民事再生とは、企業の経営陣が経営権を維持した状態で、債務の圧縮および事業の立て直しを図るための法的手続きです。経営権を維持しながら経営再建を図れると聞くと、「活用しない手はない」と考えるかもしれませんが、手続きが複雑なことがネックなうえ、必ずしも経営再建に成功できるというわけではありません。そこで今回は、民事再生の概要や、経営差権を成功させるためのポイントなどを詳しく解説していきます。
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民事再生とは? 経営権を維持して再起を図る「再建型」の手続き
倒産手続き
| 再建型 | 民事再生:経営が悪化した企業の事業継続を前提に、裁判所の監督のもとで再建を目指す手続き |
| 会社更生:会社更生法に基づいておこなわれる、会社再建のための手続き | |
| 清算型 | 破産:再建のめどが立たない個人や法人を清算して消滅させる手続き |
| 特別清算:会社を消滅させる手続き。会社法に基づいており、株式会社しか利用できない制度 |
- 再建型
- 民事再生:経営が悪化した企業の事業継続を前提に、裁判所の監督のもとで再建を目指す手続き
- 会社更生:会社更生法に基づいておこなわれる、会社再建のための手続き
- 清算型
- 破産:再建のめどが立たない個人や法人を清算して消滅させる手続き
- 特別清算:会社を消滅させる手続き。会社法に基づいており、株式会社しか利用できない制度
民事再生とは、「民事再生法」に基づいて進められる「再建型」の手続きです。経済的に困難な状況に直面した結果、「破産」「特別清算」といった形で会社を消滅させる手続きを「清算型」といいますが、そうした手続きとは異なり、事業の継続と経営再建を目的とする法的手続きということになります。
なお、「再建型」の手続きには、民事再生のほかに「会社更生」もあります。民事再生が「民事再生法」に基づく法的手続きであるのに対して、会社更生は会社更生法に基づいて手続きがおこなわれます。また、民事再生の場合、手続きが開始した後も経営陣が経営の指揮を執りますが、会社更生の場合、手続き開始に伴い、経営が管財人に引き継がれることになります。
なぜこのような違いがあるかというと、民事再生が基本的に中堅・中小企業が利用することを想定している一方、会社更生は大企業を想定して制定された手続きだからです。
民事再生は「DIP型」の倒産手続き
なお、倒産手続き後も元の経営陣が経営の指揮を執ることを「DIP型」といいます。DIPは「Debtor In Possession」の貸した文字を並べた言葉で、Debtorは「債務者」(=再生計画を実施する会社)、In Possessionは「支配・占有している」という意味です。つまり、債務者が経営権を持ち続けている状態を指します。
民事再生の定義:破産をはじめとする「清算型」との根本的な違いは「事業が続くか」
前述の通り、民事再生は「清算型」の倒産手続きとは異なり、事業の存続を目的とするものです。
目的達成のために、経済的に困窮している債務者は、債権者の頭数の過半数と債権額の50%以上の同意を得て、裁判所の認可を受けた「再生計画」を定めるなどして、事業を継続しながら経営再建を図ることになります。なお、民事再生の手続きは裁判所の関与のもとで進められることとなり、債務の一部免除や返済期間の延長などの措置を受けられます。
なお、「再生計画」とは、わかりやすくいうと「経営が苦しくなった会社をどう立て直すか」を具体的にまとめた“設計図”です。
民事再生は、債務を圧縮させながら、残った債務を事業収益から段階的に返済していくという仕組みであるため、従業員の雇用維持、取引先との関係継続、経営陣による経営権の維持が可能となります。
裁判所が関与しない「私的整理」もある
「民事再生」「会社更生」の「再建型手続き」、「破産」「特別清算」の「清算型手続き」はいずれも裁判所が関与する手続きとなります。これに対して、裁判所を利用することなく、会社・事業を再建あるいは清算させたい場合、「私的整理」という選択肢をとれる場合もあります。
私的整理とは、裁判所を挟むことなく、債権者と直接話し合って再建手続きあるいは清算手続きを進める方法です。銀行や取引先と直接交渉して、債務の減免・返済条件の変更などの合意を得て、非公開で手続きを進めていくケースが多いです。
裁判所を通す必要がないことから、柔軟かつスピーディに手続きをすすることが可能ですが、全債権者の同意が必要で、一人でも反対があれば成立しないため、債務者が希望すれば必ず私的整理を実施できるというわけではありません。
なお、私的整理の本来の目的は再建であるため、返済猶予や不採算事業の整理などのために活用される手段ですが、計画的に会社を畳む「ソフトランディング」のために活用されることもあります。
民事再生が可能な条件|「債務超過の恐れ」などがある段階での決断が必要
ここまで解説してきた通り、経済的に困窮している会社が自社を立て直すための手続きとしては、「民事再生」「会社更生」「私的整理」があるということになりますが、前述の通り、会社更生は大企業向けで、私的整理は債権者全員の同意が必要というハードルがあります。
では、民事再生はどうかというと、申立てをおこなうためには要件を満たす必要があります。具体的にどのような要件であるかというと、民事再生法第21条において次のように定められています。
「(再生手続開始の申立て)
債務者に破産手続開始の原因となる事実の生ずるおそれがあるときは、債務者は、裁判所に対して、再生手続開始の申立てをすることができる。債務者が事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないときも、同様とする」
つまり、以下のいずれかの状態にあることが申立ての要件ということになります。
- 支払い不能、債務超過に陥る「おそれ」がある段階である
- 手元の資金で支払いすると、その後の仕入れや従業員への給与支払いができなくなることから、事業の継続が困難な状態にある
ただし、申立て自体はおこなうことができたとしても、裁判所に提出した「再生計画」が可決されなければ、再生手続きを開始することができません。なお、再生計画の可決には、債権者の過半数の同意が必要です。
民事再生の申立てが棄却されるケース
次に列挙する項目は、民事再生の申立ての「棄却事由」とされています。つまり、これらのうちいずれかに該当する場合、民事再生の申立てをおこなっても、裁判所で認められずに棄却される場合があるということです。
- 予納金(裁判所に支払う民事再生の手続き費用)を納めることができない場合
- 破産手続き・特別清算手続きが、債権者の利益に適合する場合
- 再生計画の実現性が低いと判断された場合
- 再生手続きが不当な目的のもとで申し立てられた場合
なお、民事再生の申立てを棄却されたものの、どうしても民事再生の手続きを進めたい場合、棄却された原因を見直して、再度申立てすることは可能です。ただし、再度申立てしても棄却となる可能性もあります。その場合は、私的整理などの別の選択肢を検討するほかないでしょう。
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民事再生の方法
民事再生の申立てが受理されて、実際に民事再生の手続きに進む場合、主に次の3つの方法のいずれかで民事再生を進めていくことになります。
- スポンサー型
- 自力再建型
- 清算型
それぞれ詳しく解説していきます。
スポンサー型
「スポンサー型」とは、出資や資金提供をおこなってくれるスポンサー企業(M&Aにおける買い手企業)の力を借りながら再建を図る方法です。スポンサーからの資金提供によって圧縮された債務の一部を返済し、財務状況を改善させることができます。
なお、「出資」とは、返ってこなくてもいい代わりに大きなリターンを狙うものである一方、「資本提供」とは、原則として返してもらう前提のお金です。
スポンサー型は、どんな企業でも利用できるというわけではありません。主に独自技術や高いブランド力がある企業の場合、スポンサーとなってくれる企業が見つかりやすいといえます。多くの場合、M&Aのスキームを活用し、スポンサー企業に対して自社の優良部門のみを切り出して譲渡する「事業譲渡」や「会社分割」がおこなわれます。売り手企業にとっては事業と雇用を存続できるメリットがあり、買い手企業(スポンサー)にとっては、民事再生手続きを通じて簿外債務などのリスクが遮断されたクリーンな状態で、優良な事業基盤やノウハウを獲得できるという大きなメリットがあります。
また、スポンサーとなってくれる企業が早い段階で見つかった場合、民事再生の申立て前に、スポンサーとなってくれる企業と基本合意を交わしておくこともあります。これを「プレ・パッケージ型」といいますが、プレ・パッケージ型を利用することによって、手続き開始後の信用不安を軽減することができます。なお、プレ・パッケージ型を活用する場合、申立て時に、スポンサー選定の公正性を説明することが求められます。
自力再建型
「自力再建型」とは、呼び名の通り、自力で返済していく方法です。債務をある程度圧縮して、残った分の債務を事業による収益で返していきます。この方法は、利益がそれなりにあって、かつ将来的にも収益力が増し続けると予想される場合に採用されます。
スポンサー型の選択が難しい場合に、この方法が採用されることが多いです。
清算型
「清算型」とは、債務を圧縮した後に自社を売却して、その対価を残債の返済に充て、それでも返し切れない分に関して、受け皿となる会社が引き続き返済する仕組みです。スポンサーとなってくれる企業が見つからず、なおかつ自力再建も難しい場合の選択肢となります。
一般的に、自社の事業のうち優良部門のみを切り離して、受け皿となる会社に譲渡して、残った会社は清算する代わりに、受け皿会社が(譲渡された優良部門で)事業再建を図ります。基本的に元の会社は消滅するため、従業員は解雇となりますが、元の会社を消滅させることなく、一部事業のみを継続するケースもあります。
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民事再生を選択するメリット
前述の通り、倒産手続きはいくつかありますが、そのなかで民事再生を選択するメリットは次の通りです。
- 債務を圧縮できる
- 経営陣が続投できる
- 資産と雇用を守ることができる
それぞれ詳しく解説していきます。
債務を圧縮できる
第一に挙げられるメリットが、債務を圧縮できることです。
最大でどれだけ圧縮できるかについては、法律で決まりがあるわけではありません。ただし、個人再生に関しては、「借金総額の5分の1以上は返済する必要がある」と決められています(なお、100万円未満の場合は100万円全額返済の必要がある)
一方、法人の民事再生には明確なルールはありませんが、そうであるがゆえに、90%以上免除となった実績もあります。つまり、理論上は9割を超える大幅な圧縮も可能ということです。
ただし、現実的には、「債権者が納得するか」「カットし過ぎて逆に信用を失わないか」などの問題があります。また、「清算価値保証原則」によって、破産した場合より少ない負債となる弁済額はNGとされています。
経営陣が続投できる
民事再生においては、会社再生とは異なり、手続き開始後も元の経営陣が指揮を執ることができます。つまり、現場の混乱を抑えながら事業再生を目指せるということです。社員との信頼関係をキープできるのはもちろん、それまで築いてきた人脈やノウハウを活かしながら事業再建を目指すことが叶います。
資産と雇用を守ることができる
裁判所に申立てをおこなうことで、債権者による、給与や売掛金などに対する差し押さえを中止・禁止することができます。そのため、事業継続に必要な資産を失うことなく、また、雇用を守りながら事業を続けることができます。
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民事再生を選択するデメリット
民事再生を選択することには、メリットがある一方で、次のようなデメリットもあります。
- 再生計画案の可決には債権者の同意が不可欠
- 再生計画が不認可となると、そのまま破産手続きに移行となる場合がある
- 倒産手続きをおこなうための費用がかかる
- 免除された債務に対して税金が課される
- 債権者が担保権を行使するリスクがある
- 社会的信頼が低下する恐れがある
それぞれ詳しく解説していきます。
再生計画案の可決には債権者の同意が不可欠
民事再生の再生計画を成立させるためには、債権者の頭数の過半数と債権額の50%以上の同意を得る必要があります。この両方の要件をクリアできない場合、再生計画案は裁判所によって秘訣され、民事再生の手続きは廃止となります。手続きが廃止となれば、破産手続きへ移行する可能性が高くなるため、それを防ぐためにも、債権者に対して丁寧に説明して理解を得られるよう努力することが大切です。
再生計画が不認可となると、そのまま破産手続きに移行となる場合がある
前述の通り、債権者の同意を得られず、再生計画が不認可となった場合、破産手続きへ移行する可能性が高くなります。また、債権者からの同意は得られても、裁判所が「再生計画遂行の見込みなし」と判断した場合も、再生計画が不認可となり、再生手続きが打ち切られます。再生計画が打ち切られた時点で、会社に破産原因があると認められる場合、裁判所は職権によって破産手続きを開始することがあります。これを「牽連破産(けんれんはさん)」といいます。
倒産手続きをおこなうための費用がかかる
民事再生の手続きをおこなうためには、負債総額に応じた予納金を裁判所に支払う必要があります。
予納金の金額は、負債規模のほかに、どの裁判所を利用するか、個人か法人化などによっても変動するため一概にはいえませんが、たとえば東京地方裁判所は次のように予納金を定めています。
| 負債総額 | 予納金額 |
| 5,000万円未満 | 200万円 |
| 5,000万円~1億円未満 | 300万円 |
| 1億円~5億円未満 | 400万円 |
| 5億円~10億円未満 | 500万円 |
| 10億円~50億円未満 | 600万円 |
| 50億円~100億円未満 | 700万円 |
| 100億円~250億円未満 | 900万円 |
| 250億円~500億円未満 | 1,000万円 |
| 500億円~1,000億円未満 | 1,200万円 |
| 1,000億円以上 | 1,300万円 |
また、民事再生の申立手数料として収入印紙代1万円などもかかります。
これに加えて、民事再生の手続きは弁護士などの専門家に依頼することが基本であるため、専門家への謝礼金も必要になります。
免除された債務に対して税金が課される
民事再生の手続きが完了して、借入金や買掛金などの債務の一部が免除されると、「返済すべきであった債務が減少されたことによって会計上の利益が発生した」ことになります。これを「債務免除益」といい、債務免除益に対して法人税などの税金が課されることになります。
債権者が担保権を行使するリスクがある
民事再生の手続きには、原則、債権者全員が参加することになります。そのなかに、再建に「担保権」を設定している債権者がいた場合、担保権を行使できます。
担保権とは、貸したお金を回収できなくなったときに備えて、特定の財産から優先的に回収できる権利のことです。代表的な担保権には、返済できなかった場合に不動産を売却して回収することになる「抵当権」、返済できなかった場合に、預けておいた物品を処分して回収する「質権」などが挙げられます。
つまり、債権者が担保権を行使したことによって、財産が処分されるリスクがあるということになります。
社会的信頼が低下する恐れがある
前述の通り、民事再生手続きは、倒産手続きの一種です。「民事再生」という言葉自体に対するマイナスイメージは薄いものの、「倒産」と聞くと一般的にプラスのイメージは抱きにくいため、社会的信頼が低下する恐れがあります。
その結果、たとえば、これまで仕事を請けてくれていた外注先が「仕事をしてもギャランティを支払ってもらえないかもしれない」などと考えて、仕事を請けてくれなくなることなども考えられます。
つまり、そうした可能性を考慮したうえで、手続き開始後の言動に気を付けていく必要があるということです。
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民事再生の手続きの流れ|申立てから認可を経て遂行までの全行程
民事再生手続き~再生計画集結までのおおまかな流れは次の通りです。
- 1 弁護士の選任
- 2 財務状況を整理して再生計画の素案を考える
- 3 裁判所に申立て
- 4 (必要に応じて)保全処分の申立て
- 5 裁判所に予納金を納付
- 6 裁判所による弁済禁止の保全処分発令
- 7 監督委員の選任
- 8 (必要に応じて)債権者説明会の開催
- 9 民事再生手続きの開始決定
- 10 債権者に再生手続きの開始が周知される
- 11 債権届出書送付
- 12 財産評定の報告
- 13 債権認否書の提出
- 14 再生計画案の作成
- 15 債権者集会による決議
- 16 再生計画の遂行
- 17 再生計画の終結
それぞれ詳しく解説していきます。
弁護士の選任
民事再生においては、通常、弁護士が申立人となるため、まずは民事再生に詳しい弁護士を選任することが大切です。依頼する弁護士に目星をつけたら、手続きの妥当性や再建の見込みがあるかどうかについても相談したうえで、申立代理人を依頼します。依頼に際して着手金などを用意する必要があります。
なお、債務者自身で申立てすることも可能ではありますが、プロセスが複雑であるため、専門的な知識がなければかなりハードルが高いです。
弁護士費用の相場
弁護士費用の相場は、個人再生の場合、50~80万円程度で、法人の場合、200~500万円程度とされています。なお、着手金と成功報酬は同程度の金額で、合計で数百万円規模になる場合が多いと考えられます。
財務状況を整理して再生計画の素案を考える
裁判所に申立てをおこなう際には、債務者の財務状況や再生計画の概要を示す必要があります。再生計画案の提出自体はこれより先の段階でおこないますが、この段階で一度、手続きの開始が適切かどうかを判断してもらうために必要な情報を提出します。
裁判所に申立て
弁護士を雇った場合は弁護士を通して、裁判所に申立てをおこないます。申立書には、会社の基本情報、債権者のリスト、負債総額、債権の見通しなどを記します。このほか、会社の定款や財務諸表なども提出が必要です。
(必要に応じて)保全処分の申立て
民事再生の申立てをおこなう際には、同時に保全処分の申立てをおこなうことが推奨されます。「保全処分」とは、債権者による強制執行の停止や、資産の保全を目的とした措置のことです。この申立てをおこなうことによって、民事再生手続き中に企業の財産が流出することを防ぐことができるため、再建に必要な基盤を確保できます。債権者による強制執行がおこなわれる可能性が高いと考えられる場合などは、必ず保全処分の申立てをおこなっておきたいところです。
裁判所に予納金を納付
民事再生の申立てをおこなうと、申立てが受理されるかどうか確定しないうちに、予納金の納付指示があるので、この時点で予納金を納める必要があります。
なぜ、裁判所は民事再生の手続き開始決定を出す前に予納金の納付を支持するかというと、裁判所は、後述する監督委員の報酬や、官報公告費用やそのほかの事務コストを確保する必要があるためです。そのため、「予納金を納付できること」は開始決定の実質的な条件の一つになっています。なお、予納金の納付期限は通常数日から1週間程度とかなりタイトです。
裁判所による弁済禁止の保全処分発令
民事再生の申立てが受理されると、裁判所が弁済禁止の保全処分をおこないます。これ以降、再生計画が開始されるまでは、債務者は債権者に対して新たな弁済をおこなうことができません。
なお、2つ前の手続きの「保全処分」は、申立て直後から申立て受理までの間の“空白期間”に強制執行や担保権の行使などがおこなわれないようにするためのものである一方、裁判所による弁済禁止の保全処分は、裁判所が必要に応じて職権で出す包括的禁止命令です。つまり、特定の債権者だけに支払うことを禁止して、全体を公平にコントロールするためのルール設定ということになります。
監督委員の選任
裁判所は、民事再生の申立てを受理したら、手続きが適切に進行するよう、倒産手続きに精通した弁護士のなかから監督委員を選任します。監督委員は、債務者の財政状況を詳細に調査して、再生計画について実現可能かどうかの確認を担っています。そのため、監督委員には、債権者に対しても裁判所に対しても中立的な立場で報告することが求められます。
さらに、監督委員は、債務者による不正な資産異動や不適切な取引がおこなわれないよう監視して、債権者の利益を守ります。
(必要に応じて)債権者説明会の開催
民事再生の申立てが受理されたら、事業再生を試みる企業は、債権者に対して、今後の計画や現状について説明する場を設けるケースが多いです。説明会の開催は義務ではありませんが、開催することによって、企業と債権者の間で情報の透明性を確保することができます。
説明会では、企業が再生計画案の骨子や再生の見通し、債権の返済条件、資金繰りの確保策などについて説明します。債権者は、説明を聞いて今後の協力体制を検討します。また、説明後には質疑応答の時間が設けられるのが一般的です。
民事再生手続きの開始決定
民事再生の申立てから1~2週間程度で、民事再生手続きの開始が決定されます。ただし、債権者の同意を必要数得られていない場合や、棄却事由に該当する場合、提出書類に重大な不備がある場合などは、申立てが否認される場合があります。
債権者に再生手続きの開始が周知される
民事再生手続きが開始決定となると、官報公告や通知文書を通じて、再生手続きが開始される旨が債権者に周知されます。これによって、債権者は、今後の手続きにおける自身の債権の扱いや認否の期間などについて把握したうえで、必要な対応をとることが求められることになります。
債権届出書送付
裁判所は、債務者が作成した債権者リストに基づいて、すべての債権者に債権届出書を送付します。送付の目的は、債権者が自らの債権を正式に申告するための機会を提供することと、債権認否や再生計画の立案において基盤となる情報を集めることです。
そのため、債権届出書には、債権者自身が債権の詳細を記入するためのさまざまな項目が設けられています。具体的には、債権の種類、金額、担保の有無などを記載する仕様になっています。債権届出書を期限内に提出しなかった債権者は、自身・自社の債権が再生計画に組み込まれないリスクを負うことになります。
債権届出書が債権者から提出されたら、債務者は、債権届出書の情報をもとに債権認否の手続きを進めて、各債権の有効性について確認していきます。
財産評定の報告
財産評定とは、債務者の資産価値を正確に把握するためにおこなうものです。評価対象は、不動産から知的財産権、金融資産など多岐にわたり、一つひとつの価値を適正に見積もる必要があるため、通常は公認会計士の関与のもとで評価がおこなわれます。
財産評定をおこなって、債務者の財産目録を作成したら、それをもとに財産評定の結果が債権者集会などで報告されます。これによって、債権者は債務者の返済能力をおおまかに把握して、再生計画が実現可能であるかどうかを評価することができます。
一方、債務者自身も、財産目録などを通して自身の現状を正確に把握できるため、将来的な経営戦略を見直すいい機会ともなり得ます。
債権認否書の提出
債務者は、債権者から提出された債権届出書によって請求内容を精査して、内容について異論がある場合、どのような異論があるのかを再建認否書に記します。この際、債権の存在、金額、優先順位などをきちんと確認して、債権者の権利を正確に反映させます。
必要事項をすべて記載したら、債権認否書を裁判所に提出します。提出した内容について裁判所から認められれば、金額について再生計画に反映させて、債権者の合意を得るための基盤を固めます。認められない場合は、債権者と債務者との間で異議申立てがおこなわれることもあります。
なお、この手続きの過程において、債権者と債務者とで協議がおこなわれることもありますが、双方が合意に達しない場合、裁判所が最終的な判断を下す必要が生じ得ます。
再生計画案の作成
債務の返済方法、返済期間、金額、事業の再構築に向けた具体的な施策が固まったら、再生計画案を作成します。再生計画案の内容は、債権者と裁判所から認められる必要がありますが、債権者の承認を得るためには、債権者の利益が確保される内容でなければなりません。そのための説得力のある説明が求められます。
なお、再生計画案の作成には、法律や経済の専門知識が求められるため、専門家の協力を得るのが一般的です。
債権者集会による決議
再生計画案が完成したら、債権者集会で決議がおこなわれます。再生計画案が可決されるためには、債権者の過半数の賛成と、債権総額の過半数を占める債権者の同意が必要です。
裁判所による判断
債権者集会による決議で再生計画が可決されたら、裁判所での認可を経て、ようやく再生計画が開始となります。なお、否決された場合、破産手続きなどの選択肢を検討することになります。
再生計画の遂行
再生計画案が認可されたら、計画で定めた返済スケジュールに従って返済するために、業務運営を続けて財務の健全化を目指します。再生計画遂行中、債務者は定期的に監督委員に弁済状況を報告したり、財務諸表を提出したりする必要があります。
なお、遂行期間中に問題が発生した場合、必要に応じて再生計画の修正を申請することもできます。
再生計画の終結
民事再生手続きは、弁済が完了するか、認可確定後3年間が経過すると集結します。再生計画が計画通りに遂行されてすべて返済し終えたことが確認されると、裁判所は民事再生手続きを集結させる決定を下します。これによって、企業は通常の経営状態に戻って、再び独立した経営判断をおこなうことができるようになります。
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民事再生による経営再建を成功させる5つの条件
民事再生を成功させ、企業を再び成長軌道に乗せるためには、以下の5つの条件を満たすことが極めて重要です。
1. 早期の決断と専門家への相談
資金繰りが完全にショートしてからでは、取り得る選択肢が「破産」しか残されていないケースが少なくありません。手元資金に余裕があり、事業価値が毀損しきっていない「債務超過の恐れがある」段階で、M&Aアドバイザーや弁護士などの専門家に相談することが第一の条件です。
2. コア事業の明確化(選択と集中)
自社のどの事業が利益を生み出しているのか(コア事業)、どの事業が足を引っ張っているのか(不採算事業)を客観的に分析し、優良な事業に経営資源を集中させる事業計画を練る必要があります。
3. 強力なスポンサー(M&Aの買い手)の早期獲得
自力再建が難しい場合、豊富な資金力と事業シナジーを持つスポンサー(買い手企業)を早期に見つけることが再建のカギを握ります。M&Aのスキームを活用し、優良事業をスポンサーに引き継ぐことで、再建の確実性は大幅に高まります。
4. 取引先および金融機関からの理解と信用維持
民事再生手続きに入ると、信用不安から取引を停止されるリスクがあります。事業を継続するためには、手続きの透明性を保ち、取引先や金融機関に対して今後の再建計画を誠実に説明し、協力を仰ぐことが不可欠です。
5. 従業員のモチベーションと雇用の維持
事業を実際に回していくのは従業員です。手続きに対する不安から、キーマンとなる優秀な人材が流出してしまうと、再建計画そのものが頓挫しかねません。雇用が守られることや今後の見通しを丁寧に説明し、社内の士気を維持することが求められます。
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よくある質問(FAQ)
続いては、民事再生に関するよくある質問とその答えをみていきましょう。
Q. 民事再生の再生計画終結後に、経営状態が飛躍的によくなった有名企業はありますか?
あります。むしろ、民事再生や会社更生は再建成功事例が非常に多いといえます。
たとえば、そごうグループは2000年、1兆8,700億円の負債を抱えて民事再生法の適用を申請していますが、その後、西武百貨店の支援を受けて再建を果たし、現在の「そごう・西武」に至っています。なお、そごうの民事再生手続きは、計画より2年前倒しで終結しています。
また、スカイマークは2015年に民事再生法を申請して事実上破綻していますが、2016年に民事再生手続きが集結して、同年3月期には黒字転換を果たしています。
なお、会社更生の成功事例としては、2010年に会社更生法の適用を申請して実質破綻した日本航空(JAL)が、約2年8か月で再上場を果たしてV字回復を遂げたことが挙げられます。
つまり、民事再生あるいは会社更生という手続きを踏まなくてはならなくなったとしても、計画に沿って返済を続けながら事業再生を目指せば、将来的に大きく飛躍できる可能性は大いにあるということです。
Q. 民事再生すると自宅や個人資産は影響を受けますか?
原則として、会社と個人は別人格であるため、影響を受けることはありません。ただし、例外として、経営者が連帯保証している場合、経営者個人にも返済の義務が生じます。この場合、自宅が差し押さえ対象となる可能性もあります。
また、個人民事再生の場合、自宅が処分対象か条件付き維持となることがあります。
Q. 民事再生する場合、従業員の給料や退職金は優先的に支払うことができますか?
結論から言うと、従業員の給料や退職金はきちんと保護されます。
主に民事再生手続き開始前のものは「一般優先債権」として最優先で支払われることとなり、民事再生手続き開始後のものに関しては、「共益債権」として随時弁済されて、他の一般債権よりも手厚く保護されることになります。
なぜかというと、給料が支払われないと人材が流出してしまうため、債権は失敗に終わります。それを防ぐためにも、従業員保護を強く設計することは不可欠です。
Q. 民事再生すると、取引先との契約が解除されるリスクが高いですか?
一律解除されるわけではありませんが、リスクはあります。まず、信用不安によって取引を停止されたり、前払いを要求されたりする可能性はあります。また、取引先が破産や民事再生などの手続きを開始した場合に、無催告で契約を解除できる特約である「倒産解除条項」に合意していた場合も、リスクが高いといえます。ただし、倒産解除条項は一定程度、無効化、あるいは制限される傾向にあります。
なお、次のようなケースは、民事再生をおこなっても契約を継続されやすいです。
- 代替が効かない取引先である場合
- 長期契約(インフラ系など)である場合
- 再生スポンサーが付く場合(スポンサー型の民事再生である場合)
まずは「自分の会社がいくらか」を知るところから
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民事再生は“終わり”ではなく“はじまり”の手続き
“倒産手続き”というとネガティブなイメージを抱きがちですが、民事再生は基本的に“再生”するための手続きですし、計画通りに返済を進めて事業を立て直していくことによって、大きくV字回復できる可能性は大きいといえます。ただし、民事再生の申立てをおこなうためには、裁判所に予納金を支払い、弁護士に着手金を支払うことが必要ですし、負債総額や財務諸表などを確認してもらい、事業を立て直す能力があるかどうかを判断してもらう必要があります。つまり、予納金や着手金を支払うことができないレベルにまで経済的に困窮してしまえば、民事再生の申立て自体できませんし、申立てまではできたとしても、受理される可能性は非常に低いといえます。逆にいうと、民事再生を成功させるためには、まず、申立てに踏み切るタイミングを誤ってはいけないということです。自社の財務状況を早い段階で客観的に把握して、然るべきタイミングで準備を始めることで、成功の確率はぐっと高くなりますよ。
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ジョブカンM&A ジョブカンM&A編集部
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