アライアンスとは、二社以上の企業が協力し合い、それぞれの強みを活かしながら新しい価値を生み出していく経営戦略です。新規事業の創出はもちろん、新しい市場への進出などにも役立つ戦略ですが、効果を出すためには、戦略の特徴や活かし方を十分に理解しておくことが不可欠です。そこで今回は、アライアンスについて詳しく解説していきます。
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アライアンスの定義
まずは、アライアンスの定義から確認していきましょう。
アライアンス(Alliance)は、英語で「同盟」「提携」「連合」などを意味します。ビジネスの世界においては、「複数の企業が、それぞれの独立性は保ちながらも、協力関係を築いて共通の目的達成を目指す経営戦略」を意味します。
協力関係を築くそれぞれの企業が異なる強みを持っていれば、お互いの弱みを補い合うと同時に、強みを掛け合わせることで、単独では得られない大きなシナジー効果を生み出すことができます。
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アライアンスの目的
冒頭で述べた通り、アライアンスは、新規事業の創出や市場の拡大に役立てることができますが、そのほかにも、さまざまな目的のためにアライアンスが活用されます。代表的な目的をみていきましょう。
新規事業の創出・新規市場への進出
二社以上の技術やノウハウを掛け合わせることによって、これまでにない製品やサービスの開発や、これまでに参入していなかった市場への進出が叶いやすくなります。たとえば、発酵食品を扱う企業が、化粧品会社と提携して、美容成分にこだわったコスメブランドを立ち上げるなどのケースが該当します。
開発・販売のスピードアップ
新しい技術の開発・新しい販売網の構築には、膨大な時間とコストを要します。しかし、アライアンスによって、協力関係を構築する相手がすでに保有している技術や販売チャネルを活用すれば、開発・販売のスピードを飛躍的にアップさせることが叶います。
コスト削減
製品の生産設備や物流網などを提携先と共有することで、開発や流通にかかるコストを削減することができます。また、提携している全社で原材料を調達すれば、たくさん仕入れる分、仕入れ価格を値引きしてもらえる場合もあります。あるいは、物流拠点を共有することによって、配送コストを削減することなどもあります。
リスク分散
研究開発や未知の市場への進出など、成功が不確実なことにはリスクがつきものです。場合によっては、短期間で大きな資金を失ってしまう可能性もありますが、アライアンスによって複数の企業で投資すれば、二社以上でリスクを分担することができます。そのため、投資リスクを恐れずに挑戦しやすくなります。
ブランド価値・信頼性の向上
ブランドイメージが高い企業、業界内での評判がよい企業などと提携することで、自社のブランド価値や信頼性を高める効果が期待できます。特に、スタートアップや知名度の低い中小企業にとっては、このことは大きなメリットとなりやすく、アライアンスをきっかけに社会的な信用を得ることができます。
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アライアンスの種類
アライアンスは、大きく次の5種類にわけることができます。
- 業務提携
- 資本提携
- 技術提携
- 産学連携
- オープンイノベーション
それぞれ詳しく解説していきます。
業務提携
業務提携とは、アライアンスの提携先同士で技術や人材などの経営資源を提供しあって、協力して事業をおこなうことを意味します。技術やノウハウを共有して高め合い、市場シェアの拡大や売上アップをはかったり、「共同開発」「共同販売」といった形で、足りない部分を補い合いながら売り上げを拡大したりします。
収益構造が強化されて、新規市場の開拓にもつながることから、顧客満足度も向上しやすい一方、組織文化や業務プロセスの違いなどが原因で、事業の展開方針などについて意見がまとまらないこともあります。
資本提携
資本提携とは、提携先と資金面で協力することを指します。お互いにお互いの株式を持ち合うか、あるいは、一方が提携先の株式を取得するかのいずれかによって、資金面での協力関係を築きます。
株式の取得を伴うと、業務連携だけの場合に比べて、より強力な連携関係へと発展することが期待できます。
技術提携
技術提携とは、提携先と技術面で協力することを意味します。技術やノウハウを持ち寄ったり提供を受けたりする「共同研究開発契約」や、自社の新製品開発のために提携先の特許技術を使わせてもらう「ライセンス契約」なども、技術提携の一つだととらえることもあります。
産学連携
産学連携とは、大学をはじめとする教育・研究機関と企業が連携して、新規事業や技術開発を推進する取り組みのことです。教育・研究機関が培ってきた技術や知見などを企業が活用して、実用化や産業化へ結びつけることもあります。
産学連携については、半導体・再生医療・環境技術など幅広い分野での成功事例があります。最近でいうと、青色発光ダイオードの実用化も、産学連携の成功事例にカウントされます。
オープンイノベーション
オープンイノベーションとは、自社以外の組織や機関が有している技術などのリソースを用いて、自社のイノベーションを促進する取り組みをいいます。提携先は異業種企業のこともあれば、大学や地方自治体などのこともあります。
社外の技術や知識を取り入れる「オープンイノベーション」に対して、社内で研究開発を完結させることを「クローズドイノベーション」といい、従来は企業のイノベーションといえば後者を意味していました。しかし、技術の高度化や複雑化が進んだことで、一企業の力だけではイノベーションを生み出すことが難しくなり、オープンイノベーションという取り組みが普及していくことになりました。
なお、オープンイノベーションのはじまりは2003年で、アメリカの研究者、ヘンリー・チェスブロウによって提唱されています。
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なぜ今、アライアンスが注目されているのか
アライアンスがどういうものであるのかがあらかたわかったところで、昨今、アライアンスが注目されている理由に目を向けていきましょう。
アライアンスが注目されている理由は、主に5つ挙げられます。
- 不確実性の時代になった
- 技術の高度化・複雑化が進んでいる
- スピード競争が激化している
- 投資負担が増大している
- 「エコシステム型競争」に変わってきている
それぞれ詳しく解説していきます。
不確実性の時代になった
- 市場の変化が速い(景気・技術・規制)
- 需要の予測が難しい
- 競争がグローバル化している
などの理由から、1社のみで投資・判断を抱えると失敗リスクが大きい時代であるといえます。
一方、アライアンスを活用すれば、リスクを分散することが可能となり、もしも失敗した場合も大きなダメージを負うことがなく済みます。
技術の高度化・複雑化が進んでいる
技術の高度化・複雑化が進み、異なる分野を掛け合わせなくては、市場でシェアを取りにくい時代になってきています。
たとえば、次のような掛け合わせが挙げられます。
- 医療×IT
- 自動車×AI×半導体
- 小売り×データ分析×物流
そのため、“強みを持ち寄り”“弱みを補完できる”アライアンスの注目度が高まっています。
スピード競争が激化している
新サービス、新技術、新規事業などを“出した者勝ち”の傾向が強まっています。しかし、自前主義だと、新しいものを生み出すことには膨大な時間がかかります。
その点、アライアンスなら、既存の技術・顧客基盤を活用できるため、開発・展開スピードが上がります。
投資負担が増大している
DX投資、人材確保、グローバル展開などにかかるコストを単独でまかなうには負担が大きすぎます。
その点、アライアンスなら、投資を分担できるため、コスト効率が改善されます。
「エコシステム型競争」に変わってきている
ビジネスにおける「エコシステム」とは、複数の企業や組織がつながって、1つの価値を生み出す仕組みを意味します。エコシステムの本来の意味は“生態系”で、植物や動物、微生物がそれぞれに影響し合って全体が成り立っていることを指しますが、これと同様に、企業同士が役割分担して、1つのサービス・価値を作る構造が、ビジネスにおけるエコシステムです。
たとえば、AppleはiPhone本体やOSを作っていますが、アプリを提供する企業、支払機能を提供する決済会社、回線を提供する通信会社のすべてがそろって初めて、iPhoneが便利なツールとなります。Amazonも、プラットフォーム単体では完結することなく、出品者や物流会社、決済が不可欠です。
世の中のこうした変化に伴い、顧客側も「全部セット」を求めるようになったことから、「複数企業の連合vs複数企業の連合」という構図が台頭してきています。プラットフォーム企業を中心に、複数企業が連携して価値を提供するスタイルが普及しているということです。
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アライアンスとM&Aの違い
アライアンスとM&Aは、「単独企業では足りない部分を外部から取り込む戦略」という点においては共通しています。そのため、アライアンスとM&Aは混同されることがありますが、この2者には「経営権が移転する/しない」という決定的な違いがあります。
また、それ以外にもいくつか違いがあるので、詳しく解説していきます。
| アライアンス | M&A | |
| 目的 | 複数企業で協力して目的を達成 | 合併・買収による支配権獲得 |
| 経営権 | 移転しない | 移転する(買収側が経営権を握る) |
| 契約形態 | 業務提携契約、資本提携契約、技術提携契約など | 株式譲渡契約、合併契約、事業譲渡契約など |
| 資本関係 | 必須ではない(資本の移動を伴わない場合がある) | 必須(株式の取得などが伴う) |
| 撤退のしやすさ | 比較的容易(契約の解消によって関係が終了する) | ハードルが高い(再売却や組織再編、清算などが必要となる) |
目的
まずは目的の違いをみていきましょう。
アライアンスの目的は、先にも解説した通り「協力」です。2社以上の企業が、それぞれの経営資源を持ち寄って、共通の目標達成を目指して協力し合います。互いの独立性を尊重したうえでの連携が前提であるため、“柔軟なパートナーシップ”といえます。
一方、M&Aの目的は「支配」や「統合」です。“M&A”は、Mergers(合併)とAcquisitions(買収)の略ですが、合併や買収によって、他社を自社グループに取り込み、経営の支配権を握ることを目的としています。なお、支配権獲得のその先にある目的は、市場シェアの拡大や事業の多角化、サプライチェーンの垂直統合などが挙げられます。
経営権
アライアンスにおいては、原則として経営権が移転することはないため、各社が独立性を保つことができます。共同で事業を運営するために、必要に応じて委員会を設置するなどして意思決定をおこなうことはありますが、これによって各社の経営方針や組織体制を変えなければいけないということもありません。
一方、M&Aにおいては必ず経営権が移転します。合併の場合、複数の企業が一つの新しい法人格に統合されるか、あるいは一方の企業が他方を吸収することになりますが、いずれの場合も、経営権が消滅、あるいは統合される企業が出てきます。買収の場合、買い手企業が売り手企業の株式の過半数を取得することによって、売り手企業の経営権を掌握します。
契約形態
アライアンスは、先に解説した通り5つの種類にわけることができますが、種類や目的によって、柔軟に設計した契約を結びます。
たとえば次のような契約が挙げられます。
- 業務提携契約: 業務提携をおこなうにあたって、生産、販売、技術開発など、特定の業務における協力内容を定める契約です。
- ライセンス契約: 一方が有している特許や商標などの知的財産権を、他方が使用することを許諾する契約です。
- 共同開発契約: 新しい技術や製品を共同で研究開発するにあたって、役割分担や成果物の帰属などを定める契約です。
一方、M&Aにおいては、会社法などの法律に基づいて、株主や債券の保護などの法的要件を満たしたうえで契約を結ぶ必要があります。
たとえば、次のような契約が挙げられます。
- 株式譲渡契約: 売り手が保有している株式を、買い手に譲渡するための契約です。
- 事業譲渡契約: 特定の事業のみを売買するための契約です。
- 合併契約: 複数の会社が一つになるための条件を定めた契約です。
- 会社分割契約: 会社の一部を切り出して新しい会社を設立したり、既存の他社に承継させたりするための契約です。
資本関係
アライアンスにおいては、資本の移動は必須ではありません。5種類のアライアンスのうち、業務提携では、資本の移動を一切伴うことがありません。
一方、M&Aでは資本関係の構築が前提です。合併の場合、消滅する会社の株主に対して、存続会社の株式が割り当てられるなどの資本再生が伴います。買収の場合、相手企業の株式を取得することによって、経営権を掌握することになります。
撤退のしやすさ
アライアンスは、関係性の解消が比較的容易です。業務提携の場合、あらかじめ決めておいた契約期間の満了に伴い関係解消となりますし、解除条項に基づいて一方または双方が解約を申し入れることでも関係を解消できます。
これに対してM&Aの場合、撤退は簡単ではありません。たとえば、買収した企業や事業の業績が振るわず、再売却や清算をするにしても、膨大な時間とコストを要します。しかも、簡単に買い手が見つかるとは限らないうえ、統合させた組織やシステムを再び切り離す作業は極めて難易度が高いです。
アライアンスとM&A、どちらを選ぶべきか?(判断基準)
ここまで解説した違いを踏まえると、自社の状況に応じて以下のような判断基準を持つことが重要です。
- アライアンスを選ぶべきケース
未知の市場への参入や新規事業の立ち上げなど、不確実性が高くリスクを抑えたい場合に向いています。また、自社の独立性を保ちながら、特定の技術・ノウハウや販売チャネルのみを一時的に活用したい場合にも適した戦略です。
すでにビジネスモデルが確立しており、「時間を買いたい(一気に市場シェアや販路を獲得したい)」場合に有効です。また、相手企業のコア技術や優秀な人材を完全に自社に取り込み、経営権を握って長期的な競争優位性を築きたい場合には、M&Aを選択すべきだといえます。
自社の経営戦略のフェーズや、許容できるリスクの度合いに応じて最適な手段を選択してください。判断に迷う場合は、M&Aやアライアンスに精通した専門家やアドバイザーに相談して客観的な意見を求めるのも有効な手立てです。
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アライアンスのメリット・デメリット
続いては、アライアンスのメリット・デメリットを解説していきます。
アライアンスのメリット
アライアンスのメリットは次の通りです。
- 企業の独立性を維持できる
- 自社にない技術やノウハウを活用できる
- リスクを抑えて事業を拡大できる
- シナジー効果が期待できる
- 手続きの手間が少ない
それぞれ詳しく解説していきます。
企業の独立性を維持できる
アライアンスにおいては、企業の経営権が移転することがないため、自社の企業文化や雇用を守りながら、外部の力を活用することができます。そのため、経営権が移転するM&Aと比べて、より気軽に実践しやすいといえるでしょう。
しかも、提携の範囲を特定の事業やプロジェクトに限定することができるため、提携している部分以外に関しては、通常通りに事業を進めていくことができます。提携が終了しても自社の経営基盤が揺らぐことがないため、従業員としても安心できるといえます。
自社にない技術やノウハウを活用できる
先に解説した通り、アライアンスには、「互いの強みを持ち寄って弱みを補完し合う」という特徴があります。これによって、新しい技術や商品を生み出すために必要な時間やコストを削減することが叶うため、新製品や新サービスをスピーディに市場に投入することができます。
リスクを抑えて事業を拡大できる
新規事業の立ち上げや新しい市場への参入には、通常、多額の初期投資が必要です。設備投資、人材確保、マーケティング費用などのすべてを一社でまかなうことは容易ではありません。しかも、新規事業や新しい市場への参入は必ず成功するとは限らないため、初期費用を回収できない可能性もあります。そのため、複数企業でリスクを分散できることは大きなメリットであるといえます。
また、前述の通り、撤退が容易であることも、「リスクを低減させながら事業の拡大にチャレンジできる」ということになります。
シナジー効果が期待できる
提携先同士の強みを掛け合わせることによって、シナジー効果が生まれることが期待できます。たとえば、互いの販売チャネルや顧客基盤を相互に活用すれば、売上を飛躍的に伸ばすことができます。原材料を共同で大量購入することによって原材料を値引きしてもらうことができれば、コストの削減を実現できますし、物流網を共有すれば、物流コストを削減することも可能です。また、共同で研究開発をおこなえば、より高度な技術や製品が生まれる可能性が高まりますし、信頼度や知名度の高い企業同士の提携であれば、互いのブランドイメージが向上することが期待できます。
手続きの手間が少ない
M&Aは、相手の選定に始まり、デューディリジェンス、最終契約、クロージングなどさまざまな手続きを踏む必要があります。これに対してアライアンスは、資本移動を前提とすることなく、業務範囲を限定した協力関係を構築できるため、契約締結までのフローが簡素化されており、手続きに手間がかかりません。
アライアンスのデメリット
アライアンスのデメリットは次の通りです。
- 期待した成果が得られない場合もある
- 技術やノウハウが流出する可能性がある
- 提携先をコントロールすることはできない
それぞれ詳しく解説していきます。
期待した成果が得られない場合もある
アライアンスによって、必ずしも期待していた効果が出るというわけではありません。その点に関してはM&Aも同じではありますが、M&Aは、実施する前に必ずデューディリジェンスをおこなうぶん、うまくいかないリスクは低くなると考えられます。
技術やノウハウが流出する可能性がある
お互いの技術やノウハウを共有することは、自社に大きなメリットをもたらしてくれますが、自社の技術やノウハウを相手に開示するということは、それらを盗まれる可能性もあるということです。なお、秘密保持契約(NDA)を結ぶことによって情報漏洩のリスクを低減させることはできますが、それでも、リスクをゼロにすることは難しいと考えられます。
提携先をコントロールすることはできない
先に解説した通り、アライアンスにおいては資本の移動が必ずしも伴うわけではありません。つまり、相手企業の経営方針や事業執行などを統制することはできないということです。そのため、相手の事情によって、互いに協力すべきことの優先順位が後回しにされたり、一方的に関係を解消されたりすることもあり得ます。
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失敗しない提携のコツ(アライアンスを結ぶ際の注意点)
前述したデメリットを最小化し、アライアンスを成功に導くためにも、失敗しないための提携のコツとして次の点に注意することが大切です。
- 目的や目標を明確にする
- 提携先選びは慎重に
- お互いの利益を尊重する
- 契約を遵守する
- 協力し合ってシナジー効果の最大化を目指す
- 定期的に情報を共有する機会を持つ
それぞれ詳しく解説していきます。
目的や目標を明確にする
アライアンスの目的や目標が曖昧なままだと、関係者全員が同じ方向を向いて進んでいくことができません。つまり、失敗する可能性が高くなるということです。それを防ぐためにも、パートナー企業と組む前に、「アライアンスによって顧客や市場にどのような価値を提供したいのか」「いつまでにその目標を達成したいのか」などを言語化して、関係者一同で共有することが大切です。
提携先選びは慎重に
どんな企業であれば、アライアンスによって自社の目的、目標を達成できるかをよく考えることはとても大切です。なお、パートナー選びの際には、「高いシナジー効果が期待できるか」だけでなく、「長期的に信頼関係を築ける相手であるかどうか」も見極めることが大切です。アライアンスは、一社のみが利益を得ている状態になると関係性が長続きしません。また、お互いに信頼・尊敬し合える関係であって初めて、Win-Winの関係を築くことができるといえます。
お互いの利益を尊重する
アライアンスにおいては、企業の関係は対等です。M&Aのように、経営権が移転することもないため、一方が支配権を持つことがありません。そのため、お互いに相手の利益を尊重して、良好な関係を築き、長期的に利益を生み出せるよう考えることが大事です。
契約を遵守する
前述の通り、アライアンスにおいては技術やノウハウが流出するリスクがありますが、いうまでもなく、流出させることは重大な契約違反です。流出させられたほうが困るのはもちろん、流出させたほうは社会的信用が失墜することになります。そのため、関係者全員で契約内容を確認して、秘密保持契約(NDA)によって、お互いに契約を遵守する意識をしっかりと持つことが大切です。
また、提携期間中や修了後、競合する事業をおこなわないとする「競業避止義務」、どのような場合に契約を解除できるのか、その場合、どのような手続きをとるのかを示した「契約解除条項」、トラブルが発生した場合、どの裁判所でどんな法律に基づいて解決するのかを定めた「紛争解決条項」などについても、契約書に盛り込んでおくと安心です。
協力し合ってシナジー効果の最大化を目指す
前述の通り、アライアンスによるシナジー効果は必ずしも出るというわけではありませんが、関係者全員で、効果の最大化を目指せるかどうかによって、結果に大きな違いが出やすいといえます。少なくとも、一方がいい加減な対応で、途中で関係を解消する可能性が高いと考えられる場合などは、アライアンスを結ぶことを辞めておいたほうがいいでしょう。
定期的に情報を共有する機会を持つ
アライアンスの提携開始後は、定期的に情報を共有する機会を持つことが非常に大切です。たとえば、週次の進捗確認会議や月次のレビュー会議をおこなったり、四半世紀ごとの戦略会議で経営層にも進捗状況を報告したりといったことが考えられます。その際、よい情報だけでなく、トラブルや計画の遅れなどのマイナスな情報についてもきちんと報告することが、信頼関係を維持するために不可欠です。問題の隠蔽や報告の遅れは、後から発覚すると大きな問題になりかねないため、注意が必要です。
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アライアンスの進め方
アライアンスは、次の4つのステップで進めていきます。
- Step1:戦略の策定
- Step2:提携先企業の選定
- Step3:契約の締結
- Step4:提携の実行および定期的な見直し
それぞれのステップについて詳しくみていきましょう。
戦略の策定
前述の通り、アライアンスに踏み切るにあたっては、事前に目的・目標を明確にすることが不可欠ですが、目的・目標を設定するためには、前段として自社の現状を分析する必要があります。「自社にはどのような経営資源が不足しているのか」「市場における自社のポジションはどこか」などを洗い出すことによって、アライアンスで補完すべきことが明らかになっていきます。
また、目的・目標は「新製品の開発」「新規市場の獲得」などの漠然としたものではなく、「2年後までに○○市場でシェア○%を獲得する」など、測定可能なKPIであることが大切です。
具体的な目的・目標が決まったら、どういったアライアンス形態が最適であるのかを考えます。たとえば、自社にない技術を一時的に利用したいなら「技術提携」、販売網を拡大したいなら「販売提携」といった選択肢が考えられます。
アライアンスの目的や目標が明確であればあるほど、どんな企業とどんな形で提携するのがベストであるのかがクリアになります。
提携先企業の選定
提携先企業を選定するにあたっては、まず、候補となる企業をリストアップします。展示会やセミナー、業界専門誌、コンサルティング会社からの紹介、調査会社のレポートなどを活用して、できるだけ多くの候補を挙げることからはじめましょう。
リストアップが完了したら、アライアンスの目的・目標を果たすために適した相手であるかどうかを再度考えながら、候補を絞っていきます。候補を絞る際には、次のような項目を判断基準とするといいでしょう。
- 戦略面:自社の戦略目標にフィットするか
- 事業面:事業内容や販売網などに補完性があるか
- 財務面:経営基盤が安定しているか
- 文化面:企業文化や価値観、意思決定のスピードが自社にフィットするか
絞り込んだ複数社にアライアンスを打診して、先方も興味を示した場合、トップ同士の面談や担当者レベルでのミーティングを通じて、提携の実現可能性および企業同士の相性を探っていくことになります。
ミーティングなどを経て、最終的な提携候補が1~2社にまで絞られたら、M&Aほど厳格である必要はありませんが、デューディリジェンスを実施することで、提携に問題がないかを確認することが大切です。
契約の締結
パートナー候補の企業との間で話がまとまったら、契約を締結します。契約を締結するにあたっては、主に次の項目について詳細を決めて、お互いに確認することが大切です。
- 役割分担: お互いの役割
- 費用負担: 発生するコストをどのように分担するのか
- 収益分配:得られた利益をどう配分するのか
- 知的財産権の帰属: 共同で生み出した知的財産の権利はどちらに帰属するのか
- 意思決定プロセス: 提携事業に関する意思決定をどのようにおこなうのか。協議体を設置するのかなど
- 契約期間および更新・終了条件: いつまで提携を続けて、どのような場合に終了するのか
各項目の内容についてお互いに合意したら、法的に有効な契約書に落とし込みます。この際、アライアンス契約に詳しい弁護士などの専門家にサポートしてもらうことが大切です。
なお、アライアンス提携においては、最終契約書のみでも正式な契約となりますが、条件の詳細を決める前に、基本合意書(MOUあるいはLOI)を締結する場合もあります。基本合意書は法的拘束力を有してはいませんが、詳細を詰める前に基本合意書作成のために条件を文書化しておくことで、その後の契約がスムーズに進みやすくなります。
提携の実行および定期的な見直し
最終契約書を交わしたら、各社から適切な人材を選出して、共同プロジェクトチームや運営委員会などを発足させて、責任者、実務担当者、ホウレンソウのルートなどを決めていきます。
続いて、契約内容およびKPIに基づいた具体的なアクションプランを作成して、実行に移していきます。アクションプランの進捗は定期的に確認して、必要に応じて、適宜、修正をおこなうことが大切です。
また、一定期間が経過したら、アライアンスの成果を客観的に評価するとともに、提携企業との関係性を見直します。期待通りの成果が出ている場合、提携範囲の拡大や、関係深化を検討するのも一手です。反対に、成果が出ていない場合、原因を分析して提携の仕方を見直すか、あるいは契約条件の変更や提携解消についても考える必要があります。
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「撤退(Exit)」の基準とは?
前述の通り、アライアンスで思うような成果が出ない場合や、信頼関係が崩れた場合などは、契約期間が終了していなくても、関係性を解消することを考えたほうがいい場合があります。
ただし、問題が起きて初めて、「撤退しよう」と考えて動き始めるのでは損失が拡大する可能性が高いので、予め「撤退ライン」を設定しておくことが大切です。
撤退ラインの基本設計
アライアンスの撤退ラインは、次の3段階で設計すると実務的に昨日します。
- 1 成果KPI(うまくいっているか)
- 2 プロセスKPI(進み方が健全か)
- 3 構造リスク(続けると危険か)
この3つを“数値+期限”で決めるのが鉄則です。
成果KPIでの撤退ライン
- (例)
- 売上:◯億円未達が◯ヶ月続いたら見直し
- 利益:黒字化できない状態が◯年継続したら見直し
- 顧客数:成長率◯%未満が継続したら見直し
- ( 設計のコツ)
- 「単月」ではなくトレンドで判断する
- 最低でも6〜12ヶ月の評価期間を設ける
これらは、短期ブレで撤退しないために重要です。
プロセスKPI
失敗するアライアンスの多くは、“結果が出ない前に兆候が出ている”のに見逃したことが原因で、軌道修正できないまま関係性を終了するに至っています。
- 【典型的な撤退シグナル】
- 意思決定に毎回時間がかかる
- 会議ばかりで実行が進まない
- 担当者レベルで温度差がある
- 相手がリソースを出さない
これらのシグナルを見逃さないよう、各項目について、たとえば次のように数値を決めておくことが大切です。
- 【数値化の例】
- 意思決定リードタイム:◯日以内
- プロジェクト遅延率:◯%以内
- 投入リソース(人員・予算):約束比◯%以上
構造リスク
構造的に問題がある場合、「うまくいく・いかない」以前の問題ということになります。
- 【撤退すべき代表例】
- 戦略の方向性がズレた
- 相手の経営方針が変わった
- 競合関係に入った
- 情報漏洩リスクが高まった
これらは、1つでも該当したら即撤退レベルであると考えましょう。
フェーズ別の撤退ライン目安
次のように、フェーズ別に撤退ラインを決めておくことも非常に有効です。
フェーズ1(立ち上げ:0〜6ヶ月)
- PoC達成率◯%未満 → 見直し
- 意思決定遅延◯回以上 → 警告
フェーズ2(拡大:6〜18ヶ月)
- 売上目標未達(◯%未満)→ 再設計
- 投資回収見込みなし → 撤退検討
フェーズ3(収益化:18ヶ月〜)
- 黒字化不可 → 撤退
- シナジー実感なし → 撤退
「撤退ライン」が機能しない主な理由とは?
次のような場合、撤退ラインが機能しにくいため注意が必要です。
- 「そのうち良くなる」と先延ばし
- 撤退条件が曖昧
- 現場に判断権がない
- メンツ・関係性を優先する
特に、「関係が悪くなるのが怖くて撤退できない」というケースは多いといえます。こうした状況に陥ることを防ぐためにも、撤退ラインは契約前にきっちり決めておくことが大切です。関係性ができてからだと、判断が甘くなったり、冷静に判断できなくなったりすることもその理由です。
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【実例】アライアンスの成功事例と失敗事例
続いては、アライアンスの成功事例と失敗事例を見ていきましょう。
【成功事例】Apple × Nike
成功事例1つめは、「Apple×Nike」です。NikeのランニングシューズとiPodを連携させて、運動データを可視化させる仕組みが構築されています。
成功理由
- お互いの強みが明確(Apple=技術、Nike=スポーツブランド)
- 顧客体験を拡張(単なる製品→「体験」へ)
- 目的がシンプル(ランニングを楽しくする)
お互いの強みを活かした補完関係を構築しながら、顧客価値を拡張させた好事例です。
【成功事例】Starbucks × Spotify
店内音楽とアプリを連動させることで、顧客が音楽にスムーズにアクセスできるようになりました。
成功理由
- ブランドの世界観が一致(ライフスタイル提案)
- データ連携で新しい価値を創出
- 「コーヒー+音楽」という自然な組み合わせ
この事例は、ブランド親和性の高さが大きなポイントとなっています。
【成功事例】トヨタ自動車 × パナソニック
EV・電池分野での共同開発をおこなったことは、多くの人が知るところとなっています。
成功理由
- 長期戦略が一致(EVシフト)
- 巨額投資を分担できる
- 技術的シナジーが大きい
リスクを分散させながら、長期ビジョンを共有できたことで、高い成果を生み出した事例です。
【失敗事例】Microsoft × Nokia
Microsoft(ソフト/Windows Phone)とNokia(ハード/スマホ端末)は、2011年、スマホ事業での提携を発表しています。しかし、アライアンスでうまくいかなかったことから、2014年、コントロール強化のためにMicrosoftがNokiaの端末事業を買収しています。つまり、アライアンスからM&Aに移行しているということです。
失敗理由
- 市場の変化(iOS・Androidに敗北)
- 意思決定の遅さ
- エコシステム構築に失敗
この事例では、アライアンスの「相手を完全にはコントロールできない」という特徴によって意思決定が遅くなり、スピードを上げるためにM&Aに踏み切るに至っています。しかし、結果的には買収後もうまくいかず、巨額な減損となっています。
【失敗事例】ソニー × エリクソン
ソニーとエリクソンは、2001年、50:50の出資比率で共同出資の合弁会社(ジョイントベンチャー)を設立して、携帯電話の共同事業に着手しています。しかし、思うような結果を出すことができず、2012年、ソニーが全株式を取得して完全子会社化するに至っています。つまり、この時点でM&Aに移行しているということになります。
失敗理由
- スマホシフトへの対応遅れ
- ブランド戦略の迷走
- 意思決定の複雑化
共同運営は意思決定が遅くなりやすいことから、変化の速い業界の場合、特に注意が必要です。
≪成功と失敗の分かれ目≫
上記をまとめると、アライアンスの成否をわける要素は次の通りであるといえます。
- 1 戦略の一致
成功:同じ未来を見ている
失敗:短期目的がバラバラ
- 2 役割の明確さ
成功:お互いの強みを活かした補完関係を構築
失敗:役割が重複・曖昧
- 3 実行力(スピード・文化)
成功:意思決定が速い
失敗:文化衝突・調整コスト過大
まずは「自分の会社がいくらか」を知るところから
ジョブカンM&Aでは、専任アドバイザーが事業価値の簡易査定から成約まで一貫して伴走します。相談は無料。売却・買収のどちらでもお気軽にどうぞ。
FAQ(よくある質問)
続いては、アライアンスに関してよくある質問とその答えをみていきましょう。
航空会社のアライアンスとは何ですか?
航空会社のアライアンスとは、“複数の航空会社が1つのネットワークのように連携する仕組み”です。冒頭で述べた通り、アライアンス(Alliance)は英語で「同盟」「提携」「連合」などを意味しますが、航空アライアンスは、複数の航空会社が提携し合っている状態ということになります。
なぜ、航空会社はアライアンスを組むのかというと、航空業界は単独で世界中に路線を持つことは非現実的で、また、単独でグローバル競争に勝つことが難しいためです。そこで、「競争しつつ、一部協力する」という、ビジネスにおけるアライアンスとは少々違った形のアライアンスとなっています。
なお、代表的な航空アライアンスは次の通りです。
ワンワールド
- 主な加盟航空会社:日本航空(JAL)、American Airlines など
- 特徴:高品質・ビジネス利用に強い
スターアライアンス
- 主な加盟航空会社:全日本空輸(ANA)、Lufthansa など
- 特徴:世界最大規模、路線網が圧倒的
スカイチーム
- 主な加盟航空会社:デルタ航空、エールフランス など
- 特徴:欧州・米国路線に強い
「アライアンス営業」とは何ですか?
アライアンス営業とは、単独では届かない市場にアクセスするために、他社と組むことをいいます。パートナー企業の顧客・商品・販路などを活用して、売上を生み出すことが特徴です。
具体例は次の通りです。
IT企業 × コンサル企業
- IT企業:システムを提供
- コンサル:顧客課題を発見
コンサル企業が案件を持ち込み、IT企業が受注することで双方に売上が立つ仕組みを作ります。
銀行 × 不動産会社
- 銀行:住宅ローン
- 不動産:物件販売
顧客を相互紹介することで、クロスセル(顧客が購入を検討している商品・サービスに関連する別の商品・サービスを提案してセット購入を促す販売手法)を実現します。
病院 × 民間企業
- 病院:患者基盤
- 民間企業:サービス(健診・ITなど)
新しいサービスを共同提供します。
アライアンス営業で高い成果を出すためには、「パートナー企業との関係」「売上を上げるための仕組み」を作る力が重要になってきます。
長期的視野を持って利害関係を調整してビジネス全体を設計すると同時に、パートナー企業を含めた関係者との人間関係を上手に構築していくことが、成功の鍵となります。
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アライアンスをうまく活用すれば、事業の大きな成長が見込める
先に解説した通り、アライアンスはM&Aと比べて手軽に実行できるうえ、成功すれば高いシナジー効果を獲得できるので、自社の弱い部分を補いながら大きく成長したい企業には向いているといえるでしょう。ただし、目的や目標を明確にして、パートナー企業と協力し合いながら効果の最大化を目指さなければ、失敗に終わる可能性も高いといえます。手軽に実行できるからといって、曖昧なイメージのままプロジェクトを進めることなく、計画段階から入念に準備して進めていくことが肝心ですよ。
この記事は、時点の情報を元に作成しています。
ジョブカンM&A ジョブカンM&A編集部
ジョブカンM&Aは、株式会社DONUTSが運営するM&Aアドバイザリーサービスです。主に企業の事業承継、成長戦略、出口戦略(イグジット)といった多様なニーズに応えることを目的としています。最大の特徴は、累計導入社数20万社以上を誇るバックオフィス支援クラウドERPシステム「ジョブカン」の広範なネットワークを活用している点です。この強力な顧客基盤を生かし、効率的なマッチングを実現します。
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