みなし配当は、会社が配当の決議をしていないのに、税務上は配当を受けたものとして扱われる金額を指す。
M&Aや事業承継で問題になるのは、同じ「株式を会社に買い取ってもらう」取引でも、みなし配当が生じるかどうかで手取りが大きく変わるからである。
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なぜ配当として扱われるのか
株主が会社から金銭を受け取る形は2つある。
- 利益の分配として受け取る → 配当
- 出資したものを返してもらう → 資本の払い戻し
会社が株主へ金銭を渡すとき、その原資が「もともと株主が出したお金」なのか「会社が稼いだ利益」なのかで、税務上の扱いが変わる。
🔴 配当の決議という形をとっていなくても、実質が利益の分配であれば配当として課税する。これがみなし配当の考え方である。名前を変えれば課税を避けられる、という抜け道を塞ぐための規定である。
みなし配当が生じる主な場面
| 場面 | 概要 |
|---|---|
| 自己株式の取得 | 会社が自社の株式を株主から買い取る。最も多い場面 |
| 資本の払い戻し | 有償減資などで株主へ払い戻す |
| 残余財産の分配 | 清算に伴う分配 |
| 非適格の合併・分割型分割 | 組織再編で適格要件を満たさない場合 |
| 退社・脱退に伴う持分の払戻し | 持分会社の場合 |
⚠️ 市場での買い付けや、上場株式の一定の取引には除外規定がある。非上場会社の自己株式取得が、実務でいちばん問題になる。
金額の分け方 — 2つに割れる
株主が受け取った金銭は、そのまま全部が配当になるわけではない。
受け取った金額
├─ 資本金等の額に対応する部分 → 株式の譲渡対価(譲渡所得の計算へ)
└─ それを超える部分 → みなし配当(配当所得)
つまり、1回の取引で譲渡所得と配当所得の両方が発生する。
個人株主の場合、税率が違う
| 課税方式 | 負担感 | |
|---|---|---|
| 株式の譲渡所得 | 申告分離課税 20.315%(所得税・復興特別所得税・住民税) | 一定 |
| みなし配当(配当所得) | 総合課税(配当控除あり) | 所得が大きいほど重くなる |
🔴 ここがM&Aで効く。同じ金額を受け取っても、第三者へ株式を譲渡すれば全額が譲渡所得(20.315%)で済むのに対し、会社に買い取らせるとみなし配当の部分が総合課税になる。所得の大きいオーナーほど差が開く。
⚠️ 法人株主の場合は考え方が変わる。受取配当等の益金不算入の適用があるため、みなし配当が生じたほうが有利になる場合がある。個人と法人で結論が逆になりうる。
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源泉徴収の実務
みなし配当が生じる場合、支払う会社側に源泉徴収の義務がある。
- 税率は配当と同じ扱いになる
- 支払った月の翌月10日までに納付する
- 支払調書の提出が必要になる
🔴 株主に渡す金額を決めるときに源泉徴収を忘れると、会社が立て替えることになる。「◯円で買い取る」と合意した後で「源泉を引く」と言うと揉める。契約の段階で、額面か手取りかを明記する。
M&Aで検討する場面
① 少数株主の整理
分散した株式を集めるとき、会社が買い取る(自己株式の取得)か、オーナーが個人で買い取るかで課税が変わる。
- 会社が買い取る → 売る側にみなし配当が生じうる
- オーナーが買い取る → 売る側は譲渡所得のみ
売る側の税負担が変わるので、買い取り価格の交渉にも影響する。
② 相続した株式の売却
相続により取得した非上場株式を、一定の期間内に発行会社へ譲渡した場合、みなし配当課税を行わず全額を譲渡所得とする特例がある。相続税の取得費加算とあわせて使われる。
🔴 適用には期限と手続きがある。相続の場面では、この特例を使えるかどうかで手取りが大きく変わる。早い段階で税理士に確認する。
③ 分散株式の買い集め
名義株や所在不明株主が混ざっていると、そもそも取得できない。課税の検討より前に、株主名簿の整理が必要になる。
よくある質問
Q. 決算書に配当の記載が無いのに配当と言われた
A. 会計上の配当と税務上のみなし配当は別である。会計処理では配当として計上されない場合でも、税務上は配当として扱われる。
Q. 自己株式の取得は必ずみなし配当になるか
A. 資本金等の額に対応する部分を超える金額がある場合に生じる。超えなければ生じない。
Q. 個人と法人、どちらの株主から買うべきか
A. 税務上の有利不利が逆になりうる。取引の設計段階で、株主の属性ごとに試算する。
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まとめ
- みなし配当は、配当の決議が無くても税務上は配当として扱われる金額
- 自己株式の取得が実務で最も多い場面
- 受け取った金額は資本金等の額に対応する部分(譲渡所得)とそれを超える部分(配当所得)に分かれる
- 個人株主は総合課税になるため、第三者への譲渡より不利になりやすい
- 法人株主は逆に有利になる場合がある(受取配当等の益金不算入)
- 支払う会社に源泉徴収と支払調書の義務がある。額面か手取りかを契約で明記する
参考
- 所得税法(第25条)
- 法人税法(第24条)
- 租税特別措置法
- 国税庁「タックスアンサー」
この記事は、時点の情報を元に作成しています。
ジョブカンM&A ジョブカンM&A編集部
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