新設分割の資本金の「決め方」完全ガイド|法務・会計・税務上の注意点

新設分割とは、既存の会社が自社の事業の一部を切り出して、新しく設立する会社に承継させる「会社分割」のうちの一つの形態です。新設会社の資本金は、分割会社から引き継ぐ資産の評価額に基づいて決定されますが、具体的にどのような手順を踏んで決定していくことになるのかについて、詳しく解説していきます。

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目次
  1. 新設分割とは?
    1. 「新設分割」と「吸収分割」の違い
  2. 新設分割の種類
    1. 分社型新設分割
    2. 分割型新設分割
    3. 共同新設分割
  3. 新設会社の資本金の決め方
    1. 資本金
    2. 資本準備金
    3. その他資本剰余金
    4. 利益準備金
    5. その他利益剰余金
  4. 新設会社に資産を承継する方法は?
    1. 【新設会社への資産の承継方法】分社型新設分割の場合
      1. 承継する資産が資産超過の場合/負債超過の場合の違い
      2. 新設分割が適格分割の場合/非適格分割の場合の違い
    2. 【新設会社への資産の承継方法】分割型新設分割の場合
      1. 承継資産を株式資産相当額の範囲内で資本金・資本準備金・その他資本剰余金に自由に振り分ける方法
      2. 分割会社側であらかじめ減少させると決めていた資本金・資本準備金・その他資本剰余金・利益準備金・その他利益剰余金をそのまま引き継ぐ方法
    3. 【新設会社への資産の承継方法】共同新設分割の場合
  5. 新設分割で資本金を設定するにあたっての注意点
    1. 資本金額によって適用される法律がどう異なるのか?
      1. 下請代金支払遅延等防止法とは
      2. 中小企業基本法とは
    2. 資本金額によって必要となる税務がどう異なるのか?
    3. 法人税
    4. 外形標準課税
    5. 留保金課税
    6. 貸倒引当金(かしだおれひきあてきん)
    7. 少額減価償却資産
    8. 特別償却および特別控除
    9. 欠損金繰越控除
    10. 免税事業者/課税事業者
      1. 1. 資本金1,000万円以上の場合:
      2. 2. 資本金1,000万円未満の場合:
    11. 登録免許税(会社設立時の税金)
  6. FAQ|新設分割の資本金に関する実務Q&A
    1. Q. 増加資本金を「ゼロ」に設定することは可能ですか?
    2. Q. 分割対価に関して、「対価なし」とすることはできますか?
      1. 対価なし可能:分社型新設分割の場合
      2. 対価なし不可:分割型新設分割
      3. 共同新設分割の場合はケースバイケース
    3. Q. 新設分割後に資本金を増資(減資)することは簡単ですか?
      1. 新設分割後の資本金増加
      2. 新設分割後の資本金減少
  7. 最適解は専門家との協働で導かれる

新設分割とは?

「新設分割」は、M&Aの手法の一つである「会社分割」の一種です。

「会社分割」とは、会社が保有する事業の一部またはすべてを他の会社に承継させる組織再編行為で、「新設分割」と「吸収分割」の2種類にわけることができます。

「新設分割」と「吸収分割」の違い

「新設分割」は、既存の会社から切り出した事業を、新たに設立した別会社として運営していくスキームです。これに対して「吸収分割」は、事業を分割する「分割会社」が、事業を承継する「承継会社」から対価を得て、該当事業を承継会社に包括的に承継させるというスキームです。

新設分割の種類

新設分割は、次の3種類にわけることができます。

  • 分社型新設分割
  • 分割型新設分割
  • 共同新設分割
  • 株式の受け手 事業を分割する会社の数
    分社型新設分割 分割会社 1社
    分割型新設分割 分割会社の株主 1社
    共同新設分割 分割会社 複数

    それぞれ詳しく解説していきます。

    分社型新設分割

    「分社型新設分割」とは、分割会社が、分割の対価として、承継会社の株式を取得する手法です。つまり、切り離した事業を新設会社に移転させる対価として、新設会社の株式を分割会社が取得します。

    これによって、分割会社は新設会社の完全親会社となります。

    【分社型新設分割の目的】

    分社型新設分割の主な目的は、事業を整理して親会社の経営をスリム化すること、または持株会社性に移行することなどです。そのほか、好調な事業の独立採算にすることや、次期社長候補を育てたりすることを目的とする場合もあります。

    分割型新設分割

    「分割型新設分割」とは、分割の対価として、承継会社の株式を“分割会社の株主”が受け取る手法です。これによって、分割会社と新設会社は、同一株主の下、グループ会社を形成することになります。

    【分割型新設分割の目的】

    分割型新設分割の主な目的は、グループ企業の再編です。また、事業承継において2人以上の後継者がいる場合に、それぞれの後継者に個別の事業を承継させたい場合などにも、この手法が採用されることがあります。

    共同新設分割

    「共同新設分割」とは、2社以上の会社がそれぞれに分割した事業を、新設した会社に移転して統合させる手法です。分割の対価として、事業の切り離しをおこなったそれぞれの分割事業に対して、新設会社の株式が交付されます。

    【共同新設分割の目的】

    共同新設分割の主な目的は、グループ企業の再編や競合他社との連携強化です。

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    新設会社の資本金の決め方

    新設分割にも吸収分割にもいえることですが、会社分割をおこなうと承継会社の資本金は増加します。

    これによって承継会社の資本金が1億円を超えると、分割会社は中小企業だったとしても、承継会社は税務上の扱いが大企業となるため、もともと受けていた税法上の優遇が受けられなくなります。

    また、業種によっては下請法の対象外となる可能性があります。

    さらに、常時使用する従業員数が300人を超えており、かつ資本金が9億円を超えると、信用金庫の会員資格を持てなくなります。

    つまり、こうした懸念点を考慮したうえで、分割後の資本金を設定することが大切だということです。

    なお、新設会社の資本金は、「分割会社から承継する純資産額(資産-負債)」を上限として、その範囲内であれば**自由に設定することが可能です。

    逆に言えば、承継する資産よりも負債のほうが大きい場合や、純資産額を超える金額を資本金として設定することは会社法上認められていません。

    その上限の範囲内で、いくらに設定するかによって、適用される法律や必要となる税務が異なってきます。

    また、新設会社の資本金を含む純資産を設定する場合、次の2つのポイントも抑えておく必要があります。

    承継する資産が資産超過であるか負債超過であるかによって、新設会社の純資産への振り分けかたが変わる
    新設分割が適格要件を満たすかどうかで、引き継ぐ資産額が変わる

    なお、分割会社から承継会社(=新設会社)に引き継がれる純資産は、貸借対照表上の全資産から負債を差し引いた額のことです。

    「純資産」には次の5つの種類があり、新設分割をおこなうにあたっては、5つそれぞれを設定することが必要です。

  • 資本金
  • 資本準備金
  • その他資本剰余金
  • 利益準備金
  • その他利益剰余金
  • それぞれ詳しく解説していきます。

    資本金

    資本金は、株式などの出資者が会社に対して払い込んだ金額を元に設定されます。受けた出資に対しては返済義務が生じません。資本金は1円でも会社を設立することができるので、新設会社の場合も1円以上であればルール的には問題はありませんが、あまりにも低い金額に設定すると、融資を受けられないなどのデメリットが生じる場合があるため注意が必要です。

    なお、建設業や旅行業、人材派遣業といった許認可が必要な事業者に関しては、資本金が許認可取得の要件となっている場合があります。つまり、最低資本金額が決められています。たとえば、建設業の許可は、一般建設業の場合で資本金500万円(または預金残高500万円以上など)、特定建設業許可の場合、資本金2,000万円以上かつ自己資本4,000万円以上が求められています。また、人材派遣業の許認可を得るためには、資本金を2,000万円以上に設定する必要があります。

    資本準備金

    資本準備金とは、出資者から払い込まれた金額のうち、資本金として計上していない金額のことをいいます。なぜすべてを資本金として計上しないかというと、将来的に発生する支出や損失への備えとして、払い込まれた出資額の1/2を超えない範囲内で、「資本準備金」として積み立て計上することが会社法第445条2項・3項によって義務付けられているためです。

    参照:e-GOV「会社法」

    その他資本剰余金

    その他資本剰余金とは、出資者から集めた金額のうち、資本金にも資本準備金にも該当しない金額のことをいいます。たとえば、自己株式の処分差益や、資本準備金の減少差益などがこれに該当します。

    利益準備金

    利益準備金とは、会社が蓄積してきた利益のうち、株主への配当に利用することができない金額のことをいいます。なぜ、株主に配当できない金額があるかというと、会社が得た利益の大半を株主に配当すると、会社の財産がなくなってしまうことから、利益の一部を利益準備金として計上することが会社法第445条4項によって定められているためです。

    なお、積立金額は配当金額の1/10で、資本準備金と利益準備金の合計額は資本金の1/4未満に設定しなくてはなりません。

    参照:e-GOV「会社法」

    その他利益剰余金

    その他資本剰余金とは、会社が得た利益のうち内部留保している金額の、利益準備金を除いた部分のことをいいます。その他利益剰余金の用途は比較的自由であるため、資本金や資本準備金、会社が任意でおこなう積立に振り替えることもできます。

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    新設会社に資産を承継する方法は?

    続いて、新設会社に資産を承継する方法を、前述した3種類の新設分割のうち、主に事業を分割する会社が1社である「分社型新設分割」「分割型新設分割」の2種類の場合について解説します。

    【新設会社への資産の承継方法】分社型新設分割の場合

    分社型新設分割における資産の引き継ぎに関しては、先に解説した通り、

    承継する資産が資産超過であるか負債超過であるか
    新設分割が適格要件を満たすかどうか

    によって違いが出てきます。

    承継する資産が資産超過の場合/負債超過の場合の違い

    まず、承継する資産が資産超過の場合と負債超過の場合における、新設会社の資本金設定ルールの違いは次の通りです。

    場合 ルール
    承継する資産が資産超過の場合 ・分割事業にかかる株式資本相当額の範囲内で、承継資産を資本金・資本準備金・その他資本剰余金に自由に振り分けられる
    ・新設会社の利益剰余金は0円に設定する
    承継する資産が負債超過の場合 ・新設会社の資本金・資本準備金・その他資本剰余金は「0円」に設定する
    ・マイナスとなっている株式資本相当額の全額を利益剰余金としてマイナス表示で計上する

    なお、このことは会社計算規則第49条2項によって定められています。

    参照:e-GOV「会社計算規則」

    新設分割が適格分割の場合/非適格分割の場合の違い

    分割後に分割会社と新設会社との間に支配関係が継続する「適格分割」の場合と、支配関係が継続しない「非適格分割」の場合とでは、次のような違いがあります。

  • 適格分割の場合:承継する資産は帳簿価額を基礎として計算される
  • 非適格分割の場合:承継する資産は時価を基礎として計算される
  • 【新設会社への資産の承継方法】分割型新設分割の場合

    分割型新設分割の場合の資産の引継ぎ方法は、会社計算規則第49条2項、第50条1項によって、2通り定められています。

    承継資産を株式資産相当額の範囲内で資本金・資本準備金・その他資本剰余金に自由に振り分ける方法

    1つは、分社型新設分割と同様に、承継資産を株式資産相当額の範囲内で資本金・資本準備金・その他資本剰余金に自由に振り分けるという方法です。ただし、分社型新設分割の場合同様、承継資産が資産超過であるか負債超過であるかによって振り分けルールが異なります。

    分割会社側であらかじめ減少させると決めていた資本金・資本準備金・その他資本剰余金・利益準備金・その他利益剰余金をそのまま引き継ぐ方法

    もう1つは、分割会社側であらかじめ減少させると決めていた資本金・資本準備金・その他資本剰余金・利益準備金・その他利益剰余金をそのまま引き継ぐという方法です。

    なお、分割型新設分割を実施する場合、移転する事業にかかる株式資本相当額のなかから株主への現物配当処理をおこなうため、その他利益剰余金もしくはその他資本剰余金が減少することになります。

    参照:e-GOV「会社計算規則」

    【新設会社への資産の承継方法】共同新設分割の場合

    共同新設分割の場合の、新設会社への資産の承継方法については、会社計算規則第51条によって、「仮に各新設分割会社が他の新設分割会社と共同しないで新設分割をおこなうことによって会社を設立するものとみなして、当該会社の計算をおこなう」と定められています。

    参照:e-GOV「会社計算規則」

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    新設分割で資本金を設定するにあたっての注意点

    前述の通り、新設会社の資本金は一部の業種を除いて自由に設定することができます。ただし、設定した金額によって、適用される法律や、必要となる税務が異なってくるため注意が必要です。

    資本金額によって適用される法律がどう異なるのか?

    新設会社の資本金を設定するうえで考慮すべき法律は次の2つです。

  • 下請代金支払遅延等防止法
  • 中小企業基本法
  • 下請代金支払遅延等防止法とは

    下請代金支払遅延等防止法とは、下請事業者が親事業者から不当な取引条件を強いられることを防いで、取引の透明性を確保することを目的としている法律です。新設会社が親事業者となる場合、資本金額によって下請事業者の条件が異なることに注意する必要があります。

    下請代金支払遅延等防止法によって、発注元となる親事業者の資本金額による下請事業者の条件の違いは、次のように定められています。

    【製造委託や修理業者の場合】

    親事業者(新設会社) 下請事業者
    資本金が1,000万円~3億円 資本金が1,000万円以下の会社または個人事業主
    資本金が3億円超 資本金が3億円以下の会社または個人事業主

    【情報成果物作成委託や業務提供委託の場合】

    親事業者(新設会社) 下請事業者
    資本金が1,000万円~5,000万円 資本金が1,000万円以下の会社または個人事業主
    資本金が5,000万円超 資本金が5,000万円以下の会社または個人事業主

    なお、「情報成果物作成委託」とは、ソフトウェアやシステムのプログラミングや、映像・音楽などの作品制作、広告デザインなどを業者に委託することを意味します。

    参照:中小企業庁「下請代金支払遅延等防止法」

    中小企業基本法とは

    中小企業基本法とは、中小企業の成長と発展を促進することを目的に制定された法律です。中小企業基本法においては、中小企業とみなされる条件を業種別に定義しています。なぜ「中小企業とみなされるかどうか」に注意すべき必要があるかというと、各種補助金や優遇措置が適用となるかどうかが変わってくるためです。

    中小企業法においては、「中小企業者」を業種ごとに次のように定義しています。

    業種 中小企業者の定義
    製造業およびその他企業 資本金額または出資の総額が3億円以下、または使用する従業員が300人以下の会社
    卸売業 資本金額または出資の総額が1億円以下、または使用する従業員が100人以下の会社
    小売業 資本金額または出資の総額が5,000万円以下、または使用する従業員が50人以下の会社
    サービス業 資本金額または出資の総額が5,000万円以下、または使用する従業員が100人以下の会社

    参照:中小企業庁「中小企業基本法」

    資本金額によって必要となる税務がどう異なるのか?

    税務上で中小企業と大企業とをわけるラインとなっているのが、「資本金1億円」です。ほとんどの優遇措置は、資本金1億円以下の会社を対象としているため、優遇措置を受けたい場合は、資本金の金額を1億円より少なく設定するのが基本だということになります。

    税務上においては、資本金額によって次の項目に違いが出てきます。

  • 法人税
  • 外形標準課税
  • 留保金課税
  • 貸倒引当金(かしだおれひきあてきん)
  • 少額減価償却資産
  • 特別償却および特別控除
  • 欠損金繰越控除
  • 免税事業者/課税事業者
  • 登録免許税(会社設立時の税金)
  • それぞれにどんな違いが生じるのかを解説していきます。

    法人税

    資本金が1億円を超えると、法人税の軽減税率の適用外となります。

    資本金が1億円以下の会社は、800万円以下の所得に対しては法人税15%までの軽減措置を受けることができます。これに対して資本金が1億円を超えている場合、800万円以下の所得にも23.3%の税率で法人税が算定されることになります。

    外形標準課税

    資本金が1億円を超えると、外形標準課税が適用されます。

    外形標準課税とは、資本金や従業員数、オフィスの床面積などを基準に税額を算定する課税方式です。会社の所得を基準とする課税方式と比べて高い税率が適用されることになります。

    留保金課税

    資本金が1億円を超えると、留保金課税が適用されます。

    留保金課税とは、会社内に留保している利益に対して法人税が追加で課税される制度です。なぜこのような制度が設けられているかというと、過度な内部留保を防ぐためです。

    貸倒引当金(かしだおれひきあてきん)

    貸倒引当金(かしだおれひきあてきん)とは、売掛金や貸付金などの回収ができなくなるリスクに備えて、あらかじめ計上しておくお金のことです。

    資本金1億円以下であれば、貸倒引当金を損金算入できますが、資本金1億円を超えると貸倒引当金を損金算入できません。

    資本金が1億円を超えると、

    少額減価償却資産

    少額減価償却資産とは、30万円未満の資産のことです。資本金が1億円以下であれば、資産の所得年度に経理処理をした場合、少額減価償却資産を全額損金算入できます。資本金が1億円を超えると、少額減価償却資産の損金算入ができません。

    特別償却および特別控除

    特別償却、特別控除はいずれも、「中小企業投資促進税法」と関係があります。

    中小企業投資促進税法とは、新品の機械装置などの資産を取得して事業のために用いた場合、事業のために用いた日を含む事業年度において、特別償却または特別控除を認める制度です。

    特別償却とは、取得価額の30%の相当額を初年度に消却できる制度です。早期に費用計上することによって、法人税負担を軽減することができます。

    特別控除とは、取得価額の7%を法人税から直接控除できる制度です。利益が出ている企業にとっては、即効性のある節税効果であるといえます。

    中小企業投資促進税法の適用対象者は、青色申告書を提出する中小企業者等のうち、主に資本金1億円以下の法人と、個人事業主です。

    欠損金繰越控除

    資本金1億円以下であれば、事業年度の開始日前日から10年以内に生じた欠損金を当期に損金算入できます。これを「欠損金繰越控除」といいます。

    さらに、資本金1億円以下であれば、ある事業年度に生じた欠損金を当年度開始日より過去1年以内に繰り戻すことによって、納付済の法人税などの税金の還付を受けられます。これを「繰戻還付」といいます。

    一方、資本金が1億円超の場合、欠損金の繰越控除は当期の課税所得の50%までと定められています。繰戻還付に関しては、資本金10億円以下であれば適用されます。

    免税事業者/課税事業者

    会社設立時の資本金が1,000万円以下の会社は、設立1期目と2期目に関しては原則として納税義務が免除されます。ただし、免除適用となるためには、法人設立届出書に所定事項を記載する必要があります。記載がない場合、「消費税の新設法人に該当する旨の届出書」を提出する必要があります。

    ただし、新設分割によって誕生した会社の場合、まずは「新設会社の期首資本金」で判定を行い、次に「分割会社(親会社)の売上高」等による判定を行うという2段階のチェックが必要です。

    1. 資本金1,000万円以上の場合:

    親会社の売上規模に関わらず、初年度から消費税の課税事業者となります。

    2. 資本金1,000万円未満の場合:

    原則は免税ですが、「分割事業年度開始の日の1年前の日の前日から、当該分割事業年度開始の日の前日までの期間」における分割会社の課税売上高が5億円を超える場合などは、課税事業者となります(特定新規設立法人の特例)。

    つまり、消費税の免税メリットを享受したい場合は、親会社の要件確認だけでなく、新設会社の資本金を1,000万円未満に設定する必要があります。

    登録免許税(会社設立時の税金)

    新設分割の登記申請をする際、国に納める「登録免許税」の金額は資本金の額によって変動します。

    税額は原則として**「資本金の額 × 0.7%」**です。(※これ以外に、分割会社側の変更登記で一律3万円がかかります)

    例えば、資本金を1,000万円にするなら登録免許税は7万円ですが、資本金を1億円に設定すると70万円の税金を納付する必要があります。資本金を過大に設定することは、設立時のキャッシュアウト増加に直結するため注意が必要です。

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    FAQ|新設分割の資本金に関する実務Q&A

    続いては、新設分割の資本金に関するよくある質問とその答えを紹介していきます。

    Q. 増加資本金を「ゼロ」に設定することは可能ですか?

    結論からいうと、新設分割で増加資本金をゼロにすることは法律上可能です。なぜかというと、「資本金の額」「新設会社に移転する財産の価額のうち資本金に組み入れる額」は自由に定めることができるためです。

    なお、分割会社の純資産がプラスであっても、承継する資産の価額が大きくても、新設会社の資本金はゼロ増資(=出資者の払い込みによる増加なし)に設定可能です。

    なぜ、増加資本金をゼロにできるのかというと、たとえば、「承継資産:100、承継負債:100、純資産:0」であれば、資本金に組み入れられる額は0なので、結果的に増加資本金ゼロになります。あるいは、「承継資産:100、承継負債:50、純資産:50」だとしても、資本金に組み入れる額を0に設定して、残りは資本準備金などに振り分ければいいのです。

    増加資本金をゼロに設定する理由はいくつか考えられます。たとえば、「共同新設分割で資本割合を調整したい」「分割会社側で会計上および税務上のメリットを調整したい」「承継する資産の価額を資本金に組み入れたくない」などの理由があります。また、先に解説した通り、資本金を1億円未満に抑えるメリットは大きいといえます。

    Q. 分割対価に関して、「対価なし」とすることはできますか?

    分割対価に関しては、「対価なし」にして可能なケースと不可能なケースにわかれます。

    対価なしが可能なケース・不可能なケースは次の通りです。

    対価なし可能:分社型新設分割の場合

    分社型新設分割の場合、新設会社の株式の割当先は「分割会社自身」になります。この場合、会社法において、分割会社が新設会社から株式を受け取らなくても(=対価なしでも)有効とされています。

    たとえば、分割会社の100%子会社として新設会社を設立したい場合、承継資産が少額で株式発行をおこなわない設計としたい場合などに、対価なしで新設分割がおこなわれることがあります。こうしたケースを、「無対価分割」「みなし対価ゼロ分割」とも呼びます。

    対価なし不可:分割型新設分割

    分割型新設分割の場合、新設分割の株式の割当先は「分割会社の株主」となります。この場合、株主保護の観点から、株主が対価を受け取らない分割は認められません。

    共同新設分割の場合はケースバイケース

    共同新設分割は、参加企業によって「分社型新設分割」「分割型新設分割」の形式が混在している場合があるため、前者の企業に関しては「対価なし可能」、後者の企業に関しては「対価なし不可」ということになります。

    【対価なしにする場合の注意点】

    なお、対価なしの場合でも、分割計画書にその旨を明記する必要があります。具体的には、分割対価欄に「対価は交付しない」と記します。

    また、対価なしにする税務リスクは通常は大きくありませんが、評価差額が大きい場合、税務署に目をつけられることがあるので注意が必要です。

    Q. 新設分割後に資本金を増資(減資)することは簡単ですか?

    新設分割後に資本金を増資または減資することは可能ですが、手続きの難易度は、増資の場合と減資の場合とで異なります。

    増資の場合、株主総会決議・登記のみであるため比較的簡単ですが、増資の場合、債権者保護手続きが必要になってきます。なお、債権者が異議を申し立てた場合、減資を進められない可能性があります。

    増資、減資の具体的な手続きは次の通りです。

    新設分割後の資本金増加

    方法は主に次の2通り

    ①株式の発行(新株発行)による増資
    株主割当増資、第三者割当増資など
    ②資本準備金の組入
    会社法では資本準備金を資本金に組み入れることも可能

    【手続き】

  • 株主総会の決議が必要(特に第三者割当の場合)
  • 法務局で増資登記をおこなうことが必要
  • 新設分割後の資本金減少

    資本金の減額によって払い戻しをおこなう場合や、資本剰余金に振り替える場合があります。会社法上は可能であるものの、株主・債権者保護手続きが必要になります

    【手続き】

  • 株主総会で減資決議
  • 債権者への公告・個別催告(会社法446条~449条)
  • →債権者から異議がなければ減資可能
    →債権者からいい申し立てがあれば減資を進められない可能性も

  • (減資を進められた場合)減資登記
  • 最適解は専門家との協働で導かれる

    新設分割の資本金を引き継ぐにあたっては、適切な税務処理や細かい会計処理が必要になることがあります。具体的にどのような処理をおこなえばいいのかは、専門的な知識や視点がなければ判断できない部分があるので、会計士などの専門家を頼ることがおすすめです。「税務上有利かどうか」などの一部の要素だけを判断基準として資本金の額を設定すると、後々、事業展開に大きな影響が及ぶ可能性もあるので、将来的な展望を見据えて最適な選択をしていくことが大切ですよ。

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    ジョブカンM&A ジョブカンM&A編集部

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