「人手不足」という言葉を信じて採用費をかけ続けた会社が気づくべきこと——景気変化局面での企業価値の守り方

M&Aの「何から始めればいいかわからない」を解決

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目次
  1. 「人手不足」は本当に続くのか
  2. 採用費をかけ続けることで失われているもの
    1. 採用しても定着しない構造が変わっていない
    2. 「採れる人材」の質が変わってきている
    3. 採用費の重さが、M&A時の企業評価を下げる
    4. 「労働集約型」からの脱却がマルチプルを左右する
  3. 人手不足ナラティブが崩れるとき、何が起きるか
    1. 需要の減少 → 人員過多の転換
    2. 「人手不足」を前提にした値上げが通らなくなる
    3. 競合他社との差がつく局面
  4. 景気変化局面で企業価値を守るための3つの転換
    1. 転換①:「採用する」から「定着させる」へ
    2. 転換②:「人が増える」から「生産性が上がる」へ
    3. 転換③:過剰な採用コストを「一過性費用」として説明できる財務整備
  5. 企業価値を「守る」ために今確認すべきこと
  6. 「まだ大丈夫」と思っているときが、最も考えるべき時だ
  7. まとめ

「人手不足」は本当に続くのか

「人手不足」という言葉が、いまあらゆる業界で使われている。

建設、介護、飲食、物流、医療——どこに行っても「人が足りない」と聞く。採用媒体は値上がりし、紹介手数料は上がり、それでも人は来ない。

しかし、ここで一度立ち止まって考えてほしい。

「人手不足」というナラティブ(語り口)は、永遠に続くのか。

2026年3月、あるシンクタンクのレポートが「人手不足の見かけ」という概念を提示した。景気後退期に需要が落ちれば、人手不足感は急速に薄れる——そういうシナリオが現実になりつつある兆候が出ている、という内容だ。

これは、今採用費をかけ続けている会社に、静かなリスクを示唆している。


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採用費をかけ続けることで失われているもの

採用費は「投資」のように見えるが、多くのケースで「コスト」になっている。

採用しても定着しない構造が変わっていない

採用に成功しても、1年以内に辞める人材が多い会社がある。その場合、採用コストは回収される前に消えていく。

原因の多くは「職場環境」「業務負担」「教育体制」にある。採用費を増やしても、定着しない理由が解消されない限り、コストは膨らむ一方だ。

採用費をかけ続けることで、根本的な問題(業務環境・マネジメント・評価制度)への投資が後回しになるという構造が生まれやすい。

「採れる人材」の質が変わってきている

採用費を増やすほど応募数が増えるのは、採用市場が活況な時期だけだ。

景気が変化し始めると、求人広告の効果が落ちる前に、まず「採れる層」が変わる。高い給与を提示しても、それに見合うスキルセットを持つ人材が市場に出てこなくなる局面がある。

2024年度、求人広告の掲載件数は前年比で20%以上減少したと報告されている。景気の一部では採用市場が軟化し始めている。

採用費の重さが、M&A時の企業評価を下げる

M&Aにおいて、採用費が高止まりしている会社の評価にはプレッシャーがかかる。

EBITDA(利息・税・減価償却前利益)をベースにした企業価値算出では、採用費は販管費として利益を圧迫する。採用費が高く、かつ人材が定着していない会社は「採用コストがかかり続けるビジネス」として評価される。

「労働集約型」からの脱却がマルチプルを左右する

買い手は、単なる利益額だけでなく「その利益を出すためにどれだけの人を投入し続けなければならないか」という労働集約性を厳しくチェックします。人手不足を前提に「採用コストをかけ続けることで維持している売上」は、買い手にとって「再現性の低いリスク」と映ります。結果として、業界平均よりも低いEBITDA倍率(マルチプル)が適用される要因となります。


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人手不足ナラティブが崩れるとき、何が起きるか

「人手不足だから仕方ない」という前提で経営していた会社に、景気変化が起きると何が起きるか。

需要の減少 → 人員過多の転換

景気後退局面では、需要が落ちる。すると「今まで足りなかった人員」が「余剰」に転じるケースが出てくる。採用コストをかけて増員した人材を持て余す構造になる。

これは特に「需要変動が大きい業種」で起きやすい。建設・物流・観光・外食はその典型だ。

「人手不足」を前提にした値上げが通らなくなる

人件費上昇を理由にした価格転嫁は、「人手不足」という社会的コンセンサスがあるうちは通りやすい。

しかし景気変化によって採用環境が落ち着き始めると、顧客側の交渉力が戻ってくる。「人手不足だから値上げ」という説明が通じにくくなる。

競合他社との差がつく局面

人手不足環境では、全体的なサービスレベルが下がるため差別化がしにくかった。しかし採用環境が緩和されると、人材獲得・育成に投資できた会社と、採用費を垂れ流してきた会社の差が出始める。


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景気変化局面で企業価値を守るための3つの転換

人手不足環境から抜け出しつつある局面で、企業価値を維持・向上させるために必要な転換を整理する。

転換①:「採用する」から「定着させる」へ

採用費を増やすより、離職率を下げることの方が、長期的なコストパフォーマンスが高い。

看護師1人の採用コストは40〜80万円程度。1年で辞めた場合、その費用は消える。一方、離職率を5%下げるための職場環境改善投資は、その後何年もの採用費削減に貢献する。

数字で考えると、「採用費をかけ続ける」ことの機会損失が見えてくる。

転換②:「人が増える」から「生産性が上がる」へ

同じ売上を少人数で上げられる会社は、M&Aにおいて評価が高い。

AI・自動化・業務改善によって「1人当たりの生産性」を上げた会社は、人件費比率が改善し、企業価値の算定で有利に働く。

「10人で月1,000万の売上」より「7人で月1,000万の売上」の方が、キャッシュフロー上の評価は高い。

転換③:過剰な採用コストを「一過性費用」として説明できる財務整備

M&Aのデューデリジェンスにおいて、買い手は過去数年の損益計算書を「正常収益力」に基づいて修正します。採用費が高止まりしている場合、それが「組織拡大のための戦略的投資」なのか、単なる「離職補填の維持費」なのかで企業価値は数億円単位で変わります。

売却検討の1〜2年前から、採用費を抑制しつつ利益率を向上させた「改善実績」を作ることで、買い手に対し「この会社は仕組みで回るようになった」という確信を与え、バリュエーションの最大化を図ることが可能です。


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企業価値を「守る」ために今確認すべきこと

以下の数字を手元に用意してみてほしい。

① 過去3年間の採用費の推移
増加しているなら、その背景と効果(定着率・業績への貢献)を確認する。

② 採用した人材の1年後定着率
採用した人材の何%が1年後に在籍しているか。50%を下回っているなら、構造的な問題がある。

③ 現在の従業員一人当たりの売上(労働生産性)
業界平均と比較する。同業他社より著しく低い場合、採用費をかけても根本的な問題は解決しない。

④ 現在の企業評価額の試算
売却する意思がなくても、「今の自社はいくらで売れるか」を知っておくことは経営判断の基準になる。M&Aアドバイザーへの相談は無料でできる。


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「まだ大丈夫」と思っているときが、最も考えるべき時だ

M&Aの現場で繰り返されるのは、「もう少し早く相談していれば」という言葉だ。

業績が悪化し始めてから売却を考えると、評価額が下がり、交渉が不利になり、選択肢が狭まる。人手不足という追い風が続いている間に、「追い風がなくなったときの自社」を想像しておくことが、企業価値を守るための現実的な思考だ。

人手不足という言葉に安心感を覚えているとしたら、それは今が最も注意が必要なタイミングかもしれない。


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まとめ

「人手不足」は構造的な現象であると同時に、景気サイクルの影響を受けるナラティブでもある。

採用費をかけ続けることは、その前提の上に成り立っている経営判断だ。

景気変化局面では「採用費をかける」より「定着率を上げる」「生産性を高める」「財務改善の履歴を作る」ことが、企業価値の保全につながる。

そして最後に——今の業績が良い時期に「自社の市場価値を知る」ことが、将来の意思決定の自由度を高める最初の一歩だ。

ジョブカンM&A ジョブカンM&A編集部

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