他者と提携したり協力したりすることによって、自社の成長を促進させたいと考える法人は多いかもしれません。では、具体的にどんな手法を用いれば、他社との提携や協力によって自社の成長を実現することができるのでしょうか? 代表的な方法や、それぞれのメリットおよびデメリット。注意点などについて解説していきます。
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3分で理解する「3つの提携」の違い【比較早見表】
“他者との提携あるいは協力”という側面を有している代表的な形態としては、業務提携・資本提携・合弁会社が挙げられます。この3つの主な違いは次の表の通りです。
| 業務提携 | 資本提携 | 合弁会社(設立・経営) | |
| 定義 | 資本関係を伴うことなく、複数の企業が業務面で協力し合う | 一方または双方が相手企業の株式を取得することに資本関係を持つが、経営権は持たない | 複数企業が共同出資して、対等な立場で共同経営する会社。あるいは、買収によって取得した会社を、買収した側がもともとの株主や経営陣と共同で経営している会社 |
| 法的形態 | 既存会社のまま | 既存会社のまま | 会社法上、「株式会社」「合同会社」などの既存の法人形態を選択する |
| 支配関係 | どちらかが経営権を有したり、資本関係が発生したりすることはない | 出資する側が、経営権や意思決定に直接関与することはない | 原則対等だが、50:50の出資比率では意思決定が膠着するリスク(デッドロック)があるため、51:49にするなど主導権を明確にするケースも多い。 |
| 資本の移動 | 資本の移動はなし | 一方が他方に出資のみおこなう | 複数社が共同で出資する、あるいは一方が他方を買収後に共同で経営 |
| 会社の存続 | 提携後も両社とも存続 | 提携後も両社とも存続 | それぞれの会社の元の会社は存続。あるいは一方が他方を買収 |
まず、業務提携は、資本関係を構築することなく、特定分野での協業体制を構築する手法です。これに対して資本提携は、資本基盤の強化を図る目的で、一方の企業が相手企業に株式を取得してもらうか、あるいは双方がお互いに相手企業の株式を取得する手法です。
これら2つは、法的形態としてはそれぞれの会社は既存会社のままということになります。
一方、合弁会社(設立・経営)は、複数の企業が共同で出資して新会社を設立するか、あるいは一方が他方を買収した後、共同経営する手法です。業務提携および資本提携と比べると、より密接な関係を構築することになります。
続いて、それぞれの手法についてより詳しく解説していきます。
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業務提携の特徴
資本の移動を伴うことなく、複数の企業が業務面で協力し合う「業務提携」においては、それぞれの企業が有している経営資源を相互に活用させることで、単独では達成が難しいシナジー効果の創出や事業成長、競争力向上を目指すことができます。
業務提携の3つの種類
業務提携は、提携に活用する経営資源によって大きく次の3種類にわけることができます。
それぞれ詳しく解説していきます。
技術提携
技術提携とは、提携先の企業が有している技術資源を、技術開発や製造・販売などに役立てる業務提携です。なお、「技術資源」とは、特許やノウハウ、設備などを指します。
技術提携をおこなうにあたっては、「ライセンス契約」あるいは「共同研究開発契約」を締結します。「ライセンス契約」とは、ライセンサーがライセンシーに対して、契約条件の範囲内において、技術資源を自由に使用することを許諾する契約です。一方の「共同研究開発契約」とは、2社以上の企業が特定の技術もしくは製品の研究開発に必要な業務を分担して、協力し合って取り組むことを目的に締結する契約です。
生産提携
生産提携とは、生産工程や製造工程の一部を相手方に委託することを意味します。生産能力を強化する目的でおこなわれる業務提携です。
一般的に、生産提携する場合、「製造委託契約」あるいは「OEM契約」を締結します。「製造委託契約」を締結するにあたっては、製品の仕様、品質レベル、原材料、製造数量、対価、検収方法などをきちんと決めることが大切です。細かな条件を定めていなければ、製品に欠陥ができた場合、どう対応するかに関して揉める可能性があるためです。
「OEM契約」とは、メーカー側が依頼主である企業のブランド製品を製造するか、あるいは依頼主が自社ブランドの製品をメーカーに製造委託する契約を意味します。
販売提携
販売提携とは、他社が有しているブランドや販売チャネル、販売に必要な人材などの販売資源を活用することを目的とした業務提携です。他社の販売チャネルや人材などを活用することによって、自社の販売力を拡充・強化することができます。
販売提携をおこなうにあたっては、「販売店契約」「代理店契約」「フランチャイズ契約」などを締結することになります。「販売店契約」とは、販売店が自社の名前と責任で仕入れた商品を、指定された範囲内で再販売して、在庫リスクを負担する契約です。「代理店契約」とは、代理店がメーカーの代わりに商品を販売する契約です。「フランチャイズ契約」とは、特定の商品あるいはサービスの提供に関して、独占的な権利を有しているフランチャイザーが、加盟店に対して「独占的販売権」を与える契約です。契約締結時に、加盟店は特約料を支払うことになります。
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資本提携の特徴
資本提携とは、前述の通り、一方または双方が相手企業の株式を取得して、資本関係を持つことによって協力体制を築く手法です。経営権は移転しないため、お互いの独立性を維持しながら協力することになります。
経営への影響を考慮して、出資比率は、拒絶権(特別決議の否決権)を与えないよう「3分の1未満」に抑えるのが一般的です。一方で、20%以上を出資すると「持分法適用関連会社」となり、相手方の業績が自社の連結決算に反映されるため、純粋な協力以上の財務的責任が生じる点に注意が必要です。
【重要】議決権比率の境界線 経営判断において、出資比率は単なる数字ではありません。33.4%(3分の1超)を持たれると、定款変更などの重要な決議を拒否される権利(拒絶権)を相手に与えることになります。また、20%以上であれば会計上の関連会社となり、相手の赤字も自社決算に影響します。
資本提携の主な手法
資本提携の主な手法は次の2つです。
それぞれ詳しくみていきましょう。
株式譲渡
株式譲渡とは、株主が保有する会社の株式を第三者に売却・移転する手続きのことです。ただし、前述の通り、3分の1を超える株式が移転すると経営権に影響が及ぶため、出資比率には注意する必要があります。
株式譲渡の主な方法としては、「相対(あいたい)取引」「市場買付」「公開買付(TOB)」が挙げられます。
「相対取引」とは、証券取引所などの市場を介さず、売り手と企業が1対1で直接交渉して、価格や数量、決済方法などを当事者間で決めておこなう取引のことです。なお、売り手側が非上場企業である場合、株式譲渡の方法は必然的に相対取引となります。
「市場買付」とは、売り手側の株式を証券取引所などで購入する方法です。
「公開買付(TOB)」とは、売り手側の株主に対して、株式の売り渡しを公募することによって、市場外の株式を買い集める方法です。上場企業の株式取得に関する条件を満たしている場合、必ず公開買付(TOB)をおこなわなくてはなりません。
第三者割当増資(新株引き受け)
第三者割当増資とは、新規に発行する株式を特定の第三者に割り当てる方法をいいます。第三者割当増資を実行するにあたって、既存の株主の株式が増減することはないため、第三者割当増資で新株を得た株主が大きな影響力を持つことはありません。そのため、第三者割当増資は支配権獲得を目的としない資本提携に向いている方法であるといえます。
また、これら2つの手法以外に、会社が発行予定の新株を決定済の価格で購入できる「新株予約権」などの方法も考えられます。
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合弁会社(設立・経営)の特徴
合弁会社(設立・経営)にはいくつかのスキームがありますが、代表的な成り立ちとしては次の2つとなります。
合弁会社の特徴は、複数社で経営資源を共有することによって、一社のみでは難しい事業規模の拡大や経営の多角化を図れる点にあります。たとえば、自動車メーカーと電池メーカーとで合弁会社を設立して、車載用電池事業を進めていくケースなどが挙げられます。また、日本企業が海外に進出する際、現地の商習慣や法規制にスムーズに対応する目的で、現地企業と合弁会社を設立することもあります。
合弁会社の英語表記は「Joint Venture(ジョイント・ベンチャー)」で、頭文字をとって「JV」と呼ばれることもあります。
解消(EXIT)への備えが必要
合弁会社は「結婚」に例えられますが、「離婚」のルール決めがより重要です。意見が対立して事業が停滞した際、どちらがいくらで株を引き取るか、あるいは清算するのかといった「デッドロック解消条項」を設けることが、経営を守るための必須条件となります。
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業務提携・資本提携・合弁会社(設立・経営)のメリット・デメリットは?
続いては、業務提携・資本提携・合弁会社のメリット・デメリットをみていきましょう。
| メリット | デメリット | |
| 業務提携 | ・シナジー効果が期待できる ・リスクを軽減できる ・経営権を維持できる ・提携のために資金を用意する必要がない |
・技術やノウハウが流出するリスクがある |
| 資本提携 | ・財務や経営レベルでのシナジー効果が期待できる ・経営権を維持できる ・出資を受けた側は、出資金を経営資金として活用できる |
・株式の取得が3分の1を超えた場合、経営権に影響が及ぶ可能性がある ・出資側が敵対的TOBに転じるリスクがある ・出資側が資本提携の解消のために株式の買取要求をしてくる場合がある |
| 合弁会社 (設立・経営) |
・会社設立のコストを抑えられる ・事業運営のリスクを抑えられる ・双方の強みを活かせる ・海外進出しやすい |
・パートナー企業と意見が衝突する可能性がある ・技術やノウハウが流出するリスクがある ・パートナー企業の信用が低下した場合、自社に悪影響が及ぶ可能性がある |
業務提携のメリット・デメリット
業務提携を締結すれば、他社の経営資源やノウハウを活用できるため、技術開発や新事業立ち上げに役立つシナジー効果が期待できます。経営資源を自社ですべて用意する必要がないぶん、リスクを抑えることにもなります。また、経営権が移転しない比較的緩やかな関係で、当事者同士の判断で業務提携を終了することもできます。資本提携とは異なり、株式を取得する必要がないことから、提携のために資金を用意しなくていいこともメリットとして挙げられます。
デメリットとしては、お互いにノウハウや技術を提供し合うことから、それらが流出するリスクが考えられます。業務提携中であれば問題ないにしても、業務提携就業後、開示したノウハウや技術を盗用され続ける可能性も考えられます。こうした状況に陥ることを防ぐために、提携契約時に条件をよく確認し合って、開示した情報の管理を相手方に徹底させることが大切です。
資本提携のメリット・デメリット
資本提携においては、出資した側には、業務提携では得られない内部情報まで開示されることになるため、業務提携よりも強固な関係性を築きやすくなります。その結果として、財務や経営レベルでのシナジー効果を得やすいことや、基本的に出資率を考慮して株式を取得することから、経営権は維持できることなどがメリットとして挙げられます。また、一方が出資を受けているケースの場合、出資を受けた側が、出資金を経営資金として活用できることもメリットです。
なお、出資率に関しては、基本的には3分の1を超えないように考慮するものの、「3分の1を超えてはならない」というルールがあるわけではないため、この割合を超えた出資がおこなわれ、結果的に経営権に影響が及ぶリスクはあります。また、出資側が敵対的TOBに転じるリスクや、出資側が資本提携の解消のために、株式の買取要求をしてくるリスクも考えられます。こうした状況に陥ることを回避するためにも、資本提携を締結する相手を選ぶ際には、慎重になることが必要です。
合弁会社(設立・経営)のメリット・デメリット
2社以上の企業が共同で出資するケースの場合、1社あたりの出資額を抑えて会社を設立することが可能です。同時に、資金や人材、技術などの経営資源に対する投資回収リスクも抑えられます。また、各社が有しているブランドやノウハウ、インフラなどのリソースをお互いに活用できるようになることも大きなメリットです。双方の技術や特許などを組み合わせることによって、開発のスピードが上がる可能性も考えられます。さらに、前述の通り、スムーズな海外進出の実現のために現地企業と合弁会社を設立するケースがありますが、このケースに関しては、「海外進出しやすい」というメリットが考えられます。
デメリットとしては、方針不一致により意思決定が止まる「デッドロック」のリスクがあります。最悪の場合、事業が動かせなくなるため、あらかじめ「どちらかが株を買い取る」といった解消条件(出口戦略)を合弁契約で定めておくことが不可欠です。また、お互いのリソースの活用を認めた結果、自社の技術やノウハウが外部に流出するリスクがあるため、法的なリスクマネジメント体制を整えることや、パートナー企業に対する入念な調査を事前におこなうことが必須です。さらに、なんらかの理由でパートナー企業の社会的信頼や失墜した場合、自社にも悪影響が及ぶ可能性が考えられます。
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業務提携・資本提携・合弁会社(設立・経営)を成功させるためのポイント
業務提携・資本提携・合弁会社(設立・経営)を成功させるためには、次の点に留意することが大切です。
それぞれ詳しくみていきましょう。
提携や協力の目的を設定して共有する
「何のために提携するのか・何のために協力し合うのか」を明確にして、それを先方と共有することで、双方の認知期を一致させることが不可欠です。
提携・協力する企業を慎重に選定する
前述の通り、業務提携・資本提携・合弁会社のいずれの選択肢をとった場合も、技術やノウハウなどが流出するリスクがあります。また、資本提携の場合、出資側が株式の3分の1以上を取得して経営権を行使してくるリスクや、出資側が敵対的TOBに転じるリスクなども考えられるため、信頼できる相手であるのかどうかを慎重に見極める必要があります。
また、いずれの手法を選択した場合も、提携先やパートナー企業の社会的信用が失墜するような出来事があった場合、自社の信用問題にも影響が及ぶ可能性があるので、相手企業の財務状況や企業文化、経営理念などを総合的かつ多角的に調査して、パートナー企業として相応しいかどうかを慎重に判断することが不可欠です。
契約内容を細部までしっかり詰める
先方企業を「信頼できる相手」「パートナーに相応しい」と判断できたとしても、契約を締結するにあたっては、将来起こり得るリスクに備えた内容を検討して、文書化することが不可欠です。
具体的には、提携の範囲・各社の役割分担・成果物の帰属・費用負担・情報管理・契約解除の条件などを細かく設定します。なお、契約書の作成にあたっては、専門家にもアドバイスを求めることをおすすめします。
提携後・共同経営開始後のコミュニケーション体制構築を大切にする
契約を締結した後も、良好な関係をキープできるよう、定期的に情報交換したり、コミュニケーション体制を強化することに注力したりすることが大切です。また、万が一問題が発生した場合に備えて、連絡窓口や報告ルートを明確にしておくことも大切です。
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業務提携・資本提携・合弁会社(設立・経営)のいずれかで迷った場合の判断軸は?
続いては、業務提携・資本提携・合弁会社の設立または経営のいずれがいいかで迷った場合の判断軸について解説していきます。
これら3つのうちいずれを選択すべきかで迷った場合、次に挙げるポイントを判断軸とすると、とるべき選択肢がみえてきやすくなります。
それぞれ詳しく説明していきます。
拘束力(相手を拘束したいか)
業務提携・資本提携・合弁会社の3つを拘束力の強さで並べると、「業務提携<資本提携<合弁会社」となります。なぜかというと、まず、業務提携は、先に解説した通り、当事者同士の話し合いによっていつでも解消することが可能である一方、資本提携は株式を取得している関係上、簡単に提携関係を解消することができません。また、合弁会社に関しては、法人を設立または共同経営することになるため、もっとも拘束力が強くなります。そのため、失敗した場合の撤退手続きもそれなりに面倒です。
自社の主戦場はどこか
既存事業の延長として、他社と絡んでいきたいと考えている場合、業務提携や資本提携が向いているといえます。一方、新規事業や別市場にチャレンジしたい場合、合弁会社を設立することが望ましいと考えられます。なぜなら、合弁会社の評価制度は、既存組織の評価制度と完全にわけることが可能ですし、利益配分や意思決定スピードも既存組織と切り離して考えることができるためです。
また、既存事業はきちんと走らせながら、その一方でPoC(Proof of Concept/概念実証)や実験目的で試しに新しいことに手を出してみたい場合などは、関係性を気軽に解消できる業務提携が向いているといえるでしょう。
資金・人材をどれだけ投資できるか
資金や人材をどれだけ投資できるかは、わかりやすい判断軸となります。
資金に関しては、最小限にとどめたいなら業務提携、出資額次第であるなら資本提携、初期費用や運転資金がある程度かかってもいいなら合弁会社という選択が向いています。
また、業務提携する場合、業務を実行に移すための人材が必要ですが、資本提携であれば役員派遣レベルで実現できます。一方、合弁会社を設立する場合、専任の人材を用意することが必須となります。
失敗した場合のダメージはどこまで許容できるか
提携や会社の経営に失敗した場合、次のダメージを負うことになります。
つまり、発生する手続きも費用も、合弁会社の場合が一番大きいということになります。なお、合弁会社の経営においては、株主間紛争や追加出資問題、方向性のずれなどが生じた場合、一気に失敗の可能性が高まります。
意思決定のスピードについての理想
事業をおこなうにあたって、意思決定のスピードを重視したい場合、業務提携を選ぶことがもっとも適切であるといえます。資本提携の場合、基本的に経営権に影響は及ばないものの、資本を出してもらう関係上、意思決定と支配のバランスが重視されがちです。また、合弁会社で、買収によって取得した会社を、買収した側がもともとの株主や経営陣と共同で経営している場合などは、買収された側のタイミングで意思決定することなどはできません。
これらの判断軸を総合すると、判断軸の全体像は次のように表現できます。
なお、「まずは業務提携してみて、うまくいけば資本提携のステップに進み、そこからさらに先に進みたい場合は合弁会社を設立という流れで提携するケースは、実務上よくあります。
支配権・コントロールの必要性
「相手のノウハウだけ欲しい」のか「相手の事業そのものを自社のコントロール下に置きたい」のかが分かれ目です。後者の場合、資本提携(マイノリティ出資)では限界があるため、過半数を取得するM&Aを検討すべきです。
業務提携・資本提携・合弁会社に関するFAQ
続いては、業務提携・資本提携・合弁会社に関するよくある質問とその答えをみていきましょう。
Q. 資本提携とM&Aの違いは何ですか?
資本提携とM&Aの違いは、経営権の移転の有無にあります。前述した通り、資本提携においては、経営権に影響が及ばないよう、株式の取得を3分の1以下に留めることが一般的です。これに対してM&Aは、相手企業の議決権との過半数を取得することによって、経営に対する決定権を一体化させる取引形態です。そのため、統合後は、両社は一つの意思決定体制のもとで運営されることになります。株式を取得された側に法人格が残っている場合に関しても、重要な経営判断は統合後のグループ全体でおこなわれることから、意思決定の余地は限定的となります。
そのため、株式を取得する側が一体運営を重視しているなら、M&Aを選択するほうが適切であるといえます。
Q. 資本業務提携とは何ですか?
資本業務提携とは、出資による資本関係と、業務面での連携を同時に構築していくパートナーシップのことをいいます。業務提携と資本提携の両方の要素を兼ね備えているため、強固に連携することが可能です。
業務提携との違い
資本業務提携では、相手企業の株式取得を通じて資本関係を結ぶため、関係性を柔軟に解消することができません。また、相手企業の成長が自社の利益に直結するという特徴があります。そのため、お互いに長期的な視点を持って協力しようという姿勢が生まれます。
こうした違いがあることから、短期的な市場検証、あるいは限定的なプロジェクトの場合には業務提携が適していますが、長期的な成長を期待する場合などは、資本業務提携が向いているといえるでしょう。
資本提携との違い
資本提携の目的は、株式を取得することで、財務的・戦略的な関係を築くことです。そのため、業務に関する協力は、必要に応じて任意的におこなわれる場合がほとんどです。また、提携することによるシナジー創出が保証されることがありません。
これに対して資本業務提携は、共同開発・販売連携・調達や生産の協業などの業務提携に関しても契約を締結することになるため、出資を事業成長につなげるための具体的な取り組みを進めやすいといえます。
資本業務提携のメリット
資本業務提携には、次のようなメリットがあります。
資本提携・業務提携と同じく、経営権が移転することがなく、独立性を保つことができるうえ、出資関係と業務面での連携の両方を構築していくことができるため、資本提携・業務連携と比べて協力体制が強固になります。
業務提携のように、双方の経営資源を活用することによるシナジー効果が期待できるだけでなく、出資金を事業資金として活用することができるため、成長速度の加速も期待できます。
投資・開発・販売などにかかる負担を1社で抱えなくて済むため、単独で投資した場合と比べて金銭的リスクを大幅に軽減することができます。また、事業が軌道に乗らなかった場合の損失についても共有されることになるため、経営へのダメージを抑えることができます。
相手企業が有している技術やノウハウ、顧客基盤、ブランドなどを活用することができるため、事業展開のスピードを速められる可能性が高いといえます。
資本業務提携のデメリット
資本業務提携のデメリットは次の通りです。
前述の通り、業務提携は比較的簡単に提携を解消できますが、資本提携は株式の移動を伴うことから、解消のためには相手が保有する株式の買い戻し交渉から始めなければなりません。資本業務提携も、資本提携同様、株式が移動するため、簡単に提携を解消できないということになります。
なお、買い戻し交渉では、株価の評価に関して意見が食い違うことや、相手が株式の売却になかなか応じないことがあり得ます。それでも解消しようとすると、想定以上の資金が必要となる場合があるので、結果的に、その後の事業運営の選択肢が狭まる可能性を孕んでいるといえます。
こうしたリスクを軽減するために、提携契約を結ぶ際に、株式の買取条件や価格算定の方法、提携修了時の手続きなどをきちんと決めて、契約書に明記しておくことが大切です。
資本業務提携においては、株式取得のための資金を用意しなくてはならないので、資金の余力が限られている企業にとっては大きな負担となり得ます。それだけでなく、取得した株式の株価が下落する可能性があることから、場合によっては回収不能となるリスクがあります。
こうしたリスクを軽減するために、「出資比率を最小限に抑える」「段階的な出資スキームを採用する」「新株予約権または新株予約権付社債を活用する」などの選択肢をとることを検討するといいでしょう。
資本業務提携においては株式を取得することから、株主となる提携先が、議決権や取締役を通じて経営に関与することになります。特に、出資比率が一定水準を超えた場合は注意が必要です。方針変更や投資判断に関して相手企業との調整が必要になり、スピーディに意思決定できなくなる可能性があります。
こうしたリスクを避けるために、契約締結時に、自社が判断できる領域と双方で協議すべき事項を決めて、契約書に明記しておくことが大切です。
資本業務提携して共同開発する場合、成果物や技術の権利範囲をきちんと決めておかなければ、利用券や所有権を巡って揉める可能性があります。
こうしたリスクを回避するために、開発に入る前に、既存の技術と共同開発による成果を区別して、それぞれの権利や利用範囲を確認して、契約書に明記しておくことが大切です。
Q. 業務提携は株式を取得する必要がないということは、お金がかからないということですか?
業務提携の“契約を結ぶだけ”なら、ゼロ円でもできます。ただし、業務提携を結ぶことによって、次のようなコストが発生する可能性が高いといえます。
契約関連コスト
業務提携契約書の作成のために、弁護士や司法書士にサポートを依頼するのが一般的です。依頼費の目安は、数万円~数十万円程度です。
実務コスト
共同プロジェクトを進めていくための実務にあたる人材に対して、人件費がかかります。また、システム連携や開発にも一定の費用がかかりますし、共同広告などのマーケティング費も用意しておくことが大切です。
機会コスト
業務提携を締結すると、自社リソースを提携先に割くことになるため、結果として自社の業務の優先順位を変更せざるを得なくなったり、他案件の遅延が発生したりする場合があります。そのフォローのためにも、一定の費用がかかる可能性があることを頭に入れておく必要があります。機会コストは、実質どの程度発生しているかが見えにくいですが、一番大きな割合を占める可能性があります。
Q. 合弁会社の社長には誰が就任するのが一般的ですか?
合弁会社の社長には、出資企業のうち、主導権を持つ側から選出されるか、もしくは中立的な外部人材が就任することになるのが一般的です。
Q. 合弁会社で利益が出た場合、どのように分配しますか?
原則としては、出資比率に応じて配当されることになります。ただし、役部提供料、ライセンス料、業務委託費などを鑑みて調整されるケースも多いです。
提携や共同での会社設立・運営は「手段」であって「目的」ではない
業務提携・資本提携・合弁会社運営のメリットやデメリットを比較しても、どのスキームを選ぶべきか迷ってしまうという場合、「外部パートナーと協力することによって何を達成したいのか?」を今一度考えてみることが大切です。いずれのスキームも、「手段」であって「目的」ではありません。大切なのは、「何を達成したいのか」ということなので、その点を軸にして考えを深めていくと、ベストな選択ができる可能性が高くなります。
まずは「自分の会社がいくらか」を知るところから
ジョブカンM&Aでは、専任アドバイザーが事業価値の簡易査定から成約まで一貫して伴走します。相談は無料。売却・買収のどちらでもお気軽にどうぞ。
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ジョブカンM&A ジョブカンM&A編集部
ジョブカンM&Aは、株式会社DONUTSが運営するM&Aアドバイザリーサービスです。主に企業の事業承継、成長戦略、出口戦略(イグジット)といった多様なニーズに応えることを目的としています。最大の特徴は、累計導入社数20万社以上を誇るバックオフィス支援クラウドERPシステム「ジョブカン」の広範なネットワークを活用している点です。この強力な顧客基盤を生かし、効率的なマッチングを実現します。
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