M&Aとは、企業の合併(Mergers)と買収(Acquisitions)の総称です。近年は大企業だけでなく、後継者不足に悩む中小企業の事業承継や、事業拡大を狙う企業の成長戦略として活用が広がっています。
この記事では、「M&Aとは何か」という基本から、代表的な手法・売り手と買い手それぞれのメリットとデメリット・手続きの7ステップ・費用相場までを、初めての方にもわかるように体系的に解説します。
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M&Aとは? 言葉の意味と基本的な仕組み
まずは、M&Aの意味と基本的な仕組みについて解説していきます。
M&Aの正式名称と直訳(Mergers and Acquisitions)
M&Aは、「Mergers and Acquisitions(マージャーズ・アンド・アクイジションズ)」の略称です。
-
Mergers=合併
-
Acquisitions=買収
つまり、企業同士の合併や買収によって、会社や事業を引き継ぐ取引をM&Aと呼びます。
M&Aというと、大企業同士の買収をイメージする人も多いですが、近年は中小企業の事業承継の手段としても広く活用されています。
たとえば、後継者が見つからない会社を別の企業が買収して、会社の技術・顧客・従業員・設備などを引き継ぐケースです。中小企業庁も、親族や従業員に後継者がいない場合の第三者承継の選択肢としてM&Aを位置付けています。事業を継ぐか売るかで迷う場合は、家業を継ぐか売るか——第三の選択肢と事業承継型M&Aもあわせてご覧ください。
なぜ今、日本の中小企業でM&Aが急増しているのか?
経営者の高齢化と経営者不足
昨今、日本の中小企業でM&Aが急増している大きな理由の一つが、経営者の高齢化と後継者不足です。
日本にある企業のうち、どのくらいが中小企業に該当するかというと、全体のおよそ99%です。これらの企業は、雇用や技術の担い手として、日本社会を支えている重要な存在です。しかし、経営者の高齢化が進み、この20年間で、経営者年齢のピークが50代から60~70代へと上昇している一方で、後継者が見つかっていない中小企業が増加していることから、雇用や技術への影響が懸念されているという状況が続いています。
具体的には、帝国データバンクの調査によると、経営者が60代以上の中小企業の割合は、2010年以降ずっと50%を上回っています。
| 2010年 | 50.87% |
|---|---|
| 2011年 | 51.43% |
| 2012年 | 51.78% |
| 2013年 | 51.96% |
| 2014年 | 52.06% |
| 2015年 | 52.10% |
| 2016年 | 51.98% |
| 2017年 | 51.87% |
| 2018年 | 51.91% |
| 2019年 | 51.95% |
| 2020年 | 52.16% |
| 2021年 | 51.96% |
| 2022年 | 51.93% |
| 2023年 | 51.95% |
出典:中小企業庁「事業承継を知る」より「経営者の高齢化」エクセル
一方、2011年以降の、60代以上の経営者の後継者不在率は次のように推移しています。
| 60代 | 70代 | 80代以上 | |
|---|---|---|---|
| 2011年 | 55% | 43% | 34% |
| 2014年 | 54% | 43% | 34% |
| 2016年 | 54% | 43% | 35% |
| 2017年 | 53% | 42% | 34% |
| 2018年 | 52% | 42% | 33% |
| 2019年 | 50% | 40% | 32% |
| 2020年 | 48% | 39% | 32% |
| 2021年 | 47% | 37% | 29% |
| 2022年 | 43% | 33% | 27% |
| 2023年 | 38% | 30% | 23% |
推移をみるとわかる通り、60代以上の経営者の後継者不在率は未だに高いとはいえ、少しずつ減少している傾向にあります。つまり、後継者不足の解消が一定程度進んでいるということですが、この理由が、M&Aによって第三者に会社や事業を引き継ぐことで、「廃業するのではなく、会社・事業を残す」という選択肢をとる経営者が増えてきたということになります。
出典:中小企業庁「事業承継を知る」より「高齢の経営者における後継者不在率」エクセル
出典:中小企業庁「事業承継」
M&Aは買い手側にもメリットが大きい
また、M&Aの実施は買い手側にもメリットがあることも、日本の中小企業でM&Aが急増している理由の一つです。
ゼロから新規事業を立ち上げるのではなく、既存の顧客・人材・設備・技術・ブランドなどを一度に獲得できるため、事業規模の拡大や新分野への進出に活用されているのです。
これらのメリットもあって、日本企業のM&Aの実施件数は増加傾向にあり、2024年には過去最多の4,700件を突破しています。ただし、これはあくまでも公表されている件数であって、未公表のM&Aも一定数存在することを考えると、さらに多くの件数が実施されているということになります。
出典:中小企業庁「第3節 スケールアップに向けた投資行動と海外展開」より「M&Aの実施状況と効果」
以上をまとめると、現在の中小企業におけるM&Aは、単なる「会社の売買」ではなく、次の2つの側面から重要性が高まっているといえます。
-
① 後継者問題を解決して、事業を次世代に残す手段
-
② 買い手企業が成長するための経営戦略
また、2025年には中小企業庁も「中小M&A市場改革プラン」を公表して、市場の健全化・活性化を進めています。そのため、2025年以降も、日本の中小企業において、M&Aは活発におこなわれていると考えられます。
M&Aの主な手法と使い分け【比較表つき】

M&Aには複数の手法があり、「会社そのものを引き継ぐのか」「特定の事業だけを引き継ぐのか」などによって選択肢が変わります。中小企業のM&Aでは、特に「株式譲渡」と「事業譲渡」が代表的です。
経済産業省の資料では、そのほか、合併や会社分割などの組織再編や、資本提携・業務提携などがM&Aの手法として整理されています。
| 手法 | 何を引き継ぐ・連携する? | 主な特徴 | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| 株式譲渡 | 会社の株式 | 株主が変わり、会社そのものを引き継ぐ | 会社を丸ごと承継したい |
| 事業譲渡 | 特定の事業・資産など | 必要な事業だけを選んで引き継ぐ | 一部事業だけ売買したい |
| 合併 | 会社そのもの | 複数の会社を1つに統合する | 経営・組織を一体化したい |
| 会社分割 | 事業・権利義務など | 会社の事業を切り出して別会社などに承継する | 特定事業を切り離したい |
| 株式交換 | 株式 | 株式を交換して完全子会社化する | グループ企業化したい |
| 資本提携 | 株式・出資関係 | 一方の企業が相手企業の株式を取得するなどして資本関係を築く | M&Aほど経営権を移さず、長期的に協力したい |
| 業務提携 | 技術・販売網・ノウハウなど | 資本関係を持たず、特定の業務で協力する | 販路拡大や技術開発などで協力したい |
株式譲渡――最も一般的なM&A手法

株式譲渡は、売り手企業の株主が保有する株式を買い手企業などに譲渡して、会社の経営権を移す方法です。
たとえば、A社の社長が100%保有している株式をB社に売却すると、A社という法人はそのまま残り、株主がA社の社長からB社へ変わることになります。
会社そのものを引き継ぐため、従業員や取引先との契約、事業に必要な資産などを個別に移す必要がない点が大きなメリットです。
一方で、会社に存在する簿外債務や将来の賠償義務なども引き継ぐ可能性があるため、買い手側にはデューディリジェンス(買収前の調査)が重要になります。
株式譲渡は、「会社を丸ごと後継者に引き継ぎたい」という中小企業の事業承継では、特に使いやすい手法です。
事業譲渡――必要な事業だけを売買

事業譲渡は、会社そのものではなく、会社が営んでいる特定の事業や資産などを選んで譲渡する方法です。
たとえば、A社が「飲食店事業」と「不動産事業」の2つを展開している場合、飲食店事業だけをB社に譲渡する、といったことができます。
株式譲渡と違い、取得する資産・負債を選択できるため、簿外債務などを引き継ぐリスクを限定しやすいのがメリットです。
ただし、資産や契約などを個別に移転する必要があるため、株式譲渡より手続きが複雑になりやすい点には注意が必要です。また、許認可についても原則として取り直しが必要になる場合があります。
事業譲渡は、「会社全体ではなく、儲かっている事業だけを売りたい」「不要な事業や負債を引き継ぎたくない」といった場合に向いています。
組織再編――合併・会社分割・株式交換など



※株式交換の交換比率の決め方は、株式交換比率とは?M&Aで失敗しない計算方法と事例で解説しています。
組織再編は、会社法に定められた手続きによって会社や事業の組織構造そのものを変更する方法です。
代表的なものに、以下があります。
-
合併:複数の会社を1つの会社に統合する手法
-
会社分割:会社の事業に関する権利義務の全部または一部を切り出して、別の会社に承継させる手法
-
株式交換:ある会社の株式を別会社に取得させることによって、完全子会社化を実現する手法
組織再編に該当する合併、会社分割、株式交換は、株式譲渡や事業譲渡と比べると、手続きや法務・税務面の検討が複雑になりやすい一方、企業グループの再編や事業ポートフォリオの整理、大規模な経営統合などに適しています。
なぜかというと、単に会社や事業を売買するだけでなく、企業の組織そのものを法律に基づいて組み替えることができるためです。たとえば、複数の子会社を1社にまとめたい場合は合併、複数の事業を切り分けて別会社に移したい場合は会社分割、ある会社を完全子会社にしてグループ内の支配関係を明確にしたい場合は株式交換が適しています。
資本提携――資本関係を築くことで協力関係を強化

資本提携とは、企業同士が株式の取得などを通じて資本関係を築き、協力関係を強化する方法です。
たとえば、A社がB社の株式を20%取得して、両社が共同で新商品を開発するといったケースがあります。株式譲渡によるM&Aと異なり、必ずしも会社の経営権を取得するわけではありません。そのため、「完全に買収するほどではないが、強固な関係を築きたい」という場合に適しています。
業務提携――資本関係なしで、特定の業務分野で協力

業務提携は、企業同士が資本関係を持たず、特定の業務分野で協力することです。
たとえば次のような業務提携の方法があります。
-
販売・営業面で協力する
-
技術やノウハウを共有する
-
共同で商品を開発する
-
物流・生産設備を共同利用する
-
互いの顧客基盤を活用する
株式を取得する必要がないため、M&Aや資本提携よりも比較的柔軟にスタートしやすいのが特徴です。
「資本提携」と「業務提携」の違い
資本提携と業務提携の違いは、簡単にいうと次の通りです。
-
資本提携=株式を持ち合うなどして、資本面でも関係を強くする
-
業務提携=仕事で協力する
また、一般的には「業務提携 → 資本提携 → M&A(買収・合併)」の順に企業間の結びつきが強くなっていく、とイメージするとわかりやすいでしょう。
ただし、これは必ずしも「業務提携から始めて最終的にM&Aへ進む」という意味ではありません。企業の目的や契約内容によって、最適な手法は異なります。
M&Aにおける売り手・買い手のメリット・デメリット
M&Aは、売り手・買い手の双方にとって、事業成長や経営課題の解決につながる一方、さまざまなリスクも伴います。M&Aを成功させるには、メリットだけでなくデメリットや注意点まで理解しておくことが重要です。
売り手(経営者)のメリット
会社・事業を存続させやすい/後継者問題の解消
後継者不足に悩む企業でも、買い手企業に経営を引き継ぐことで、従業員の雇用や取引先との関係を維持しながら事業を存続できる可能性があります。
創業者・経営者が利益を得られる
株式譲渡などによって会社を売却すれば、株主である経営者は売却対価を受け取れます。引退後の生活資金や新たな事業への投資資金に充てることもできます。
大手企業などの経営資源を活用できる
買い手企業の資金力、人材、ブランド、販売網、ノウハウなどを活用することによって、自社単独では難しかった事業成長を実現できる場合があります。
従業員の雇用を守れる可能性がある
事業を第三者に引き継ぐことによって、廃業を避けて、従業員の雇用を維持できる可能性があります。
買い手(企業)のメリット
新規事業・市場へスピーディーに進出できる
既存の事業や顧客基盤を持つ企業を買収することで、ゼロから事業を立ち上げるよりも、短い期間で新しい市場に参入できます。
人材・ノウハウを獲得できる
専門的な技術や知識を持つ人材、特許・ブランド・営業ノウハウなどをまとめて取得できることがあります。
売上・顧客基盤を拡大できる
既存企業を傘下に入れることによって、新たな顧客や販売チャネルを獲得して、売上規模を拡大することができます。
シナジー効果が期待できる
両社の技術・人材・顧客・販売網などを組み合わせることによって、単独では生み出せなかった新たな価値や収益を生み出せる可能性があります。
売り手側のデメリット
希望する価格・条件で売却できない可能性がある
会社の業績や将来性、保有する資産・技術などによって企業価値は評価されるため、必ずしも経営者が希望する価格で売却できるとは限りません。買い手が見つからず、M&A自体が成立しないケースもあります。
従業員や取引先から反発を受けることがある
M&Aによって経営者や会社の体制が変わることに対して、従業員や取引先が不安を感じる場合があります。十分な説明をしないまま進めると、従業員の離職や取引先との関係悪化につながる可能性があります。
経営の自由度が低下する場合がある
買い手企業の傘下に入ることで、経営方針や事業運営について買い手側の意向を受けることになります。これまで経営者が自由に決めていたことでも、一定の制約を受ける可能性があります。
M&A後に企業文化や待遇が変わる可能性がある
買い手企業との統合によって、社内制度や勤務条件、組織文化などが変わることがあります。変化への不満から、従業員が離職するリスクにも注意が必要です。
買い手側のデメリット
買収価格が高すぎると投資を回収できない
買収先の企業価値を適切に評価できず、高い価格で買収してしまうと、想定していた利益を得られず、投資資金を回収できない可能性があります。
簿外債務などのリスクを引き継ぐ可能性がある
買収後に、未把握の債務や法務・税務上の問題などが発覚するケースがあります。そのため、契約前にデューディリジェンス(買収監査)を実施して、リスクをできるだけ把握することが重要です。
PMIがうまくいかず、期待したシナジーを得られないことがある
M&Aは成立したら終わりではなく、買収後の統合(PMI)が重要です。業務プロセスやシステム、人事制度などの統合がうまく進まないと、期待していた相乗効果を十分に得られない可能性があります。
人材流出や企業文化の衝突が起こる可能性がある
買収によって組織のルールや社風が変わることで、従業員が不満を感じて、優秀な人材が退職してしまうことがあります。特に、買収先のキーパーソンが離職すると、M&Aによって得た技術やノウハウが失われるリスクがあります。
まずは「自分の会社がいくらか」を知るところから
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M&Aの全体の流れ(手続きの7ステップ)
M&Aは、相手企業を探して契約を結べば終わりではありません。相手探しから条件交渉、契約、買収後の統合まで、複数の段階を経て進めるものです。一般的には、次の7ステップに分けて考えると分かりやすいでしょう。
- ①目的・条件の整理
↓
- ②専門家の選定
↓
- ③相手候補を探す
↓
- ④トップ面談・条件交渉
↓
- ⑤基本合意
↓
- ⑥デューデリジェンス・最終契約
↓
- ⑦クロージング・PMI
ただし、案件の規模や手法によって手続きの順番や内容が変わる場合もあります。特に、株式譲渡・事業譲渡・合併・株式交換など、選択するM&A手法によって必要な法的手続きも変わってきます。
まずは、基本のステップについて詳しく説明していきます。
STEP1:M&Aの目的・条件を整理する
まず、なぜM&Aをおこなうのかを明確にします。売り手であれば「事業承継」「後継者不足の解消」「創業者利益の確保」など、買い手であれば「新規事業への参入」「市場・顧客の拡大」「人材・技術の獲得」などが目的になる場合がほとんどでしょう。あわせて、希望する売却価格や買収予算、譲渡する事業の範囲など、基本的な条件を整理していきます。
STEP2:M&A仲介会社・アドバイザーを選ぶ
M&Aを進めるため、M&A仲介会社やFA(ファイナンシャル・アドバイザー)などの専門家に相談します。M&Aの相手探しから条件交渉、契約手続きまでサポートしてもらうことが一般的です。自社だけでは把握しにくい企業価値の評価や法務・税務上の問題についても専門家の助言を受けられます。
STEP3:買い手・売り手候補を探す
売り手と買い手の希望条件をもとに、M&Aの相手候補を探します。候補企業が見つかったら、まずは企業名を明かさずに概要をまとめた「ノンネームシート」などを使って情報を提示する場合があります。具体的な企業情報を開示する際には、秘密保持契約(NDA)を締結します。
STEP4:トップ面談・条件交渉をおこなう
候補企業が絞られたら、経営者同士のトップ面談をおこないます。M&Aの条件だけでなく、経営理念や事業に対する考え方、従業員への思いなどを確認して、相互理解を深めます。その後、売却価格や株式・事業の譲渡範囲、従業員の処遇など、具体的な条件を交渉します。
STEP5:基本合意を締結する
交渉がまとまった段階で、基本合意書(MOU)を締結します。売買価格やM&Aの手法、譲渡対象、スケジュールなど、現時点で合意した基本的な条件を確認します。基本合意には法的拘束力を持たせない項目が多い一方、独占交渉権など一部の条項には法的拘束力を持たせることがあります。
STEP6:デューデリジェンス・最終契約
買い手側が、売り手企業の財務・税務・法務・事業・人事などを詳しく調査するデューディリジェンス(DD)を実施します。ここで問題が見つかった場合は、買収価格や契約条件を見直すことがあります。調査結果を踏まえて最終的な条件を確定して、最終契約(株式譲渡契約など)を締結します。
STEP7:クロージング・PMI(買収後の統合)
最終契約に基づいて株式や事業の引き渡し、代金の支払いなどをおこなうクロージングを実施します。これによって、実質的なM&Aが完了します。
M&Aの手続きが完了した後は、PMI(Post Merger Integration:買収後の統合)を進めます。業務・組織・人事制度・ITシステムなどを統合して、M&Aによって期待したシナジーを実現していきます。
M&Aにかかる費用・手数料の相場
M&Aの費用は、「無料~数百万円の初期費用+成功報酬」という料金体系が多く、案件によっては専門家費用なども加わります。また、案件の規模や、依頼先のM&A仲介会社・FA(ファイナンシャル・アドバイザー)などによっても大きく異なります。
なお、特に中小企業のM&Aでは、着手金・中間報酬が無料で、成約時の成功報酬のみというサービスもあるため、「M&Aには必ず数百万円の着手金が必要」というわけではありません。
また、売り手と買い手のどちらが手数料を負担するのか、最低成功報酬はいくらなのか、成功報酬の計算基準は何かを契約前に確認しておくことが大切です。
費用の具体的な内容としては、一般的には、相談料・着手金・中間報酬・成功報酬・専門家費用などが発生します。
M&A仲介会社・FAに支払う主な費用
相談料・初期相談料
M&Aの可能性や進め方について専門家に相談する際にかかる費用です。無料としている会社も多く、無料相談からスタートできるケースもあります。
着手金
M&Aの支援を正式に依頼する際に支払う費用です。相場は、無料~数百万円程度と幅があります。近年は、着手金を無料にして、成約時の成功報酬のみを受け取る料金体系も増えています。
中間報酬
買い手と売り手が基本合意に至った段階などで発生する費用です。相場は成功報酬予定額の10~20%程度とされることがあります。ただし、無料としている会社もあります。
成功報酬
M&Aが成立した際に支払う費用で、M&Aにおける代表的な手数料です。一般的には、取引金額などを基準にしたレーマン方式によって計算されます。
成功報酬の「レーマン方式」とは?
レーマン方式では、取引金額を一定の金額帯に区切り、それぞれ異なる料率を掛けて成功報酬を算出します。
代表的な料率例は以下のとおりです。
| 取引金額 | 料率 |
|---|---|
| 5億円以下の部分 | 5% |
| 5億円超~10億円以下の部分 | 4% |
| 10億円超~50億円以下の部分 | 3% |
| 50億円超~100億円以下の部分 | 2% |
| 100億円超の部分 | 1% |
たとえば、M&Aの取引金額が1億円の場合、5%なら成功報酬は500万円となります。
ただし、ここで注意したいのが、「何を取引金額として計算するか」です。株式価値を基準にする会社もあれば、株式価値に負債などを加えた「移動総資産」などを基準にする会社もあります。同じM&Aでも、計算方法によって手数料が大きく変わるため、契約前に確認することが重要です。
M&A仲介会社以外にかかる費用
M&Aでは、仲介会社・FAへの手数料だけでなく、専門家への報酬も必要になる場合があります。
弁護士費用
契約書の作成・確認や法務デューデリジェンスなどにかかります。
税理士・会計士費用
財務・税務デューデリジェンスや企業価値評価などを依頼する場合に発生します。
企業価値評価(バリュエーション)費用
売却・買収する会社の企業価値を算定するための費用です。M&A支援会社の報酬に含まれる場合もあります。
登記関連費用・その他の実費
組織再編などをおこなう場合には、登記費用や各種証明書の取得費用などが発生します。
「自社に最適なM&A」を進めるための第一歩とは?
M&Aを成功させるために最初におこなうべきことは、いきなり買い手・売り手候補を探すことではなく、「なぜM&Aをするのか」「M&Aによって何を実現したいのか」を明確にすることです。
M&Aは、会社を売却・買収すること自体が目的ではありません。事業承継や経営者の引退、事業の成長、新規事業への参入など、目的によって適したM&Aの方法や相手企業が変わってきます。
まず「M&Aの目的」を明確にする
最初に、自社が抱えている課題とM&Aによって実現したいことを整理します。
【売り手の場合(例)】
-
後継者がいないため事業を承継したい
-
会社をさらに成長させたい
-
経営者の引退後も事業を残したい
-
従業員の雇用を守りたい
-
会社・事業を売却して資金を得たい
【買い手の場合(例)】
-
新規事業に参入したい
-
新しい顧客や販売網を獲得したい
-
人材や技術、ノウハウを取り込みたい
-
事業規模を拡大したい
-
競争力を強化したい
目的が曖昧なままM&Aを進めると、「どの企業と組むべきか」「いくらまでなら買収してよいか」といった判断が難しくなります。
自社の強み・弱みを整理する
次に、自社の現状を客観的に把握します。
売り手であれば、売却する会社・事業の価値を整理することが重要です。売上や利益だけでなく、独自の技術、ブランド力、顧客基盤、優秀な人材、許認可など、買い手にとって魅力となる要素を洗い出します。
一方、買い手の場合は、「自社に足りないものは何か」を明確にします。たとえば、「自社には営業力はあるが技術力が不足している」という場合、技術力の高い企業を買収することによって、双方の強みを組み合わせられる可能性があります。
M&A以外の選択肢も検討する
M&Aが常に最適な解決策とは限りません。
たとえば、後継者問題であれば親族承継や従業員承継、新規事業への進出であれば自社での新規事業開発や業務提携など、M&A以外にも選択肢があります。
そのため、「M&Aありき」で考えるのではなく、他の選択肢と比較したうえでM&Aを選ぶことが重要です。
希望条件に優先順位をつける
M&Aでは、すべての希望条件を満たす相手が見つかるとは限りません。
そのため、次のような条件について、「絶対に譲れない条件」と「交渉できる条件」をあらかじめ整理しておきます。
-
売却価格・買収価格
-
従業員の雇用
-
経営者の処遇
-
会社名・ブランドの維持
-
事業の継続
-
買収後の経営方針
-
譲渡する事業の範囲
専門家に相談して具体的な選択肢を検討する
M&Aには、会社法・税務・会計・契約など専門的な知識が必要です。そのため、M&A仲介会社やFA、弁護士、公認会計士、税理士などに相談しながら進めるのが一般的です。
専門家に相談することによって、自社の企業価値やM&Aの可能性、適したスキーム、相手候補、必要な手続きなどを客観的に検討できます。
「最適なM&A」は会社によって違う
重要なのは、「有名な企業に売却する」「できるだけ高く買収する」といった単純な基準だけで相手を選ばないことです。
たとえば売り手の場合、売却価格がもっとも高い企業が必ずしも最適な相手とは限りません。従業員の雇用を守り、事業を大切に引き継いでくれる企業のほうが、経営者にとって満足度の高いM&Aになる場合があります。
買い手の場合も、安く買える企業が必ずしも良い買収となるとは限りません。買収後にどれだけシナジーを生み出せるか、組織をうまく統合できるかまで考える必要があります。
まずは「自分の会社がいくらか」を知るところから
ジョブカンM&Aでは、専任アドバイザーが事業価値の簡易査定から成約まで一貫して伴走します。相談は無料。売却・買収のどちらでもお気軽にどうぞ。
「何のためのM&Aなのか」がブレると成功の確率が低くなる
「自社に最適なM&A」を進めるための第一歩は、M&Aの相手探しではなく、自社の目的と課題を整理することにあります。「目的を明確にする」→「自社の価値・課題を把握する」→「M&A以外の選択肢も比較する」→「希望条件に優先順位をつける」→「専門家に相談する」という順番で準備を進めることによって、自社に合ったM&Aの方法や相手企業を選びやすくなります。
特に、M&Aは一度成立すると簡単に元に戻せないため、「何のためにM&Aを実施するのか」という最初の目的設定が、その後の成否を左右する重要なポイントになることはしっかり頭に入れておきましょう。
この記事は、時点の情報を元に作成しています。
ジョブカンM&A ジョブカンM&A編集部
ジョブカンM&Aは、株式会社DONUTSが運営するM&Aアドバイザリーサービスです。主に企業の事業承継、成長戦略、出口戦略(イグジット)といった多様なニーズに応えることを目的としています。最大の特徴は、累計導入社数20万社以上を誇るバックオフィス支援クラウドERPシステム「ジョブカン」の広範なネットワークを活用している点です。この強力な顧客基盤を生かし、効率的なマッチングを実現します。
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