事業承継の3つのリスクとは?60代経営者が相続・株式評価・後継者問題で後悔しないために

事業承継とは、会社の経営(事業)を後継者に引き継ぐことをいう。引き継ぐ相手によって、①親族内承継(子や配偶者)、②社内承継(役員・従業員へのMBO)、③第三者承継(M&A)——の3つに大きく分かれる。かつては親族内承継が中心だったが、後継者不在が深刻化した近年は、M&Aによる第三者承継が有力な選択肢になっている。この記事では、事業承継を先送りにしてきた60代経営者が直面する「3つのリスク」と、その対策(生前贈与・事業承継税制・M&A)を整理する。

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目次
  1. 「まだ元気だから」で先送りしてきた経営者に起きること
  2. リスク1: 相続で株式が「分散」する
    1. オーナー社長が死亡すると何が起きるか
    2. 【要注意】古い会社に潜む「名義株」のリスク
    3. 事前に取れる対策
  3. リスク2: 株式評価が「高くなりすぎる」前に動く必要がある
    1. 非上場株式の評価は「経営が安定しているほど上がる」
    2. 「利益を積み上げすぎる前」に動く理由
    3. 評価を下げる合法的な方法
  4. リスク3: 後継者問題が時間と共に深刻化する
    1. 「後継者がいない」は実は「時間をかければ解決できた問題」
    2. 後継者がいない場合のM&Aが最も有利になるタイミング
  5. 「今すぐ売る」必要はないが、「今すぐ動き始める」必要はある
  6. まとめ

「まだ元気だから」で先送りしてきた経営者に起きること

60代に入り、事業承継や会社の売却を「いつかは考えないと」と思いながらも、具体的なアクションを先送りにしている経営者は多い。

会社の業績は安定している。後継者候補はいるかもしれないが、まだ頼りない。売却するにしてもタイミングが読めない。こうした理由で、決断を先延ばしにする。

問題は、時間が経つほど「3つのリスク」が複雑化し、最終的に選択肢が狭まることだ。このリスクを理解せずに70代・80代を迎えると、自分が望まない形での承継・売却を余儀なくされる可能性がある。


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リスク1: 相続で株式が「分散」する

オーナー社長が死亡すると何が起きるか

オーナー経営者が亡くなった場合、会社の株式は遺産として相続人に分配される。配偶者・子供が複数いれば、株式が分散して「誰が経営の主導権を持つか」を巡って相続争いが起きることがある。

実際のケースとして多いのが:

  • 長男が経営を継ぎたいが、次男・三男・配偶者も株式を持つことになり、経営判断のたびに株主間の合意が必要になる
  • 事業に関与していない相続人が「株式の買い取り」や「配当の要求」を主張する
  • 株式評価が高くなっており、相続税の支払いのために「会社を売るしかない」状況に追い込まれる
  • 【要注意】古い会社に潜む「名義株」のリスク

    60代経営者が創業した30〜40年前(旧商法時代)は、会社設立に7人の発起人が必要だったため、親族や知人、当時の従業員に名前だけ借りた「名義株」が存在するケースが非常に多い。

    これを放置したまま時間が経つと、「名義人が死亡して相続が発生し、見知らぬ人が株主になっている」「名義人と連絡が取れず所在不明になっている」といった事態に陥る。いざM&Aで会社を売却しようとしても、買い手は「株式の100%取得」を条件とすることが多いため、名義株の存在が原因で売却が頓挫(ディールブレイク)する危険性が高い。

    事前に取れる対策

    60代で元気なうちに、株式の集約・整理を進めることができる。

  • 後継者への生前贈与: 毎年110万円の贈与税基礎控除を使って計画的に株式を移転する(時間がかかるが、税負担を分散できる)
  • 事業承継税制の活用: 後継者への株式贈与・相続に対する税の納税猶予制度。申請要件があり、期限内の手続きが必要
  • M&Aで株式を現金化: 株式を売却して現金に換えてしまえば、相続時の「株式評価の問題」がなくなる。現金は分割が容易なため相続争いになりにくい

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    リスク2: 株式評価が「高くなりすぎる」前に動く必要がある

    非上場株式の評価は「経営が安定しているほど上がる」

    非上場株式の評価方法は複数あるが、中小企業では主に「類似業種比準価額」と「純資産価額」が使われる。経営が順調であれば利益が積み上がり、純資産が増加するため、株式評価は上がる。

    株式評価が高くなるほど:

  • 後継者への生前贈与にかかる贈与税が増える
  • 相続時の相続税が増える
  • M&Aで売却する場合の買い手負担も増加し、売れにくくなる場合がある
  • これが「業績が良い会社ほど承継が難しい」という逆説的な問題の正体だ。

    「利益を積み上げすぎる前」に動く理由

    会社の利益が毎年1,000〜2,000万円規模で積み上がっている場合、10年経てば純資産が1〜2億円増加する。株式評価も連動して上がり、承継に必要なコスト(税金)が増え続ける。

    この「評価の時限爆弾」は、60代の早い段階で対策を打てば選択肢が広い。70代以降になると使える制度・方法が限られてくる。

    評価を下げる合法的な方法

  • 役員退職金の支給: 退職金は損金になるため、支給した年度の利益が減り、純資産価額が下がる。株式評価が一時的に下がるタイミングで贈与・売却を実施する
  • 生命保険の活用: 経営者保険(逓増定期保険等)で利益を平準化する手法(税制改正により一部規制あり、最新制度の確認が必要)
  • M&Aの実施: 売却してしまえば株式評価の問題が解消する

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    リスク3: 後継者問題が時間と共に深刻化する

    「後継者がいない」は実は「時間をかければ解決できた問題」

    後継者不在は、早い段階から準備を始めれば複数の選択肢がある。

    後継者候補 メリット デメリット
    親族内承継(子・配偶者) 理念・文化の継続しやすさ 経営能力の有無・本人の意向
    社内承継(番頭・幹部社員) 会社の事情をよく知る 資金調達(自社株買取の資金)が課題
    M&A(第三者承継) 確実に承継できる・創業者が現金を得られる 文化・雇用の変化リスク

    問題は、「いずれかに決める」判断を先送りすると、選択肢が自然に絞られていく点だ。

  • 親族内承継を目指していたが、子供が事業を継がないと判明した(40代)→ 社内承継・M&Aにシフト(50代)→ 「まだ動かなくていいか」→ 社長自身の健康問題が表面化(70代)→ 緊急のM&Aになり、価格交渉の余地がなくなる
  • この「緊急M&A」は、時間的余裕がある場合と比べて売却価格が低くなりやすい。買い手候補と十分な交渉をする時間がないためだ。

    後継者がいない場合のM&Aが最も有利になるタイミング

    M&Aによる第三者承継で最も高値がつくのは、以下の状況が揃っているときだ。

    1. 業績が安定・成長している: 過去3期の売上・利益が安定または増加傾向
    2. 社長依存度が低い: 特定の個人に顧客・取引が依存していない
    3. 組織体制が整っている: 社長不在でもある程度回る体制がある
    4. 財務が透明: 不明な負債・役員借入金がない

    60代前半はこれらの条件が揃っていることが多い。70代以降は健康問題・後継者問題が加わり、条件の維持が難しくなる。

    また、M&Aによる第三者承継の最大のメリットは「経営者保証(個人保証)の解除」だ。事業承継を先送りにしてオーナーが死亡した場合、残された家族が会社の多額の借入金や保証を背負うリスクがある。優良な買い手企業にM&Aで譲渡すれば、借入金ごと引き受けてもらえるため、経営者は重圧から解放され、家族に安心を残すことができる。


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    「今すぐ売る」必要はないが、「今すぐ動き始める」必要はある

    事業承継・M&Aには準備期間が必要だ。

  • 株式の整理・評価: 6か月〜1年
  • M&A仲介への相談から成立まで: 1〜3年
  • 後継者育成: 3〜10年
  • 「60代のうちに決断しよう」と思っても、動き始めてから売却が完了するまで数年かかることは珍しくない。

    最初のステップは「現状把握」だ。

    1. 自社株式の評価額を試算する: 税理士に「今の評価がいくらか」を計算してもらう(1〜3か月で可能)
    2. 後継者候補の意向を確認する: 「将来、この会社を継ぐ気持ちはあるか」を正式に聞く
    3. M&Aの相場感を把握する: 仲介会社への無料相談で「今売ったらいくらか」の概算を聞く

    この3ステップを踏むだけで、「決断の前提情報」が揃い、選択肢が明確になる。動かないことの最大のリスクは「情報がないまま時間だけが過ぎること」だ。


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    まとめ

    60代で会社を持っている経営者が直面するリスクは、放置するほど複雑化する。

    1. 相続リスク: 株式が分散して経営が混乱する。対策は生前贈与・事業承継税制・M&A
    2. 株式評価リスク: 業績が良いほど評価が上がり、承継コストが増える。早期の対策が有効
    3. 後継者問題: 緊急になると売却価格が下がる。選択肢があるうちに動く

    これら3つのリスクは「関連している」。早く動けば動くほど、選択肢が多く、コストが低く、有利な条件で決断できる。

    ジョブカンM&A ジョブカンM&A編集部

    ジョブカンM&Aは、株式会社DONUTSが運営するM&Aアドバイザリーサービスです。主に企業の事業承継、成長戦略、出口戦略(イグジット)といった多様なニーズに応えることを目的としています。最大の特徴は、累計導入社数20万社以上を誇るバックオフィス支援クラウドERPシステム「ジョブカン」の広範なネットワークを活用している点です。この強力な顧客基盤を生かし、効率的なマッチングを実現します。


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