書別表一等の記載項目の追加等について(法令解釈通達)」https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hojin/260428/01.htm
  • 国税庁「防衛特別法人税に関する納付手続等について」https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/bouei_noufu/index.htm
  • 国税庁 e-Tax「大法人の電子申告の義務化について」https://www.e-tax.nta.go.jp/hojin/gimuka/index.htm
  • 法人税法(第74条・第75条の2・第75条の4)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034

ジョブカンM&A ジョブカンM&A編集部

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