事業承継とは、会社の経営(事業)を後継者に引き継ぐことをいう。引き継ぐ相手によって、①親族内承継(子や配偶者)、②社内承継(役員・従業員へのMBO)、③第三者承継(M&A)——の3つに大きく分かれる。かつては親族内承継が中心だったが、後継者不在が深刻化した近年は、M&Aによる第三者承継が有力な選択肢になっている。この記事では、事業承継を先送りにしてきた60代経営者が直面する「3つのリスク」と、その対策(生前贈与・事業承継税制・M&A)を整理する。
この記事の内容、自社に当てはめるとどうなる?
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「まだ元気だから」で先送りしてきた経営者に起きること
60代に入り、事業承継や会社の売却を「いつかは考えないと」と思いながらも、具体的なアクションを先送りにしている経営者は多い。
会社の業績は安定している。後継者候補はいるかもしれないが、まだ頼りない。売却するにしてもタイミングが読めない。こうした理由で、決断を先延ばしにする。
問題は、時間が経つほど「3つのリスク」が複雑化し、最終的に選択肢が狭まることだ。このリスクを理解せずに70代・80代を迎えると、自分が望まない形での承継・売却を余儀なくされる可能性がある。
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リスク1: 相続で株式が「分散」する
オーナー社長が死亡すると何が起きるか
オーナー経営者が亡くなった場合、会社の株式は遺産として相続人に分配される。配偶者・子供が複数いれば、株式が分散して「誰が経営の主導権を持つか」を巡って相続争いが起きることがある。
実際のケースとして多いのが:
【要注意】古い会社に潜む「名義株」のリスク
60代経営者が創業した30〜40年前(旧商法時代)は、会社設立に7人の発起人が必要だったため、親族や知人、当時の従業員に名前だけ借りた「名義株」が存在するケースが非常に多い。
これを放置したまま時間が経つと、「名義人が死亡して相続が発生し、見知らぬ人が株主になっている」「名義人と連絡が取れず所在不明になっている」といった事態に陥る。いざM&Aで会社を売却しようとしても、買い手は「株式の100%取得」を条件とすることが多いため、名義株の存在が原因で売却が頓挫(ディールブレイク)する危険性が高い。
事前に取れる対策
60代で元気なうちに、株式の集約・整理を進めることができる。
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リスク2: 株式評価が「高くなりすぎる」前に動く必要がある
非上場株式の評価は「経営が安定しているほど上がる」
非上場株式の評価方法は複数あるが、中小企業では主に「類似業種比準価額」と「純資産価額」が使われる。経営が順調であれば利益が積み上がり、純資産が増加するため、株式評価は上がる。
株式評価が高くなるほど:
これが「業績が良い会社ほど承継が難しい」という逆説的な問題の正体だ。
「利益を積み上げすぎる前」に動く理由
会社の利益が毎年1,000〜2,000万円規模で積み上がっている場合、10年経てば純資産が1〜2億円増加する。株式評価も連動して上がり、承継に必要なコスト(税金)が増え続ける。
この「評価の時限爆弾」は、60代の早い段階で対策を打てば選択肢が広い。70代以降になると使える制度・方法が限られてくる。
評価を下げる合法的な方法
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リスク3: 後継者問題が時間と共に深刻化する
「後継者がいない」は実は「時間をかければ解決できた問題」
後継者不在は、早い段階から準備を始めれば複数の選択肢がある。
| 後継者候補 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 親族内承継(子・配偶者) | 理念・文化の継続しやすさ | 経営能力の有無・本人の意向 |
| 社内承継(番頭・幹部社員) | 会社の事情をよく知る | 資金調達(自社株買取の資金)が課題 |
| M&A(第三者承継) | 確実に承継できる・創業者が現金を得られる | 文化・雇用の変化リスク |
問題は、「いずれかに決める」判断を先送りすると、選択肢が自然に絞られていく点だ。
この「緊急M&A」は、時間的余裕がある場合と比べて売却価格が低くなりやすい。買い手候補と十分な交渉をする時間がないためだ。
後継者がいない場合のM&Aが最も有利になるタイミング
M&Aによる第三者承継で最も高値がつくのは、以下の状況が揃っているときだ。
1. 業績が安定・成長している: 過去3期の売上・利益が安定または増加傾向
2. 社長依存度が低い: 特定の個人に顧客・取引が依存していない
3. 組織体制が整っている: 社長不在でもある程度回る体制がある
4. 財務が透明: 不明な負債・役員借入金がない
60代前半はこれらの条件が揃っていることが多い。70代以降は健康問題・後継者問題が加わり、条件の維持が難しくなる。
また、M&Aによる第三者承継の最大のメリットは「経営者保証(個人保証)の解除」だ。事業承継を先送りにしてオーナーが死亡した場合、残された家族が会社の多額の借入金や保証を背負うリスクがある。優良な買い手企業にM&Aで譲渡すれば、借入金ごと引き受けてもらえるため、経営者は重圧から解放され、家族に安心を残すことができる。
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「今すぐ売る」必要はないが、「今すぐ動き始める」必要はある
事業承継・M&Aには準備期間が必要だ。
「60代のうちに決断しよう」と思っても、動き始めてから売却が完了するまで数年かかることは珍しくない。
最初のステップは「現状把握」だ。
1. 自社株式の評価額を試算する: 税理士に「今の評価がいくらか」を計算してもらう(1〜3か月で可能)
2. 後継者候補の意向を確認する: 「将来、この会社を継ぐ気持ちはあるか」を正式に聞く
3. M&Aの相場感を把握する: 仲介会社への無料相談で「今売ったらいくらか」の概算を聞く
この3ステップを踏むだけで、「決断の前提情報」が揃い、選択肢が明確になる。動かないことの最大のリスクは「情報がないまま時間だけが過ぎること」だ。
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まとめ
60代で会社を持っている経営者が直面するリスクは、放置するほど複雑化する。
1. 相続リスク: 株式が分散して経営が混乱する。対策は生前贈与・事業承継税制・M&A
2. 株式評価リスク: 業績が良いほど評価が上がり、承継コストが増える。早期の対策が有効
3. 後継者問題: 緊急になると売却価格が下がる。選択肢があるうちに動く
これら3つのリスクは「関連している」。早く動けば動くほど、選択肢が多く、コストが低く、有利な条件で決断できる。
この記事は、時点の情報を元に作成しています。
ジョブカンM&A ジョブカンM&A編集部
ジョブカンM&Aは、株式会社DONUTSが運営するM&Aアドバイザリーサービスです。主に企業の事業承継、成長戦略、出口戦略(イグジット)といった多様なニーズに応えることを目的としています。最大の特徴は、累計導入社数20万社以上を誇るバックオフィス支援クラウドERPシステム「ジョブカン」の広範なネットワークを活用している点です。この強力な顧客基盤を生かし、効率的なマッチングを実現します。
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