コングロマリット・ディスカウントとは、多くの事業を抱えている複合企業の価値が、それぞれの事業の価値の合計よりも低くなっていることを意味します。コングロマリット・ディスカウントが起こる原因はいくつか考えられますが、原因によって、解消する方法などに違いが出てきます。どのような要因によってコングロマリット・ディスカウントが起こることがあるのか、また、複合企業全体の価値と単体事業の価値をどのように比較すればいいのかなどについて、詳しく解説していきます。
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コングロマリット・ディスカウントとは?
コングロマリット・ディスカウント(Conglomerate Discount)とは、複数の異なる事業を展開する複合企業(コングロマリット)全体の評価が、各事業を単独の企業として評価した場合の企業価値の合計よりも、市場において低くなる現象を指します。
複合企業の企業価値が事業ごとの合計値を下回る現象
たとえば、ある企業が「食品事業」「IT事業」「不動産事業」の3つの事業を展開しているとします。
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食品事業:企業価値100億円
-
IT事業:企業価値150億円
-
不動産事業:企業価値100億円
それぞれを独立した会社として評価すると、合計は350億円になります。
しかし、3事業を一つの企業が運営していることによって、市場から「事業内容が複雑で評価しにくい」「経営資源が分散している」などと判断されて、企業全体の時価総額が300億円程度にとどまることがあります。
このように、「1+1+1=3」になるはずが、企業全体では「3」より小さく評価されるのがコングロマリット・ディスカウントです。
コングロマリット・プレミアムとの違い
コングロマリット・ディスカウントと似た言葉に、「コングロマリット・プレミアム」があります。
コングロマリット・プレミアムは、コングロマリット・ディスカウントとは反対に、複数の事業を一つの企業が運営することによって、各事業の価値を単純に合計した以上に企業価値が高く評価される現象です。
たとえば、各事業の価値の合計が300億円なのに対して、企業全体が350億円と評価されている場合、50億円のプレミアムがついていることになります。
なぜこのようなことが起こるかというと、たとえば、次のようなメリットが市場から評価されることが要因となり得ます。
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事業間のシナジーが大きい
-
顧客・販売網・技術などを共有できる
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経営資源を効率的に配分できる
-
景気変動の異なる事業を組み合わせることで収益が安定する
コングロマリット・ディスカウントとコングロマリット・プレミアムの主な違い
コングロマリット・ディスカウントとコングロマリット・プレミアムの主な違いは次の表の通りです。
| 項目 | コングロマリット・ディスカウント | コングロマリット・プレミアム |
|---|---|---|
| 企業価値 | 事業価値の合計より低い | 事業価値の合計より高い |
| 市場の評価 | マイナス評価 | プラス評価 |
| 主な理由 | 複雑化・経営資源の分散など | シナジー・経営資源の共有など |
| 経営上の方向性 | 事業売却・分社化などを検討することも | 多角化を維持・強化することも |
※なお、コングロマリット・ディスカウントが生じる主な原因についてはこのあと詳しく解説していきます。
コングロマリット・ディスカウントが生じる原因
コングロマリット・ディスカウントが生じる原因は、大きく次の5つにわけて整理することができます。
- ①評価の難しさ
→ 事業が複雑で、企業価値を判断しにくい
- ②経営資源の分散
→ 人材・資金などが成長事業に集中できない
- ③シナジー不足
→ 複数事業を一つにまとめるメリットが小さい
- ④経営・管理コストの増加
→ 本社コストや意思決定の複雑化につながる
- ⑤経営判断への懸念
→ 不採算事業の温存や過度な多角化などが起こる
つまり、事業を一つの企業にまとめていることで生まれるメリットよりも、複雑化や非効率化によるデメリットが大きくなると、コングロマリット・ディスカウントが生じやすくなるといえます。「事業をたくさん持つこと」そのものが問題というわけではありません。
これを踏まえたうえで、コングロマリット・ディスカウントの発生原因についてさらに詳しく確認していきましょう。
事業内容が複雑になり、企業価値を評価しにくい
複数の異なる事業を展開すると、企業全体の収益構造や成長性が分かりにくくなります。たとえば、IT事業は高成長でも、不動産事業は低成長というように、事業ごとに成長率や利益率、リスクが異なる場合があります。
投資家から見ると「この会社は結局、何で成長する会社なのか」が分かりにくくなり、企業価値が低く評価されることがあります。
経営資源が分散する
ヒト・モノ・カネといった経営資源が複数の事業に分散してしまうことも原因です。特に、成長性の高い事業に十分な資金や人材を投入できず、収益性の低い事業にも経営資源を配分してしまうと、企業全体の成長力が低下する可能性があります。
事業間のシナジーが十分に発揮されない
複数の事業を持っていても、必ずしも相乗効果が生まれるわけではありません。顧客・販売網・技術・人材などを共有できなければ、「一つの企業にまとめておくメリット」が小さくなります。
特に、事業同士の関連性が低い場合、「それぞれ独立した会社として運営したほうが効率的ではないか」と市場から見られることがあります。
本社・管理部門のコストが増加する
事業が増えると、それらを管理するための本社機能も大きくなります。経営企画、財務、人事、法務などの管理部門が肥大化すると、各事業が生み出した利益が本社コストによって目減りする可能性があります。
また、事業ごとの管理体制が複雑になり、意思決定が遅くなることもあります。
経営陣の注意・判断力が分散する
経営者や経営陣が多くの事業を同時に管理すると、それぞれの事業に十分な時間や注意を向けることが難しくなります。その結果、問題を抱えている事業への対応が遅れたり、成長事業への投資判断が遅れたりする可能性があります。
不採算事業を抱え続ける可能性がある
複合企業では、業績の良い事業だけでなく、赤字・低収益の事業も同じ企業のなかに含まれます。経営者が「長年続けてきた事業だから」などの理由で撤退や売却を決断できないと、不採算事業が企業全体の収益性や評価を引き下げることがあります。
内部資本市場の非効率性
コングロマリットでは、企業内部で事業間の資金配分をおこないます。
本来なら成長性の高い事業に資金を集中させるべきところ、経営判断によって収益性の低い事業にも資金が投入されることがあります。
このような資本配分の非効率性が、投資家から懸念される場合があります。
経営陣による「帝国建設」の懸念
経営者が、企業価値の向上よりも、会社の規模や売上高を大きくすることを優先して、必要以上に事業を買収・多角化するケースがあります。こうした経営者の行動は、巨大組織を築き上げるという政治・歴史的な比喩に由来して、「帝国建設(Empire Building/エンパイアビルディング)」と呼ばれることがあります。
この手の買収に関して、投資家から「本当に企業価値を高めるための買収なのか」と疑問を持たれると、株価が低く評価される要因になります。
情報開示が複雑になる
事業が多岐にわたるほど、投資家が企業の実態を把握するために必要な情報も増えます。事業ごとの収益性やリスクが分かりにくいと、投資家は企業価値を正確に判断しにくくなります。
その結果、不確実性に対するリスクプレミアムが上乗せされ、株価が抑えられることがあります。
日本企業におけるコングロマリット・ディスカウントの事例
続いては、日本企業におけるコングロマリット・ディスカウントの代表例をみていきましょう。
| 企業 | コングロマリット・ディスカウントとの関係 | 現在の位置づけ |
|---|---|---|
| 日立製作所 | 強く指摘された代表例 | 事業整理・集中で改善 |
| 東芝 | 非常に典型的な事例 | 事業分離・再編を実施 |
| ソニーグループ | 過去に議論されたことがある | 現在はむしろプレミアムの例 |
| 楽天グループ | 多角化による評価の難しさがある | 個別事業・財務要因も大きい |
| 三菱商事など総合商社 | 典型的な多角化企業 | 資本効率改善で評価が変化 |
日立製作所
日本のコングロマリット・ディスカウントを語るうえで、特に代表的な事例です。
かつての日立は、IT、家電、原子力・電力、鉄道、建設機械、自動車部品など非常に幅広い事業を抱えていました。その結果、次のような問題が指摘されていました。
-
事業が多すぎて経営が複雑
-
各事業の成長性や収益性が異なる
-
事業ごとの企業価値が市場から見えにくい
-
低収益事業を抱えることで全体の評価が下がる
そこで日立は、不採算・低収益事業の整理や売却、上場子会社の整理、IT・社会インフラなど成長分野への集中を進めました。
デロイトも日立製作所を、コングロマリット・ディスカウントへの対応を分析する代表的な企業の一つとして取り上げています。
東芝
東芝は、コングロマリット・ディスカウントの「解消策」まで含めて非常に分かりやすい事例です。
東芝はかつて、エネルギー、社会インフラ、電子デバイス、IT、家電、PC、原子力など、多様な事業を展開していました。しかし、事業ごとの収益性や成長性に大きな違いがあり、「一つの会社としてまとめておくより、事業ごとに分けたほうが企業価値を高められるのではないか」という議論につながりました。
実際に、東芝は事業ポートフォリオの再編を進め、会社分割によって事業を分離する方向を打ち出しました。
つまり東芝は、「多角化 → 市場から評価されにくい → 事業を分離・再編する」という典型的なケースとして理解できます。
ソニーグループ
ソニーグループに関しては少し注意が必要です。
ソニーグループも、ゲーム、音楽、映画、エンターテインメント、イメージセンサー、金融など多様な事業を持つため、かつてはコングロマリット・ディスカウントの議論の対象になってきました。
しかし、現在のソニーは、「ディスカウントの典型例」というより、むしろ多角化によるシナジーを生かしてプレミアムを生み出している企業の例として見るほうが適切です。
経済産業研究所(RIETI)の分析では、ソニーについて、2021年11月時点で約22%のコングロマリット・プレミアムがあるとの報道を紹介しています。つまり、「事業が多い=必ずディスカウント」ではないことを示す好例であるといえます。
ゲームのIPを映画・音楽などに展開するといった事業間のシナジーが評価されれば、逆にプレミアムになる可能性があります。
出典:独立行政法人経済産業研究所「日本企業の持続的な成長を目指した事業ポートフォリオ変革~日本企業の現状と課題~」
楽天グループ
楽天グループも、EC、フィンテック、銀行、証券、保険、モバイル、デジタルコンテンツなど非常に幅広い事業を展開しています。そのため、「各事業を個別に評価した価値」と「楽天グループ全体の時価総額」を比較することによって、コングロマリット・ディスカウントの議論がなされやすい企業です。
ただし、楽天に関しては、単純な「多角化によるディスカウント」だけでなく、モバイル事業への大規模投資や財務負担など、個別事業の収益性・財務状況も企業価値に大きく影響するため、ディスカウントの原因を多角化だけに求めるのは適切ではありません。
三菱商事
三菱商事は、エネルギー、金属、食品、化学、機械、インフラ、自動車、物流、金融など、極めて幅広い事業を展開しています。そのため以前から、「各事業を個別企業として評価した場合より、総合商社としてまとめて評価したほうが低くなるのではないか」というコングロマリット・ディスカウントの議論がありました。
ただし近年は、資本効率改善や事業ポートフォリオ改革が進んでいるため、三菱商事をはじめとする総合商社を一律に、「ディスカウント企業」と見るのは適切ではありません。
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コングロマリット・ディスカウントの計算方法と具体例
コングロマリット・ディスカウントは、「各事業を個別に評価した場合の価値」と「複合企業として実際に市場から評価されている価値」の差を見ることによって概算できます。
基本的な計算方法
もっともシンプルな計算式は次のとおりです。
コングロマリット・ディスカウント率=(事業価値の合計 − 企業全体の企業価値)÷ 事業価値の合計 × 100
つまりこの式は、「本来の価値に対して、何%低く評価されているのか」を表しています。
【具体例】
たとえば、A社が次の3つの事業を展開しているとします。
| 事業 | 単独で評価した企業価値 |
|---|---|
| IT事業 | 100億円 |
| 食品事業 | 80億円 |
| 不動産事業 | 70億円 |
| 合計 | 250億円 |
上記表から、3事業をそれぞれ独立した企業として評価すると、合計250億円の価値があると考えられます。ところが、A社を複合企業として市場が評価した企業価値が200億円だったとします。
この場合、先程の計算式に当てはめてコングロマリット・ディスカウント率を計算すると、
(250億円 − 200億円)÷ 250億円 × 100= 20%
となります。したがって、A社には20%のコングロマリット・ディスカウントが生じていると考えられます。つまり、市場からは「各事業を合計すれば250億円程度の価値がありそうだが、一つの複合企業として見ると200億円程度」と評価されている状態です。
「SOTP」で計算する方法
実務では、コングロマリット企業の価値を考える際に、SOTP(Sum of the Parts:サム・オブ・ザ・パーツ)という考え方がよく使われます。SOTPとは、企業全体を一つの会社として評価するのではなく、事業ごとに価値を算出して、それらを合計する方法です。
たとえばそれぞれの事業の価値が以下の場合、
-
IT事業:100億円
-
食品事業:80億円
-
不動産事業:70億円
SOTPによる事業価値=250億円
となります。
そこから、企業全体の純有利子負債などを調整して株主価値を算出して、実際の時価総額と比較することによって、企業全体がどの程度割安・割高に評価されているのかを分析します。
注意点
コングロマリット・ディスカウントの計算では、「事業価値の合計=絶対的な本来価値」ではないことに注意が必要です。
各事業を別々に評価する際には、事業ごとに適切なマルチプル(PER、EV/EBITDAなど)を設定する必要があります。また、事業間のシナジーや本社コスト、負債なども考慮する必要があります。
そのため、実際のM&Aや企業価値評価では、単純な足し算ではなく、SOTPによる事業価値評価+財務上の調整をおこなって、より精緻にディスカウントの大きさを分析する必要があります。
ここまでをまとめて一言でいうと、コングロマリット・ディスカウントとは、「事業をバラバラに評価した場合の価値」と「一つの企業として評価された価値」の差ということになります。そして、その差を割合で表したものが「コングロマリット・ディスカウント率」です。
コングロマリット・ディスカウントを解消するための経営戦略
コングロマリット・ディスカウントを解消するには、単に事業を増やすのではなく、「企業全体で持つことにどれだけ価値があるのか」を見直すことが重要です。特に、事業間のシナジーが小さい事業や収益性の低い事業を切り離して、経営資源を成長性の高い中核事業へ集中する「選択と集中」が有効です。
具体的な経営戦略について説明していきます。
カーブアウトによる事業の切り出し
カーブアウト(Carve-out)とは、企業が保有する事業の一部を切り出して、独立した会社や事業体として運営する方法です。たとえば、A社が「IT」「食品」「不動産」の3事業を持っている場合、IT事業だけを切り出して子会社化したり、第三者に譲渡したりします。
事業を切り離すことによって、次のような効果が期待できます。
-
中核事業への経営資源集中
-
意思決定のスピード向上
-
事業ごとの企業価値を明確化
-
独立後の成長機会の拡大
カーブアウトは、特に、「事業単独では高い価値があるのに、複合企業の中にあることで正しく評価されていない」場合に有効です。
事業譲渡による不採算・非中核事業の売却
収益性が低い事業や、本業との関連性が低い事業については、事業譲渡によって他社へ売却する方法が有効である場合があります
たとえば、製造業を本業とする企業が、長年保有してきた飲食事業を売却して、製造事業に経営資源を集中するといったケースです。
事業譲渡によって非中核事業を売却すれば、「売却資金を獲得→ 成長事業へ再投資→ 収益性・成長性を向上」
という好循環を目指せるためです。
M&Aによる事業ポートフォリオの再編
M&Aは、事業を「買う」だけではありません。不要な事業を売却するM&A(売却・カーブアウト)も、コングロマリット・ディスカウント解消の重要な手段です。
たとえば、現状、A事業・B事業・C事業・D事業の4つの事業を展開していたとして、ポートフォリオを見直し、A事業・B事業は継続する一方で、C事業・D事業は売却して、さらに売却によって得た資金を中核事業のM&Aに投入して、自社の強みと相乗効果のある事業を買収することも考えられます。
つまり、M&Aを活用して、「売る」と「買う」を組み合わせた事業ポートフォリオ改革をおこなう方法です。
事業ごとの採算性を見直す
事業を売却する前に、まず各事業がどれだけ企業価値に貢献しているのかを分析します。たとえば次のように分類します。
| 事業 | 収益性 | 成長性 | シナジー | 方針 |
|---|---|---|---|---|
| A事業 | 高い | 高い | 大きい | 強化 |
| B事業 | 高い | 低い | 大きい | 維持・効率化 |
| C事業 | 低い | 低い | 小さい | 売却検討 |
| D事業 | 中程度 | 高い | 小さい | カーブアウト検討 |
重要なのは、「売上規模が大きいか」ではなく、「将来の企業価値にどれだけ貢献するか」という視点で判断することです。
事業間のシナジーを強化する
すべての多角化が悪いわけではありません。
複数事業の間に強いシナジーがある場合には、むしろコングロマリット・プレミアムにつながる可能性があります。
たとえば、次のようなことを実現すれば、コングロマリット・プレミアムにつながる可能性があります。
-
顧客基盤を共有する
-
販売チャネルを共有する
-
技術やノウハウを共有する
-
データを共有する
-
人材・設備を共同利用する
したがって、事業を売却するだけではなく、残す事業については「なぜ一つの企業として保有するのか」を明確にすることも重要だということになります。
事業ごとの情報開示を充実させる
コングロマリット・ディスカウントの原因の一つは、投資家から見て企業価値が分かりにくいことです。
そこで、事業ごとの売上高・利益・成長率・投資額などを分かりやすく開示して、各事業の価値や成長戦略を明確にします。「この事業は利益率が高い」「この事業は今後大きく成長する」といった情報を投資家が理解できれば、企業価値が適切に評価される可能性があります。
【最終的には「選択と集中」がポイント】
コングロマリット・ディスカウントへの対応を整理すると、次のようにまとめることができます。
- ①事業を評価する
↓
各事業の収益性・成長性・シナジーを分析
- ②残す事業を決める
↓
中核事業に経営資源を集中
- ③不要な事業を切り離す
↓
カーブアウト・事業譲渡・M&Aなどを活用
- ④得られた資金を再投資する
↓
成長事業への投資や戦略的M&Aを実施
- ⑤企業価値を高める
↓
市場からの評価向上を目指す
つまり、「何でも自社で持つ」のではなく、「自社で持つべき事業と、他社に任せたほうが価値を生み出せる事業を見極める」ことが、コングロマリット・ディスカウント解消の基本的な考え方です。
特にM&Aでは、事業を「買う」ことだけでなく、「売る・切り出す」ことも企業価値を高めるための重要な戦略になります。
コングロマリット・ディスカウントが発生している状態は必ず解消したほうがいいのか?
ここまでコングロマリット・ディスカウントの解消方法について解説してきましたが、コングロマリット・ディスカウントが生じている状態は、必ずしも是正したほうがいいというわけではありません。なぜかというと、市場から低く評価されている状態であっても、少なくとも、複数事業を持つことによって得られる経営上のメリットがあるためです。
具体的には次のようなメリットが考えられます。
事業ポートフォリオを分散できる
複数の事業を持っていることによって、ある事業の業績が悪化しても、別の事業が利益を生み出して会社全体を支えられます。いわば「一つの事業に依存しすぎない」経営が可能だということです。
景気変動の影響を抑えられる
景気に敏感な事業と、比較的安定した事業を組み合わせることによって、会社全体の業績を安定させられる場合があります。
グループ内で経営資源を融通できる
利益の出ている事業から、成長途上の事業へ資金・人材・ノウハウを移すことができます。外部から資金調達するよりも、迅速に投資できるケースもあります。
事業間のシナジーを生み出せる
顧客基盤、販売網、ブランド、技術、人材などを複数事業で共有することによって、単独では得られない相乗効果が生まれる可能性があります。
新規事業への挑戦がしやすい
既存の安定した事業から得られるキャッシュを、新規事業や成長分野への投資に回せます。
【コングロマリット化に合理性があるケースとは?】
上記を整理すると、特に、「事業ポートフォリオの分散」「安定したキャッシュフロー」「事業間シナジー」などが十分に機能している企業では、コングロマリット化そのものに合理性があるということになります。
逆に、シナジーがほとんどなく、単に事業を抱え込んでいるだけなら、カーブアウトや事業売却によってコングロマリット・ディスカウントを解消するという選択肢が有力ということになります。
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コングロマリット・ディスカウントに関するFAQ
続いては、コングロマリット・ディスカウントに関してよくある質問とその答えをみていきましょう。
Q.事業を売却すれば、必ずディスカウントは解消できますか?
いいえ。必ず解消できるわけではありません。
事業を売却しても、売却価格が低かったり、売却後の成長戦略が不明確だったりすれば、企業価値が十分に向上しない可能性があります。重要なのは、「なぜその事業を売却するのか」「売却によって得た資金をどこに投資するのか」まで明確にすることです。
Q.カーブアウトと事業譲渡は何が違いますか?
A.カーブアウトは「事業を切り出す」という大きな概念で、事業譲渡はその事業を第三者に売却する具体的な手法の一つです。
たとえば、「自社の事業を切り出す→ 子会社として独立させる」という方法もあれば、「自社の事業を切り出す→ 他社へ事業譲渡する」という方法もあります。したがって、カーブアウト=必ず売却、というわけではありません。
Q.コングロマリット・ディスカウントを解消するために、会社を分割することもありますか?
はい。会社分割も選択肢の一つです。
複数事業を会社分割によって切り分け、それぞれの事業に適した経営体制を構築することによって、事業ごとの経営責任や企業価値を明確にすることができます。会社分割は、事業ポートフォリオを再編する手段として活用されてきました。
Q.コングロマリット・ディスカウントを解消するうえで、一番重要なことは何ですか?
「事業を減らすこと」そのものではなく、「企業として何を保有することで価値を生み出すのか」を明確にすることです。事業を売却する場合でも、残す場合でも、「なぜ、この事業を自社で保有するのか?」を説明できることが重要です。
そのうえで、シナジー・資本配分・事業ポートフォリオ・情報開示を一体として見直すことが、コングロマリット・ディスカウント解消の重要なポイントになります。
コングロマリット・ディスカウントへの理解を深めることの重要性
コングロマリット・ディスカウントを理解することは、企業価値を正しく把握して、今後の経営戦略や事業ポートフォリオを考えるうえで非常に重要です。複数の事業を展開している企業では、事業を多角化することで収益の安定化やリスク分散、事業間のシナジーといったメリットを得られる一方、市場からは「事業構造が複雑」「経営資源が分散している」と評価され、企業価値が低く見積もられることがあります。そのため、単に「事業を増やせば企業価値が高まる」と考えるのではなく、各事業がどれだけ企業価値に貢献しているのか、事業を一つの企業で保有し続けることに合理性があるのかを客観的に検証する必要があります。
また、コングロマリット・ディスカウントへの理解を深めることによって、事業売却やカーブアウト、M&A、事業再編など、企業価値を高めるための選択肢を適切に判断できるようになります。つまり、コングロマリット・ディスカウントは単なる「株価が低い」という問題ではないということです。コングロマリット・ディスカウントへの理解を深めるにあたって、自社の事業ポートフォリオを見直し、企業価値を最大化するための重要な経営課題として捉えることが大切です。
この記事は、時点の情報を元に作成しています。
ジョブカンM&A ジョブカンM&A編集部
ジョブカンM&Aは、株式会社DONUTSが運営するM&Aアドバイザリーサービスです。主に企業の事業承継、成長戦略、出口戦略(イグジット)といった多様なニーズに応えることを目的としています。最大の特徴は、累計導入社数20万社以上を誇るバックオフィス支援クラウドERPシステム「ジョブカン」の広範なネットワークを活用している点です。この強力な顧客基盤を生かし、効率的なマッチングを実現します。
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