「廃業届」と呼ばれている書類の正式名称は、個人事業の開業・廃業等届出書である。
ただし、出すのはこれ1枚ではない。青色申告をしていたか、消費税の課税事業者だったか、従業員を雇っていたかで、最大5種類の届出が発生する。しかも期限がそれぞれ違う。
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出す書類の一覧
| 書類 | 出す先 | 期限 | 誰が出すか |
|---|---|---|---|
| 個人事業の開業・廃業等届出書 | 税務署 | 廃業の日から1か月以内 | 全員 |
| 所得税の青色申告の取りやめ届出書 | 税務署 | 翌年3月15日まで | 青色申告をしていた人 |
| 事業廃止届出書(消費税) | 税務署 | 速やかに | 消費税の課税事業者 |
| 給与支払事務所等の廃止届出書 | 税務署 | 廃止から1か月以内 | 従業員や専従者に給与を払っていた人 |
| 事業開始等申告書(廃止) | 都道府県税事務所 | 自治体による(10日以内など) | 全員 |
都道府県への届出を忘れる人が多い。税務署の書類だけ出して終わりにすると、個人事業税の課税が続いてしまうことがある。自治体のウェブサイトで様式と期限を確認する。
予定納税をしている場合
予定納税額の減額申請ができる。年の途中で廃業して所得が減る見込みなら、申請することで納付額を抑えられる。
- 第1期・第2期分 —— 7月15日まで
- 第2期分のみ —— 11月15日まで
申請しなければ、前年の所得をもとに計算された額をそのまま納めることになる。廃業した年の資金繰りに効く。
個人事業の開業・廃業等届出書の書き方
1枚の様式で、開業にも廃業にも使う。書くのは次の箇所である。
| 欄 | 書くこと | つまずきやすい点 |
|---|---|---|
| 提出先の税務署 | 納税地を管轄する税務署 | 住所地・居所地・事業所のどれを納税地にしているかで変わる |
| 届出の区分 | 「廃業」に丸を付ける | 開業の様式と共通なので、印を付け忘れる |
| 廃業の日 | 事業をやめた日 | 在庫の処分や売掛金の回収が残っていても、事業をやめた日でよい |
| 廃業の事由 | 「事業を廃止したため」など | 詳細を書く義務はない |
| 事業の概要 | 行っていた事業の内容 | 開業届と同じ表現で足りる |
| 給与等の支払の状況 | 従業員の有無 | ここに記載があると、給与支払事務所の廃止届も必要になる |
マイナンバーの記載と、本人確認書類の提示(または写しの添付)が要る。郵送で出す場合は写しを同封する。
提出の方法
- 税務署の窓口へ持参
- 郵送(控えを返してもらうなら、返信用封筒と切手を同封する)
- e-Taxで電子申告
控えは必ず取っておく。金融機関や自治体の手続きで、廃業を証明する書類として求められることがある。
廃業の日をいつにするか
事業をやめた日を書くが、選べる幅がある。
- 月末にすると、消費税や事業税の計算区切りが分かりやすい
- 年末にすると、その年の確定申告で完結する
- 在庫や設備の処分が残っている場合、処分してからにするか、処分前にするかで所得の計上年が変わる
廃業した年も確定申告が必要である。廃業日までの所得を、翌年の申告期限までに申告する。
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届出を出す前に確認したい選択肢
廃業届を出すと、その事業は終わる。次の3つは、出す前に一度検討する価値がある。
| 状況 | 検討すべきこと |
|---|---|
| 黒字で、顧客や取引先が残っている | 事業譲渡。得意先・従業員・許認可・屋号は、廃業では消えるが譲渡なら引き継げる |
| 一時的に休みたいだけ | 廃業届を出さずに、事業を休止するという扱いもある。ただし申告義務は残る |
| 法人成りする | 廃業届は出すが、設立と資産の引き継ぎをセットで設計する。個人の資産を法人へ移す方法で税負担が変わる |
個人事業でも、事業単位で譲渡できる。顧客リスト、店舗の賃借権、従業員、屋号、仕入先との関係——これらに価値があるなら、閉じるより渡すほうが手取りが残ることがある。
設備を廃棄する前に、いくらで引き取ってもらえるかを見ておく。廃棄には費用がかかるが、譲渡なら収入になる。
法人の場合は手続きが違う
法人には「廃業届」に当たる1枚の書類が無い。解散・清算の登記と、税務上の異動届出が別々に必要になる。
| 個人事業 | 法人 | |
|---|---|---|
| 登記 | 不要 | 解散登記・清算結了登記が必要 |
| 期間 | 届出を出せば完了 | 債権者保護手続きに2か月以上。実務では半年〜1年 |
| 費用 | ほぼかからない | 登録免許税・官報公告費用・専門家報酬 |
| 主な届出 | 開業・廃業等届出書ほか | 異動届出書、解散・清算の確定申告 |
法人をたたむのは、個人事業をたたむより手間も費用もかかる。それだけに、譲渡を検討する価値も大きくなる。
よくある質問
廃業届を出さないとどうなりますか。
申告の督促が来ることがある。税務署の記録上は事業を続けていることになるため、確定申告の案内が届き続ける。個人事業税の課税も止まらない。
期限を過ぎてしまいました。
受け付けてもらえる。遅れたことによる罰則の定めは無い。気づいた時点で速やかに出す。
屋号の預金口座はどうなりますか。
金融機関の手続きが別に必要である。廃業届を出しても口座は自動では閉じない。取引のある金融機関へ確認する。
開業と廃業を同じ年にした場合も出しますか。
両方出す。開業届と廃業届の両方が必要になる。
廃業した年の確定申告はどうなりますか。
必要である。廃業日までの所得を、翌年の申告期限(原則3月15日)までに申告する。青色申告をしていたなら、その年は青色のまま申告できる。
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まとめ
- 「廃業届」の正式名称は個人事業の開業・廃業等届出書。期限は廃業の日から1か月以内
- 出すのは1枚ではない。青色申告・消費税・給与支払事務所で最大5種類、期限もばらばら
- 都道府県税事務所への届出を忘れやすい。忘れると個人事業税の課税が続く
- 予定納税をしているなら減額申請ができる。申請しないと前年基準の額を納めることになる
- 届出を出す前に、事業譲渡という選択肢を一度見る。顧客・従業員・許認可・屋号は、廃業では消える
参考
この記事は、時点の情報を元に作成しています。
ジョブカンM&A ジョブカンM&A編集部
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