みなし配当とは? 自己株式の取得で課税が2つに分かれる仕組みと、源泉徴収の実務

みなし配当は、会社が配当の決議をしていないのに、税務上は配当を受けたものとして扱われる金額を指す。

M&Aや事業承継で問題になるのは、同じ「株式を会社に買い取ってもらう」取引でも、みなし配当が生じるかどうかで手取りが大きく変わるからである。

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目次
  1. なぜ配当として扱われるのか
  2. みなし配当が生じる主な場面
  3. 金額の分け方 — 2つに割れる
    1. 個人株主の場合、税率が違う
  4. 源泉徴収の実務
  5. M&Aで検討する場面
    1. ① 少数株主の整理
    2. ② 相続した株式の売却
    3. ③ 分散株式の買い集め
  6. よくある質問
  7. まとめ
  8. 参考

なぜ配当として扱われるのか

株主が会社から金銭を受け取る形は2つある。

  1. 利益の分配として受け取る → 配当
  2. 出資したものを返してもらう → 資本の払い戻し

会社が株主へ金銭を渡すとき、その原資が「もともと株主が出したお金」なのか「会社が稼いだ利益」なのかで、税務上の扱いが変わる。

🔴 配当の決議という形をとっていなくても、実質が利益の分配であれば配当として課税する。これがみなし配当の考え方である。名前を変えれば課税を避けられる、という抜け道を塞ぐための規定である。

みなし配当が生じる主な場面

場面 概要
自己株式の取得 会社が自社の株式を株主から買い取る。最も多い場面
資本の払い戻し 有償減資などで株主へ払い戻す
残余財産の分配 清算に伴う分配
非適格の合併・分割型分割 組織再編で適格要件を満たさない場合
退社・脱退に伴う持分の払戻し 持分会社の場合

⚠️ 市場での買い付けや、上場株式の一定の取引には除外規定がある。非上場会社の自己株式取得が、実務でいちばん問題になる。

金額の分け方 — 2つに割れる

株主が受け取った金銭は、そのまま全部が配当になるわけではない。

受け取った金額
  ├─ 資本金等の額に対応する部分 → 株式の譲渡対価(譲渡所得の計算へ)
  └─ それを超える部分         → みなし配当(配当所得)

つまり、1回の取引で譲渡所得と配当所得の両方が発生する。

個人株主の場合、税率が違う

課税方式 負担感
株式の譲渡所得 申告分離課税 20.315%(所得税・復興特別所得税・住民税) 一定
みなし配当(配当所得) 総合課税(配当控除あり) 所得が大きいほど重くなる

🔴 ここがM&Aで効く。同じ金額を受け取っても、第三者へ株式を譲渡すれば全額が譲渡所得(20.315%)で済むのに対し、会社に買い取らせるとみなし配当の部分が総合課税になる。所得の大きいオーナーほど差が開く。

⚠️ 法人株主の場合は考え方が変わる。受取配当等の益金不算入の適用があるため、みなし配当が生じたほうが有利になる場合がある。個人と法人で結論が逆になりうる。

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源泉徴収の実務

みなし配当が生じる場合、支払う会社側に源泉徴収の義務がある。

  • 税率は配当と同じ扱いになる
  • 支払った月の翌月10日までに納付する
  • 支払調書の提出が必要になる

🔴 株主に渡す金額を決めるときに源泉徴収を忘れると、会社が立て替えることになる。「◯円で買い取る」と合意した後で「源泉を引く」と言うと揉める。契約の段階で、額面か手取りかを明記する。

M&Aで検討する場面

① 少数株主の整理

分散した株式を集めるとき、会社が買い取る(自己株式の取得)か、オーナーが個人で買い取るかで課税が変わる。

  • 会社が買い取る → 売る側にみなし配当が生じうる
  • オーナーが買い取る → 売る側は譲渡所得のみ

売る側の税負担が変わるので、買い取り価格の交渉にも影響する。

② 相続した株式の売却

相続により取得した非上場株式を、一定の期間内に発行会社へ譲渡した場合、みなし配当課税を行わず全額を譲渡所得とする特例がある。相続税の取得費加算とあわせて使われる。

🔴 適用には期限と手続きがある。相続の場面では、この特例を使えるかどうかで手取りが大きく変わる。早い段階で税理士に確認する。

③ 分散株式の買い集め

名義株や所在不明株主が混ざっていると、そもそも取得できない。課税の検討より前に、株主名簿の整理が必要になる。

よくある質問

Q. 決算書に配当の記載が無いのに配当と言われた
A. 会計上の配当と税務上のみなし配当は別である。会計処理では配当として計上されない場合でも、税務上は配当として扱われる。

Q. 自己株式の取得は必ずみなし配当になるか
A. 資本金等の額に対応する部分を超える金額がある場合に生じる。超えなければ生じない。

Q. 個人と法人、どちらの株主から買うべきか
A. 税務上の有利不利が逆になりうる。取引の設計段階で、株主の属性ごとに試算する。

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まとめ

  • みなし配当は、配当の決議が無くても税務上は配当として扱われる金額
  • 自己株式の取得が実務で最も多い場面
  • 受け取った金額は資本金等の額に対応する部分(譲渡所得)とそれを超える部分(配当所得)に分かれる
  • 個人株主は総合課税になるため、第三者への譲渡より不利になりやすい
  • 法人株主は逆に有利になる場合がある(受取配当等の益金不算入)
  • 支払う会社に源泉徴収と支払調書の義務がある。額面か手取りかを契約で明記する

参考

  • 所得税法(第25条)
  • 法人税法(第24条)
  • 租税特別措置法
  • 国税庁「タックスアンサー」

ジョブカンM&A ジョブカンM&A編集部

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