クリニックの院長が引退するには、売却(第三者承継)・親族承継・廃院が主な選択肢となります。とはいえ、患者が路頭に迷うことを考えると、極力、閉院は避けたいところです。一方で、売却は必ずしもうまくいくとは限りませんし、継いでくれる親族がいるとも限りません。そこで今回は、院長が引退を考えた場合にどんな手続きを進めればいいのかを考えるためにも、クリニックの売却方法や売却価格・税金・手数料の相場、閉院せざるを得ない場合にかかる費用などを詳しく解説していきます。
まずは「自分の会社がいくらか」を知るところから
ジョブカンM&Aでは、専任アドバイザーが事業価値の簡易査定から成約まで一貫して伴走します。相談は無料。売却・買収のどちらでもお気軽にどうぞ。
クリニックの「売却」と「廃院(閉院)」のコスト比較
まずは、クリニックを売却した場合と閉院した場合とでかかるコストの違いをみていきましょう。
| 項目 | 売却 | 廃院(閉院) |
| 売却代金 | 収入になる | なし |
| 税金 | 約20%(株式譲渡の場合) | 基本なし |
| 医療機器処分費 | 不要(引継ぎ) | 廃棄・売却費用が発生 |
| 内装解体 | 不要な場合が多い | 数百万円~ |
| スタッフ退職対応 | 引継ぎ可 | 退職金の支払い・解雇対応が発生 |
| 患者対応 | 診療を継続できる | 転院対応 |
| 合計 | プラスになる場合が多い | 数百万~数千万円の支出 |
クリニックを売却した場合
まず、クリニックを売却した場合、資産が現金化されます。
※ただし、前述した通り、売却は必ずしもうまくいくとは限らないため、あくまでも「売れた場合」となります。
【現金化される主なもの】
売却価格の目安
なお、売却価格の目安は、外来クリニックの場合、営業利益2~5年分といわれています。たとえば、年間利益が1,500万円の場合、売却価格の目安は3,000~7,500万円ということになります。
売却に必要な費用
売却に必要な主な費用は次の通りです。
たとえば、売却価格が8,000万円だとすると、税金は約1,600万円で、仲介手数料が約400万円だった場合、手取りは約6,000万円ということになります。
クリニックを閉院した場合
閉院する場合、基本的にはお金が出ていくのみです。
※ただし、医療機器を中古売却する場合などは、中古でも高く買い取ってもらえる医療機器があれば、その分はお金が入ってくることがあります。なお、売れたとしても、委託販売の場合は、手数料を差し引けばトントンなことがあります。
主なコスト
廃棄または中古売却または無料引取
費用目安:0円~300万円
テナントの場合はほぼ必要です。
費用目安:300万~1,000万円
ただし、坪数によって変動します。
退職金支払い、有休消化対応などが必要です。
また、結果的に解雇となることに対して不満なスタッフが声を上げた場合、その対応が必要になることもあります。
費用目安:100~500万円
カルテ保存(5年)、行政届出、患者転院対応などの手続きにも費用が発生します。
(閉院コスト総額の例)
解体費:500万円+医療機器処分:150万円+退職関連:250万円で総額900万円となることもあります。
売却が成立しにくいケースは?
「売却or閉院」を考えるまでもなく、そもそも売却が難しいケースもあります。具体的には、次のようなケースの場合、売却が成立しにくいと考えられます。
なお、これらの要素はすべて被っている場合もありますが(=立地が悪く、建物や設備も古いため、患者数が少なく赤字である)、「現状は赤字ではないものの、今後、人口が減少して患者数が減少することが見込まれる」などのパターンも考えられます。
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クリニックを親族承継する場合に必要な費用は?
クリニックの親族承継に関しては、第三者承継、廃院とは異なり、「実践できるクリニック」が限られています。なぜかというと、クリニックを継いでくれる子どもや親族が居なくては成り立たないためです。
クリニックを親族承継する方法とそれぞれに必要な費用
クリニックが個人経営の場合、特定の手続きをとることなく、事業をそのまま子どもや親族に引き継いでもらうことはできないため、次のいずれかの方法で承継しなくてはなりません。
生前贈与の場合は「贈与税」として最大55%、相続の場合は「相続税」として最大55%、事業所得の場合は「譲渡所得税」として約20%の税金を支払う必要があります。そのほか、税理士費用として20~100万円程度、廃業・開業手続きに数万円がかかります。
また、実際のところ、承継のタイミングで、電子カルテの乗り換えや医療機器の買い替え、内装リニューアルなどをおこなうことが多いため、「設備更新費」として500~3,000万円程度を見積もっておくとよいでしょう。金額を見ると高額に思えるかもしれませんが、立地条件がよく、患者数が少なくない場合、すぐに回収できる金額であると考えられます。また、土地や建物を購入して一から開業する場合と比べると遥かに安価です。
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クリニックの売却価格相場・価格に影響を与える要素は?
クリニックの売却価格は、立地、患者数、診療科、高額医療機器・不動産の有無、従業員の数や引き継ぎの有無などによって大きく異なります。そのため、一概にはいえませんが、相場としては1,000~4,000万円程度であるとされています。
立地や患者数はいいに越したことはありません。
なお、売却価格が高くなりやすい地域・低くなりやすい地域の特徴は次の通りです・
【売却価格が高くなりやすい地域】
都道府県で言うと、東京、神奈川、愛知、大阪、福岡などがこれに該当します。なかでも、駅前・医療モールは高値になりやすいです。
【売却価格が低くなりやすい地域】
これらの特徴に当てはまる場合、基本的に後継者が不足していて、医師の移住も少ないため、営業権(=クリニックが将来生む利益を数値化したもの)がほぼつかないケースも多くなります。
診療科に関しては、内科であれば比較的誰が継いでも差が出にくいため、売却価格に大きな影響を与えることはありません。一方、精神科や心療内科など、医師の能力に依存する診療科に関しては、承継後の収益の算定が難しいといわれています。
また、内視鏡やCTが必要な診療科であれば、それらの医療機器ごと、納得のいく価格でそろえることができる条件である場合、買い手が見つかりやすくなるでしょう。
土地や建物ごと売却する場合、そのぶんの価格も上乗せになるため、売却価格が上がりますが、「売り手がこれまでと同じ賃料で納得するか」などはスムーズに売却できるかどうかに関わってくるため、よく考えて価格を設定する必要があります。
従業員を引き継げることは、基本的には売り手にとってプラスとなります。なぜかというと、開業時に一から医師や看護師を探すとなると、別途、時間もコストも必要となるためです。
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クリニックの売却価格の算出方法は?
クリニックの売却価格の主な算出方法は、「時価純資産価額法」「DCF(ディスカウント・キャッシュ・フロー)法」「取引事例法」です。
時価純資産価額法
時価純資産価額法の計算式は次の通りです。
売却価格=時価純資産(資産-負債)+営業権(見込利益)
「資産」とは、医療機器や現預金、医療品在庫、不動産などを指します。
「負債」とは、借入金や未払金、リース残債などを指します。
「営業権」とは、クリニックが将来生む利益を数値化したものです。
営業権はどうやって算出するかというと、次の計算式を用います。
営業権=修正後利益×年買倍率
「修正後利益」とは、クリニック本来の収益力を示すために、決算書の利益を調整した利益のことです。具体的には、決算書の利益をそのまま使わず、一時的な費用や院長個人の支出などを調整します。
「年買倍率」は診療科によって異なりますが、目安としては、内科:2~4年、眼科:3~5年、整形外科:3~5年、皮膚科:3~6年、歯科:1~3年などといわれています。
たとえば修正後利益が年額1,500万円の内科の場合、1,500万円×3=4,500万円などとして算出します。
診療科ごとの年買倍率の目安と、相場が変わる理由
先に述べた通り、年買倍率は診療科によって異なります。主な診療科の年買倍率と相場が変わる理由は次の表の通りです。
| 診療科 | 年買倍率(目安) | 相場が変わる理由 |
| 内科 | 2~4年 | 患者数が多く安定 |
| 小児科 | 2~4年 | 地域密着型で患者固定 |
| 整形外科 | 3~5年 | リハビリ収益が安定 |
| 眼科 | 3~5年 | 検査・手術収益が高い |
| 皮膚科 | 3~6年 | 自費診療が入りやすい |
| 耳鼻科 | 2~4年 | 季節変動あり |
| 歯科 | 1~3年 | 競争が激しい |
DCF(ディスカウント・キャッシュ・フロー)法
DCFとは、将来生みだすキャッシュ・フローを現在価値に割り引いて企業価値を見出す方法です。
計算式は難解であるため割愛しますが、
「売却価格=クリニックのキャッシュ・フロー期待値を加重平均資本コスト(WACC)で割り引いた現在価値」ということになります。
取引事例法
取引事例法とは、同程度の規模・エリアなどのクリニック売却の過去の取引実績に基づいて評価する方法です。ただし、この方法を用いる場合、過去の取引価格が妥当であったかどうかを確認することも大切です。
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クリニック売却における「E-E-A-T」とは?
「E-E-A-T」とは、本来、Googleが検索品質評価ガイドラインで用いている概念ですが、最近は、医療機関の売却において、“買い手が評価する無形資産”を説明するフレームとして用いられることがあります。
Googleの「検索品質評価ガイドライン」に提示されている「E-E-A-T」はそれぞれ、Experience(経験)、Expertise(専門性)、Authoritativeness(権威性)、Trustworthiness(信頼性)を示します。
では、クリニック売却における「E-E-A-T」は具体的にはどのようなことを示すかというと次の通りです。
Experience(経験・実績)
地域医療における実績の評価です。たとえば、開業年数、患者数の安定、地域での知名度などが挙げられます。つまり、「地域のかかりつけ医としての実績」と言い換えることができます。たとえば、長きにわたる診療実績があれば、患者が離れにくいと考えられるため評価が高くなりますし、慢性疾患患者が多い場合も、継続収益になるため評価が高くなります。
Expertise(専門性)
衣装の専門性も、評価につながる重要な無形資産です。専門性とはたとえば、「美容皮膚科として、レーザー機器などの特殊設備を備えている」「白内障手術など、特定の検査や手術をおこなっている」「内視鏡専門外来など、専門外来である」などがあげられます。
専門性が高いほど、収益モデルが明確であるということになります。
Authoritativeness(権威性)
権威性とは、クリニックとしてのブランド力を意味します。たとえば、「学会専門医である」「メディア掲載実績多数」「医師会で役職についている」「地域病院と連携している」などが挙げられます。これらの要素に該当する者があれば、「患者紹介が多い」「地域医療ネットワークが強固である」などの特徴につながるため、クリニックとして競争力が高いということになります。
Trustworthiness(信頼性 )
信頼性は、医療業界においてはもっとも重要な要素です。評価されるポイントとしては、「患者満足度」「医療事故の有無」「スタッフ定着率」「口コミ評価」などが挙げられます。信頼性が高いほど患者離脱リスクが低いため、営業権が高くなります。
これら4つの要素に関しての評価が高いと、「時価純資産価額法」あるいは「DCF(ディスカウント・キャッシュ・フロー)法」で算出した場合の売却価格が高くなる傾向にあります。たとえば内科の年買倍率の目安は2~4年と述べましたが、E-E-A-Tによって2倍が適切であることもあれば4倍が適切であることもあります。
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クリニック売却において「手取り」を最大化する方法は?
クリニック売却において重要なのは、「売却価格」ではなく、最終的な「手取り」です。理由としては、先に述べた通り、クリニックを売却すると税金が生じることなどが挙げられます。
では、どうすれば「手取り」を最大化することができるかというと、次の方法が有効です。
それぞれ詳しくみていきましょう。
売却スキームを最適化する
クリニック売却は、現在の経営主体(個人か医療法人か)と売却スキームによって課税される税金が大きく変わります。手取りを最大化するためには、以下の基本構造を理解しておくことが不可欠です。
営業権(のれん)などの売却益に対して、総合課税として所得税・住民税がかかります。累進課税のため、利益が大きいと最大で約55%の税率となります。
出資持分(株式会社の株式に相当)を譲渡するスキームが一般的です。この場合、個人の譲渡所得となり、税率は一律で約20%(所得税15.315%+住民税5%)に抑えられます。
持分の譲渡対価を受け取れないため、理事長を退任する際の「退職金」として資金を受け取るスキームが基本となります。退職金(退職所得)は分離課税であり、長年の勤務期間に応じた控除枠があるため、非常に税負担が軽くなります。
このように、税率だけで考えると個人の事業譲渡は負担が重くなる傾向があります。自院の形態に合わせて、事業の法人化を挟むか、退職金スキームを組み合わせるなどの税務対策を事前に加味して考える必要があります。
修正後利益を最大化する
先に解説した通り、「時価純資産価額法」を用いた場合、「売却価格は=「時価純資産+(修正後利益 × 年買倍率)」で算出することになるため、利益が高いほど営業権が上がることになります。
そのため、不要経費の整理、私的経費の削減、赤字部門の整理などによって利益を上げる修正をおこなうケースが多いです。これによって、たとえば1,000万円の利益を1,500万円に修正したとして、年買倍率が3年の場合、1,500万円×3-1,000万円×3=1,500万円もの価格差となります。
売却タイミングを早める
クリニック売却においては、一般的に、院長の年齢が重要視されます。なぜかというと、院長の年齢が高ければ、患者離脱リスクやスタッフ退職リスクが高くなると考えられるためです。
一般的には、50代までであれば売却評価は高くなり、60代前半は平均的、65歳以上は低下する傾向にあります。
設備更新のタイミングを調整する
クリニックの設備更新直後は評価が上がる傾向にあります。たとえば、内視鏡やCT、OCTなどを更新した直後のタイミングなどを狙うといいということになります。
ただし、投資回収前に売却するとかえって損をしてしまう場合もあるため、更新価格や患者数、患者単価などをもとにベストなタイミングを考えることが必要です。
営業権を高める
営業権を左右する要素のうち、患者数、再診率、スタッフ定着率などは、クリニックの努力・工夫次第で上げることが可能です。これらが高くなると、年買倍率が変わってくるため、自ずと売却価格も高くなります。
実力のあるアドバイザーを選ぶ
クリニックの売却価格は、アドバイザーの実力によって20~30%前後変わることがあります。なぜかというと、「買い手ネットワークが充実している」「価格交渉力がある」「案件の見せ方がうまい」などの条件に当てはまる場合、買い手が高価格でも「買いたい」と挙手してくれる可能性が高くなるためです。
なお、アドバイザー選びのポイントについては後述します。
買い手の競争を作る
入札形式や複数トップ面談を採用することで、価格が1/5倍以上になる場合があります。
税務対策をとる
最終的に手取りを多くする対策としては、退職金活用、持株調整、配当調整などが挙げられます。これらの税務設計によって、数百万円~数千万円の差が出ることもあります。
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クリニック売却における、頼りになるアドバイザー選びのポイント
前述の通り、クリニック売却においては、アドバイザー選びが結果を大きく左右します、実務では、「よい案件でもアドバイザー次第で売却価格が数千万円低くなる場合がある」ともいわれるほどです。
では、どうすればよいアドバイザーを見極めることができるかというと、次のポイントをチェックすることが大切です。
それぞれ詳しくみていきましょう。
医療M&Aの実績の有無
クリニック売却をはじめとする医療関係のM&Aは、一般企業のM&Aとは違い、診療報酬やレセプト、地域医療などに関しての理解が不可欠です。そのため、医療M&Aの経験が少ないアドバイザーを選ぶとトラブルが生じやすい傾向にあります。
医療M&Aの実績を確認するために、直接的に実績件数を質問するのはもちろん、「同じ診療科の案件は扱ったことがありますか?」なども質問しておきたいところです。
なお、目安としては、医療案件の実績が10件以上あると安心だといわれています。
医療業界のネットワークの有無
買い手候補の多さは、売却価格に直結します。なぜかというと、買い手候補が多いと、競争入札や価格上昇が起こりやすくなるためです。そのため、アドバイザー選びの際には、「買い手候補は何社程度紹介可能ですか?」と質問することが大切です。
なお、医療業界のネットワーク例としては、医療法人、開業希望医師、医療系PEファンド、調剤薬局グループ、病院グループなどが挙げられます。
売り手側の利益を守る立場であるかどうか
M&Aアドバイザーは、仲介型とFA型の大きく2種類にわけられます。
前者の場合、1社が売り手と買い手の双方をサポートすることになります。そのため、成約に至りやすいというメリットがある反面、中立の立場であるため、売り手にとって有利な結果となるよう価格交渉してくれることは望めません。
後者の場合、売り手専属となってくれるため、売り手の利益を最大化してくれます。ただし、サポート費用が高くなりがちです。
なお、クリニック売却においては、「仲介型」のほうが多いといわれています。
秘密保持体制が整っているか
クリニック売却手続きを進めていくにあたっては、情報漏洩を徹底して防ぐことが大切です。なぜかというと、売却手続きを進めているという情報が洩れると、スタッフが離職したり、患者が不安になったり、あるいは売却が破談になったりする可能性があるためです。
そのため、秘密保持契約(NDA)やノンネームでの買い手探索を徹底しているか、情報開示の段階管理をきちんと実施しているかなどを事前に確認することが大切です。
手数料体系が明瞭か
クリニック売却にかかる手数料はアドバイザーによって異なります。一般的には「着手金」「中間金」「成功報酬」の3つが必要となるケースが多いですが、最近は着手金・中間金が無料の「完全成功報酬型」を採用する会社も増えています。事前によく確認することが大切です。
また、成功報酬の計算には「レーマン方式」が採用されるのが一般的です。レーマン方式の相場は、取引金額(または移動総資産)に対して以下のような料率となります。
ただし、クリニック案件は取引規模が数千万円単位になることも多いため、数百万~2,000万円程度の「最低成功報酬額」が設定されていることがほとんどです。手数料倒れにならないよう、自院の売却見込額と最低成功報酬額のバランスを必ず確認しましょう。
売却だけでなく「撤退」も提案するか
信頼できるアドバイザーは、「このままだと売却ができない」というケースに関しては、率直に伝えてくれます。たとえば、赤字過大、賃貸契約に問題がある、人材が不足している、といったケースなどが挙げられます。
売却が難しいと判断される場合、閉院、診療所譲渡、分院化などの選択肢も提示してくれます。
医療専門家チームの有無
医療専門税理士、社労士、弁護士、医療コンサルなど、複数の専門家がそろった医療専門家チームで対応してもらえるのであれば、安心してサポートをお願いできるといえます。
説明が「リアル」か
よいアドバイザーは、「売却まで1年かかることもある」「売却価格は希望通りにならないこともある」「スタッフ問題が最大リスクと考えられる」など、売り手にとってはあまり喜ばしくないことであっても、正直に伝えてくれます。
反対に、「必ず売れます」「高値で売れます」などの根拠のない営業トークを展開してくるアドバイザーは、避けたほうがいいのは間違いありません。
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失敗しないクリニック売却の手順と期間
クリニックの売却は、一般的に6か月~1年程度の期間を要すとされています。ただし、診療科や立地などの条件によっては、1年経っても買い手候補が現れないこともあるため、少しでも早く準備を進めていくことが大切です。
売却ステップは次の通りです。
Step1:経営状況を整理して、売却の目的を明確にする
Step2:M&A仲介会社やFAなどの専門家に相談する
Step3:売却条件を決定して、ノンネームシートや概要書を作成する
Step4:買い手候補と秘密保持契約(NDA)締結する
Step5:買い手候補のトップと「トップ面談」をおこなう
Step6:基本合意書(LOI)を締結する
Step7:デューディリジェンス(DD)が実施される
Step8:最終契約を締結してクロージングさせる
Step9:譲渡実行
それぞれ詳しくみていきましょう。
経営状況を整理して、売却の目的を明確にする
直近3期分の決算書および確定申告書、診療報酬明細書、資産台帳などを整理して、自院の収益力や負債状況を確認します。さらに、自院の強みと課題の両方を洗い出すことで、自院の市場価値を客観視します。
そのうえで、売却の目的と希望条件を定めます。売却の目的は引退であるのか別の事業を始めるためなのか、希望売却価格はいくらなのか、従業員の雇用は維持してほしいのかなど、具体的に定めていくことが大切です。
M&A仲介会社やFAなどの専門家に相談する
自院の経営状況および売却の目的、条件がまとまったら、それらを書き出したものを持参のうえで、M&A仲介会社やFAなどの専門家に売却について相談します。
専門家は、提供された情報をもとに簡易的な企業価値評価を実施して、売却可能価格の目安を提示します。売却可能価格は、希望する売却価格とはかけ離れた金額となる場合もあります。
相談の際には、市場動向や類似案件の成約事例などについても確認することが大切です。それらの情報をもとに、自院のニーズに合った専門家を選ぶことで、クリニック売却の成功率が高くなるためです。ただし、成功事例の件数が豊富であったとしても、アドバイザーと相性がよくないと感じる場合は、他の専門家を探すことも考えたほうがいいでしょう。なぜなら、前述の通り、クリニックの売却は一般的に6か月~1年程度かかるため、ソリの合わない相手と付き合っていくことにストレスを感じる可能性が高いためです。
売却条件を決定して、ノンネームシートや概要書を作成する
企業価値や市場相場を踏まえたうえで、希望売却価格や希望する譲渡時期・引継ぎ期間などの条件を固めていきます。
なお、自院が提示する条件を相手が100%飲んでくれるとは限らないため、絶対に譲れない条件と、交渉次第では妥協できる点についても整理しておくことが理想です。
条件を整理したら、クリニックの魅力をノンネームシートや概要書にまとめます。
買い手候補と秘密保持契約(NDA)締結する
ノンネームシートなどを通して自院に興味を持ってくれる買い手候補が現れたら、買い手候補と秘密保持契約(NDA)を締結したうえで、さらに詳しい情報を開示します。秘密保持契約(NDA)を交わしたうえで、クリニック名などの詳細な情報を開示することを「ネームクリア」といいます。
買い手候補のトップと「トップ面談」をおこなう
買い手候補が現れたら、売り手と買い手のトップ同士が直接会って話をする「トップ面談」を実施します。トップ面談の場では、経営理念や診療方針などを共有して、お互いの相性や信頼関係を確認していきます。
複数の買い手候補がいる場合、条件および相性を比較検討することによって、その後の交渉に進む相手を絞り込んでいきます。
基本合意書(LOI)を締結する
絞り込んだ相手と合意に至ったら、基本合意書(LOI)を締結します。基本合意書(LOI)には、譲渡価格、M&Aのスキーム、スケジュール、独占交渉権の有無などを記載します。
デューディリジェンス(DD)が実施される
基本合意書(LOI)を締結したら、買い手側がデューディリジェンス(DD)を実施します。財務や法務、税務、人事などの各側面から、クリニックの実態やリスクについて詳しく調査されることになります。この際、売り手側には、詳細を記した資料の開示や、買い手側が気になっていることの質問への回答が求められます。
デューディリジェンス(DD)によって、クリニックの隠れていた問題が発覚すると、破談または価格減額となる可能性があります。
最終契約を締結してクロージングさせる
デューディリジェンス(DD)を経て最終的な合意を得ることができれば、最終契約を締結して、譲渡を実行します。なお、譲渡を実行することを「クロージング」といいます。
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【実例】スタッフと患者を守る引き継ぎの極意
クリニックを売却するにあたっては、スタッフと患者を守ることを第一に考えることが大切です。
そのために重要なポイントは次の2つです。
それぞれ詳しくみていきます。
まず、情報漏洩を防ぐことがなぜ大事かというと、「クリニックが売却される」という噂が広まった結果、売却前にスタッフが辞めてしまったら、患者に質の高い医療を提供することが難しくなる場合があるためです。
また、クリニックとしては「自院の診療方針を引き継いでくれる医師に売却したい」と考えていたとしても、患者側は「クリニックが売却される前に他のクリニックを探さなければ」と焦って動き始め、結果として質の高い医療を受けられなくなる可能性があります。
もう1つのポイントであるスタッフの雇用維持に関しては、スタッフ側の気持ちを尊重することももちろん大切ですが、一方的に解雇にして、スタッフ側が路頭に迷うということだけは絶対に避けるべきです。そのため、まずはスタッフの雇用維持を条件に売却先を探すことを検討することが望ましいといえます。
あるいは、その条件だと売却が難しい場合に関しては、スタッフの転職活動にかかる時間などを考慮したうえで、売却スケジュールを設計していくことが大切です。
【成功事例】売却額より「スタッフの雇用維持」を最優先した院長の決断
続いて、クリニック売却において、スタッフと患者を守ることができた実例を紹介します。
ケース
地方都市の内科クリニック(医師60代後半)
背景
買い手候補
売却価格:1.2億円
条件:
売却価格:7,000万円
条件:
院長の判断
院長は次の理由で「地元医師B」を選択
(理由)
結果
【失敗事例】初期段階の情報漏洩によるスタッフ集団退職の危機
続いては失敗事例です。
ケース
都市部の整形外科クリニック
背景
失敗の原因
院長が早い段階でスタッフに相談
(理由)
「誠実に伝えたかった」
(結果)
1週間後、スタッフの1人が他院の看護師へ相談
↓
噂が拡散
↓
患者にも広まった
(起きた問題)
1ヶ月で看護師2人が退職、事務1人が退職
さらに、残ったスタッフは「このクリニックは潰れるのでは?」の不安を抱くことに
M&A交渉への影響
買い手がデューディリジェンス(DD)を実施したところ、
「人員不安」「売上低下」の調査結果に
買収価格は、当初提示していた9,000万円から4,500万円に半減
最終結果
交渉がまとまらず破談に
その後、スタッフがさらに退職して売上は30%減となり、最終的に閉院へ
この場合、失敗の原因は、「情報を公開するタイミングを誤った」ということになります。
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クリニック売却に関するFAQ
続いては、クリニック売却に関してよくある質問とその答えをみていきましょう。
Q. デューデリジェンス(DD)で指摘されやすいレセプト請求の適正性は?
買い手は、過去の診療報酬請求が適正であるかどうかを必ず確認します。なぜかというと、不適切請求があると、返還リスクが承継される可能性があるためです。
よく指摘される項目は次の通りです。
算定要件の不足
(例)
など
カルテ記載不足
DDでは、カルテ、レセプト、算定点数が突き合わせされます。
次のような場合、問題となります。
(例)
同日算定のミス
(例)
在宅医療の算定
(例)
これらを指摘されないようにするために、売却を進める前に、税理士や医療コンサルに簡易レセプト監査を依頼して実施するといいでしょう。
テナント賃貸借契約(大家との名義変更・承諾料)の交渉タイミングはいつがベストですか?
クリニック売却においては、テナント承諾が最大のリスクになる場合があるので、この点は特に注意が必要です。
まず、ベストなタイミングは、「基本合意(LOI)後」となります。それより早いと、売却が確定してはいないですし、遅すぎると、契約直前で破断するリスクが出てきます。
なお、大家が要求する者は次の通りです。
承諾料の相場は、賃料の1~6か月分といわれています。
赤字や院長が高齢の診療所でも買い手はつきますか?
結論としては、買い手がつく場合が多いといえます。なぜかというと、クリニック売却においては、現状赤字であるかどうかや、前院長の年齢よりも、立地などの条件のほうが重要視されるためです。
なお、買い手が特に評価するものは次の通りです。
また、たとえば院長が高齢で診療日数が少ないために売上が少なくなっているなら、買い手が改善することは十分可能です。
あるいは、設備が古いことから患者に選ばれにくくなっているなら、設備を入れ替えることによって売上が向上する可能性があります。
こうしたパターンについては、「再生案件」として買われることが多いです。
専門家への相談段階で情報が外部に漏れることはありますか?
専門家に相談するにあたっては、必ず秘密保持契約(NDA)を締結します。なお、この場合の秘密保持契約(NDA)は、先に述べた、買い手候補と結ぶものとは異なるものです。
秘密保持契約(NDA)を結べば、相談段階で情報が外部に漏れる心配は不要ということになりますが、知人からの紹介、あるいは税理士経由で買い手候補を探す場合などは、情報漏洩リスクが少なからずあると考えられます。
そのため、情報漏洩リスクをゼロにしたい場合、信頼できるM&A仲介会社にサポートしてもらうという選択肢をとることになります。
出資持分なし医療法人の場合、退職金スキームはどう活用すべきですか?
出資持分なし医療法人は、株式売却ができないため、院長の資金回収は主に退職金ということになります。退職金は税務上「退職所得」として扱われることになり、税負担は通常所得の1/2程度になるので、税制上のメリットは大きいといえます。たとえば、退職金が8,000万円であったとしたら、課税対象となるのはこのうち4,000万円で、4,000万円にたいして税率が適用されるということです。
まずは「自分の会社がいくらか」を知るところから
ジョブカンM&Aでは、専任アドバイザーが事業価値の簡易査定から成約まで一貫して伴走します。相談は無料。売却・買収のどちらでもお気軽にどうぞ。
まとめ:ハッピーリタイアへ向けた第一歩
いずれクリニックを売却したいと考えているなら、「そのうちに」と準備を先延ばしにするのではなく、少なくとも、現状の自院の企業価値を確認して、どんな買い手に継いでもらいたいのかを考えておくことはとても大切です。ただし、「少しでも高く売りたいから」と焦って売却して、スタッフや患者を路頭に迷わせてしまったり、院長自身が売ったことを後悔する結果になったりしては元も子もありません。理想の売却について考えること自体には早期に着手したとしても、「どうすれば自分も周りも納得の結果を得られるか」に目を向けて、ベストなタイミングで売却に向けて動いていくことが大切ですよ。
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ジョブカンM&A ジョブカンM&A編集部
ジョブカンM&Aは、株式会社DONUTSが運営するM&Aアドバイザリーサービスです。主に企業の事業承継、成長戦略、出口戦略(イグジット)といった多様なニーズに応えることを目的としています。最大の特徴は、累計導入社数20万社以上を誇るバックオフィス支援クラウドERPシステム「ジョブカン」の広範なネットワークを活用している点です。この強力な顧客基盤を生かし、効率的なマッチングを実現します。
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