減価償却とは? 仕組みや計算方法、M&Aの企業価値評価での重要性をわかりやすく解説

減価償却とは、固定資産の取得に要した費用を、その資産の耐用年数(とされる年数)で分割して、耐用年数とされる期間中、毎年の経費として計上していく会計処理方法のことです。今回は減価償却について、具体的な計算方法や、減価償却をおこなうメリット・デメリットなどを解説していきます。また、減価償却はM&Aの企業価値評価において重要な要素ですが、企業価値評価とはどのように紐づいているのかについても説明していきます。

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目次
  1. 減価償却とは
    1. 「費用収益対応の原則」により、一括で計上せず分割で計上することが求められている
    2. 減価償却費とキャッシュフローの関係性:減価償却費を計上してもお金は出ていかない
      1. 損益計算書とキャッシュフローの違い
      2. キャッシュフロー計算書では減価償却費をどう扱う?
  2. 減価償却の対象となる資産・減価償却の対象とならない資産
    1. 減価償却の対象とならない資産
  3. 耐用年数の確認方法
  4. 企業が減価償却を活用するメリット
    1. 設備投資のタイミングを調整することで利益を平準化できる
    2. キャッシュフローを管理・改善できる
    3. 「資本的支出」を活用して税金を最適化できる
    4. 投資効率が向上する
  5. 企業が減価償却を活用するデメリット
    1. 会計処理が複雑化する
    2. 資産管理に手間がかかる
    3. 十分に税負担を軽減できない場合もある
      1. 「少額減価償却資産の特例」「一括償却資産」を活用すれば事務負担を軽減できる
    4. 財務諸表のバランスが大きく変わる可能性がある
      1. 法人の場合、「任意償却」を活用することも可能
  6. 減価償却の計算方法
    1. 定額法
    2. 定率法
    3. 生産高比例法
    4. リース期間定額法
  7. 減価償却費の仕訳方法
    1. 直接法の仕訳方法
    2. 間接法の仕訳方法
  8. 減価償却に関する注意点
    1. 事業年度の途中で固定資産を購入した場合、月割りで計算する必要がある
    2. 固定資産を売却あるいは廃棄した場合の会計処理
  9. M&Aの企業価値評価における減価償却
    1. EBITDA=営業利益+減価償却費という考え方
      1. なぜ減価償却費を足し戻すのか
    2. 設備型ビジネスの企業価値はどう見られるか
      1. 設備が古い場合は注意
    3. DDで問われる「過少償却リスク」と正常収益力の修正
    4. EBITDA評価と維持的CAPEX(設備投資)のバランス
    5. 「減価償却」と「のれん償却」との違い
      1. M&Aでは「減価償却費」「のれん償却費」の両方を利益に足し戻して分析することがある
  10. 減価償却でよくある誤解
  11. 減価償却の本質を理解することで、M&Aや投資判断でも適切な評価ができるようになる

減価償却とは

減価償却とは、固定資産の取得にかかった費用を、一括でまとめて計上するのではなく、税法上、定められた使用可能期間である「耐用年数」に応じて分割して、数年かけて費用計上する会計処理のことです。

分割方法はいくつかあるので詳しくは後述しますが、たとえば、毎年同じ償却率を適用させる「定額法」を採用すると、取得費用100万円・耐用年数5年の場合、1年目~4年目は毎年20万円を費用計上して、5年目のみ、固定資産がまだ存在していることを帳簿上で示すために1円を残す必要があるため、199,999円を費用計上します。

「費用収益対応の原則」により、一括で計上せず分割で計上することが求められている

なぜ、一括で計上せずに分割で計上するかというと、「費用収益対応の原則」を実現する必要があるためです。費用収益対応の原則とは、“ある収益を得るためにかかった費用は、その収益が計上される期間に対応させて計上するべきである”とする、会計の考え方です。

これを先の例に照らし合わせると、耐用年数5年の機械を購入して5年間使用する場合、その機械は5年間にわたって売上獲得に貢献するため、5年間にわたって費用を計上するということになります。

減価償却費とキャッシュフローの関係性:減価償却費を計上してもお金は出ていかない

減価償却費を計上する際には、損益計算書の借方に「減価償却費」として仕訳します。しかし、たとえば100万円の機械を購入して、5年かけて、毎年20万円の減価償却費を計上したとして、2年目以降には現金が出ていってはいません。なぜなら、1年目に100万円全額を支払っているからです。

なお、減価償却費の仕訳方法について詳しくは後述します。

損益計算書とキャッシュフローの違い

たとえば、次のケースの場合の、損益計算書とキャッシュフローの違いをみてみましょう。

  • 売上:500万円
  • 現金支出を伴う費用:300万円
  • 減価償却費:20万円

【損益計算書】

項目 金額
売上 500万円
費用 320万円
利益 180万円

【キャッシュフロー】

項目 金額
入金 500万円
出金 300万円
キャッシュ増加 200万円

つまり、キャッシュは200万円増加しているのに、損益計算書では、利益は180万円となるということです。差額の20万円は減価償却費です。

キャッシュフロー計算書では減価償却費をどう扱う?

営業キャッシュフローを計算するときは、当期純利益に減価償却費を加算します。

たとえば、当期純利益が100万円で減価償却費が20万円なら、営業キャッシュフローは次の通りとなります。

営業キャッシュフロー=100万円+20万円=120万円

減価償却費は利益を減らしてはいるものの、実際には現金が減っていないため、キャッシュフロー計算書では戻し入れる(=加算する)ということになります。

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減価償却の対象となる資産・減価償却の対象とならない資産

先に解説した通り、減価償却とは「固定資産の取得に要した費用を、その資産の耐用年数で分割して、耐用年数とされる期間中、毎年の経費として計上していく会計処理方法」で、減価償却の対象となる資産の要件は次の通りです。

  • 固定資産のうち、年月の経過とともに価値が減少するもの
  • 取得価額が10万円以上で、かつ使用可能期間が1年以上のもの
  • 事業のために使用するもの

具体的に対象となる固定資産は大きく次の3つにわけることができます。

①有形固定資産
オフィスビルや工場などの建物、空調や照明などの建物附属品、駐車場などの構造物、生産ラインや工作機械などの機械装置、営業車などの車両運搬具、オフィス家具などの備品をはじめとする、長期間にわたって事業に使用される資産です。

②無形固定資産
特許権、商標権、営業権、ソフトウェアなど、物理的実体は持たないものの、事業活動に貢献する資産のことです。

③生物
畜産業における家畜や農園芸における果樹など、事業目的で使用される生物資材を指します。

減価償却の対象とならない資産

一方、オフィスビルが建っている土地、社屋に飾られている絵画などのうち、特に歴史的価値を持つ美術品や骨董品など、時間が経っても価値が減少しないと考えられる資産は、減価償却の対象となりません。

⇒参照:国税庁「減価償却のあらまし」

⇒参照:国税庁「減価償却資産」

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耐用年数の確認方法

減価償却の対象となる資産の耐用年数は、税法上、「法定耐用年数」として、資産の種類や構造、用途などごとに細かく定められています。

具体的な年数については、国税庁が公開している「主な減価償却資産の耐用年数表」で確認できます。

たとえば、建物一つとっても、木造・合成樹脂造、木骨モルタル造などの構造・用途の違いや、事務所用、店舗用・住宅用などの細目の違いによって異なる年数が定められています。

⇒参照:国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」

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企業が減価償却を活用するメリット

多くの企業は、減価償却を単なる会計処理としてではなく、利益・税金・キャッシュフロー・設備投資を最適化する経営戦略として活用しています。

代表的な活用方法を紹介します。

設備投資のタイミングを調整することで利益を平準化できる

利益が大きく出そうな年度に設備投資をおこなえば、次のような効果が得られます。

  • 翌年以降の減価償却費が増える
  • 利益が圧縮される
  • 法人税負担が軽くなる

(例)
利益:5,000万円

年末に5,000万円の機械を購入

翌年度から毎年減価償却費が発生

利益を平準化できる

キャッシュフローを管理・改善できる

固定資産購入時には現金支出がありますが、その後の減価償却期間中はキャッシュアウトが発生しないため、キャッシュフローの改善や資金繰りの安定が期待できます。

また、詳しくは後述しますが、減価償却費計算方法には、毎年同じ金額を経費計上する「定額法」、初年度の経費がもっとも大きく、徐々に金額が減っていく「定率法」などがありますが、このうち、定率法を採用すると、税金を後ろに繰り延べられることから、初期のキャッシュフローが改善します。

ただし、資産の種類によって選択できる償却方法については税法で定められています。償却方法を変更するには、税務署長の承認が必要な場合があります。

「資本的支出」を活用して税金を最適化できる

「資本的支出」とは、固定資産の価値を高めたり、使用可能期間を延ばしたりするためにおこなう支出のことです。

たとえば、次のようなものが資本的支出に当たります。

  • 建物の増築・改築
  • 機械設備の性能向上のための改良
  • 車両のエンジンを交換して耐用年数を延ばす工事

一方で、通常の修理やメンテナンスは「修繕費」として処理されることが多く、資本的支出とは区別されます。

税務上は、「資産価値の増加」や「耐用年数の延長」があるかどうかが重要な判断基準になります。

実際に資産価値の向上や耐用年数の延長があれば資本的支出として処理できるため、翌年以降に費用を配分して税金を最適化できることがあります。

投資効率が向上する

減価償却費は費用ですが現金は減りません。

そのため、キャッシュフロー上で減価償却費が出ていても、実際には会社に現金は残っています。

そのぶんの費用を、設備更新資金、新工場建設、M&A、借入返済などの資金計画に活用することができます。

なお、銀行も企業評価ではEBITDA(営業利益+減価償却費)を重視することが多く、企業の「現金を生み出す力」を測る指標として利用されています。

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企業が減価償却を活用するデメリット

続いてはデメリットです。

会計処理が複雑化する

前述の通り、減価償却の対象となる資産の耐用年数は、税法上、「法定耐用年数」として、資産の種類や構造、用途などごとに細かく定められています。

そのため、会計処理が複雑化します。処理を誤ると、税務調査で指摘される可能性があります。

資産管理に手間がかかる

資産の耐用年数が定められているということは、残りの耐用年数や残存価額についても管理しなければならないということです。資産台帳の整備や定期的な見直しが求められるうえ、資産の売却・除却時にも適切な処理が必要になります。

十分に税負担を軽減できない場合もある

赤字の年度など、利益がさほど出ていない年度については、税負担を十分に軽減できない場合があります。

なお、中小企業の場合、次のような制度を利用することができます。

「少額減価償却資産の特例」「一括償却資産」を活用すれば事務負担を軽減できる

中小企業の場合、30万円未満(一定の要件あり)の資産について要件を満たせば、通常の減価償却をおこなわず、購入年度に全額経費にすることができます。

これを「少額減価償却資産の特例」といいます。

少額減価償却資産の特例を利用すると、帳簿管理が簡単になります。

⇒参照:中小企業庁「少額減価償却資産の特例を拡充しました」

また、資産の取得価額が10万円以上20万円未満の場合については、「一括償却資産」として3年で均等に償却するか、通常の減価償却にするかを選ぶことができます。

「少額減価償却資産の特例」「一括償却資産」の両方が適用される場合、どちらを利用するかを選ぶことができます。

財務諸表のバランスが大きく変わる可能性がある

減価償却費の計上額によっては、純利益や営業利益が圧縮されて、財務諸表のバランスが大きく変わることになります。そのため、金融機関などからの資金調達を検討している場合、慎重に判断することが求められます。

法人の場合、「任意償却」を活用することも可能

減価償却費は、会計上は毎期計上しなくてはなりませんが、税務上は、償却限度額の範囲内であれば、損金算入額を任意に選択することができます。これを利用して、減価償却費を少なく計上して(損益計算書上の)利益を増やすことによって、金融機関への印象をよくするということは可能です。

減価償却費を少なく計上すると、黒字決算に見せることが可能なため、新規融資を受けたい場合などに、任意償却が利用されることがあります。ただし、帳簿価額に残った未償却残高は、償却が完了する時期が後ろにずれるだけで、最終的には全額償却する必要があります。

なお、任意償却は、赤字を避けたい場合や、繰越欠損金が十分ある場合、債務超過を回避したい場合などにも利用されることがあります。

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減価償却の計算方法

減価償却の計算方法は次の4種類です。

  • 定額法
  • 定率法
  • 生産高比例法
  • リース期間定額法

一般的な減価償却資産には、定額法または定率法が用いられます。

鉱業用資産などの一部の資産には生産高比例法が用いられ、リース資産にはリース期間定額法が適用されます。

それぞれの計算方法を詳しく解説していきます。

定額法

定額法とは、減価償却期間中、毎年同じ額を費用計上する方法です。計算式は次の通りです。

減価償却費(償却限度額)= 取得価額 × 定額法の償却率

「定額法の償却率」は、耐用年数ごとに定められているため、国税庁が公開している「減価償却資産の償却率等表」で確認して、その数字を当てはめて計算するだけです。

⇒参照:国税庁「減価償却資産の償却率等表」

たとえば、取得価額50万円、耐用年数5年の資産を定額法で減価償却する場合、減価償却費は次の通りです。

50万円 × 0.2 = 10万円

つまり、毎年10万円を減価償却費として計上することになります。ただし、5年目だけは、固定資産がまだ存在していることを帳簿上で示すために1円を残す必要があるため、最後の1年のみ、減価償却費は9万9,999円になります。

このように、定額法は計算が非常に簡単で、そのことは大きなメリットですが、資産を購入した年は、費用計上額が小さく、節税効果が低いというデメリットがあります。

なお、個人事業主が減価償却をおこなう場合は基本的に定額法で計算することになりますが、事業年度の開始日前日までに「減価償却資産の償却方法の変更承認申請書」を税務署に提出して承認を受ければ、次に説明する定率法に変更することが可能です。

定率法

定率法とは、減価償却期間中、毎年同じ“割合”で費用計上する方法です。計算式は次の通りです。

減価償却費(償却限度額)=(取得価額-前年までの減価償却累計額)× 定率法の償却率

定率法の償却率は、先にも触れた、国税庁が公開している「減価償却資産の償却率等表」で確認できます。

⇒参照:国税庁「減価償却資産の償却率等表」

定率法においては、減価償却費の計算結果が、上記表をもとに算出できる「償却保証額」に満たなくなった年以降は、「減価償却費=未償却残高×改定償却率」の算出結果である金額を毎年同額計上します。

なぜかというと、定率法は残高に一定率を掛けることから、計算上の償却額はひたすら小さくなり続けてゼロにはならないためです。そのため、計算上の償却額が「償却保証額」を下回った時点で、別の計算方法に切り替える仕組みになっているのです。

少々わかりにくいため、こちらも実際に計算してみましょう。

取得価額50万円、耐用年数5年間の資産を定率法(償却率0.400、改定償却率0.500、償却保証額5万4,000円)で減価償却する場合、次のような計算となります。

  • 初年度の減価償却費:50万円 × 0.400 = 20万円
  • 2年目の減価償却費:(50万円-20万円)× 0.400 = 12万円
  • 3年目の減価償却費:(50万円-20万円-12万円)× 0.400 = 7万2,000円
  • 4年目の減価償却費:(50万円-20万円-12万円-7万2,000円)× 0.400 = 4万3,200円 ➔ 償却保証額を下回る

4年目の時点で計算額(4万3,200円)が償却保証額(5万4,000円)を下回るため、4年目・5年目は改定償却率(0.500)を乗じた均等額(5万4,000円)を計上します。

なお、最後の5年目の減価償却費は、定額法の場合同様、1円を残して5万3,999円と記します。

定率法は、初年度の費用計上額がもっとも大きくなることから、初年度には高い節税効果が期待できますが、計算が複雑という側面もあります。

生産高比例法

生産高比例法とは、資産の使用量に応じた減価償却費を計上する方法です。つまり、総生産量や総利用量を見積もることができる資産である必要があるということです。たとえば、鉱業用資産のように、当期の生産実績を数量で把握できる場合に採用することができます。

生産高比例法の計算式は次の通りです。

減価償却費(償却限度額)= 取得価額 ÷ 見積総生産高 × 当期の実際生産高

たとえば、取得価額2,000万円、見積総採掘量50万トンの鉱業用採掘設備を生産高比例法によって減価償却する場合において、当期の採掘量が7万トンだったとすると、その年の減価償却費は次の通りです。

減価償却費=2,000万円 ÷ 50万トン × 7万トン = 280万円

リース期間定額法

リース期間定額法とは、ファイナンス・リース取引によって使用する資産を対象とした減価償却方法です。リース期間中、資産の取得価額から残価保証額を控除した金額を均等に費用配分します。取得価額は、基本的にはリース期間中のリース料の合計額とします。

残価保証額とは、リース期間終了後に、リースしたものの処分価額が一定価額に満たない場合、借手が貸手に対して支払い義務を負う差額のことです。

リース期間定額法の計算式は次の通りです。

減価償却費(償却限度額)=(リース資産の取得価額-残価保証額)÷ リース期間の月数 × 当期におけるリース期間の月数

たとえば、事業に使う機械を月10万円、残価保証額の設定なし、リース期間5年で借りた場合、リース期間中の合計リース額は10万円×12か月×5年間=600万円です。

これをリース期間定額法で減価償却した場合、次の計算式になります。

減価償却費=(600万円-0円)÷ 60か月 × 12か月 = 120万円

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減価償却費の仕訳方法

減価償却費の仕訳方法は2つあります。

まず、減価償却費を固定資産の帳簿価額から直接差し引く方法で、これを「直接法」といいます。直接法を採用する場合、決算時に、借方に減価償却費、貸方に固定資産を記載します。貸借対照表の固定資産の欄には、減価償却したぶんを差し引いた金額が表示されます。

もうひとつは、減価償却費を「減価償却累計額」という別勘定で管理する「間接法」です。間接法においては、借方に減価償却費、貸方に減価償却累計額を記載します。貸借対照表の固定資産の欄には、取得価額と減価償却累計額が表示されます。

たとえば、耐用年数10年のエアコンを50万円で購入して、定額法で減価償却する場合について、直接法と間接法の仕訳をみていきましょう。

耐用年数10年の場合、定額法償却率は0.100であるため、年間減価償却費は5万円です。

⇒参照:国税庁「減価償却資産の償却率等表」

直接法の仕訳方法

借方 金額 貸方 金額
減価償却費 50,000円 建物附属設備 50,000円

間接法の仕訳方法

借方 金額 貸方 金額
減価償却費 50,000円 減価償却累計額 50,000円

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減価償却に関する注意点

減価償却は前述の通り、固定資産の取得にかかった費用を「耐用年数」に応じて分割して、数年かけて費用計上する会計処理のことですが、事業年度の途中で固定資産を取得した場合、減価償却費を月割りで算出する必要があります。

また、固定資産を売却・廃棄した場合にも対応が必要になります。

この2点に関して詳しく解説していきます。

事業年度の途中で固定資産を購入した場合、月割りで計算する必要がある

固定資産を事業年度の途中で取得した場合、その固定資産を使用開始した日から事業年度の末尾までの期間に応じて、減価償却費を月割りで計算しなくてはなりません。

たとえば、取得価額100万円、耐用年数10年の資産を、3月決算の会社が10月に取得して使用を開始した場合、初年度の減価償却費は、定額法採用の場合、次のように計算できます。

年間減価償却費:100万円 × 0.100 = 10万円
当期使用月数:10月から3月までの6か月
初年度の減価償却費:10万円 ×(6か月 ÷ 12か月)= 5万円

固定資産を売却あるいは廃棄した場合の会計処理

減価償却の対象である固定資産を売却あるいは廃棄する場合、適切に会計処理する必要があります。

まず、売却・廃棄する時点までの減価償却費を計上します。それによって、資産の帳簿価額(未償却残高)を確定させます。

その後、売却の場合は、確定した帳簿価額と売却価額との差額を「固定資産売却損益」として処理します。売却価額が帳簿価額を上回っている場合は「売却益」として計上します。売却価額が帳簿価額を下回っている場合は「売却損」として計上します。

たとえば、取得価額120万円、売却時点までの減価償却累計額40万円(帳簿価額80万円)、売却価額100万円の場合において、間接法で仕訳すると次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
現金 100万円 固定資産 120万円
減価償却累計額 40万円 固定資産売却益 20万円

減価償却対象である固定資産を廃棄する場合、廃棄する時点での帳簿価額全額を「固定資産除却損」として処理します。廃棄するために別途費用が必要な場合、その費用も除却損に含めます。

たとえば、取得価額120万円、減価償却累計額100万円(帳簿価額20万円)で除却する場合において、間接法で仕訳すると次のようになります。

借方 金額 貸方 金額
減価償却累計額 100万円 固定資産 120万円
固定資産除却損 20万円

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M&Aの企業価値評価における減価償却

M&Aにおいて、減価償却費は単なる会計上の費用ではなく、「企業の本来の収益力をどう評価するか」という観点で重要な意味を持ちます。

EBITDA=営業利益+減価償却費という考え方

M&Aの企業価値評価(バリュエーション)では、EBITDA(イービットディーエー) がよく使われます。

計算式は次のとおりです。

EBITDA = 営業利益 + 減価償却費

なぜ減価償却費を足し戻すのか

減価償却費は、実際にお金が出ていく支出ではありません。

つまり、「建物や機械を買ったことによる会計上の費用をいったん無視して、本業でどれだけ現金(キャッシュ)を稼いでいるかを見る」という考え方です。

たとえば、A社とB社の営業利益は同じ5,000万円であるものの、減価償却費はA社が500万円、B社が5,000万円であった場合、A社は設備が少なく、B社は大型設備などを保有していると考えられます。

この考えを元にEBITDAで比較すると、A社のEBITDAは5,500万円であるのに対して、B社は1億円ということになります。

つまり、M&Aにおいて、「過去の設備投資に伴う減価償却費の影響を除いた収益力」を見るためにEBITDAが活用されている(=減価償却費が足し戻されている)ということです。

⇒参照:自社はいくらで売れるか——EBITDAとのれん倍率で中小企業の売却概算価格を自分で試算する方法

設備型ビジネスの企業価値はどう見られるか

製造業や物流業、工場、ホテルなどの設備型ビジネスでは、多額の設備投資が必要になります。

そのため、営業利益だけでは企業価値は比較しづらいため、EBITDAが非常に重要になってきます。

設備が古い場合は注意

ただし、EBITDAが高くても、老朽化した工場や更新時期が近い設備、大規模修繕が必要な設備などを抱えている企業があるため、買い手は注意することが必要です。

どのように注意すればいいかというと、設備の使用年数や更新投資の予定、固定資産台帳などをデューディリジェンス(DD)で確認します。

つまり、「EBITDAが高い=必ず高評価」ということはなく、「将来どれだけ設備投資が必要になるか」も同時に見られます。

DDで問われる「過少償却リスク」と正常収益力の修正

中小企業の中には、過去の赤字回避や銀行からの評価を良くする目的で、税務上の限度額まで減価償却費を計上していない(任意償却を利用した過少償却)ケースが見受けられます。

しかし、M&Aの買収査定(財務デューディリジェンス)においては、こうした過少償却は必ず指摘されます。本来計上すべきであった適正な減価償却費が再計算され、「正常収益力修正」として営業利益が引き下げられるため、結果として買収価格(株式譲渡対価)の減額要因になるという点に売り手企業は留意が必要です。

EBITDA評価と維持的CAPEX(設備投資)のバランス

買い手企業にとっても、EBITDAのみを真に受けるのは危険です。営業利益に足し戻された減価償却費は「手元に残るキャッシュ」である一方、将来的に老朽化設備を維持・更新するための設備投資費用(維持的CAPEX)として出ていくお金でもあります。

したがってM&A実務では、EBITDAから将来的に毎年必要となる標準的な設備投資額(CAPEX)を控除した「フリー・キャッシュ・フロー(FCF)」の観点も組み合わせて、企業の真の創出キャッシュフローを評価します。

「減価償却」と「のれん償却」との違い

減価償却と似た言葉に「のれん償却」があります。

減価償却の対象は、建物、機械、車両、ソフトウェアなど、実際に存在する資産や利用可能な資産で、その取得原価を使用期間に配分するのが「減価償却」です。

一方、「のれん償却」とは、M&Aで発生した「のれん」を、最長20年以内の一定期間にわたって毎年少しずつ費用として計上する会計処理のことで、“無形固定資産”として計上されます。

なお、のれんとは、「買収価格 − 純資産価額」で発生する超過額です。たとえば、純資産1億円の会社を2億円で買収した場合、「2億円 − 1億円 = のれん1億円」となります。この1億円は、ブランド力、顧客基盤、技術力、人材などの目に見えない価値を表しています。

M&Aでは「減価償却費」「のれん償却費」の両方を利益に足し戻して分析することがある

M&Aの企業価値評価では、「減価償却費」「のれん償却費」の両方を利益に足し戻して分析することがあります(EBITDAの定義によってはのれん償却費も含む)。なぜかというと、どちらも会計上の費用であって、当期の現金流出を伴わないことが多いためです。

⇒参照:のれんとは——M&Aで「割高に払う」理由を売り手が正しく理解するための企業価値との関係

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減価償却でよくある誤解

減価償却は会計のなかでも特に誤解されやすいテーマです。実務でよく見られる誤解と正しい理解は次の通りです。

よくある誤解 実際はどうなのか
減価償却費を計上すると現金が減る 減価償却費自体では現金は減らない。現金は資産を購入したときに支払っている
減価償却は税金対策のためだけにおこなう 本来の目的は、資産の取得費を使用期間に配分し、適正な利益を計算すること
減価償却が終わった資産は価値がゼロになる 会計上の帳簿価額がゼロに近づくだけで、実際には使い続けられることも多い
利益が減るので減価償却は損 利益は減るが課税所得も減る。現金流出を伴わない費用なので、一概に損とはいえない
EBITDAでは設備投資を無視している 無視しているのではなく、減価償却費を足し戻して本業の収益力を比較しやすくしている。将来の設備更新は別途考慮される
減価償却費が多い会社は経営状態が悪い 大規模な設備投資をおこなった成長企業や設備産業では、減価償却費が大きいことは珍しくない
減価償却しなければ利益が増えるので得 一時的に利益は増えるが、会計の適正性が損なわれる。M&AのDDで修正・減額の対象となる
中小企業は減価償却をしなくてもよい 会計上は原則として減価償却をおこなう。税務上は一定の範囲で任意償却が認められる場合がある

このうち「減価償却は税金対策のためだけにおこなう」に関しては、減価償却によって税負担が軽くなることから、「減価償却=節税策」と説明されることもありますが、本質は「資産の取得費を利用期間に応じて配分する会計処理」です。節税効果は、その結果として生じる副次的な効果に過ぎません。

また、「減価償却が終わった資産は価値がゼロになる」という点もよくある誤解で、「減価償却が終わった=その資産にはもう価値がない」と認識している人は多いです。しかし、実際にはそうではありません。

まず理解しておきたいのが、会計上の価値(帳簿価額)と実際の価値(経済的価値)は別物だということです。

たとえば、100万円のコピー機を購入して、耐用年数5年で減価償却すると、会計上は5年後に帳簿価額がゼロになりますが、コピー機が正常に動き、業務で十分に使える状態であれば、コピー機の実際の価値はゼロになってはいません。

実際、工場の機械や病院の医療機器、オフィスの机や棚、社用車、パソコンなどは、耐用年数を超えて使われることが珍しくありません。

税法上の耐用年数は「通常このくらい使えるだろう」という目安であって、「この年数を過ぎたら壊れる」という意味ではないからです。

なお、M&Aのデューディリジェンス(DD)では、帳簿価額がゼロの設備でも、現在も稼働しており、メンテナンス状態がよく、すぐに更新する必要がないのであれば、「価値が高い」と判断される場合があります。買い手が重視するのは、「実際にどれだけ使えるか」であるからです。

逆にいうと、帳簿価額が残っていても、技術的に陳腐化している、故障が多い、市場ニーズが合わないといった設備は、価値が低いとみなされます。

では、なぜ会計上は価値をゼロにするのかというと、減価償却は「実際の市場価値」を計算する制度ではなく、「購入した費用を使用期間に配分すること」を目的としているものだからです。

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減価償却の本質を理解することで、M&Aや投資判断でも適切な評価ができるようになる

企業価値評価を正しく理解するためには、利益だけでなく、キャッシュフローや設備投資との関係にも目を向けることが重要です。減価償却の本質を理解することで、決算書の読み方や企業分析の精度が高まり、M&Aや投資判断においてもより適切な評価ができるようになるでしょう。

執筆 ジョブカンM&A編集部

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