ホワイトナイト(白馬の騎士)は、同意していない買収提案を受けた会社が、より友好的な第三者に買収してもらうことで、望まない相手からの支配を避ける手法です。
「敵対的買収」と聞くと上場企業の話に思えますが、非上場の中小企業にも、同意していない譲渡の打診は起こります。株式が分散している同族企業ほど、他人事ではありません。
まずは「自分の会社がいくらか」を知るところから
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仕組み
流れは3段階です。
- 買収者Aが、会社の同意を得ないまま株式の取得を進める(公開買付け、市場での買い集め、既存株主への個別の働きかけ)
- 会社の経営陣が、この提案は企業価値を損なうと判断する
- 友好的な第三者B(ホワイトナイト)に、より有利な条件で買収してもらう
Bが「白馬の騎士」です。Aより高い価格を提示する、あるいは経営陣や従業員の処遇について合意しやすい相手を選びます。
ただし結果として、会社はBに買収されます。独立を保つ手段ではなく、買われる相手を選び直す手段である点を、まず押さえてください。
具体的な手法
ホワイトナイトを立てるとき、実際に使われるのは次のような形です。
| 手法 | 内容 | 主な論点 |
|---|---|---|
| 対抗公開買付け(対抗TOB) | Bがより高い価格でTOBをかける | 株主がどちらに応じるかで決まる。最も株主の判断に委ねる形 |
| 第三者割当増資 | Bに新株を発行し、Aの持分比率を下げる | 既存株主の持分が希薄化する。有利発行なら株主総会の特別決議が必要 |
| 新株予約権の発行 | Bに新株予約権を割り当てる | 同上。差止めの対象になり得る |
| 重要事業の譲渡(クラウンジュエル) | Aが狙う中核事業をBへ譲渡し、買収の魅力を下げる | 企業価値そのものを毀損する。株主の利益と衝突しやすい |
下に行くほど、株主の利益を損なうおそれが強くなります。
関連する防衛策はクラウンジュエルとはで扱っています。
🔴 「経営陣を守るための防衛」は認められない
ここが実務上もっとも重要な原則です。
会社の取締役は、会社に対して善管注意義務と忠実義務を負っています。買収防衛策を発動するときも、基準は「株主共同の利益になるか」であり、「現経営陣の地位を守れるか」ではありません。
上場会社をめぐっては、買収防衛策の適法性が争われた裁判例があり、必要性と相当性が問われるという枠組みが形成されてきました。
さらに経済産業省は、2023年8月に「企業買収における行動指針―企業価値の向上と株主利益の確保に向けて―」を策定しています。ここでは、真摯な買収提案は取締役会で真摯に検討すべきこと、買収への対応方針は株主共同の利益の観点から判断すべきことなどの原則が示されています。
「同意なき買収提案=悪」という前提が、公的な指針のレベルで見直されている——これが現在の状況です。ホワイトナイトを立てるという判断も、「なぜAではなくBのほうが企業価値に資するのか」を説明できることが前提になります。
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非上場の中小企業で起きること
上場企業のTOB合戦のような形は起きませんが、構造としては同じことが起きます。
① 少数株主が持株を第三者に売る
相続で株式が分散した同族企業では、経営に関与していない親族が、持株を同業他社やファンドに売却することがあります。譲渡制限株式であれば会社の承認が必要ですが、承認しない場合、会社または指定買取人が買い取らなければなりません(会社法第140条)。
つまり「承認しない」だけでは終わらず、資金を用意して買い取る必要が生じます。
② 同業から直接、譲渡の打診が来る
オーナーが望んでいなくても、取引先や金融機関を通じて打診が入ることがあります。このとき、より条件の合う別の相手を探す——これが中小企業版のホワイトナイトです。
③ 対抗できる状態にあるかどうかは、平時に決まっている
株式が集約されていれば、そもそもこの問題は起きません。逆に分散したまま放置していると、選択肢が限られた状態で交渉に入ることになります。
ホワイトナイトを探す場合・条件交渉に切り替える場合・平時にやっておくこと
ホワイトナイトを探すべき場合
- 提案してきた相手に譲渡すると、従業員・取引先への影響が具体的に見込まれる
- より高い価格を出せる相手に、心当たりがある
- 時間的な猶予がある……対抗する相手を探すには数か月かかります
条件交渉に切り替えたほうがよい場合
- 提案の内容が、価格・雇用の両面で合理的である……対抗を探すコストに見合いません
- 代わりの相手を探す時間がない
- 株主の多数が既に応じる意向である
そもそも平時にやっておくこと(もっとも効く)
- 株式を集約しておく。分散したままでは、いざというとき打つ手が限られます
- 定款に譲渡制限を設けているか確認する……非公開会社なら通常あります。無ければ設定を検討する
- 名義株・所在不明株主を整理する。M&Aの局面で必ず問題になります
- 自社の企業価値を把握しておく。提示された価格が妥当か判断できないと、交渉の土俵に乗れません
この4つは、買収提案がなくても事業承継のために必要な作業です。ホワイトナイトを探す局面になってから始めても間に合いません。
よくある質問
Q. ホワイトナイトを立てれば独立を保てますか。
保てません。買収されること自体は変わらず、買われる相手が変わるだけです。独立を保ちたいなら、株式の集約か、自社株買いなどの別の手段になります。
Q. 第三者割当増資で持分を下げれば防げますか。
技術的には可能ですが、既存株主の持分を希薄化させる行為です。目的が経営陣の保身と評価されれば、差止めや損害賠償の対象になり得ます。有利発行に当たる場合は株主総会の特別決議も必要です。
Q. 非上場でも「敵対的買収」はありますか。
市場での買い集めはできませんが、既存株主からの個別取得は起こります。譲渡制限があっても、会社が承認しない場合は会社側が買い取る義務が生じるため、資金の準備が課題になります。
Q. 中小企業がホワイトナイトを探すには。
M&A仲介会社、金融機関、事業承継・引継ぎ支援センターなどを通じて候補を探すのが一般的です。ただし時間がかかるため、打診を受けてから動くのでは間に合わないことが多くあります。
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まとめ
- ホワイトナイトは望まない買収者に対抗して、友好的な第三者に買ってもらう手法
- 独立を保つ手段ではなく、買われる相手を選び直す手段
- 手法は対抗TOB/第三者割当増資/新株予約権/重要事業の譲渡。下に行くほど株主の利益と衝突しやすい
- 🔴 判断基準は「株主共同の利益」であって「経営陣の地位」ではない。経産省の行動指針(2023年8月)は、真摯な買収提案の真摯な検討を求めている
- 非上場でも、相続で分散した株式が第三者に渡る形で同じ問題が起きる
- 平時の株式集約・譲渡制限・名義株の整理・企業価値の把握が、最も効く備え
参考
この記事は、時点の情報を元に作成しています。
ジョブカンM&A ジョブカンM&A編集部
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