「利益に法人税率を掛ければ税額が出る」と考えると、実際の納税額と合わない。
法人税は会計上の利益ではなく、税務上の課税所得に対してかかる。この2つはずれていて、ずれを埋める作業が申告調整である。
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課税所得の出し方
課税所得 = 会計上の利益 + 加算項目 - 減算項目
| 何が入るか | |
|---|---|
| 加算 | 会計では費用だが税務では損金にならないもの |
| 減算 | 会計では収益だが税務では益金にならないもの |
よくある加算項目
- 交際費の損金不算入額(中小法人は年800万円まで全額損金にできるなど枠がある)
- 役員給与の損金不算入額(定期同額給与・事前確定届出給与に当たらないもの)
- 減価償却の償却超過額(法定の限度額を超えて償却した分)
- 引当金の繰入超過額
- 法人税・住民税(損金にならない)
- 罰金・過料、延滞税
よくある減算項目
- 受取配当等の益金不算入額
- 前期に加算した償却超過額の認容(当期に償却不足がある場合)
- 繰越欠損金の控除
「法人税と住民税は損金にならない」が最も基本的な加算。一方で事業税は損金になる(支払った事業年度に)。ここは混同しやすい。
税率
法人にかかる税は1つではない。
| 税 | 課税主体 | 中小法人のおおまかな扱い |
|---|---|---|
| 法人税 | 国 | 年800万円以下の所得に軽減税率、超える部分に本則税率 |
| 地方法人税 | 国 | 法人税額に対して課される |
| 法人住民税 | 都道府県・市町村 | 法人税割+均等割(赤字でもかかる) |
| 法人事業税 | 都道府県 | 所得に応じた税率。損金になる |
| 特別法人事業税 | 国(都道府県が徴収) | 事業税額に対して課される |
均等割は赤字でも発生する。資本金と従業員数で金額が決まり、休眠会社でも納付が必要になる。
実効税率
複数の税をまとめて「利益に対して何%か」を示したものが法定実効税率である。
法定実効税率 = {法人税率 ×(1+地方法人税率+住民税率)+ 事業税率等} ÷(1 + 事業税率等)
分母に事業税率が入るのは、事業税が損金になるためである。
中小法人の実効税率はおおむね30%台前半とされることが多いが、所得の水準・資本金・所在地で変わる。自社の数字は税理士に確認する。
資本金1億円が境目になる
税制上、資本金1億円以下の法人には多くの優遇がある。
| 項目 | 資本金1億円以下 | 1億円超 |
|---|---|---|
| 軽減税率 | 年800万円以下の所得に適用 | なし |
| 交際費 | 年800万円まで全額損金(または接待飲食費の50%) | 接待飲食費の50%のみ |
| 欠損金の繰越控除 | 所得の全額まで控除可 | 所得の50%まで |
| 欠損金の繰戻し還付 | 使える | 原則使えない |
| 外形標準課税 | 対象外 | 対象(赤字でも課税される) |
| 少額減価償却資産の特例 | 使える(一定の要件あり) | 使えない |
増資で資本金を1億円超にすると、税負担が一段上がる。M&Aや資本政策で増資を検討する際は、この境目を確認する。
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繰越欠損金
赤字(欠損金)は、翌期以降10年間繰り越して、将来の所得と相殺できる。
- 青色申告の承認を受けていることが前提
- 中小法人は所得の全額まで控除できる
- 帳簿書類の保存が要件になる
繰越欠損金は、M&Aの価格交渉で資産として扱われることがある。買収後に使えれば、買い手の税負担が減るためである。
ただし使えなくなる場合がある。特定の株主が支配権を取得し、かつ事業実態が大きく変わるなどの要件に当たると、欠損金の引継ぎ・使用が制限される。「欠損金があるから買う」という判断は、専門家の確認なしに行わない。
納付の時期
| 時期 | |
|---|---|
| 確定申告・納付 | 事業年度終了の日の翌日から2か月以内 |
| 中間申告(前年の税額が一定以上) | 事業年度開始から6か月経過した日の翌日から2か月以内 |
申告期限の延長は、定款で株主総会の開催時期を定めているなどの理由があれば申請できる。ただし納付は延長されず、利子税がかかる。
事業承継・M&Aで税負担が動く場面
| 場面 | 何が起きるか |
|---|---|
| 株式譲渡 | 会社の課税関係は変わらない。譲渡益に課税されるのは株主 |
| 事業譲渡 | 会社に法人税等がかかり、資産の譲渡には消費税もかかる |
| 役員退職金の支給 | 適正額なら損金。不相当に高額な部分は損金不算入 |
| 含み益のある資産の売却 | 売却益が課税所得に乗る |
| 繰越欠損金の引継ぎ | 組織再編の要件を満たすかで扱いが変わる |
株式譲渡と事業譲渡で、課税される主体が違う。これが手取りを大きく左右する。
役員退職金の「不相当に高額」
一般に功績倍率法(最終報酬月額 × 勤続年数 × 功績倍率)で妥当性を検討する。倍率の水準に明文の基準はなく、同業・同規模の実態と比べて判断される。
過大とされた部分は損金にならず、会社側で法人税が増える。支給前に税理士と金額を詰める。
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よくある質問
赤字なら税金はかかりませんか。
法人住民税の均等割はかかる。資本金と従業員数に応じた定額で、赤字でも休眠でも納付が必要になる。資本金1億円超の法人は外形標準課税もかかる。
決算書の利益と申告書の所得が違うのはなぜですか。
会計と税務でルールが違うため。交際費、役員給与、減価償却、引当金などで扱いが異なり、その差を申告調整(別表四)で埋める。利益と所得が一致することのほうが珍しい。
実効税率は何%で見ておけばよいですか。
中小法人でおおむね30%台前半とされるが、所得水準・資本金・所在地で変わる。概算では「利益の3割程度」で置き、正確な数字は税理士に確認する。
節税のために資本金を増やすのは有利ですか。
1億円を超えると多くの優遇が外れる。外形標準課税の対象にもなり、赤字でも課税される。信用力のために増資する場合でも、1億円の境目は意識して設計する。
まとめ
- 法人税は会計上の利益ではなく、課税所得にかかる。加算・減算で調整する
- 法人税・住民税は損金にならないが、事業税は損金になる
- 均等割は赤字でもかかる。休眠会社でも納付が要る
- 資本金1億円が税制上の境目。超えると軽減税率・欠損金の全額控除・少額資産特例が外れ、外形標準課税の対象になる
- 繰越欠損金は10年。M&Aでは引き継げるかを専門家に確認する
- 株式譲渡は株主、事業譲渡は会社に課税される。手取りが大きく変わる
- 役員退職金の不相当に高額な部分は損金にならない
参考
この記事は、時点の情報を元に作成しています。
ジョブカンM&A ジョブカンM&A編集部
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