累進課税とは?所得税の7段階の税率と、事業承継・M&Aで効いてくる場面

累進課税は「稼ぐほど税率が上がる仕組み」と説明されますが、経営者にとって重要なのは、どの所得がこの仕組みに乗り、どの所得が乗らないかです。

会社を譲るとき、退職金を取るとき、株式を売るとき——同じ手取りを目指しても、受け取り方で税率が20ポイント以上変わることがあります。その分岐点を作っているのが累進課税です。

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目次
  1. 累進課税とは
  2. 所得税の税率 — 7段階
  3. 🔴 累進課税に「乗らない」所得がある
  4. 経営者に効いてくる3つの場面
    1. 1. 会社を売る(株式譲渡)
    2. 2. 退職金で受け取る
    3. 3. 役員報酬を毎年上げる
  5. 判断の境界線 — どれを選ぶか
    1. 株式譲渡(M&A)が向いている
    2. 退職金での受け取りを厚くするのが向いている
    3. そもそも急いで動かないほうがいい
  6. よくある質問
  7. まとめ

累進課税とは

所得が増えるほど、高い税率が適用される課税方式です。日本の所得税がこの方式をとっています。

誤解されやすいのが、「所得が上がると、全体に高い税率がかかる」わけではないという点です。実際には超過累進課税といって、区分を超えた部分にだけ高い税率がかかります。

例)課税所得700万円の場合
  195万円まで        → 5%
  195万円〜330万円   → 10%
  330万円〜695万円   → 20%
  695万円〜700万円   → 23%   ← 超えた5万円分だけ23%

「330万円を1円超えたら全部20%になる」ではありません。これを誤解して、年収を抑えようとする判断は合理的ではないことがあります。

所得税の税率 — 7段階

国税庁の所得税の税率によると、税率は5%から45%までの7段階です。

課税される所得金額 税率 控除額
1,000円 〜 1,949,000円 5% 0円
1,950,000円 〜 3,299,000円 10% 97,500円
3,300,000円 〜 6,949,000円 20% 427,500円
6,950,000円 〜 8,999,000円 23% 636,000円
9,000,000円 〜 17,999,000円 33% 1,536,000円
18,000,000円 〜 39,999,000円 40% 2,796,000円
40,000,000円 以上 45% 4,796,000円

計算式:課税所得 × 税率 − 控除額

例)課税所得 700万円
  7,000,000円 × 23% − 636,000円 = 974,000円

これに加えて、次の2つがかかります。

  • 復興特別所得税 — 基準所得税額の 2.1%(平成25年から令和19年までの各年分)
  • 住民税 — 所得割は原則 10%(都道府県民税4%+市町村民税6%)

つまり最高税率の層では、所得税45% + 住民税10% = 実質55%超になります。

⚠️ 令和7年分以後、基準所得金額が3億3千万円を超える場合には追加の負担を求める措置(いわゆる極めて高い水準の所得に対する負担の適正化)が設けられています。該当する規模のときは税理士に確認してください。

🔴 累進課税に「乗らない」所得がある

ここが経営者にとって本題です。

日本の所得税は総合課税が原則で、給与・事業・不動産などの所得を合算して累進税率をかけます。しかし一部の所得は分離して課税されます。

所得の種類 課税方式 税率
給与所得・事業所得・不動産所得など 総合課税(累進) 5〜45%+住民税10%
株式等の譲渡所得 申告分離課税 20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)
退職所得 分離課税(特別な計算) 退職所得控除後の1/2に累進税率
土地・建物の譲渡所得 申告分離課税 所有期間で税率が変わる

🔴 非上場株式の譲渡益は20.315%の分離課税。総合課税の最高税率(55%超)と比べると、35ポイント近い差があります。

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経営者に効いてくる3つの場面

1. 会社を売る(株式譲渡)

オーナー経営者が保有する自社株式を売却した場合、譲渡所得として申告分離課税の対象になります。税率は 20.315%。

例)株式譲渡による所得 1億円
  分離課税  1億円 × 20.315% = 約2,032万円
  (仮に総合課税だったら、55%超で5,500万円超)

この差が、M&Aで株式譲渡が選ばれる大きな理由の一つです。事業譲渡(法人が資産を売る)だと、法人税等が課され、さらに株主へ配当する段階で再度課税されます。

⚠️ 株式譲渡と事業譲渡のどちらが有利かは、税率だけでは決まりません。負債・許認可・従業員の雇用契約・簿外債務のリスクをどう扱うかで結論が変わります。税務だけで方式を決めないでください。

2. 退職金で受け取る

役員退職金は退職所得として、他の所得と分離して計算されます。しかも計算方法が有利です。

退職所得 =(収入金額 − 退職所得控除額)× 1/2

退職所得控除額(国税庁退職金と税)

勤続年数 控除額
20年以下 40万円 × 勤続年数(80万円に満たない場合は80万円)
20年超 800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年)

控除を引いたうえで1/2にしてから累進税率をかけるため、同じ金額を役員報酬で受け取るより税負担が軽くなります。

⚠️ ただし役員退職金には「不相当に高額な部分は損金にならない」という制約があります。適正額の算定(功績倍率法など)は税理士と詰めてください。役員在任期間が5年以下の場合は1/2課税が適用されないなど例外もあります。

3. 役員報酬を毎年上げる

累進課税が最も重く効くのがここです。役員報酬は給与所得として総合課税の対象になり、課税所得1,800万円を超えると40%、4,000万円超で45%(+住民税10%)。

会社に利益を残して法人税を払うか、報酬で取って所得税を払うか——法人税の実効税率と個人の限界税率を並べて判断する場面です。

判断の境界線 — どれを選ぶか

順位はつけません。条件で分かれます。

株式譲渡(M&A)が向いている

  • オーナーが引退し、会社ごと譲る
  • 許認可・契約・従業員をそのまま引き継いでほしい
  • 税率20.315%の分離課税を活かしたい
  • 買い手が「会社ごと」を望んでいる

退職金での受け取りを厚くするのが向いている

  • 勤続年数が長い(20年超なら控除額が大きく伸びる)
  • 会社に利益が蓄積されていて、支給原資がある
  • 引退の時期を自分で決められる
  • 株式譲渡と組み合わせて、譲渡価格と退職金の配分を設計したい

そもそも急いで動かないほうがいい

  • 後継者が決まっていない — 税務の設計より先に、誰に渡すかを決める
  • 直近の業績が一時的に落ちている — 株価算定に影響する
  • 税制改正の動向が固まっていない — 令和7年分以後の高所得者向け措置のように、制度は動く
  • 数字の根拠を自分で説明できない — 提案された節税策の理屈が分からないまま実行しない

よくある質問

Q. 累進課税と超過累進課税は違いますか?

日本の所得税は超過累進課税です。区分を超えた部分にだけ高い税率がかかります。「所得が1円増えたせいで手取りが減る」ということは起きません。

Q. 住民税も累進ですか?

所得割は原則10%の一律です(都道府県民税4%+市町村民税6%)。累進なのは所得税のほうです。

Q. 株式を売った利益は、給与と合算されますか?

上場・非上場を問わず、株式等の譲渡所得は申告分離課税で、給与所得とは合算されません。税率は20.315%です。

Q. 役員報酬と退職金、どちらで取るのが有利ですか?

一般に退職金のほうが税負担は軽くなります(退職所得控除+1/2課税)。ただし不相当に高額な部分は損金算入が認められません。適正額の算定と支給時期は税理士と設計してください。

Q. 復興特別所得税はいつまでですか?

平成25年から令和19年までの各年分の確定申告で、基準所得税額の2.1%を所得税と併せて申告・納付します。

まずは「自分の会社がいくらか」を知るところから

ジョブカンM&Aでは、専任アドバイザーが事業価値の簡易査定から成約まで一貫して伴走します。相談は無料。売却・買収のどちらでもお気軽にどうぞ。

まとめ

  • 累進課税は超過累進。区分を超えた部分にだけ高い税率がかかる
  • 所得税は5%〜45%の7段階。これに復興特別所得税2.1%と住民税10%が加わり、最高層では実質55%超
  • 🔴 株式等の譲渡所得は累進に乗らない。申告分離課税で20.315%。総合課税の最高税率と35ポイント近い差
  • 退職所得は控除後に1/2してから累進。勤続20年超で控除額が大きく伸びる
  • M&Aで株式譲渡が選ばれる理由の一つがこの税率差。ただし方式は税率だけで決めない(負債・許認可・簿外債務の扱いで結論が変わる)
  • 令和7年分以後、基準所得金額3億3千万円超には追加の負担措置がある

参考

ジョブカンM&A ジョブカンM&A編集部

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