減資(資本金の額の減少)の仕訳は、2行で済むこともあれば、4本に分かれることもあります。違いを生むのは、会社から株主へお金が出ていくかどうかと、減らした資本金を何に使うかです。
この記事は、減資の会計処理に絞って解説します。株主総会の決議や債権者保護手続き、登記までの日程は「減資の手続きと期間|特別決議から登記まで最短2か月かかる理由と、税務で変わること」にまとめているので、手続きを確認したい方はそちらを先に読んでください。
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減資は3つの型に分けて考える
仕訳の形で分けると、減資は次の3つになります。
| 型 | お金の流れ | 減らした資本金の行き先 | よくある目的 |
|---|---|---|---|
| ① 振替だけの無償減資 | 動かない | その他資本剰余金に残す | 資本金を1億円以下にする、将来の配当原資をつくる |
| ② 欠損填補の無償減資 | 動かない | 繰越利益剰余金のマイナスを埋める | 累積赤字を消して財務の見た目を整える、M&A前の整理 |
| ③ 有償減資 | 会社から株主へ出ていく | 株主への払戻し(配当) | 余剰資金の返還、株主の一部退出 |
会計処理の根拠は、企業会計基準第1号「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準」です。資本金や資本準備金を減らして生じた剰余金(減資差益)は、減少の法的効力が生じた日にその他資本剰余金に計上します。どの型でも、最初の1本目は同じ「資本金 → その他資本剰余金」です。
仕訳を切るタイミング
仕訳の日付は、株主総会の決議日ではありません。会社法第447条の決議で定めた効力発生日に計上します。
減資には債権者保護手続き(1か月以上の異議申述期間)が必要で(会社法第449条)、その手続きが終わっていなければ効力は生じません。決議の日に仕訳を切り、効力発生日が後ろにずれて決算期をまたぐと、貸借対照表の資本金が登記簿と食い違います。
| 日付 | 出来事 | 仕訳 |
|---|---|---|
| 株主総会決議日 | 減資の内容と効力発生日を決める | なし |
| 公告・催告 | 債権者へ異議の機会を与える | なし(公告費用は支払時に費用処理) |
| 効力発生日 | 資本金が減る | 資本金 → その他資本剰余金 |
| 欠損填補・配当の決議の効力発生時 | 剰余金を動かす | その他資本剰余金 → 繰越利益剰余金/未払配当金 |
| 登記 | 変更登記 | 登録免許税(1件3万円)を支払時に費用処理 |
仕訳例1:資本金をその他資本剰余金に振り替えるだけの無償減資
資本金1億5,000万円の会社が、資本金を1億円に減らすケースです。税務上の中小法人の扱いを受けるため、といった目的で行われます。
- 減少する資本金:5,000万円
- 株主への払戻し:なし
効力発生日の仕訳
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 資本金 | 5,000万円 | その他資本剰余金 | 5,000万円 |
純資産の合計は1円も変わりません。株主資本の中で、資本金からその他資本剰余金へ5,000万円が移っただけです。
振り替えたその他資本剰余金は、分配可能額に含まれるので、後から配当の原資にもなります。ただしその他資本剰余金を原資にした配当は、受け取る株主の側でみなし配当の計算が必要になります(仕訳例3で説明します)。
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仕訳例2:欠損填補の無償減資
累積赤字を抱えた会社で最も多い型です。事業承継やM&Aの前に、貸借対照表の繰越利益剰余金のマイナスを消しておくために行われます。
前提の貸借対照表(純資産の部)は次のとおりです。
| 項目 | 減資前 |
|---|---|
| 資本金 | 5,000万円 |
| その他資本剰余金 | 0円 |
| 繰越利益剰余金 | △3,000万円 |
| 純資産合計 | 2,000万円 |
資本金を4,000万円減らして1,000万円にし、そのうち3,000万円で繰越利益剰余金のマイナスを埋めます。
効力発生日の仕訳(1本目)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 資本金 | 4,000万円 | その他資本剰余金 | 4,000万円 |
欠損填補の仕訳(2本目)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| その他資本剰余金 | 3,000万円 | 繰越利益剰余金 | 3,000万円 |
減資後の純資産の部
| 項目 | 減資前 | 減資後 |
|---|---|---|
| 資本金 | 5,000万円 | 1,000万円 |
| その他資本剰余金 | 0円 | 1,000万円 |
| 繰越利益剰余金 | △3,000万円 | 0円 |
| 純資産合計 | 2,000万円 | 2,000万円 |
2本目の仕訳は、会社法第452条にもとづく剰余金の処分(損失の処理)として、株主総会の決議で行います。企業会計基準第1号は、資本剰余金と利益剰余金の混同を原則として禁じつつ、利益剰余金がマイナスのときに、その他資本剰余金で埋めることは認めています。その他資本剰余金から繰越利益剰余金へ振り替えられるのは、この欠損填補の場面に限られます。黒字の会社が「その他資本剰余金を利益剰余金に移す」ことはできません。
なお、定時株主総会で、減らす資本金の額が欠損の額を超えない範囲で行う減資は、特別決議でなく普通決議で足ります(会社法第309条第2項第9号)。1本目と2本目を同じ総会で決議する実務が多いのはこのためです。
仕訳例3:有償減資(株主への払戻し)
会社に余った資金を株主へ返す型です。会社法上は「資本金の額の減少」と「剰余金の配当」の2つの行為を組み合わせるので、仕訳も分けて切ります。
前提は次のとおりです。
- 資本金を1,000万円減らし、その全額を株主へ払い戻す
- 株主は個人1名(持株100%)
- 税務上の資本金等の額:3,000万円
- 前事業年度末の簿価純資産価額:6,000万円
効力発生日の仕訳(1本目:減資)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 資本金 | 1,000万円 | その他資本剰余金 | 1,000万円 |
配当決議の仕訳(2本目:払戻しの確定)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| その他資本剰余金 | 1,000万円 | 未払配当金 | 1,000万円 |
ここまでは会計の話です。問題は3本目で、払戻しの一部がみなし配当になり、源泉徴収が必要になる点です。
みなし配当の計算例
その他資本剰余金を原資とする配当は、税務上「資本の払戻し」に当たり、払戻額のうち資本金等の額に対応しない部分がみなし配当になります(法人税法第24条第1項第4号、所得税法第25条第1項第4号)。
資本金等の額のうち、払戻しに対応する部分は次の式で求めます。
払戻しに対応する資本金等の額 = 払戻し直前の資本金等の額 × 減少した資本剰余金の額 ÷ 前事業年度末の簿価純資産価額
数値を入れると次のとおりです。
- 払戻しに対応する資本金等の額:3,000万円 × 1,000万円 ÷ 6,000万円 = 500万円
- みなし配当の額:1,000万円 − 500万円 = 500万円
- 源泉所得税(20.42%):500万円 × 20.42% = 102万1,000円
- 株主への支払額:1,000万円 − 102万1,000円 = 897万9,000円
支払時の仕訳(3本目)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 未払配当金 | 1,000万円 | 現金預金 | 897万9,000円 |
| 預り金(源泉所得税) | 102万1,000円 |
源泉徴収した所得税は、原則として支払った月の翌月10日までに納めます。会社側では、税務上の資本金等の額が500万円、利益積立金額が500万円減ることになり、会計上の「その他資本剰余金1,000万円の減少」と内訳が違うので、別表五(一)で調整します。
株主の側では、払戻額のうちみなし配当を除いた500万円が株式の譲渡収入とみなされ、対応する取得価額との差額が譲渡損益になります。株主が法人の場合は、受取配当等の益金不算入の対象になるかを別途確認します。
会計と税務のずれ:無償減資では資本金等の額が減らない
実務で漏れやすいのが、無償減資では税務上の資本金等の額が変わらない点です。
仕訳例2の欠損填補では、会計上は資本金4,000万円が減り、繰越利益剰余金のマイナスが3,000万円消えました。しかし法人税法上の資本金等の額は、株主に払い戻していない限り減りません。利益積立金額のマイナスも、税務上はそのまま残ります。申告では、別表五(一)で「資本金等の額」と「利益積立金額」の間を調整して、税務上の数字を元の状態に戻します。
このずれが実際の負担に響くのが、法人住民税の均等割です。均等割の税率区分は「資本金等の額」で決まるため、平成27年度の地方税法改正までは、無償減資をしても均等割は下がりませんでした。改正後は、無償減資による欠損填補の額を資本金等の額から控除でき、その額と「資本金+資本準備金」のいずれか大きい方で判定します。控除には要件と添付書類があるので、東京都主税局の案内などで確認してから申告してください。
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減資の仕訳を切る前のチェックリスト
- 3つの型(振替だけ/欠損填補/有償減資)のどれか
- 効力発生日はいつか。債権者保護手続きは効力発生日までに終わるか
- 決算期をまたがないか。またぐなら、期末の貸借対照表にどう表示するか
- 欠損填補なら、填補する欠損額は繰越利益剰余金のマイナスの範囲内か
- 定時株主総会・欠損の範囲内として普通決議で足りるか、特別決議が要るか
- 有償減資なら、前事業年度末の簿価純資産価額と払戻し直前の資本金等の額を把握したか
- みなし配当の源泉徴収(20.42%)と、支払調書・納付の期限を押さえたか
- 別表五(一)での資本金等の額・利益積立金額の調整を税理士と確認したか
- 均等割の資本金等の額の控除を使うなら、証する書類を準備したか
よくある質問
Q. 資本準備金を減らす場合の仕訳も同じですか。
同じ形です。資本準備金を減らして生じた剰余金も、その他資本剰余金に計上します(企業会計基準第1号)。資本準備金の減少は、資本金の減少と違って登記は要りませんが、債権者保護手続きは原則として必要です。
Q. 減資の登記費用や公告費用はどう処理しますか。
登録免許税(1件3万円)や官報公告の費用は、支払時の費用として処理します。登録免許税は租税公課、公告費用は支払手数料や広告宣伝費など、社内で使っている科目で構いません。
Q. 自己株式を消却して資本金を減らすこともありますか。
自己株式の消却では、資本金は減りません。消却した自己株式の帳簿価額は、その他資本剰余金から減らします。自己株式の取得と消却の仕訳は「自己株式取得の仕訳を解説|ケース別の具体的な会計処理とは」で扱っています。
まとめ
- 減資の仕訳は、振替だけ/欠損填補/有償減資の3型で考える。1本目はどれも「資本金 → その他資本剰余金」
- 仕訳は効力発生日に切る。決議日ではない
- 欠損填補の場面に限り、その他資本剰余金で繰越利益剰余金のマイナスを埋められる
- 有償減資は払戻額の一部がみなし配当となり、20.42%の源泉徴収が要る。計算式に前期末の簿価純資産価額を使う
- 無償減資では税務上の資本金等の額は減らない。均等割の判定には控除の特例がある
まずは「自分の会社がいくらか」を知るところから
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参考
この記事は、時点の情報を元に作成しています。
ジョブカンM&A ジョブカンM&A編集部
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