事業承継の相談を進めると、譲渡先の候補として投資ファンドが挙がることがあります。
「ファンドに売ると会社が切り売りされる」というイメージを持つ経営者は少なくありません。一方で、後継者がいない会社にとって、ファンドが現実的な選択肢になる場面も確かにあります。
判断するには、ファンドの仕組みが事業会社とどう違うのかを理解しておく必要があります。
まずは「自分の会社がいくらか」を知るところから
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投資ファンドの仕組み
投資ファンドは、複数の投資家から資金を集めて運用する器です。日本では投資事業有限責任組合(LPS)の形をとることが多く、投資事業有限責任組合契約に関する法律に基づいて組成されます。
登場人物は2種類です。
- GP(無限責任組合員)……ファンドを運用する会社。投資先の選定と経営関与を担う
- LP(有限責任組合員)……資金を出す投資家(金融機関、年金、事業会社、公的機関など)
ここに、事業会社との決定的な違いがあります。
ファンドには存続期間があります。一般的に10年程度で、期間内に投資し、価値を上げ、売却して現金にしてLPへ分配するところまでが仕事です。
つまり、ファンドは必ず出口(EXIT)を前提に買います。永続的に保有する事業会社とは、はじめから前提が違います。
5つの種類
「投資ファンド」とひとくくりにすると判断を誤ります。中小企業のオーナーが接する可能性があるのは、主に次の5つです。
① バイアウトファンド(PEファンド)
- 成熟した企業の株式の過半数を取得し、経営に関与して企業価値を高める
- 3〜7年程度で、事業会社への売却またはIPOでEXITする
- 中小企業のM&Aでは、この類型が「投資ファンド」と呼ばれることが最も多い
② 事業承継ファンド
- 後継者不在の中小企業に特化したバイアウトファンド
- 経営陣を残す前提の設計が多く、既存の従業員・取引先の維持を重視する
- 地域金融機関や中小企業基盤整備機構が関与するファンドもある
③ ベンチャーキャピタル(VC)
- 創業期・成長期の企業に少数持分で出資する
- 経営権は取らず、IPOでのEXITを目指す
- 既存の中小企業の事業承継では、通常は対象にならない
詳しくはベンチャーキャピタルとはで扱っています。
④ 再生ファンド(ターンアラウンド)
- 業績が悪化した企業を買い、再建して売却する
- 債務の整理を伴うことが多い
- 金融機関との調整が前提になる
⑤ サーチファンド
- 経営者になりたい個人(サーチャー)が投資家から資金を募り、承継先の企業を探す形
- 買った本人が社長として入るのが特徴
- 小規模な企業でも対象になりやすい
事業会社に売る場合との違い
どちらが優れているかではなく、何が変わるかで比べてください。
| 投資ファンド | 事業会社(同業・異業種) | |
|---|---|---|
| 買う目的 | 企業価値を高めて数年後に売る | 自社の事業と組み合わせる |
| 保有期間 | 3〜7年程度(EXIT前提) | 原則として無期限 |
| シナジー | 限定的(単体の収益力で評価される) | 販路・仕入・技術の統合を織り込む |
| 経営陣 | 残ってもらう前提が多い | 統合の過程で入れ替わることがある |
| 社名・ブランド | 維持されることが多い | 統合されることがある |
| 従業員の処遇 | 当面は維持されることが多い | 統合の設計による |
| 数年後にもう一度売られる | 前提としてそうなる | 原則としてない |
もっとも重要な差は最後の行です。ファンドに譲渡した会社は、数年後に別の相手へ売却されます。そのときの相手を、いまのオーナーは選べません。
これを「無責任」と見るか、「価値が上がった状態で次に渡せる」と見るかで、判断が分かれます。
まずは「自分の会社がいくらか」を知るところから
ジョブカンM&Aでは、専任アドバイザーが事業価値の簡易査定から成約まで一貫して伴走します。相談は無料。売却・買収のどちらでもお気軽にどうぞ。
ファンドに売る人・事業会社に売る人・まだ売らない人
ファンドを候補に入れてよい会社
- 後継者がいないが、事業と組織は健全……単体の収益力で評価されるため、シナジー先が見つからなくても値がつく
- 経営陣(番頭格)が育っており、続投してもらいたい……ファンドは経営陣の継続を前提にすることが多い
- 同業に知られたくない……事業会社への打診より情報が広がりにくい場面がある
- 成長のための資金と人材が要る……ファンドは資本と経営人材の両方を入れられる
事業会社への譲渡が向いている会社
- 販路・仕入・技術に明確なシナジーがある相手が想定できる……その分、価格が上がりやすい
- オーナーが引退後の関与を望まない
- 社名や事業の継続より、従業員の雇用の安定を最優先したい
まだ売らなくてよい会社
- 業績が一時的に落ちている。回復してから出したほうが評価される
- 決算書の整理が終わっていない(役員貸付金、名義株、簿外債務の可能性)……どの相手に売るにせよ、ここが片付いていないと交渉が止まります
- オーナー自身が、譲渡後に何をするか決めていない
ファンドから打診を受けたときに確認すること
- どのファンドの何号ファンドか。組成年と残存期間を聞く。期間の終盤にあるファンドは、EXITを急ぐ動機が強くなります
- 過去の投資先と、EXIT先の実績。同業種の実績があるか
- 経営陣の処遇。続投を求めるのか、送り込むのか
- 役員退職慰労金と譲渡対価の設計。税務上の扱いが変わるため、税理士を入れて確認する
- 表明保証の範囲と補償の上限。譲渡後にオーナーが負う責任の大きさが決まります
よくある質問
Q. ファンドに売ると従業員はリストラされますか。
再生ファンドを除けば、一般には人員削減を前提としません。中小企業の価値の多くは人にあるためです。ただし経営管理の仕組みは確実に入ります。予算管理、月次の報告、KPIの設定など、これまでなかった業務が生じます。
Q. 価格は事業会社より高いですか、低いですか。
一概には言えません。シナジーを織り込める事業会社のほうが高く出ることがある一方、適切な買い手候補の事業会社が見つからない場合は、ファンドのほうが高いということも起きます。
Q. 一部だけ売ることはできますか。
可能です。株式の一部を譲渡し、オーナーが残りを持ち続ける形(マジョリティ/マイノリティ出資)もあります。数年後のEXIT時に、残した株式もあわせて売却する設計が組まれることがあります。
Q. 中小企業でも対象になりますか。
なります。事業承継ファンドやサーチファンドは、小規模な企業を対象にしています。ただしファンドごとに投資対象の規模の下限が決まっているので、打診の際に確認してください。
まずは「自分の会社がいくらか」を知るところから
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まとめ
- 投資ファンドは投資事業有限責任組合などの器で資金を集め、期限内にEXITする前提で買う
- 種類は①バイアウト ②事業承継 ③VC ④再生 ⑤サーチファンド。中小企業の承継では②⑤が現実的
- 事業会社との最大の違いは保有期間と、数年後に必ずもう一度売られること
- ファンドが向くのは後継者不在だが事業は健全/経営陣を残したい/同業に知られたくない会社
- 打診を受けたらファンドの残存期間・EXIT実績・経営陣の処遇・表明保証の範囲を確認する
参考
この記事は、時点の情報を元に作成しています。
ジョブカンM&A ジョブカンM&A編集部
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