適格合併の要件を判定フロー表で整理|完全支配・支配・共同事業の3類型と繰越欠損金

合併は、会社の資産と負債を丸ごと別の会社に移す手続である。法人税では、合併が「適格合併」に当たるかどうかで課税が大きく変わる。

適格なら資産は帳簿価額のまま引き継がれ、合併の時点では課税されない。非適格なら、資産を時価で譲渡したものとして含み益に課税され、株主にも課税が及ぶことがある。

本稿では、法人税法2条12号の8と法人税法施行令4条の3を基に、要件を判定フロー表の形に整理する。税務の個別判断は、必ず税理士など専門家に確認してほしい。

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目次
  1. 適格か非適格かで何が変わるか
  2. 全類型に共通する対価要件
  3. 3類型の判定フロー表
    1. 類型A:完全支配関係がある場合
    2. 類型B:支配関係(50%超)がある場合
    3. 類型C:共同事業を行うための合併(資本関係が50%以下)
  4. 繰越欠損金の引継ぎと制限
    1. 制限がかからないケース
    2. みなし共同事業要件
    3. 制限がかかると何が使えなくなるか
  5. 実務例:親族で持つ会社同士の合併
    1. 親族は「一の者」にまとめて判定する
    2. 判定の順序
  6. よくある質問
    1. Q1. 合併の対価として少しでも現金を渡すと、必ず非適格になるのか
    2. Q2. 100%子会社を吸収合併する場合も、従業員の引継ぎが要件になるのか
    3. Q3. 買収したばかりの赤字会社を合併すれば、欠損金を使えるのか
  7. まとめ
  8. 参考

適格か非適格かで何が変わるか

項目 適格合併 非適格合併
被合併法人の資産・負債 帳簿価額で引継ぎ(法人税法62条の2) 時価で譲渡したものとして譲渡損益を計上(同法62条)
被合併法人の株主 みなし配当なし 交付資産が資本金等の額を超える部分はみなし配当(同法24条)
繰越欠損金 一定の制限の下で引き継げる(同法57条2項) 引き継げない
のれん相当額 生じない 一定の場合、資産調整勘定として計上し60か月で均等に減額(同法62条の8)

含み益のある土地を持つ会社を合併する場合、非適格だと合併の時点で税負担が発生する。逆に含み損や大きな欠損金を持つ会社の合併では、適格でも欠損金を使えないことがある。要件は「満たすか」だけでなく「満たした後に何が使えるか」まで見る。

全類型に共通する対価要件

適格合併の大前提は、被合併法人の株主に、合併法人(または合併親法人)の株式以外の資産を交付しないことである。現金を渡すと、原則として非適格になる。

ただし次の3つは、交付しても対価要件を損なわない。

  1. 株主に対する剰余金の配当等として交付する金銭など
  2. 合併に反対する株主の買取請求に基づく対価
  3. 合併直前に合併法人が被合併法人の株式を3分の2以上持っている場合の、それ以外の株主に交付する金銭など

3は、少数株主を現金で整理しながら適格合併を行う余地を認めたものである。

3類型の判定フロー表

対価要件を満たしたうえで、当事者の関係に応じて次のどれかに当てはめる。上から順に判定する。

ステップ 判定 はい いいえ
1 合併直前に、当事者間に完全支配関係(100%)があるか 類型Aへ ステップ2へ
2 合併直前に、当事者間に支配関係(50%超)があるか 類型Bへ ステップ3へ
3 資本関係なし(50%以下)。共同で事業を行うための合併か 類型Cへ 非適格

類型A:完全支配関係がある場合

関係 必要な要件
一方が他方の株式を100%持つ(親子会社) 対価要件のみ
同一の者が両社を100%持つ(兄弟会社) 対価要件+合併後も同一の者による完全支配関係が継続する見込み

従業者の引継ぎや事業の継続は求められない。グループ内の整理で使いやすい類型である。

株式を交付しない「無対価合併」の場合は、合併法人が被合併法人の株式を全部持っているか、両社の株主構成が同じ割合であるなど、関係が限定される。

類型B:支配関係(50%超)がある場合

要件 中身
支配関係の継続(兄弟会社型の場合) 合併後も同一の者による支配関係が続く見込み
従業者引継要件 被合併法人の合併直前の従業者のおおむね80%以上が、合併後に合併法人の業務に従事する見込み
事業継続要件 被合併法人の合併前の主要な事業が、合併後も合併法人で引き続き行われる見込み

合併法人との間に完全支配関係がある法人の業務に従事する場合なども、従業者引継要件の判定に含められる。

類型C:共同事業を行うための合併(資本関係が50%以下)

次のすべてを満たす必要がある(法人税法施行令4条の3第4項)。

# 要件 中身
1 事業関連性要件 被合併法人の主要な事業のいずれかと、合併法人の事業のいずれかが相互に関連する
2 規模要件 または 特定役員引継要件 売上金額・従業者数・資本金などの規模の割合がおおむね5倍以内、または双方の特定役員(社長・副社長・代表取締役・専務・常務など)のいずれかが合併後に合併法人の特定役員になる見込み
3 従業者引継要件 おおむね80%以上が合併後も業務に従事する見込み
4 事業継続要件 関連する事業が合併後も引き続き行われる見込み
5 株式継続保有要件 被合併法人に支配株主(50%超を持つ者)がいる場合、支配株主に交付された合併法人株式の全部を継続保有する見込み

被合併法人に支配株主がいない場合は、5の株式継続保有要件は課されない。規模が5倍を超える会社同士でも、特定役員が合併後の経営に加われば2を満たせる。

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繰越欠損金の引継ぎと制限

適格合併では、被合併法人の前10年内の欠損金を合併法人が引き継げる(法人税法57条2項)。ただし支配関係のある会社同士では制限がかかる(同条3項)。

制限がかからないケース

次のいずれかに当たれば、引継ぎの制限はない。

  • 合併の日の属する事業年度開始の日の5年前の日(または両社の設立日のうち遅い日)から、継続して支配関係がある
  • 共同で事業を行うための合併として政令で定めるもの(みなし共同事業要件)に当たる

みなし共同事業要件

法人税法施行令112条3項は、次の「1〜4」または「1と5」を求めている。

# 要件
1 事業関連性:両社の事業が相互に関連する
2 規模:売上金額・従業者数・資本金などの割合がおおむね5倍以内
3 被合併事業の規模継続:支配関係が生じた時から合併直前まで事業が続き、その間の規模の変化がおおむね2倍以内
4 合併事業の規模継続:合併法人側も同様に、規模の変化がおおむね2倍以内
5 特定役員引継:支配関係が生じる前から役員等だった双方の特定役員のいずれかが、合併後に合併法人の特定役員になる見込み

制限がかかると何が使えなくなるか

5年継続もみなし共同事業要件も満たさない場合、被合併法人の欠損金のうち次は引き継げない。

  • 支配関係が生じた事業年度より前に発生した欠損金
  • 支配関係が生じた後の欠損金のうち、支配関係前から持っていた資産の含み損の実現による部分(特定資産譲渡等損失額に相当する部分)

合併法人自身の欠損金にも同じ制限がかかる(同条4項)。欠損金を持つ会社を買収して間もなく合併する場合に、最も効いてくる規定である。

実務例:親族で持つ会社同士の合併

中小企業では、父が持つ会社と長男が持つ会社を1つにまとめたいという相談が多い。

親族は「一の者」にまとめて判定する

支配関係・完全支配関係を判定する「一の者」は、個人の場合、その者と特殊の関係のある個人を含む(法人税法施行令4条の2)。特殊の関係のある個人には株主の親族が含まれる(同令4条1項)。

設例 判定
父がA社を100%、長男がB社を100%保有 父と長男をまとめて「一の者」とみるので、同一の者による完全支配関係に当たる
父がA社を100%、長男がB社を60%(残りは第三者)保有 A社・B社とも「一の者」が50%超を持つので、同一の者による支配関係

判定の順序

確認事項 設例1(父100%・長男100%)
対価要件 B社株式だけを父に交付すれば満たす
類型 類型A(同一の者による完全支配関係)
継続見込み 合併後も父と長男でB社を100%持ち続ける見込みが要る
従業者・事業の要件 不要
欠損金の引継ぎ 両社の関係が5年前の日(または設立日)から続いていれば制限なし。続いていなければ、みなし共同事業要件を確認する

合併直後に株式を第三者へ売る予定がある場合、継続見込みが崩れて非適格になりうる。事業承継の計画と合併の順番は、あわせて設計する必要がある。

設立日を起点とする例外には、組織再編を利用した設立などについての除外規定もある。新しく作った会社と合併する場合は、特に専門家の確認を受けてほしい。

よくある質問

Q1. 合併の対価として少しでも現金を渡すと、必ず非適格になるのか

原則として非適格になる。ただし、剰余金の配当として交付する金銭、反対株主の買取請求への対価、合併法人が3分の2以上を持つ場合の少数株主への金銭は、対価要件の判定から除かれる。

Q2. 100%子会社を吸収合併する場合も、従業員の引継ぎが要件になるのか

ならない。完全支配関係がある合併(類型A)では、従業者引継要件と事業継続要件は求められない。ただし繰越欠損金の引継ぎは、支配関係の継続期間やみなし共同事業要件で別に判定する。

Q3. 買収したばかりの赤字会社を合併すれば、欠損金を使えるのか

そのままでは使えないことが多い。支配関係が合併事業年度開始の日の5年前の日から継続していないと、みなし共同事業要件を満たさない限り、支配関係前の欠損金は引き継げない。合併法人自身の欠損金にも同様の制限がある。

まずは「自分の会社がいくらか」を知るところから

ジョブカンM&Aでは、専任アドバイザーが事業価値の簡易査定から成約まで一貫して伴走します。相談は無料。売却・買収のどちらでもお気軽にどうぞ。

まとめ

  • 適格合併なら資産は帳簿価額で引き継がれ、非適格なら時価で譲渡したものとして課税される
  • 対価要件は全類型共通で、現金交付の例外は3つに限られる
  • 完全支配関係なら対価要件と継続見込みのみ、支配関係なら従業者80%と事業継続、資本関係がなければ共同事業の5要件を見る
  • 繰越欠損金は、5年継続かみなし共同事業要件を満たさないと引継ぎが制限され、合併法人側にも制限が及ぶ
  • 親族で持つ会社同士は親族をまとめて判定するため、完全支配関係の類型に入ることが多い

参考

  • e-Gov法令検索「法人税法(2条12号の7の5・12号の7の6・12号の8、24条、57条、62条、62条の2、62条の8)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034
  • e-Gov法令検索「法人税法施行令(4条、4条の2、4条の3、112条)」 https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000097

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