連結財務諸表に関する会計基準(企業会計基準第22号)|M&Aで子会社化した後の連結手順と、投資と資本の相殺消去・のれん・非支配株主持分の仕訳例

「連結財務諸表に関する会計基準」は、企業会計基準委員会(ASBJ)が定めた企業会計基準第22号です。親会社と子会社を1つの会社のようにまとめた財務諸表を、どう作るかを決めています。

M&Aの文脈でこの基準が必要になるのは、会社を買って子会社にした後です。買収した会社の決算書を親会社の決算書に足し合わせ、グループの中でのお金とモノのやり取りを消し、買収価格と子会社の純資産の差をのれんとして計上します。

この記事では、第22号の全体像と、M&A後に行う連結の手順を段落番号つきで整理し、投資と資本の相殺消去と内部取引の消去を数値例の仕訳で示します。ある会社が子会社に当たるかどうかの判定は「連結子会社とは」で扱っているので、ここでは子会社になった後の処理に絞ります。

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目次
  1. 連結財務諸表に関する会計基準(企業会計基準第22号)の全体像
  2. 連結財務諸表に関する会計基準でM&A後に行う連結の手順
  3. 連結財務諸表の投資と資本の相殺消去の計算例
    1. ステップ1:子会社の資産を時価に置き直す
    2. ステップ2:投資と資本を相殺消去し、のれんと非支配株主持分を計上する
  4. 連結財務諸表での内部取引と未実現利益の消去
    1. 計算例:親会社が子会社に商品を売った場合
  5. 連結財務諸表を作る必要がある会社の判定表
    1. 上場会社の子会社になる前のチェックリスト
  6. よくある質問
    1. Q. 連結財務諸表に関する会計基準と連結財務諸表規則は何が違いますか。
    2. Q. 子会社の株式を100%取得した場合も、非支配株主持分は出ますか。
    3. Q. 子会社の決算日が違う場合はどうしますか。
  7. まとめ
  8. 参考

連結財務諸表に関する会計基準(企業会計基準第22号)の全体像

第22号は2008年12月に公表され、2010年・2011年・2013年の改正を経て、最終改正は2026年6月2日です。2026年の改正は、金融商品会計基準の改正に合わせて特別目的会社の扱い(第7-2項)を見直したもので、2027年4月1日以後に始まる連結会計年度の期首から適用されます。子会社を買収した後の基本的な手順は変わっていません。

基準の骨組みは次のとおりです。

区分 主な段落 決めていること
用語・連結の範囲 第6項・第7項・第13項・第14項 子会社の定義(支配力基準)と、すべての子会社を連結する原則
連結決算日・会計方針 第15項〜第17項 決算期間は1年、子会社の決算日のずれ、会計方針の統一
子会社の資産・負債の評価 第20項〜第22項 支配を獲得した日の時価で評価する(全面時価評価法)
投資と資本の相殺消去 第23項〜第25項 親会社の子会社株式と子会社の資本を消し、差額をのれんにする
非支配株主持分 第26項・第27項 子会社の資本のうち親会社に帰属しない部分
追加取得・一部売却 第28項〜第30項 支配を続けたまま持分が動いたときの処理
債権債務・取引高・未実現損益 第31項・第35項〜第38項 グループ内の取引を消す

「非支配株主持分」は、以前は「少数株主持分」と呼ばれていました。2013年の改正で名称が変わっています。

連結財務諸表に関する会計基準でM&A後に行う連結の手順

会社の株式の80%を買って子会社にした場合、親会社は次の順で連結財務諸表を作ります。

  1. 連結の範囲に入れる。親会社は原則としてすべての子会社を連結します(第13項)
  2. 決算日と会計方針をそろえる。子会社の決算日が連結決算日と違う場合、差が3か月以内なら子会社の正規の決算を使えます(第16項、注4)。同じ環境での同じ性質の取引は、会計方針を原則として統一します(第17項)
  3. 子会社の資産・負債を時価に置き直す。支配を獲得した日の時価で評価し、帳簿価額との差(評価差額)は子会社の資本に含めます(第20項・第21項)
  4. 投資と資本を相殺消去する。親会社が持つ子会社株式と、それに対応する子会社の資本を消します。差額はのれん(または負ののれん)です(第23項・第24項)
  5. 非支配株主持分を計上する。子会社の資本のうち親会社に帰属しない部分を、非支配株主持分として分けます(第26項)
  6. グループ内の取引を消す。親子間の債権と債務、売上と仕入を相殺し(第31項・第35項)、グループ内で売った在庫などに含まれる利益を消します(第36項)

売り手の経営者から見ると、上場会社に会社を売った後は、自社が「連結される側」になるということです。親会社の決算に間に合うように、月次決算の締めを早め、会計方針を親会社に合わせることを求められます。M&Aの契約前に、親会社の決算日と求められる報告の締切を確認しておくと、売却後の経理の負担を見積もれます。

連結財務諸表の投資と資本の相殺消去の計算例

数値例で仕訳を示します。税効果は省いた簡略化した例です。

  • 親会社P社が、S社の株式の80%を1億円で取得し、子会社にした
  • S社の純資産(帳簿価額)は、資本金1,000万円・利益剰余金5,000万円の合計6,000万円
  • S社が持つ土地の時価が帳簿価額より1,000万円高い

ステップ1:子会社の資産を時価に置き直す

借方 金額 貸方 金額
土地 1,000万円 評価差額 1,000万円

これでS社の資本は、資本金1,000万円+利益剰余金5,000万円+評価差額1,000万円=7,000万円になります。

ステップ2:投資と資本を相殺消去し、のれんと非支配株主持分を計上する

項目 計算 金額
S社の資本(時価評価後) 6,000万円+1,000万円 7,000万円
親会社の持分(80%) 7,000万円×80% 5,600万円
非支配株主持分(20%) 7,000万円×20% 1,400万円
のれん 1億円−5,600万円 4,400万円
借方 金額 貸方 金額
資本金 1,000万円 S社株式 1億円
利益剰余金 5,000万円 非支配株主持分 1,400万円
評価差額 1,000万円
のれん 4,400万円
合計 1億1,400万円 合計 1億1,400万円

のれんは、企業結合会計基準第32項に従い、20年以内の効果の及ぶ期間で規則的に償却します(第24項)。10年で償却するなら、毎年440万円が連結損益計算書の費用になります。買収価格が子会社の資本を下回った場合の負ののれんは、生じた年度の利益として計上します(企業結合会計基準第33項)。

買い手が「のれんが大きい案件」を嫌がるのは、この償却が毎年の連結利益を削るからです。売り手が価格交渉で買い手の事情を読むときの手がかりになります(「のれんとは」)。

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連結財務諸表での内部取引と未実現利益の消去

子会社化した後に親子間で取引をすると、そのままではグループの外に何も売っていないのに売上が立ちます。これを消すのが内部取引の消去です。

計算例:親会社が子会社に商品を売った場合

P社がS社に商品を3,000万円で売り、期末にS社がそのうち1,000万円分を在庫として持っていた例です。P社の利益率は20%とします。

処理 借方 金額 貸方 金額
取引高の相殺(第35項) 売上高 3,000万円 売上原価 3,000万円
未実現利益の消去(第36項) 売上原価 200万円 商品 200万円
債権債務の相殺(第31項。期末に500万円が未決済) 買掛金 500万円 売掛金 500万円

在庫1,000万円にはP社の利益200万円(1,000万円×20%)が含まれていて、グループの外にはまだ売れていません。この200万円は全額消去します。

子会社が親会社に売った場合(アップストリーム)で、子会社に非支配株主がいるときは、消去した未実現利益を親会社と非支配株主の持分比率で配分します(第38項)。上の例なら、200万円のうち40万円(20%)を非支配株主持分に負担させます。

連結財務諸表を作る必要がある会社の判定表

連結財務諸表の作成が法令で義務づけられているのは、一部の会社だけです。中小企業が子会社を買っても、それだけで作成義務は生じません。

自社の状況 連結の作成 根拠・理由
上場会社など、有価証券報告書を出す会社 必要 金融商品取引法に基づく開示。連結財務諸表規則に従う
大会社(資本金5億円以上または負債200億円以上)で、有価証券報告書を出す会社 会社法の連結計算書類も必要 会社法第444条第3項
会計監査人を置いている会社 任意で作れる 会社法第444条第1項
中小企業で、子会社を買った 義務なし 銀行への説明や、グループ全体の採算を見るために任意で作る価値はある
上場会社に買われた中小企業 自社では作らない 親会社の連結のために、決算データと会計方針の情報を提出する
法人税でグループ全体をまとめて申告したい 会計の連結とは別の制度 100%の親子関係でグループ通算制度を選ぶかの判断になる

中小企業のオーナーにとって実務で関わるのは、下の3行です。自社が買い手なら、作成義務は無いがグループの実態を見るために作るか。自社が売り手なら、上場会社の連結に組み込まれる準備ができているか。

上場会社の子会社になる前のチェックリスト

  • [ ] 親会社の連結決算日と、自社の決算日の差が3か月以内か
  • [ ] 月次決算を締めるまでの日数(親会社の締切に間に合うか)
  • [ ] 収益の計上基準、減価償却の方法、在庫の評価方法が親会社と違わないか
  • [ ] 親会社やグループ会社との取引を、相手先ごとに集計できるか
  • [ ] 土地・建物など時価と帳簿価額が大きく離れた資産の一覧
  • [ ] 経理担当者の人数と、連結用の報告書を作る時間

よくある質問

Q. 連結財務諸表に関する会計基準と連結財務諸表規則は何が違いますか。

会計基準は、連結財務諸表をどう作るか(会計処理)を決めたものです。連結財務諸表規則は、金融商品取引法に基づいて有価証券報告書に載せる連結財務諸表の用語・様式・作成方法を定めた規則です。上場会社は両方に従います。

Q. 子会社の株式を100%取得した場合も、非支配株主持分は出ますか。

出ません。100%子会社では子会社の資本がすべて親会社に帰属するので、投資と資本の相殺消去の差額はのれんだけになります。

Q. 子会社の決算日が違う場合はどうしますか。

差が3か月以内なら、子会社の正規の決算を基に連結できます。この場合、決算日の違いで生じる親子間の取引の重要な不一致は整理します。3か月を超えるなら、連結決算日に正規の決算に準ずる手続きで決算を行います。

まずは「自分の会社がいくらか」を知るところから

ジョブカンM&Aでは、専任アドバイザーが事業価値の簡易査定から成約まで一貫して伴走します。相談は無料。売却・買収のどちらでもお気軽にどうぞ。

まとめ

連結財務諸表に関する会計基準は、買収した会社を親会社と1つの会社として見せるための手順書です。中心は、子会社の資産を時価に置き直し、子会社株式と子会社の資本を相殺してのれんと非支配株主持分を出し、グループ内の取引を消すことです。

買い手の側では、のれんの償却が毎年の連結利益にかかることが価格の上限を決める。売り手の側では、売却後に連結される側として決算の早期化と会計方針の統一が求められる。

どちらの立場でも、M&Aの契約前に、連結で必要になる数字をそろえられるかを確認してください。

参考

  • 企業会計基準委員会 企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」(最終改正2026年6月2日)https://www.asb-j.jp/jp/wp-content/uploads/sites/4/spc20260602_06.pdf
  • 企業会計基準委員会 企業会計基準第22号 概要ページ https://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards_system/details.html?topics_id=111
  • 会社法(第2条・第444条)https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086

ジョブカンM&A ジョブカンM&A編集部

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