「併合」と「合併」は、字が似ているうえに読みも近く、実務でも取り違えが起きます。しかし指しているものはまったく別です。
- 合併……2つ以上の会社が1つになる組織再編
- 併合……複数の株式を、より少ない数の株式にまとめる手続き(株式併合)
M&Aや事業承継の文脈で「併合」が出てきたら、ほぼ株式併合を指します。そしてこれは、少数株主を整理する場面で使われる手続きです。
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株式併合とは何か
株式併合は、発行済みの複数の株式を1株にまとめることです。会社法第180条に定められています。
たとえば「10株を1株に併合する」と決めれば——
| 併合前の持株数 | 併合後 |
|---|---|
| 1,000株 | 100株 |
| 100株 | 10株 |
| 30株 | 3株 |
| 5株 | 0.5株(端数) |
会社全体の価値は変わりません。株数が減り、1株あたりの価値がその分上がるだけです。株主の持分比率も、原則として変わりません。
では何のためにやるのか。答えは最後の行にあります。端数が生じる株主が出るからです。
手続き
株式併合には、株主総会の特別決議が必要です。株主の権利に大きく影響するためです。
決議で定めるのは次の事項です(会社法第180条第2項)。
- 併合の割合(例:10株を1株に)
- 効力発生日
- 種類株式発行会社の場合、併合する株式の種類
- 効力発生日における発行可能株式総数
あわせて、取締役は株主総会で、株式併合を必要とする理由を説明しなければなりません。
端数の処理と、反対株主の保護
ここが実務上の中核です。
端数はどうなるか
1株に満たない端数は、株式としては消えます。会社法第235条により、端数の合計に相当する数の株式を売却し、その代金を端数に応じて株主へ分配するという処理になります。
つまり端数だけを持つことになった株主は、株主でなくなり、代わりに現金を受け取ります。
反対株主の株式買取請求
株式併合によって端数が生じる場合、反対株主は、端数となる株式を公正な価格で買い取るよう会社に請求できます(会社法第182条の4)。
この「公正な価格」をめぐって争いになるのが、株式併合の典型的な紛争類型です。裁判所が価格を決定する手続きに進むこともあります。
さらに、株式併合が法令・定款に違反する場合などには、株主は差止めを請求できます(会社法第182条の3)。
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なぜ事業承継やM&Aで使われるのか
株式併合が使われる理由は、大きく2つです。
① 少数株主を整理する(スクイーズアウト)
中小企業でもっとも多いのはこの目的です。
長く続いた同族企業では、創業時の名義株、相続で分散した株式、退職した役員が持ったままの株式などが残っていることがあります。株主が20人、30人と散らばっている会社は珍しくありません。
この状態では——
- 株主総会の特別決議が取れない
- M&Aで全株式を譲渡できない(買い手は100%を求めるのが通常)
- 所在不明の株主がいると、手続きそのものが進まない
そこで、大幅な割合(例:1,000株を1株に)で株式併合を行い、少数株主を端数にして現金で退出してもらう——これが株式併合を使ったスクイーズアウトです。
他の手法との比較はスクイーズアウトとはで整理しています。
② 単元未満株を整理して管理コストを下げる
株主が多い会社では、株主名簿の管理、通知の送付、配当の支払いにコストがかかります。株式併合で株主数を絞ることで、これを圧縮します。
合併との違いを整理する
混同を避けるために、並べて確認します。
| 株式併合 | 合併 | |
|---|---|---|
| 何が起きるか | 株数が減り、1株の価値が上がる | 2社以上が1社になる |
| 会社の数 | 変わらない(1社のまま) | 減る(吸収合併なら消滅会社が消える) |
| 根拠条文 | 会社法第180条〜 | 会社法第748条〜 |
| 必要な決議 | 株主総会の特別決議 | 株主総会の特別決議(簡易・略式の例外あり) |
| 主な目的 | 少数株主の整理、管理コスト削減 | 事業の統合 |
| 債権者保護手続 | 不要 | 必要 |
債権者保護手続の有無は、実務上大きな差です。合併は会社の財産状態が変わるため官報公告等が必要ですが、株式併合は会社の財産が動かないため不要です。
合併そのものについては合併とはで扱っています。
進めてよい場合・慎重に進める場合・別の手を先に検討する場合
株式併合で進めてよい場合
- 少数株主の人数が多く、個別交渉では現実的に集められない
- 所在不明の株主がいる
- M&Aの相手が決まっており、100%の株式が必要
慎重に進める場合
- 少数株主に、経営に不満を持っている人がいる。買取価格をめぐる紛争になる可能性があります
- 株価算定の根拠が薄い。「公正な価格」を説明できないと、裁判所の価格決定手続きに進むリスクが上がります
別の手を先に検討する場合
- 少数株主が数人で、話し合いができる。任意の相対取引で買い取るほうが、時間も費用も少なくて済みます
- 相続で分散したが、親族間で合意が取れる見込みがある……株式併合は最後の手段として置いておくほうが、関係を壊しません
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よくある質問
Q. 株式併合で会社の価値は変わりますか。
変わりません。株数が減り、1株あたりの価値が上がるだけです。時価総額に相当する部分は同じです。
Q. 端数になった株主は損をしますか。
公正な価格が支払われる限り、金額としては損をしない設計です。ただし株主でなくなるため、その後の会社の成長からは切り離されます。ここが紛争の実質的な理由になります。
Q. 上場企業でも使われますか。
使われます。公開買付け(TOB)で大部分を取得したあと、残った少数株主を株式併合で整理して完全子会社化するという流れが一般的です。
Q. 株式分割との関係は。
株式分割は逆の手続きで、1株を複数株に分けます。1株あたりの価格を下げて流動性を高める目的で使われます。株式併合とは目的も効果も反対です。
まとめ
- 「合併」は会社が1つになること、「併合」は株式をまとめること。別物
- 株式併合は会社法第180条。株主総会の特別決議が必要で、割合・効力発生日・発行可能株式総数を定める
- 端数は株式として消え、売却代金が分配される(会社法第235条)。反対株主には買取請求権がある(同第182条の4)
- 事業承継で使われる主目的は少数株主の整理(スクイーズアウト)。M&Aで100%の株式が必要になるため
- 合併と違い債権者保護手続は不要。ただし買取価格をめぐる紛争が典型的なリスク
- 少数株主が数人なら、相対で買い取るほうが早くて安い
参考
この記事は、時点の情報を元に作成しています。
ジョブカンM&A ジョブカンM&A編集部
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