株式分割とは? 目的やメリット、事業承継・M&Aでの活用の仕方を解説

株式分割とは、発行済株式の株主が保有している株式数に応じて、その株を発行した企業が無償で分割することによって、発行済株式の数を増やすことを意味します。たとえば、1株を2株に分割した場合、発行済株式数は2倍に増えますが、株価は1/2になるため、企業の時価総額(株価×株数)は変化しません。企業はどういう目的で株式分割をおこなうのか、株式分割を実施することにどんなメリットがあるのかなどを詳しく解説していきます。

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目次
  1. 株式分割とは
    1. 株式分割の仕組み
    2. 時価総額・持株比率は変わらない
  2. 株式分割の流れ
    1. 取締役会または株主総会で株式分割を決議する
    2. 基準日(権利確定日)を設定して公告を出す
    3. 基準日(権利確定日)時点の株主を確定する
    4. 分割効力発生日に新しい株式を割り当てる
    5. (上場企業の場合)分割後の株式で売買を開始する
  3. 株式分割の「権利付最終日」と「権利落ち日」とは?
    1. 権利付最終日とは?
    2. 権利落ち日とは?
    3. 権利落ち日に生じやすい誤解
    4. 権利付最終日、権利落ち日、基準日の関係
  4. 企業が株式分割をおこなう目的・メリット
    1. 株式分割のメリット・デメリット一覧
    2. 株式分割の目的&メリット①:投資単位の引下げと流動性向上
      1. 株式分割によって実際に売買が活発になるのか?
    3. 株式分割の目的&メリット②:株主数の増加
    4. 株式分割のデメリット・注意点
      1. 企業価値は変わらない
      2. 株価が必ず上昇するわけではない
      3. 株主管理コストが増える場合がある
      4. 短期売買が増えることもある
  5. 上場企業の株式分割と非上場企業の株式分割の違い
    1. 上場企業と非上場企業の比較
    2. 上場企業の株式分割
      1. 上場企業が株式分割をおこなう目的
      2. 上場企業にとっての株式分割のメリット
    3. 非上場企業の株式分割
      1. 非上場企業が株式分割をおこなう目的①:事業承継
      2. 非上場企業が株式分割をおこなう目的②:資本政策
      3. 非上場企業が株式分割をおこなう目的③:ストックオプション
      4. 非上場企業が株式分割をおこなう目的④:M&A(株式交換・譲渡)への備え
      5. 非上場企業では株価はどうなる?
  6. 事業承継・M&Aにおける「株式」の論点
    1. 非上場企業の場合、「分割」より「集約」が課題
      1. 株式分散問題とは
      2. M&Aへの影響
    2. M&Aにおける株式分割の活用実務
    3. 種類株式・スクイーズアウトという手法
      1. 種類株式とは
      2. スクイーズアウト
  7. 株式分割を発表した企業への投資検討時・M&A検討時の判断ポイント
    1. 企業が株式分割をおこなう意図
    2. 株式分割以外の要素にも目を向ける
    3. 株式分割後の流動性、市場の反応にも目を向ける
  8. 株式分割に関するFAQ
    1. Q. 株式分割をおこなうと配当金はどうなりますか?
    2. Q. 株式分割の概要に関する情報はどこで入手できますか?
      1. 当該企業のIR情報
      2. 証券会社のwebサイトや取引ツール
      3. 金融情報サイト、ポータルサイト
    3. Q. 株式分割がおこなわれた場合、株主側でなんらかの手続きをとる必要がありますか?
    4. Q. 株式分割がおこなわれると、株主に税金が課されますか?
  9. 株式分割の目的やメリットをきちんと理解したうえで実行することが大切

株式分割とは

株式分割とは、企業が決めた分割比率に従って、発行済の各株式を複数枚に分割することです。1株を2株に分割する場合は、発行済株式数が2倍になると同時に1株あたりの株価は1/2になり、1株を5株に分割する場合は、発行済株式数が5倍になると同時に1株あたりの株価は1/5になります。

ただし、これはあくまでも理論上の話で、市場では需給や業績などの影響を受けるため、実際の株価は理論値通りにならないことがあります。

つまり、市場のニーズや企業の業績によっては、株式数が2倍になったときに、1株当たりの株価が1/2とはならないこともあるということです。

株式分割の仕組み

株式分割をおこなうと、株主が保有する株式数が増えるだけで、会社に新たな資金が入るわけではありません。

(例:1株を2株に分割した場合)

分割前

項目 内容
保有株数 100株
株価 2,000円
資産価値 20万円

分割後

項目 内容
保有株数 200株
株価(理論値) 1,000円
資産価値 20万円

上記の例の場合、保有株数は2倍になりますが、資産価値は変わりません。

時価総額・持株比率は変わらない

株式分割をおこなっても、会社全体の価値(時価総額)や株主の持株比率は変わりません。

たとえば、A社の状況が次の通りだったとします。

(分割前)
・発行済株式数:100万株
・株価:2,000円

この場合の時価総額は次の通りです。

時価総額
=100万株 × 2,000円
=20億円

(1:2の株式分割後)
・発行済株式数:200万株
・株価(理論値):1,000円

この場合の時価総額は次の通りです。

時価総額
=200万株 × 1,000円
=20億円

つまり、時価総額は変わらないということになります。

また、たとえば100万株中1万株(全体の1%)を保有している株主の株式分割前後の持ち株比率は、次のように表すことができます。

分割前:1万株/100万株=1%
分割後:2万株/200万株=1%

つまり、持株比率も変わらないということです。

よって、株式分割がおこなわれたからといって、株主が儲かることもなければ、逆に損をすることもありません。また、議決権割合も基本的には変わりません。

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株式分割の流れ

株式分割の一般的な流れは次のとおりです。

  • ①取締役会または株主総会で株式分割を決議する
  • ②基準日(権利確定日)を設定して公告を出す
  • ③基準日(権利確定日)時点の株主を確定する
  • ④分割効力発生日に新しい株式を割り当てる
  • ⑤(上場企業の場合)分割後の株式で売買を開始する

それぞれ詳しく解説していきます。

取締役会または株主総会で株式分割を決議する

取締役会または株主総会を開催して、株式分割の基準日(権利確定日)、効力発生日、分割比率などを決めます。なお、「基準日(権利確定日)」とは、会社が“誰に株式を割り当てるか”を確定する日を指します。

基準日(権利確定日)を設定して公告を出す

「この日の株主名簿に載っている株主を対象にします」という、会社法上の基準日を設定して、株式分割をおこなう旨について記した公告を出します。

基準日(権利確定日)時点の株主を確定する

基準日の株主名簿に則って、「誰に株式を配るか」を確定します。

分割効力発生日に新しい株式を割り当てる

基準日に確定した株主に対して、新しい株式を割り当てます。株主からすると、たとえば株式が2分割された場合、100株→200株のように自動で株式数が増えることになります。

(上場企業の場合)分割後の株式で売買を開始する

通常は効力発生日から、分割後の株数・株価で取引されます。

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株式分割の「権利付最終日」と「権利落ち日」とは?

株式分割のプロセスには、「権利付最終日」と「権利落ち日」という2つの重要な日付が存在します。この2つの日付は、いずれも、前述の「基準日」より前となります。

権利付最終日とは?

権利付最終日とは、投資家が、株式分割や配当、株主優待などの株主権利を取得できる最終取引日のことです。つまり、この日の取引終了時点で株式を保有している株主が、株式分割の権利(分割によって増える株式を受け取る権利)を得ることができるということになります。

権利落ち日とは?

権利落ち日とは、株式を買い付けても、株式分割や配当、株主優待などの株主権利を取得することができない日で、権利付き最終日の翌営業日を指します。株式分割がおこなわれる場合、権利落ち日を迎えると、理論上、分割比率に応じて株価が下がることになります。

権利落ち日に生じやすい誤解

たとえば、権利付最終日の終値が5,000円の株式が1:5の株式分割をおこなう場合は次の通りとなります。

  • 権利付最終日:終値5,000円で取引終了
  • 権利落ち日:5分の1に調整された1,000円を基準とした株価で取引が開始

この変化を目の当たりにして、株価が暴落したと勘違いする人がいますが、実際には1株あたりの価値が分割比率に応じて調整されただけです。

実際、証券会社のチャート上では、権利落ち日に株価が大きく下がって見えるので誤解されやすいですが、これを見て慌てて売却することのないよう、注意しなければなりません。

権利付最終日、権利落ち日、基準日の関係

権利付最終日、権利落ち日、そして株式分割の流れで説明した「基準日」の前後関係は次の通りです。

項目 意味 前後関係
権利付最終日 この日まで株を買えば株式分割を受けられる最後の日 1番目
権利落ち日 この日以降に買っても今回の株式分割は受けられない日 2番目
基準日(権利確定日) 会社が「誰に株式を割り当てるか」を確定する日 3番目

つまり、「権利付最終日 → 権利落ち日 → 基準日(権利確定日)」という順番になります。

たとえば、基準日(権利確定日)が3月31日(月)だった場合、次のようなスケジュールになります。

日付 内容
3/27(木) 権利付最終日(この日まで買えば株式分割の権利あり)
3/28(金) 権利落ち日(この日以降に買っても対象外)
3/31(月) 基準日(株主名簿を確定)
4/1(火) 効力発生日(例)

なお、なぜ権利落ち日と基準日の間が空いているかというと、現在の日本株は、約定日(やくじょうび)から2営業日後に受け渡しと定められているためです。

「約定日」とは、株や投資信託などの売買取引が市場において成立して、正式に契約が結ばれた日のことを指します。

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企業が株式分割をおこなう目的・メリット

企業の時価総額も株主の持株比率も変わらないとなると、企業が株式分割をおこなう目的は何なのかが気になるところです。

企業が株式分割をおこなう最大の目的は、株式を購入しやすくして投資家を増やして、株式市場での流動性を高めることです。

株式分割によって企業価値そのものが高まるわけではありませんが、株式が売買しやすくなることによって、市場で適正な価格形成がおこなわれやすくなるというメリットがあります。

株式分割のメリット・デメリット一覧

項目 メリット デメリット・注意点
投資家 少ない資金で投資できる 株価が必ず上がるわけではない
流動性 売買が活発になる 短期売買が増える可能性がある
株主 株主数の増加が期待できる 株主管理コストが増える場合がある
企業価値 市場での評価向上が期待される 企業価値そのものは変わらない

株式分割の目的&メリット①:投資単位の引下げと流動性向上

株式分割をおこなうと、1株当たりの株価が理論上低下するため、最低投資金額も下がります。

たとえば次の場合で考えてみましょう。

・株価:10,000円
・売買単位:100株

この場合の必要資金は、10,000円 × 100株=100万円となるため、最低でも100万円を用意しなくてはなりません。

しかしここで1:2の株式分割をおこなうと、次のように状況が変化します。

・株価:約5,000円
・売買単位:100株

こうなると必要資金は、5,000円 × 100株=50万円となり、より多くの投資家が購入しやすくなります。

その結果、株式の流動性向上が期待できるようになり、次のようなことが起こり得ます。

  • 売買が活発になる
  • 売買注文が増える
  • 株価が適正に形成されやすくなる

株式分割によって実際に売買が活発になるのか?

株価分割がおこなわれると、投資家が株価下落を狙って買いを入れることもあれば、分割後の一時的な株価上昇を利用して利確の売りを入れることもあります。つまり、いずれにしても、売買が活発になる可能性が高いということです。

ただし、株価分割が発表された後、投資家の期待によって株価が上昇する場合もあれば、さほど大きく動かない場合もあります。

株式分割の目的&メリット②:株主数の増加

株式分割によって購入のハードルが下がると、個人投資家を中心に新たな株主が増えることが期待できます。

株主数が増えることで、企業には次のようなメリットがあります。

  • 個人投資家層の拡大
  • 株式市場での認知度向上
  • 株式の売買が活発になる
  • 株主構成の多様化

また、株主数が増えることは、企業のIR(投資家向け広報)活動の成果につながる場合もあります。

株式分割のデメリット・注意点

株式分割には多くのメリットがありますが、注意すべき点もあります。

企業価値は変わらない

株式分割は株式数を増やすだけであり、売上や利益、純資産などは変化しません。そのため、株価が下がっても会社が安くなったわけではありません。

株価が必ず上昇するわけではない

株式分割は、投資家に好意的に受け止められることが多いものの、必ず株価が上昇するとは限りません。業績や成長性が伴わなければ、株価が期待どおりに動かないこともあります。

株主管理コストが増える場合がある

株主数が増えることで、株主総会の運営や配当金の支払い負担が増したり、株主への通知が多くなったりと、株主管理にかかる事務負担やコストが増加する可能性があります。

短期売買が増えることもある

投資しやすくなることで売買が活発になる一方、短期的な値動きを狙う投資家が増え、株価の変動が大きくなることもあります。

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上場企業の株式分割と非上場企業の株式分割の違い

株式分割は上場企業・非上場企業のどちらでも実施できますが、目的や効果は大きく異なります。

上場企業では、株式市場での売買を活発にする目的でおこなわれることが多い一方、非上場企業では、事業承継や資本政策を目的として実施されるケースが一般的です。

上場企業と非上場企業の比較

項目 上場企業 非上場企業
主な目的 投資しやすくする・流動性向上 事業承継・資本政策
株価 市場価格がある 市場価格がない
株式の売買 証券取引所で自由に売買 原則自由に売買できない
流動性向上効果 大きい ほとんどない
株主数 増加が期待できる あまり変わらない
時価総額・企業価値 理論上変わらない 理論上変わらない

上場企業の株式分割

上場企業が株式分割をおこなう目的

上場企業が株式分割をおこなう主な目的は次の通りです。

  • 投資単位を引き下げる
  • 個人投資家を増やす
  • 売買を活発にする
  • 流動性を高める

(例)
株価が1株=20,000円の場合、100株購入するには200万円必要になります。そこで1:4の株式分割をすると、1株=5,000円となり、100株購入するのに50万円で済むようになります。これにより、多くの投資家が購入しやすくなります。

上場企業にとっての株式分割のメリット

  • 流動性向上
  • 株主数増加
  • 個人投資家の増加
  • 売買活性化
  • 市場で適正価格が形成されやすい

非上場企業の株式分割

非上場企業では、株式を市場で売買しないため、「流動性向上」という目的はほとんどありません。その代わりにいくつかの目的があります。

非上場企業が株式分割をおこなう目的①:事業承継

もっとも多くのケースで目的とされるのは、事業承継です。

たとえば、非上場企業の社長が100株持っている場合、子ども3人に相続するとなると、細かく分けにくくなります。そこで、100株を1,000株に株式分割すると、柔軟に株式を分配しやすくなります。

非上場企業が株式分割をおこなう目的②:資本政策

将来、従業員、役員、出資者に株式を渡す予定がある場合、株数を増やしておくことで配分しやすくなります。

非上場企業が株式分割をおこなう目的③:ストックオプション

スタートアップでは、ストックオプションを発行する前に株式分割をおこなうケースもあります。ストックオプションとは、会社の役員や従業員が「あらかじめ定められた価格で自社の株式を購入することができる権利」のことです。株数が多い方が、役員や従業員に株式を細かく配分することができます。

非上場企業が株式分割をおこなう目的④:M&A(株式交換・譲渡)への備え

将来のM&Aを見据えて株式分割をおこなうケースもあります。特に、他社を株式交換によって買収する場合や、事業承継型M&Aで株主へ株式を分配する場合に有効です。

たとえば、株式交換で買収する際、買収対価となる自社株式の1株当たり価値が高すぎると、交換比率に端数(少数点)が生じ、手続きや評価が複雑になります。事前に株式分割をおこなって1株あたりの価値を適正な水準に下げておくことで、株式交換比率の調整が容易になり、スムーズなM&Aを実行できるという実務上のメリットがあります。

非上場企業では株価はどうなる?

上場企業には市場価格がありますが、非上場企業にはありません。

そのため、株式分割後の1株当たり評価額は、一般的には「分割前評価額÷分割倍率」という考え方になります。

たとえば次のような図式が成り立ちます。

(分割前)
・100株
・1株100万円
・企業価値:1億円

(2分割した場合)
・200株
・1株50万円
・企業価値:1億円

企業価値そのものは変わりません。つまり、考え方としては基本的に上場企業と同じです。

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事業承継・M&Aにおける「株式」の論点

事業承継やM&Aにおいては、「会社の価値をどう評価するか」と同様に、株式を誰が・どれだけ保有するかが重要なテーマになります。

特に非上場企業では、長年にわたる相続や贈与によって株式が複数の親族へ分散してしまうケースが少なくありません。その結果、経営権の維持やM&Aの実行が難しくなることがあります。そのため、実務では株式を分散させるのではなく、経営者や後継者へ集約することが重要になります。

非上場企業の場合、「分割」より「集約」が課題

上場企業では、株式分割によって投資家を増やすことが目的になりますが、非上場企業では、株式を集約することが重要です。

株式分散問題とは

株式分散とは、会社の経営権に関わる株式の所有者が複数人にわかれている状態をいいます。これによってどのような問題が起きることがあるのかを説明していきます。

たとえば、創業者が亡くなり、相続によって株式が複数の相続人へ分散すると、次のような問題が起こる可能性があります。

  • 経営判断に時間がかかる
  • 株主間で意見が対立する
  • 株式譲渡の同意が得られない
  • M&Aへの賛成を得られない

「分散」とは、たとえば次のような状態です。

【創業時】
創業者100%

【相続後】
長男 40%
長女 30%
次男 20%
親族 10%

このように株式が分散すると、経営権が不安定になり、意思決定にも支障をきたすことがあります。

そのため、事業承継においては、次のようなことをおこない、経営権を安定させることが重要になります。

  • 後継者への株式集約
  • 生前贈与
  • 自社株買い
  • 持株会社(ホールディングス)の活用

M&Aへの影響

M&Aでは、多くの場合、買い手は100%または過半数の株式取得を希望します。

しかし、株式が多数の株主に分散していると、次のような問題が生じて、M&Aの成立が難しくなることがあります。

  • 株主全員と交渉が必要になる
  • 一部の株主が売却に反対する
  • 手続きが複雑化する

M&Aにおける株式分割の活用実務

M&Aの実務において、株式分割は以下のような特定の場面で戦略的に活用されます。

  • 株式交換比率の調整:買い手企業が自社株を対価として相手企業を買収する(株式交換)際、自社の1株あたりの価値を調整して端株(1株未満の株式)の発生を防ぎます。
  • 事業の一部切り出し・株式譲渡の調整:売り手企業が特定の事業や株主に対して柔軟に株式を譲渡・配置できるように、発行済株式総数を増やして1株あたりの金額を下げます。

種類株式・スクイーズアウトという手法

株式を集約するために、実務では「種類株式」や「スクイーズアウト」といった制度が活用されることがあります。

種類株式とは

種類株式とは、普通株式とは異なる権利内容を持つ株式です。

会社法では、議決権や配当などについて異なる内容を定めた株式を発行できます。

事業承継においては、たとえば次のような株式を発行することによって、経営権を維持しながら資本政策を進めることがあります。

  • 議決権を制限した株式
  • 拒否権付き株式
  • 取得条項付き株式

(活用例)
・後継者には議決権のある株式を保有させる
・他の親族には議決権の少ない株式を保有してもらう

このように、経営権を集中させつつ、財産の分配にも配慮することができます。

スクイーズアウト

スクイーズアウト(Squeeze-out)とは、少数株主の株式を適法な手続きによって取得して、株主を集約する手法です。

M&Aや事業承継において、スクイーズアウトは次のような目的で利用されます。

  • 少数株主を整理する
  • 完全子会社化する
  • 株主構成をシンプルにする

スクイーズアウトの代表的な方法としては、次の方法が挙げられます。

・株式等売渡請求
株式等売渡請求とは、対象会社の総株主の議決権の90%以上を保有している株主である「特別支配株主」が、対象会社からの承認を得たうえで、自身以外の株主が保有している株式等のすべてを強制的に取得できる制度です。

⇒参照:会社法179条 第四節の二 特別支配株主の株式等売渡請求

・株式併合
株式併合とは、複数の株式を1つにまとめることによって、発行済株式の数を減らす手続きです。ある意味、株式分割とは反対の手続きであるといえます。

⇒参照:会社法180条 株式の併合

・全部取得条項付種類株式
全部取得条項付種類株式とは、株主総会の特別決議によって、株主一人ひとりの同意を得ることなく、特定の株式のすべてを強制的に取得できる仕組みです。

⇒参照:会社法171条1項 第四款 全部取得条項付種類株式の取得(全部取得条項付種類株式の取得に関する決定)

・株式交換

株式交換とは、買収する企業が、対象企業の株主に対して自社株式を提供して、その対価として、対象企業の株式を受け取る手法です。

⇒参照:会社法768条 第二款 株式会社に発行済株式を取得させる株式交換

⇒参照:同族会社の株が分散したままM&Aを進めるとどうなるか|少数株主リスクと株式集約の方法

⇒参照:事業承継の3つのリスクとは? 60代経営者が相続・株式評価・後継者問題で後悔しないために

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株式分割を発表した企業への投資検討時・M&A検討時の判断ポイント

企業が株式分割を発表した場合、当該企業の株式に投資するかどうか、あるいはM&Aを持ちかけるかどうかを考えるにあたっては、次の点に目を向けることが大切です。

企業が株式分割をおこなう意図

株式分割をおこなう目的は企業によって異なります。単純に株価を下げたい場合もあれば、投資家層の拡大を狙っている場合もあります。

企業が株式分割をおこなう目的が、M&A後の統合戦略と合致するかどうかに目を向けると、当該企業を候補として考えていいのかどうかがみえてきます。

株式分割以外の要素にも目を向ける

ここまで解説してきた通り、株式分割をおこなったからといって、株価が上昇するということはありません。そのため、株価分割のニュースだけで、投資などの判断をおこなうことはリスキーです。当該企業の過去の業績や現在の財務状況、将来性なども総合的に評価したうえで、投資やM&Aについて検討することが大切です。

株式分割後の流動性、市場の反応にも目を向ける

株式分割をおこなったことによって、実際に株式の流動性が向上するかどうか、市場はどのように反応しているのかにも目を向けることが大切です。

なぜかというと、株式分割後の株式の流動性は、M&A後の株式市場での取引や株価形成に影響を与える可能性が考えられるためです。そのため、市場の反応なども確認しながら、M&Aを進めるタイミング、M&Aの候補にするための条件などを考えることが大切です。

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株式分割に関するFAQ

続いては、株式分割に関するよくある質問とその答えをみていきましょう。

Q. 株式分割をおこなうと配当金はどうなりますか?

配当金の考え方が会社の方針によって異なります。

一般的には、1株当たりの配当は調整されることがあります。保有株式数が増えるため、配当総額が大きく変わらないよう設定されるケースが多く見られます。ただし、実際の配当金額は会社の取締役会や株主総会の決定内容によります。

Q. 株式分割の概要に関する情報はどこで入手できますか?

企業が株式分割をおこなった際、概要について知りたい場合は次の3箇所をチェックします。

当該企業のIR情報

まずは、当該企業のホームページでIR情報を確認することをおすすめします。公式発表には、株式分割の目的や具体的なスケジュール、株主に及ぶ可能性がある影響などについて詳しく記されているため、M&A検討時などに必要な情報を逃すことなく入手することができます。

証券会社のwebサイトや取引ツール

証券会社のwebサイトや取引ツールには、株式分割に関するニュースが掲載されます。これらの情報は、公式発表とは異なり、アナリストなどが執筆しているため、第三者目線での分析が参考になることがあります。また、過去の類似事例なども併せて参照することで、M&A後の株価動向を予測することもできます。

金融情報サイト、ポータルサイト

ロイターやブルームバーグなどの金融情報サイト、あるいはYahoo! ファイナンスなどのポータルサイトにも、株式分割に関する情報が掲載されます。金融情報サイトやポータルサイトでは、幅広い情報源からの情報をまとめて収集することができるため、多角的視点を持ちやすくなります。そのため、M&A検討時にも、さまざまな角度から分析して冷静な判断をしやすくなります。

Q. 株式分割がおこなわれた場合、株主側でなんらかの手続きをとる必要がありますか?

株式分割がおこなわれても、株主側でなんらかの手続きをとる必要はありません。株式分割の権利が確定して、権利落ち日を迎えると、証券会社に預けている株式は自動的に分割後の株式数に更新されます。

たとえば、A社の株式50株を保有中に1:2の株式分割がおこなわれた場合、権利付最終日までは、取引口座内のA社の保有株式数は「50株」と表示されていますが、権利落ち日以降は、「100株」の表示に更新されます。

同時に、取得単価も調整されます。たとえば、1株2,000円で50株購入していたとすると、取得価額の合計は10万円ですが、分割後は保有数が100株になるため、1株当たりの取得単価は「10万円÷100株=1,000円」として、自動的に再計算されることになります。

なお、源泉徴収ありの特定口座を利用している場合、将来的に当該株式を売却して利益を得たとすると、その際の計算に関しても、証券会社側にて、調整後の取得単価をもとにおこなってくれるため、株主側が正確な金額をはじき出せないといったトラブルに見舞われる心配はありません。

Q. 株式分割がおこなわれると、株主に税金が課されますか?

株式分割を受けただけでは、通常は課税されません。

株式数は増えますが、保有する資産価値は変わらないため、一般的には所得税や譲渡所得税の課税対象にはならないためです。

ただし、分割後に株式を売却した場合には、その売却益に対して課税されます。また、具体的な税務上の取扱いは個別事情によって異なる場合があるため、不明な点は税理士などの専門家へ確認することをおすすめします。

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株式分割の目的やメリットをきちんと理解したうえで実行することが大切

株式分割は、企業価値を直接高める施策ではなく、株式市場での売買を活発にして、より多くの投資家に投資してもらうための施策です。そのため、株式分割だけで企業の業績が改善するわけではありませんが、投資単位の引下げによる流動性向上や株主数の増加は、企業の資本市場における評価や知名度の向上につながる可能性があります。一方で、株価は最終的には企業の業績や将来性によって決まるため、株式分割の効果を過大に期待しないことも重要です。

執筆 ジョブカンM&A編集部

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