〈経営判断を誤らないために〉廃業・閉業・閉店・倒産・休業の法的・実務的な違いと最善の出口戦略

「廃業」「閉業」「閉店」「倒産」「休業」の5つの用語には、その時点でビジネスがストップとなるイメージがあります。しかし、これらの用語の意味や使い方は異なるため、正しく使い分けなければ、誤解を招いてしまったり、必要な手続きを進められなかったりする場合があります。そこで今回は、それぞれの言葉の意味や必要な手続きなどを詳しく解説していきます。

まずは「自分の会社がいくらか」を知るところから

ジョブカンM&Aでは、専任アドバイザーが事業価値の簡易査定から成約まで一貫して伴走します。相談は無料。売却・買収のどちらでもお気軽にどうぞ。

目次
  1. 「廃業」「閉業」「閉店」「倒産」「休業」の比較
    1. 廃業とは
    2. 閉業とは
    3. 閉店とは
    4. 倒産とは
    5. 休業とは
  2. 廃業・閉業・閉店を選択する理由
    1. 経営者の高齢化
    2. 経営者の健康上の問題
    3. 後継者の不在
    4. 資金繰りの悪化
    5. 競争の激化
    6. 経営者が他にやりたいことができた
    7. 経営者がFIREを達成した
  3. 廃業とM&A、どちらが「最善の出口戦略」か?
    1. 「廃業(清算)」と「M&A(株式譲渡)」の比較
    2. 「休業」状態の会社もM&Aの対象になる
  4. 【法人の場合】廃業の法的手続きの流れ
    1. 廃業(解散)の準備をする
    2. 株主総会で解散決議・清算人選任決議をおこなう
    3. 解散登記・清算人選任登記をおこなう
    4. 税務関係の届出をおこなう
    5. 社会保険などの手続きをおこなう
    6. 解散公告を実施する
    7. 解散時の決算書類を作成する
    8. 解散時の確定申告をおこなう
    9. 債権の換価と債務弁済をおこなう
    10. 残余財産を株主に分配する
    11. 清算結了時の決算書類を作成する
    12. 清算結了登記をおこなう
    13. 清算結了時の確定申告をおこなう
    14. 事業用口座・事業クレジットカードの解約
    15. 清算結了届を提出する
  5. 【個人事業主の場合】廃業の法的手続きの流れ
  6. 経営難に陥った場合の、廃業以外の選択肢とは?
    1. 法人破産
    2. 特別清算
    3. 私的整理
    4. 民事再生
    5. 会社更生
  7. 「廃業」「閉業」「閉店」「倒産」「休業」に関するQ&A
    1. Q.経営は順調だが後継者不在の場合、「廃業」「閉業」「閉店」以外の選択肢はあるのか?
    2. Q. 会社を畳むことにした場合、どのくらいの費用が必要か?
    3. Q. 会社が破産・倒産した場合、破産手続きが終わればまた借入が可能なのか?
    4. Q. 廃業届を出さなかった場合、ペナルティを課せられるのか?
  8. 事業にとって、自分にとって、関係者にとってのベストな選択は何かをよく考えよう

「廃業」「閉業」「閉店」「倒産」「休業」の比較

まずは、「廃業」「閉業」「閉店」「倒産」「休業」の5つの用語の意味や法的手続きを比較しましょう。

意味 主な理由 主な手続き
廃業 個人・法人が事業を永久にやめることを法的に確定させること 自主的な判断 個人事業主の場合:税務署に廃業届を提出
法人の場合:株主総会で解散を決議して、法務局で解散登記・清算決了登記をおこなう
閉業 法律上の定義はなく、主に営業をやめること。ただし、廃業と差別化して、「一時的な事業停止」の意味でつかわれることなどもある 自主的な判断 (言葉の使い方による)
閉店 複数の店舗のうち、特定のお店だけ閉めること。もしくは個人経営の店舗が営業をやめること 自主的な判断 (飲食店の場合)保健所に廃業届を提出・飲食店営業許可書を返納
倒産 債務返済不能に陥り、事業継続が不可能となること 借金返済不能、経営難 裁判所での破産手続きが必要なケースがほとんど
休業 将来の事業再開を視野に入れたうえで、事業を一時的に停止すること 経営改善、環境変化への対応、経営者の病気療養などのため 法人の場合:税務署に「休眠会社」として届け出ると一部税負担が軽くなる場合がある

廃業とは

廃業とは、個人事業主または法人が、自らの意思で事業そのものを完全にやめるための法的手続きを意味します。

個人事業主の場合、税務署に廃業届を提出します。
法人の場合、株主総会で解散を決議して、法務局で解散登記・清算決了登記をおこないます。

事業を廃業する理由としては、「高齢のため個人商店を閉めたい」「後継者が見つからないため自分の代で終わらせたい」などが考えられます。廃業の正式な手続きをとることによって、税務や社会保険の義務が終了するため、経営者としての責任にも区切りがつきます。

閉業とは

「閉業」という言葉には明確な定義が存在しません。「本日閉業」のように一時的に事業を停止することを示すために使われる場合もあります。一方で、事実上の永久停止状態を示すために使われる場合もあります。

また、複数店舗を運営する会社がすべての事業をやめる場合に「閉業」、一部の店舗を閉じる場合に「閉店」と使い分けることもあります。

なお、“すべての事業をやめる”は「廃業」にも当てはまる場合があるため、「廃業=閉業」という場合もあるということになります。

閉店とは

閉店とは、特定の店舗の営業をやめることです。複数店舗を運営しておらず、そもそも1店舗だけ運営している場合、閉店と同時に事業が終了することになるため、「閉店=閉業=廃業」ということになります。

倒産とは

倒産とは、負債が資産を上回って返済不能となっている財政的破綻状態のことです。

手形の不渡りや破産申し立てなどがこれに該当します。多くの場合、裁判所が関与して、法的に破産手続きを進めていくことになります。

休業とは

休業とは、将来の事業再開を前提に、一時的に事業活動をとめることを意味します。

法人の場合、税務署に「休眠会社」と届け出ると、一部税負担が軽くなる場合があります。なお、休業中には法人格は残るため、役員変更登記や税務申告の義務は存続することになります。

まずは「自分の会社がいくらか」を知るところから

ジョブカンM&Aでは、専任アドバイザーが事業価値の簡易査定から成約まで一貫して伴走します。相談は無料。売却・買収のどちらでもお気軽にどうぞ。

廃業・閉業・閉店を選択する理由

廃業・閉業・閉店を選択する理由としては、次のようなことが考えられます。

  • 経営者の高齢化
  • 経営者の健康上の問題
  • 後継者の不在
  • 資金繰りの悪化
  • 競争の激化
  • 経営者が他にやりたいことができた
  • 経営者がFIREを達成した
  • それぞれ詳しく解説していきます。

    経営者の高齢化

    経営者は雇われる側ではないため、自分の引き際は自分で決めることができます。なかには、「死ぬまで現役でいたい」という人もいますが、体力や気力が衰えてきたり、新しいことに挑戦する意欲が減退してきたりしたことを実感して、廃業や閉業、閉店を決意する人もいます。また、「体力や気力が十分なうちに、旅行など好きなことを楽しみたい」として引退する人もいるでしょう。

    経営者の健康上の問題

    健康面に問題があって、やむなく廃業、閉業、閉店することになるパターンもあります。健康に不安があっても事業を続けたいという気持ちはあっても、「従業員や取引先に迷惑をかけたらどうしよう」という不安から決断に至る場合もあるでしょう。

    なお、「一定期間療養すれば緩解する可能性が高い」などの場合は、事業再開を前提に休業するという選択肢についても考えてみてもいいかもしれません。

    後継者の不在

    クリニックや飲食店など、地域住民にとって欠かせない存在になっていたとしても、自身は高齢で続けるのが難しく、事業を引き継いでくれる人もいないとなると、廃業、閉業、閉店せざるを得ない場合があります。

    なお、自力で後継者を探そうとしても見つからなかった場合、M&A仲介業者を利用して第三者へ承継することも有力な選択肢です。廃業コストをかけずに創業者利益を得られる可能性があるため、早い段階で検討することをおすすめします。

    資金繰りの悪化

    資金繰りが悪化し始めて、元の勢いを取り戻せるかどうか不安があって、廃業、閉業、閉店の選択肢をとる場合があります。

    なお、資金繰りが悪化した原因が市場の一時的な変化などの場合は、市場が回復するまで休業するという選択肢も考えられます。

    一方、資金繰りが悪化の一途を辿って債務超過状態に陥っている場合は、なんとか事業を巻き返そうとあがいたとしても、結果的に倒産してしまう可能性があります。倒産すると関係者に大きな迷惑がかかってしまうため、できる限り避けたいところです。そのため、資金繰りが悪化し始めた段階で事業を見直して対策を考え、うまくいきそうにない場合は引き際を考えたほうが賢明かもしれません。

    競争の激化

    競争の激化に対応できず、廃業や閉業、閉店へと追い込まれるケースもあります。特に資金力や人材に限りがある事業者の場合、新しいことにチャレンジしようにも予算や人手が足りず、遅れをとってしまうパターンが多いでしょう。

    ただし、SNSなどをうまく活用すると、予算は人手不足をカバーしながら利益へとつなげていける可能性もあります。まずは、「いかにして競合を出し抜くか」をじっくりと考えてみることも必要でしょう。

    経営者が他にやりたいことができた

    経営者が他にやりたいことができた場合や、結婚・出産を機に事業から足を洗いたいと考えた場合には、軌道に乗っていたとしても事業をストップしてしまう場合があります。

    経営者がFIREを達成した

    経営者がFIREを達成して事業を手放すパターンも考えられます。なお、FIREに必要な貯蓄額は、FIREする年齢によりますが、「退職時に保有する資産の4%に相当する額を毎年取り崩して生活費に充てても、30年程度で資産が尽きるリスクが非常に低いこと」は一つの目安といわれています。なお、アメリカにおける資産運用研究から導かれた目安で、「4%ルール」といわれています。

    まずは「自分の会社がいくらか」を知るところから

    ジョブカンM&Aでは、専任アドバイザーが事業価値の簡易査定から成約まで一貫して伴走します。相談は無料。売却・買収のどちらでもお気軽にどうぞ。

    廃業とM&A、どちらが「最善の出口戦略」か?

    ここまで「廃業」や「閉業」の理由を解説してきましたが、経営者にとって「最善の出口戦略」とは何でしょうか。
    金銭的なメリットや従業員の雇用を守る観点から比較すると、単純に会社をたたむ(廃業・清算)よりも、M&A(第三者への譲渡)の方が有利なケースが多くあります。

    「廃業(清算)」と「M&A(株式譲渡)」の比較

    法人の場合、廃業して会社に残った資産を分配するよりも、株式譲渡によって会社ごと売却したほうが、手元に残る現金が多くなる傾向にあります。

    比較項目 廃業(自主廃業・清算) M&A(株式譲渡)
    手元に残るお金 資産を売却・現金化し、負債を返済した「残り」を分配。在庫や設備は二束三文(解体値)になることが多い。 会社の「将来性」や「ブランド(のれん代)」が評価され、純資産以上の価格で売れる可能性がある。
    税金 会社側:資産売却益に法人税がかかる。個人側:配当所得として最大約55%(総合課税)の税金がかかる場合がある。 個人側:株式の売却益に対して、一律20.315%(申告分離課税)の税金で済む。
    従業員の雇用 全員解雇となる。 原則として雇用は維持される。
    コスト 店舗の原状回復費や登記費用など持ち出し費用がかかる。 仲介手数料はかかるが、売却益で賄えるケースが多い。

    「休業」状態の会社もM&Aの対象になる

    「現在は事業を行っていない(休業・休眠)」という場合でも、廃業手続きをする前にM&Aを検討する価値があります。
    許認可を持っている法人や、繰越欠損金がある法人などは、買い手にとってメリットがあるため、値段がつく(売却できる)可能性があるためです。

    手続きや費用がかかる「廃業」を選ぶ前に、まずは「M&Aによる売却」が可能かどうかを検討することが、経済合理性の高い「最善の出口戦略」と言えるでしょう。

    【法人の場合】廃業の法的手続きの流れ

    先に解説した通り、廃業する場合、個人事業主であれば、税務署に廃業届を提出することが必要ですし、法人の場合、株主総会で解散を決議して、法務局で解散登記・清算決了登記をおこなうことが必要ですが、実際にはもっと細かくいくつかの手続きが必要となります。

    自主廃業の場合、次の流れで手続きをおこなうことになります。

  • 1. 廃業(解散)の準備をする
  • 2. 株主総会で解散決議・清算人選任決議をおこなう
  • 3. 解散登記・清算人選任登記をおこなう
  • 4. 税務関係の届出をおこなう
  • 5. 社会保険などの手続きをおこなう
  • 6. 解散公告を実施する
  • 7. 解散時の決算書類を作成する
  • 8. 解散時の確定申告をおこなう
  • 9. 債権の換価と債務弁済をおこなう
  • 10. 残余財産を株主に分配する
  • 11. 清算結了時の決算書類を作成する
  • 12. 清算結了登記をおこなう
  • 13. 清算結了時の確定申告をおこなう
  • 14. 事業用口座・クレジットカードの解約
  • 15. 清算結了届を提出する
  • それぞれ詳しく解説していきます。

    廃業(解散)の準備をする

    法人を廃業するためには、まず、事業員や取引先に「廃業すること」を知らせる必要があります。廃業によって従業員が解雇となる場合に関しては、最低30日前までに通知することが義務付けられています。解散する日が具体的に決まったら、関係各社には「廃業のお知らせ」「会社解散のお知らせ」などの文言を記した書面を送ります。

    なお、解雇する従業員に対しては、就業規則によっては、退職金を支払う必要があります。

    株主総会で解散決議・清算人選任決議をおこなう

    解散にあたっては、議決権の過半数を有する株主が出席して、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成を必要とする特別決議を開催することが必要です。解散のためにおこなう特別決議を「解散決議」といい、一般的には、このとき賛成を得られたら、解散決議をおこなった日が解散日ということになります。

    清算人選任決議は、定款に定めがない場合、普通決議でおこないます。普通決議とは、議決権の過半数を有する株主が出席して、出席株主の議決権の過半数の賛成を必要とする決議のことです。

    清算人には、通常、経営者一人が選任されますが、定款で清算人会の設置を定めている場合に関しては、3人以上選任する必要があります。

    解散登記・清算人選任登記をおこなう

    会社の解散日から2週間以内、つまり、一般的には解散決議をおこなった日から2週間以内に、法人を管轄する法務局で、解散登記および清算人選任登記をおこないます。

    税務関係の届出をおこなう

    税務関係を管轄する税務署・都道府県是事務所・市区町村役場に、解散・廃業の届出をおこないます。これらの各種届出は、法務局での解散登記後、遅滞なくおこなうことが求められています。

    社会保険などの手続きをおこなう

    会社の廃業によって従業員が解雇となる場合、社会保険および雇用保険の停止手続きをおこなわなくてはなりません。また、従業員がゼロとなった時点で、管轄の年金事務所に適用事業所全喪届を提出します。

    さらに、ハローワークで「離職証明書」を発行してもらい、従業員に渡すことも必要です。これにより、従業員が失業保険を受給することができます。

    解散公告を実施する

    解散後、会社に清算できていない債務や借入金が残っている場合、官報に解散公告を掲載する必要があります。なぜかというと、これらの債権を有する債権者を保護しなくてはならないためです。解散公告の掲載期間は2か月以上確保する必要があります。この期間内に、債権者に債権を申し立ててもらえるよう、場合によっては官報公告とは別に個別催告もおこなうこともがあります。

    解散時の決算書類を作成する

    解散時には、決算書類を作成する必要があります。これに伴い、貸借対照表と財産目録について普通決議による承認を受ける必要があります。貸借対照表上で純資産額がマイナスとなる超過債務に陥っている場合、廃業できません。そうした状態に陥っている場合、法人破産または特別清算などの手続きが必要になります。

    ※なお、法人破産および特別清算については追って詳しく解説します。

    解散時の確定申告をおこなう

    解散日から2か月以内に確定申告をおこないます。会社の廃業手続きがすべて完了している場合、確定申告は1度で済みますが、清算などの廃業手続きをすべて終えるためにさらに時間を要す場合、解散後も、事業年度ごとに確定申告しなくてはなりません。

    債権の換価と債務弁済をおこなう

    清算人は、売掛金などの債権の回収、会社が保有する商品在庫や設備などの資産売却で現金を用意して、会社の債務を弁済します。ただし、解散公告の債権申出期間終了までは、債務の弁済に着手できません。なぜかというと、一部の債権者に優先的に債務を弁済した結果、他の債権者が弁済を受けられないということになりかねないからです。すべての債権者は、平等に扱うことが鉄則とされています。

    残余財産を株主に分配する

    会社の資産と負債の清算を完了した時点で資産が余っている場合は、「残余財産」として株主に分配します。

    清算結了時の決算書類を作成する

    解散時に作成した決算書類とは別に、清算終了時にも決算書類を作成します。これに関しても、株主総会で承認を受ける必要があります。

    清算結了登記をおこなう

    清算結了時の決算報告書が株主総会で承認された日から2週間以内に、管轄の法務局で清算結了登記をおこないます。登記申請時には、決算報告書のほかに、承認を受けた株主総会の議事録を添付する必要があります。

    清算結了時の確定申告をおこなう

    残余財産が確定した日から1か月以内に、税務署で確定申告をおこないます。

    事業用口座・事業クレジットカードの解約

    事業用口座およびクレジットカードの解約も忘れてはいけません。ただし、清算には口座が必要なので、すべての手続きが完了してから解約するようにします。

    清算結了届を提出する

    税務署および都道府県税事務所・市区町村役場に、清算結了届を提出します。

    まずは「自分の会社がいくらか」を知るところから

    ジョブカンM&Aでは、専任アドバイザーが事業価値の簡易査定から成約まで一貫して伴走します。相談は無料。売却・買収のどちらでもお気軽にどうぞ。

    【個人事業主の場合】廃業の法的手続きの流れ

    個人事業主が廃業する場合、主に次の手続きが必要です。

    手続き 提出先 期限
    廃業届の提出 税務署 廃業後1か月以内
    所得税の確定申告 税務署 翌年の3月15日まで
    所得税の申告(課税事業者のみ) 税務署 翌年の3月31日まで
    社会保険の脱退手続き(加入していた場合) 年金事務所・役所 速やかに
    事業用口座・クレジットカードの解約 金融機関 随時

    なお、確定申告で青色申告を選択していた場合、「青色申告の承認取り消し届」も提出する必要があります。

    経営難に陥った場合の、廃業以外の選択肢とは?

    前述した通り、貸借対照表上で純資産額がマイナスとなる超過債務に陥っている場合、自主的に廃業することができません。そうした状態に陥っている場合、事業を終わらせたいなら、法人破産または特別清算の手続きが必要になります。

    一方、経営難に陥っているものの、事業継続を諦めたくない場合、私的整理、民事再生、会社更生という選択肢も考えられます。

    一覧にすると次の通りです。

    債務整理の種類 内容
    事業を終わらせたい場合 法人破産 裁判所の監督下で、会社の財産をすべて処分して完全消滅させる。最終的な清算方法
    特別清算 協力的な債権者が多い場合に、裁判所の監督下で穏便に会社を清算する方法
    事業を継続したい場合 私的整理 裁判所を介すことなく、金融機関をはじめとする債権者との話し合いによって事業再建を目指す方法
    民事再生 裁判所の監督下で、中小企業が経営権を維持したまま事業再建を目指す方法
    会社更生 裁判所の監督下で、主に大企業が、経営陣を刷新して事業再建を目指す方法

    それぞれ詳しく解説していきます。

    法人破産

    法人破産は、会社が支払い不能や債務超過に陥り、事業継続が不可能と判断される場合に活用される最終的な清算手続きです。

    裁判所に破産申立てをおこなうと、まず、破産管財人が選任されます。選任された破産管財人は、会社の財産管理や処分、債権者への配当を中立的な立場で進めていきます。なお、破産の手続き段階に入ると、経営者は管理から離れます。その後、手続きが完了すると、法人格が消滅して、残りの債務も消滅することとなります。

    破産申立てをおこなうことに対しては、ポジティブになれなくて当然ですが、法的に負債関係をリセットさせれば、肩の荷が下りることは間違いありません。そのことをメリットととらえて、新たな人生を始めるための第一歩を踏み出す決断をするのもいいでしょう。

    特別清算

    特別清算とは、自主廃業の過程で債務超過が判明した場合に、裁判所の監督下でおこなう法的生産手続きです。法人破産と比べて、費用や期間を抑えることができますが、債権者との関係が良好ではない場合、手続きに移れない場合もあります。

    なぜかというと、特別清算をおこなうためには、債権者集会で議決権を持つ債権者の過半数出席と、議決権総額の3分の2以上の同意が必要であるためです。また、特別清算は株式会社のみが選択できる手法です。

    私的整理

    私的整理とは、裁判所を介すことなく、債権者と直接交渉して再建を図る法王です。主に金融機関に対して、返済期間の延長や一部債務免除を交渉します。

    私的整理は、裁判所を介す必要がないため、基本的には公になることがないので、ブランド価値や信用の低下を防ぐことができます。また、手続きが柔軟かつスピーディで、手続きにかかる費用も比較的安価であるといえます。

    ただし、全債権者の同意が必要であるため、債権者が多い場合や、協力的ではない債権者がいる場合には、交渉がうまくいかない可能性が考えられます。自力での交渉だと難航しそうな場合、専門家に相談して合意形成を目指すのも一手です。

    民事再生

    民事再生とは、裁判所の監督下で事業再建を目指す法的手続きです。主に中小企業が対象です。債務返済不能な状態において民事再生の申し立てをおこない、裁判所に認められると、法律に基づいて大幅に債務が圧縮されます。その後、無理のない返済計画を立てて、分割返済しながら事業を立て直すことになります。

    民事再生をおこなう場合、支払先への未払いや雇用に関しても計画に盛り込みやすいため、事業の核を維持しながら再建を目指すことができます。

    会社更生

    会社更生は、民事再生とは異なり、主に株主や債権者が多く関係する大企業向けの法的手続きです。民事再生同様、事業の債権を目的とした手続きですが、中小企業や個人事業主に活用されることはほぼありません。

    会社再生を選択すると、原則として、既存経営陣が退任して、裁判所が選任した管財人が経営の主導権を握ることになります。強い法的財源を持つ管財人のもとで、確実な再生を目指すこととなります。

    過去には、百貨店や航空会社などが、会社再生に適用となり再建を果たした事例があります。基本的に、そのレベルの規模の企業が対象であるため、中小企業経営者や個人事業主であれば、手続きについてまで細かく知っておく必要はないでしょう。

    「廃業」「閉業」「閉店」「倒産」「休業」に関するQ&A

    続いては、「廃業」「閉業」「閉店」「倒産」「休業」に関してよくある質問とその答えをみていきましょう。

    Q.経営は順調だが後継者不在の場合、「廃業」「閉業」「閉店」以外の選択肢はあるのか?

    先に解説した通り、後継者が見つからないために「廃業」「閉業」「閉店」を検討しているなら、一度、M&A仲介業者に相談してみることをおすすめします。事業承継してくれる第三者がみつかれば、取引先や顧客にも継続して自社サービスや商品を提供できます。また、従業員との雇用関係も維持できます。

    ただし、M&A仲介業者に相談しても、必ずしも後継者が見つかるとは限りません。また、お互いに納得のいく条件で事業承継してもらえるとも限らないので、まずは候補者となる相手を見極めることからはじめます。

    Q. 会社を畳むことにした場合、どのくらいの費用が必要か?

    法人が解散する場合、解散登記や清算費用を含めて10~50万円程度必要とされています。

    具体的には次のような費用が発生します。

  • 解散登記の登録免許税:30,000円
  • 清算人登記:9,000円
  • 清算結了登記の登録免許税:2,000円
  • 司法書士・税理士への報酬(依頼は任意):50,000円~300,000円
  • 官報公告への掲載:1行につき3,589円
  • なお、個人事業主の場合、税務署に廃業届を提出することがメインで、基本的に費用は発生しません。

    Q. 会社が破産・倒産した場合、破産手続きが終わればまた借入が可能なのか?

    破産手続きをおこなうと、信用情報機関に自己破産した情報が登録されます。いわゆる、「ブラックリストに登録されている」状態になるということです。ブラックリストに登録される期間は、個人信用情報機関によって、次のように異なります。

    個人信用情報機関名
    自己破産の情報が抹消される時期
    全国銀行個人信用情報センター(KSC)
    破産手続き開始の決定日から7年後
    株式会社日本信用情報機構(JICC)
    免責許可決定の確定日から5年後
    株式会社シー・アイ・シー(CIC)
    面積許可決定の確定を会員会社が報告した日から5年後

    つまり、上記の期間を過ぎると、再び借入できる可能性はあるということになります。

    ただし、ブラックリスト入りが解消された直後においては、クレジットカードやローンの支払い実績がないことから、銀行や消費者金融に目をつけられて、審査に通らない可能性があります。なお、クレジットカードやローンの支払い実績のことを「クレジットヒストリー」といいます。

    Q. 廃業届を出さなかった場合、ペナルティを課せられるのか?

    廃業届を提出しないこと自体にペナルティが課せられることはありませんが、税務上のトラブルは発生する可能性があります。

    まず、廃業していても税務署から「事業が続いている」と判断されるため、廃業翌年以降についても確定申告書の提出を求められることが考えられます。青色申告を利用していた場合は、廃業届を提出しなければ、青色申告特別控除の適用が解除されないため、不正利用とみなされる可能性も考えられます。

    事業にとって、自分にとって、関係者にとってのベストな選択は何かをよく考えよう

    「廃業」「閉業」「閉店」「倒産」「休業」はいずれも経営者にとっては大きな決断となります。先に解説した通り、これ以外にも、事業承継や私的整理、民事再生などいくつかの選択肢が考えられる場合がありますが、いずれにしても、自分が大事にしてきた事業やその関係者にとって、また、自分にとってのベストな選択は何であるのかをよく考えることはとても大切です。“自分を含めた全関係者にとってのベスト”にはならない場合も多いと考えられますが、最終的に決断するのは経営者自身となるので、後悔のない選択ができるよう、選択肢の比較検討や、選択した手法の実施時期については、十分に時間をかけて考えてくださいね。

    まずは「自分の会社がいくらか」を知るところから

    ジョブカンM&Aでは、専任アドバイザーが事業価値の簡易査定から成約まで一貫して伴走します。相談は無料。売却・買収のどちらでもお気軽にどうぞ。

    ジョブカンM&A ジョブカンM&A編集部

    ジョブカンM&Aは、株式会社DONUTSが運営するM&Aアドバイザリーサービスです。主に企業の事業承継、成長戦略、出口戦略(イグジット)といった多様なニーズに応えることを目的としています。最大の特徴は、累計導入社数20万社以上を誇るバックオフィス支援クラウドERPシステム「ジョブカン」の広範なネットワークを活用している点です。この強力な顧客基盤を生かし、効率的なマッチングを実現します。


    他の関連記事はこちら