会社を廃業するにあたっては、然るべき手続きをとる必要があります。必要な手続きは、会社の形態によっても異なりますが、今回はそのなかから、特例有限会社の廃業手続きをメインとしながら、手続きの流れや注意点について詳しく解説していきます。
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特例有限会社とは
現在、日本で新たに設立することができる会社の種類は、「株式会社」「合同会社」「合資会社」「合名会社」の4種類です。かつては、これに加えて「有限会社」も設立可能でしたが、2006年に施行された会社法によって、有限会社制度が廃止となりました。その際、既存の有限会社は「特例有限会社」として存続することが認められました。つまり、現存の有限会社はすべて「特例有限会社」ということになります。
なお、特例有限会社とは、もともと有限会社として設立された会社ということになりますが、前述の会社法施行の際、すべでの有限会社は自動的に「株式会社」とみなされることになったため、特例有限会社は「有限会社」の商号を有したまま、「株式会社」として存続しているということになります。
ただし、会社法上では「株式会社」として認識されているとはいえ、「特例有限会社」と本来の「株式会社」には、資本金の最低額など、いくつかの要素に関して違いがあります。
特例有限会社と株式会社の違い
特例有限会社と株式会社の主な違いは次の表の通りです。
| 特例有限会社 | 株式会社 | |
| 資本金の最低額 | 300万円 | 1円 |
| 従業員数 | 制限なし (ただし、以前は50人以下) |
制限なし |
| 取締役会の設置 | 不可 | 任意 |
| 取締役の任期 | なし | 2年(続投によって最大10年) |
| 決算公告義務 | なし | あり |
なお、特例有限会社の存続期間には制限はありません。
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特例有限会社を廃業する事由
特例有限会社を廃業する事由はいくつか考えられます。主な事由は次の通りです。
それぞれ詳しく解説していきます。
特別決議で成立した(自主廃業)
特例有限会社の場合、「総株主の半数以上(頭数)」かつ「総株主の議決権の4分の3以上の賛成」を得ることで解散できます。
通常の株式会社の特別決議(出席株主の3分の2以上など)とは異なり、出席していない株主も含めた「総数」が基準となるため、特例有限会社の自主廃業は通常の株式会社よりもハードルが高く設定されています。
破産手続きが開始された
破産手続きが開始されることになれば、その時点で解散となります。破産手続きについては、破産法第30条2項において定められています。
解散判決が下された
特別決議によって解散を成立させることができなかった場合、会社を解散させたい株主は、訴えを提起することによって会社の解散を請求することが可能です。これは、会社法第833条1項において定められています。
ただし、次のうちいずれかのケースに該当する場合に限ります。
会社が業務遂行において著しく困難な状況に陥って回復不能な損害が発生しているか、その恐れがある場合
会社の資産の管理や処分が著しく不適切であり、その結果として、会社の存続が脅かされている場合
解散命令が下された
会社を代表する者などが継続的・反復的に刑罰法令に違反する行為をおこなうなどして、利害関係者の申し立てがあった場合、公益上、会社の存在が許されないものとみなして、裁判所が解散を命じることができます。これを「解散命令」といいます。解散命令については、会社法第824条1項において定められています。
合併
会社が吸収合併において消滅会社となる場合、合併の効力が生じる日に、新設会社において消滅会社となる場合、新会社が設立される日に、清算手続きなしで解散することになります。なお、有限会社は吸収合併において存続会社となることはできません。
参照:会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律第37条
定款で規定した解散事由に該当した
定款で規定した解散事由に該当した場合も、解散することができます。ただし、定款で解散事由を規定している会社はほとんどありません。
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特例有限会社の廃業手続きの流れ
続いては、特例有限会社の廃業手続きを、もっとも一般的な解散事由である自主廃業の場合で説明していきます。特例有限会社を廃業する場合、解散⇒清算手続き⇒精算決了登記の大枠としては次の通りです。
【特例有限会社 廃業(解散・清算)手続きフロー】
▼ 株主総会での決議
・解散の特別決議(総株主の半数以上かつ議決権の3/4以上)
・清算人の選任
↓
▼ 登記・届出・公告の開始
・【2週間以内】解散・清算人選任の登記(法務局)
・【遅滞なく】解散等の届出(税務署・都道府県・市町村)
・【5日~10日以内】社会保険・労働保険の資格喪失手続き(年金事務所・ハロワ等)
・【最低2ヶ月間】官報公告および債権者への個別催告
↓
▼ 解散確定申告(解散日から2ヶ月以内)
・解散日までの事業年度の決算・申告・納税
↓ <清算期間:債権回収・債務弁済・資産売却>
▼ 残余財産の分配
・債務完済後に残った財産を株主へ分配
※利益超過分は「みなし配当」として課税対象
↓
▼ 清算確定申告(残余財産確定から1ヶ月以内)
・清算期間中の所得に対する申告・納税
↓
▼ 清算結了
・株主総会による決算報告書の承認
・【2週間以内】清算結了の登記(法務局)
・清算結了の届出(税務署等)
それぞれ詳しく解説していきます。
株主総会での解散決議
先に解説した通り、特例有限会社の場合、総株主が半数以上出席した特別決議において、出席した株主の議決権の4分の3以上の賛成を得ることができたら、解散手続きを開始できます。
【解散決議から2週間以内】解散・清算人の登記の申請
株主総会において、会社の解散を決議すると同時に、会社の清算手続きを進める清算人を選任したら、法務局で登記をおこないます。登記には次の書類が必要です。
なお、会社の解散および清算人の選任に関する登記申請は、株主総会で解散の決議をおこなってから2週間以内に完了する必要があります。
債権者への公告
政府が発行する機関誌である「官報」に、会社が解散することを掲載してもらうことによって、債権者に解散の事実を知らせます。これを「官報公告」といいます。
ただし、官報は金融機関関係者などでなければ目にする機会は少ないため、官報公告をおこなうだけでは、債権者に解散の事実が伝わらないケースが多いと考えられます。そのため、官報公告とは別に、会社側で認識している債権者に対しては、個別に解散の事実を伝える必要があります。これを「個別催告」といいます。
個別催告を受けた債権者が、解散に対して異議を申し出ることのできる期間は、催告を受けてから2か月以内とされています。その期間内に異議を申し入れられた場合、会社は適切に対応する必要があります。
解散時の財産目録・貸借対照表の作成と株主総会での承認
解散日時点での会社財産および負債を洗い出して、合計額を計算します。この明細を「財産目録」といいますが、財産目録は解散するときには必ず作成しなければならないことになっています。
さらに、解散日までを1つの事業年度として、貸借対照表などの計算書類を作成することも必要です。
【解散日から2か月以内】解散確定申告・(必要な場合)納税
解散日までの事業年度について、貸借対照表や損益計算書を作成したら、それらに基づいて税金を計算して申告書を作成して、計算書類とともに税務署に提出します。申告書および計算書類の提出は、解散日から2か月以内と定められています。
利益が出て納税の必要性が生じている場合の納税期限についても、解散日から2か月以内とされています。
社会保険・労働保険の資格喪失・廃止手続き
法務局や税務署の手続きと並行して、従業員や役員の社会保険(健康保険・厚生年金)や労働保険(雇用保険・労災保険)の喪失手続きをおこなう必要があります。
これらを怠ると、廃業後も保険料の請求が続いたり、元従業員が失業給付を受け取れなくなったりするトラブルに発展するため、必ず解散日から速やかに(事実発生から5日〜10日以内など期限が早いため注意)手続きをおこないましょう。
清算事務
会社が保有する財産を換価するとともに、残っている債務を完済します。会社を清算するためには、すべての財産を処分しなければならないため、不動産や車、有価証券などの固定資産は売却してお金に換えて、生命保険契約は解約します。リース資産を保有している場合、リースの解約も必要です。
残余財産の分配
債務の支払いが完結して、金銭が残った場合、残りの金銭は「残余財産」として、株主の出資割合に応じて分配します。分配された額が出資金額を上回る場合、上回っている金額については、配当所得として株主に課税されます。これに際して、会社で所得税の源泉徴収をおこなう必要があります。
なお、出資金額を上回る部分が配当されることは、会社法上の配当ではなく、税務上、「配当とみなされるもの」です。そのため、この部分の配当を「みなし配当」と呼びます。
【残余財産確定から1か月以内】清算確定申告
残余財産が確定したら、そこから1か月以内に、残余財産が確定した事業年度の申告書を税務署に提出します。清算手続きのなかで固定資産を売却して利益が出た場合、その利益に対して法人税がかかるため納税する必要がありますが、納税期限も1か月以内とされています。
ただし、残余財産確定後、一定期間開けることなく最終分配が実施される場合、最終分配の前日までに申告しなくてはなりません。
株主総会で決算報告書の承認を受ける
清算事務完了後は、その内容について記載した清算事務決算報告書を作成して、株主総会において株主の承認を受けることが必要です。
【清算事務決算報告書の承認を受けて2週間以内】清算結了登記の申請
株主総会で承認を受けて、会社でおこなう清算の手続きが終了したら、最後に法務局で清算結了の登記とおこないます。清算結了の登記には次の書類が必要です。
特例有限会社の廃業手続きにかかる期間は?
特例有限会社の廃業手続きは、最低でも2か月半かかるといわれています。なぜかというと、先に解説した通り、債権者保護手続きの一つである官報公告を掲載してから2か月間は、手続きを先へと進めることができないためです。官報公告掲載後、最低2か月間、手続きがストップするとなると、前後の手続きを相当急いだとしても、2か月半は必要と考えられます。ただし、官報公告以外の手続きを2週間で済ませるというのはあまり現実的ではないので、最低でも3か月はかかると踏んで早めに準備を進めることをおすすめします。
なお、特例有限会社の廃業手続きには、長い場合は年単位の時間を要することがあります。その場合、事業年度ごとに確定申告をおこなわなくてはなりません。
特例有限会社の廃業手続きにかかる費用の相場は?
特例有限会社を廃業するにあたっては、次の手続き・専門家への依頼にかかる費用を捻出する必要があります。
法務局に支払う費用
解散登記をおこなうにあたって、法務局に登録免許税として30,000円支払う必要があります。別途、清算人の選任に係る登録免許税として9,000円の支払いも必要です。さらに、最終的に清算結了をおこなう際にも、登録免許税が2,000円発生します。
官報公告にかかる費用
官報公告にかかる費用は、官報に掲載する文章の行数によって変わりますが、概ね35,000円程度と思っておけばいいでしょう。
(任意)税理士費用
特例有限会社の廃業にあたっては、解散と清算の最低2回、税務署に申告書を提出することが必要ですが、税理士には、主に申告書の作成・提出を弁護士に依頼することになります。報酬として、概ね100,000円~200,000程度用意する必要があります。
なお、残余財産を分配する際に「みなし配当」が発生する場合、源泉徴収税額の計算も必要となるため、税理士に依頼できると安心です。
(任意)司法書士費用
司法書士には、官報への公告や消滅登記の手続きを中心に依頼することになります。依頼費の相場は70,000円~100,000円程度です。ただし、書類の作成などは自社で負担できるなら、費用を抑えられる場合もあります。
その他
債務超過に陥っていて、債務者との交渉が必要な場合、弁護士の関与が必要になることがあります。訴訟や債務整理の交渉については弁護士に相談するのが得策ですが、費用に関しては、訴訟の内容などにもよるためピンキリであるといえます。
特例有限会社の廃業時にかかる主な税金
特例有限会社の廃業時には、主に次の税金を支払う必要があります。
法人税・地方税
解散日までの期間に利益が出た場合、法人税を納める必要があります。解散日翌日からは清算期間となり、残余財産が確定するまでの間、1年ごとに税務申告をおこなう必要があります。清算期間中、不動産や設備などを簿価以上で売却した場合、その売却益に対して法人税がかかることになります。
消費税
解散・清算中に発生する売り上げに対して、消費税がかかります。建物や設備を売却した場合も、消費税を支払う必要があります。ただし、土地に関しては非課税なので、消費税は発生しません。
所得税・源泉徴収税
みなし配当が発生した場合、配当を支払う際、会社が源泉徴収をおこなって、残りを株主に支払う必要があります。上場株式は15.315%、非上場株式や大口株式は20.42%の源泉所得税が徴収されることになります。
固定資産税
解散・清算にあたって、不動産などを売却するケースは多いですが、その年の1月1日に所有者として登録されている人が納めるものとされている「固定資産税」に関しては、1月1日時点で所有していた時点で、支払いの義務が生じています。ただし、売却が成立した場合、納税義務者が売主であることには変わりないものの、売買契約によって税額を売主と買主でわけるケースが多く、実質、納税の負担は軽減される場合があります。
特例有限会社の廃業時における節税対策
特例有限会社の廃業時に発生する税金の負担を少しでも抑えるために、次の対策を講じることが役立ちます。
役員退職慰労金の活用
役員退職慰労金は損金(経費)として全額計上できるため、該当年度の法人税負担を抑えることができます。ただし、過大な退職慰労金は損金として認められないため、妥当な金額に設定することが大切です。一般的には、退職慰労金は「最終報酬月額×在任年数×功績倍率」の計算式で算出されます。功績倍率は、代表者であれば2.0~3.0程度、取締役であれば1.0~2.0程度が妥当とされています。ただし、廃業時には資産状況が厳しいこともあるため、支払える範囲の金額とすることが大切です。
また、退職慰労金を支給するにあたっては、定款に規定されているか、または株主総会で決議することが必須です。
欠損金の繰戻し還付請求
欠損金の繰戻し還付請求とは、青色申告書を提出している中小企業者が、ある事業年度において生じた欠損金を、全事業年度に繰戻して法人税の還付を受ける制度です。どういうことかというと、解散・清算時に赤字となっている場合に、前期に納税した法人税のすべてまたは一部の還付を請求できるということです。つまり、これによって税負担が軽くなる場合があります。ただし、資本金が1億円を超えている法人、もしくは特定の条件に該当する法人は対象外となるため、自社が対象となっているかどうかをまず確認する必要があります。
その他
その他、期限切れの欠損金の利用や、簡易課税制度の活用なども節税対策となり得ます。
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特例有限会社の廃業に関する注意点
ここまで解説してきた通り、特例有限会社の廃業手続きを慎重に進めた結果、解散決議が成立してから清算結了となるまでに年単位の月日を要することもあります。その間、事業年度ごとに確定申告をおこなう必要もあるため、清算期間中にも営業して利益を得ても大丈夫だろうと勘違いしてしまうことがあるかもしれません。
しかし結論からいうと、会社が解散した時点からは、会社が存続する目的は、商品販売やサービス提供ではなく、清算(=後片付け)になります。そのため、清算期間中におこなうことができるのは、“清算のための行為のみ”ということになります。
主な「できる行為」「できない行為(禁止されている行為)」は次の通りです。
【清算中にできる行為】
【清算中にはできない行為】
など
ただし、次のケースに関しては、“清算のためのやむを得ない範囲である”とみなされて、認められる場合が多いようです。
【清算中であっても、例外として認められやすい行為】
廃業ではなくM&Aを選ぶのも一手
特例有限会社を廃業する事由は会社によって異なるため、廃業という選択がベストであるかどうかは一概には言えませんが、会社の存続を望む場合や、従業員の雇用を守りたい場合などは、M&Aという選択肢をとることが得策となる可能性が高いです。
M&Aのメリット、デメリットは次の通りです。
M&Aのメリット(廃業ではなくM&Aを選ぶメリット)
廃業して残余財産を受け取る場合、利益部分は「みなし配当」として総合課税(最大約55%の税率)の対象となります。一方、M&Aで株式を譲渡した場合、その利益は申告分離課税となり、税率は一律20.315%で済みます。会社に内部留保(利益)が大きく溜まっている場合、廃業よりもM&Aを選んだほうが、オーナー経営者の手元に残る現金が大幅に増えるケースがあります。
M&Aのデメリット
ただし、廃業またはM&Aを検討している会社に将来性がなく、純資産額も低い場合、買い手が現れる可能性は極めて低く、売れたとしても著しく低い価格でしか買い取ってもらえないと考えられます。このような場合は、早々に清算したほうが、短期間に決着できるぶん、余計な維持費をかけずに済むことから、金銭的にも有利となるケースが多いでしょう。
特例有限会社の廃業手続きは専門家の力を借りるのが得策
特例有限会社の解散・清算手続きは決して簡単ではないため、廃業すると決めた際には、できるだけスムーズに手続きを済ませることができるよう、税理士や弁護士を頼ることがおすすめです。必要な手続き自体は、順を追ってこなしていけばいいため、手続きが初めてであってもなんとか終わらせることはできるかもしれません・しかし、税務に関する計算は極めて複座地で、それぞれの会社の状況や税制によって異なってくるため、素人では節税対策にまで意識が回らず、損をする可能性も高いと考えられます。あるいは、手続きが疎かであったがために、従業員や取引先との関係性が悪くなってしまうこともあるでしょう。そうした事態を防ぐためにも、必要に応じて専門家を頼ることで、スピーディで無駄のない手続きを実現するよう心掛けてくださいね。
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この記事は、時点の情報を元に作成しています。
ジョブカンM&A ジョブカンM&A編集部
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