損益分岐点の計算方法|固定費と変動費の分け方で答えが変わる

損益分岐点の式そのものは短い。

損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率
限界利益率 =(売上高 - 変動費)÷ 売上高

詰まるのは計算ではなく、固定費と変動費の分け方である。同じ決算書から、分け方を変えるだけで損益分岐点は数百万円動く。

まずは「自分の会社がいくらか」を知るところから

ジョブカンM&Aでは、専任アドバイザーが事業価値の簡易査定から成約まで一貫して伴走します。相談は無料。売却・買収のどちらでもお気軽にどうぞ。

目次
  1. まず用語を1本に揃える
  2. 計算例
    1. 安全余裕率
  3. 固定費と変動費の分け方
    1. 人件費をどちらに入れるか
    2. 判断に迷う科目
  4. 目標利益から逆算する
  5. 下げる方法は3つしかない
  6. M&A・事業承継の場面で使うとき
  7. 損益分岐点比率と安全余裕率
  8. 会社によって見方が分かれる3パターン
  9. よくある質問
    1. 粗利と限界利益は同じですか。
    2. 複数の商品があるときはどう計算しますか。
    3. 損益分岐点比率とは何ですか。
    4. 赤字の会社でも計算できますか。
  10. まとめ
  11. 参考

まず用語を1本に揃える

用語 意味
変動費 売上に比例して増減する費用(仕入、材料費、外注費、販売手数料)
固定費 売上に関係なく発生する費用(家賃、正社員の人件費、減価償却費、保険料)
限界利益 売上高 - 変動費。固定費の回収に使える金額
限界利益率 限界利益 ÷ 売上高
損益分岐点売上高 利益がゼロになる売上高

限界利益は「粗利」と似ているが同じではない。売上原価の中に固定費(工場の減価償却費など)が含まれていると、粗利と限界利益はずれる。

計算例

項目 金額
売上高 1億円
変動費 6,000万円
限界利益 4,000万円
固定費 3,000万円
営業利益 1,000万円
限界利益率 = 4,000万円 ÷ 1億円 = 40%
損益分岐点売上高 = 3,000万円 ÷ 40% = 7,500万円

売上が7,500万円まで落ちると利益がゼロになる。

安全余裕率

安全余裕率 =(実際の売上高 - 損益分岐点売上高)÷ 実際の売上高
        =(1億円 - 7,500万円)÷ 1億円 = 25%

売上が25%落ちるまでは赤字にならない、という意味になる。業種によって適正水準は違うが、この数字が一桁台なら、売上のわずかな変動で赤字に転じる構造だと分かる。

固定費と変動費の分け方

分解の方法は主に3つある。どれを使うかで結果が変わるため、社内で1つに決めて継続する。

方法 やり方 向き・不向き
勘定科目法 勘定科目ごとに固定か変動かを決める 最も簡単。実務ではこれが多い
高低点法 最も操業度の高い月と低い月の2点から傾きを出す 簡単だが、異常値に弱い
最小二乗法(回帰分析) 複数月のデータから回帰直線を引く 精度は高い。データ数が要る

人件費をどちらに入れるか

ここが最大の分岐点になる。

  • 正社員の給与 → 固定費(売上が落ちても払う)
  • アルバイト・パートの給与 → 業態による。シフトを売上に連動させているなら変動費
  • 歩合給・賞与 → 変動費に近い
  • 法定福利費 → 給与に連動するので、給与の分類に従う

製造業では労務費を変動費に入れる考え方もある。自社がどちらを採るかを決めて、期間比較のときは同じ基準で揃える。基準を変えたまま前年と比べると、改善したように見えるだけになる。

判断に迷う科目

科目 よくある扱い
水道光熱費 基本料金は固定、使用量分は変動。実務では固定に寄せることが多い
運賃・荷造費 変動費
広告宣伝費 固定費(売上に比例していないことが多い)
支払手数料 決済手数料は変動、顧問料は固定
修繕費 固定費(発生が不規則なので平準化して見る)

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目標利益から逆算する

損益分岐点は「ゼロになる点」だが、実務では「目標の利益を出すにはいくら売ればよいか」のほうを使う場面が多い。

必要売上高 =(固定費 + 目標利益)÷ 限界利益率

先の例で目標利益を2,000万円とすると、

(3,000万円 + 2,000万円)÷ 40% = 1億2,500万円

現在の1億円から2,500万円の増収が要る。この形にすると、目標が売上の数字に変換されて現場に落ちる。

下げる方法は3つしかない

損益分岐点を下げる手段は、構造的に3つに限られる。

  1. 固定費を減らす —— 最も直接的。ただし削りすぎると事業が縮む
  2. 変動費率を下げる(=限界利益率を上げる) —— 仕入単価の交渉、歩留まりの改善
  3. 売価を上げる —— 限界利益率が上がる。最も効きが大きいが、失注のリスクがある

値上げの効きは大きい。先の例で売価を5%上げて数量が変わらなければ、限界利益率は40%から約43%に上がり、損益分岐点は7,500万円から約7,000万円へ下がる。

M&A・事業承継の場面で使うとき

損益分岐点は、売り手・買い手のどちらにとっても「この事業の耐久力」を測る指標になる。

  • 買い手 —— 安全余裕率が薄い事業は、買収後の環境変化で一気に赤字化する
  • 売り手 —— 固定費にオーナー個人に紐づく費用(役員報酬、保険、車両)が含まれていると、実態の損益分岐点はもっと低い
  • どちらも —— 正常収益力(EBITDA調整後)で計算し直すと、見え方が変わる

売り手が説明すべきなのは「この固定費は買い手には発生しない」という内訳である。役員報酬を市場水準に引き直した固定費で計算すると、安全余裕率が改善して見えることがある。

ただし恣意的な調整は買い手に見抜かれる。根拠を示せる範囲にとどめる。

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損益分岐点比率と安全余裕率

計算した損益分岐点売上高を、実際の売上高と比べます。

損益分岐点比率(%)= 損益分岐点売上高 ÷ 実際の売上高 × 100
安全余裕率(%)= 100 − 損益分岐点比率

損益分岐点比率が低いほど、売上が落ちても赤字になりにくい会社です。
一般に80%以下なら優良、100%に近いほど余裕がないとされます。

会社によって見方が分かれる3パターン

同じ「損益分岐点比率が高い」でも、対応は業種によって変わります。

パターン 状態 買い手からの見え方
比率が低く安全余裕がある 固定費が軽く、変動費中心の構造 そのまま強みとして提示できる
比率は高いが改善余地がある 正社員比率が高い、遊休資産を抱えている 譲渡前に固定費の見直しを検討する価値がある
業種特性で構造的に高い 装置産業、不動産賃貸業など初期投資が重い業種 単独の数字ではなく業界平均との比較で判断される

3つめのケースを自社単独の数字だけで悲観視する必要はありません。
一方で2つめに当てはまる場合は、譲渡を検討し始めた時点で
固定費の一部を変動費化(外注化、賃貸から使用料契約への切り替え等)
できないかを確認しておく
と、評価の見え方が変わります。

よくある質問

粗利と限界利益は同じですか。

同じではない。粗利は売上高から売上原価を引いたもので、売上原価には固定費が含まれることがある。限界利益は変動費だけを引く。製造業では両者が大きくずれる。

複数の商品があるときはどう計算しますか。

商品ごとの限界利益率が違うため、構成比で加重平均する。売れ筋が変わると全体の限界利益率も変わるので、前提とした構成比を明示しておく。

損益分岐点比率とは何ですか。

損益分岐点売上高 ÷ 実際の売上高。安全余裕率とは逆の見方で、100%に近いほど余裕がない。「損益分岐点比率75%」と「安全余裕率25%」は同じことを言っている。

赤字の会社でも計算できますか。

できる。限界利益率がプラスであれば、固定費をどこまで減らすか、あるいは売上をいくら増やせば黒字化するかが出る。限界利益率がマイナスなら、売れば売るほど赤字になる構造なので、価格か原価の見直しが先になる。

まとめ

  • 式は単純で、詰まるのは固定費と変動費の分け方。人件費の扱いで答えが動く
  • 分解方法を1つに決めて継続する。基準を変えたまま前年と比べない
  • 安全余裕率が一桁台なら、売上のわずかな変動で赤字に転じる構造
  • 実務で使うのは「目標利益から逆算した必要売上高」のほう
  • 下げる手段は固定費・変動費率・売価の3つだけ。値上げの効きが最も大きい
  • M&Aでは正常収益力で計算し直す。オーナー個人に紐づく費用の内訳を示す

参考

ジョブカンM&A ジョブカンM&A編集部

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