自己資本比率の計算式と業種別の目安|M&Aで買い手が財務健全性をどう見るか

会社の財務体質を示す指標のうち、決算書を見慣れていない人にも
比較的わかりやすいのが自己資本比率です。

計算式自体は単純ですが、M&Aの現場では「高ければ良い」で終わらせず、
中身まで確認されます。
ここでは自己資本比率の計算方法と計算例、公的統計による業種別の目安、買い手が見ているポイント、比率が低いときに打てる手を整理します。

まずは「自分の会社がいくらか」を知るところから

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目次
  1. 自己資本比率の計算式
    1. 具体例
    2. 計算例:同じ会社でも処理次第で比率が変わる
  2. 目安と中小企業の実態
  3. 買い手が自己資本比率から確認する2つの点
    1. 債務超過の会社は売れないのか
    2. 役員借入金・役員貸付金はどう見られるか
  4. 自己資本比率の高低で分かれる3パターン
  5. 自己資本比率が低いときに打てる手
  6. 譲渡前に自社で確認する自己資本比率のチェックリスト
  7. よくある質問
    1. 自己資本比率が低いと会社は売れませんか。
    2. 自己資本比率と流動比率は何が違いますか。
    3. 何%あれば譲渡交渉で有利になりますか。
  8. まとめ
  9. 参考

自己資本比率の計算式

自己資本比率(%)= 純資産 ÷ 総資産 × 100

貸借対照表の純資産(返済不要の資金)を、総資産(会社が保有する資産全体)
で割った割合です。返済が不要な資金でどれだけ会社の資産を賄えているかを表します。総資産は「負債+純資産」と同じ額なので、貸借対照表の右側の合計で割っても結果は同じです。

上場企業の開示などでは、純資産から新株予約権などを除いた「自己資本」で計算することもあります。新株予約権を発行していない中小企業では、多くの場合純資産とほぼ同じ額になります。この記事の数値は、中小企業実態基本調査と同じ「純資産÷総資産」で計算しています。

具体例

  • 純資産: 3,000万円
  • 総資産: 1億円
自己資本比率 = 3,000万円 ÷ 1億円 × 100 = 30%

計算例:同じ会社でも処理次第で比率が変わる

自己資本比率は分子(純資産)と分母(総資産)の両方で動きます。上の会社(総資産1億円・純資産3,000万円、うち負債に役員借入金2,000万円と銀行借入3,000万円を含む)で、次の処理をした場合を比べます。

処理 純資産 総資産 自己資本比率
現状 3,000万円 1億円 30.0%
手元の預金2,000万円で銀行借入を返済 3,000万円 8,000万円 37.5%
役員借入金2,000万円を株式に振り替える 5,000万円 1億円 50.0%
1,000万円の増資を受け、預金のまま置く 4,000万円 1億1,000万円 36.4%

借入の返済は純資産を増やさなくても比率を上げます。比率だけを見ると、処理の中身が見えなくなることが分かります。

目安と中小企業の実態

一般に「30%以上で安定、50%以上で優良」と言われることがありますが、公的に定められた基準ではありません。自社の位置を知るには、公的統計の実績値と比べる方が確実です。

中小企業庁の中小企業実態基本調査(令和7年確報・令和6年度決算実績)では、
中小企業(法人企業)の自己資本比率の加重平均は44.93%で、前年度より0.53ポイント上がっています。令和4年度は41.71%、令和5年度は44.40%でした。

ただし業種差と規模差が大きく、同じ調査でも次のように分かれます。

業種 全体 従業者5人以下 51人以上
中小企業(法人)全体 44.93% 40.32% 48.35%
学術研究、専門・技術サービス業 66.86% 74.18% 56.35%
情報通信業 54.08% 36.27% 59.67%
建設業 49.38% 40.95% 53.66%
製造業 49.29% 29.40% 53.63%
卸売業 43.70% 40.66% 44.06%
小売業 39.43% 30.42% 44.27%
不動産業、物品賃貸業 38.38% 36.89% 41.44%
運輸業、郵便業 36.86% 17.41% 44.03%
生活関連サービス業、娯楽業 31.36% 18.61% 35.28%
宿泊業、飲食サービス業 31.01% 32.64% 35.99%

宿泊業、飲食サービス業は令和5年度の16.00%から大きく変わっており、1年分の数字だけで判断せず、複数年度を並べて見るのが安全です。自社の数字を見るときは、全業種平均ではなく同業種・同規模の値と比べることが前提になります。

買い手が自己資本比率から確認する2つの点

買い手が自己資本比率を確認するのは、次の2点を判断するためです。

  1. 借入への依存度 — 比率が低い会社は、譲渡後に金融機関との取引条件見直しや、
    既存借入の連帯保証・担保の引き継ぎ交渉が必要になりやすい
  2. 買収後の追加投資余力 — 純資産が薄いと、譲渡後すぐに設備更新や
    運転資金の追加投入が必要になる可能性がある

一方で、比率が高いことがそのまま「良い会社」を意味するとは限りません。
純資産の中身に、実態のない資産(回収不能な売掛金、含み損を抱えた有価証券、
時価と乖離した不動産)が混ざっていれば、見かけ上の比率は当てになりません。
買い手は比率を入口にして、純資産の中身をデューデリジェンスで確かめます。

比率の推移も見られます。同じ40%でも、利益の積み上げで年々上がってきた会社と、赤字で純資産が削られて下がってきた会社では評価が逆になります。純資産の内訳が、出資された資本金中心なのか、稼いだ利益剰余金中心なのかも、収益力を示す材料として確認されます。

債務超過の会社は売れないのか

純資産がマイナス(債務超過)でも、M&Aの選択肢がなくなるわけではありません。中小M&Aガイドラインは、簿価では債務超過でも、時価で見直すと資産超過になる場合があること、事業の価値は最終的に譲り受け側の評価で決まることを示しています。含み益のある土地や保険の解約返戻金など、簿価に表れていない価値を洗い出すことが先です。

役員借入金・役員貸付金はどう見られるか

社長からの借入(役員借入金)は負債なので、自己資本比率を押し下げます。返済を求めない前提であれば実質的には資本に近いとして扱われることもありますが、契約上返済を求められる負債である以上、買い手は譲渡時にどう整理するかを確認します。逆に会社から社長への貸付(役員貸付金)は、回収できる見込みが疑われると資産として評価されにくくなります。ガイドラインも、役員貸付金など経営者と会社との取引は、M&Aの前に整理しておくことが望ましいとしています。

まずは「自分の会社がいくらか」を知るところから

ジョブカンM&Aでは、専任アドバイザーが事業価値の簡易査定から成約まで一貫して伴走します。相談は無料。売却・買収のどちらでもお気軽にどうぞ。

自己資本比率の高低で分かれる3パターン

パターン 状態 買い手からの見え方
比率が高く、中身も健全 純資産の大半が利益剰余金で構成されている そのまま財務面の強みとして提示できる
比率は低いが業種特性による 運輸業、不動産賃貸業、宿泊業など設備や物件を借入で賄う業界 単独の数字ではなく同業種平均との比較で判断される
比率が低く、中身にも問題がある 役員貸付金・滞留資産が純資産を目減りさせている 譲渡前に整理しないと、実質的な評価はさらに下がる

3つめに当てはまる場合、役員貸付金の回収・役員借入金の資本組み入れなど、
純資産の質を上げる整理は譲渡前に着手した方が交渉で有利
に働きます。

自己資本比率が低いときに打てる手

打ち手 比率への効き方 注意点
利益を積み上げる 利益剰余金が増え、分子が増える 時間がかかる。譲渡の数年前から計画する
遊休資産を売って借入を返す 分母が減る 売却損が出ると純資産も減る。運転資金を残す
増資を受ける 分子が増える 株主構成が変わる。譲渡時の株式の集約に影響する
役員借入金を株式に振り替える(DES) 負債が純資産に変わる 税務上の扱いが論点になる。実行前に専門家へ確認する
役員借入金を放棄してもらう 負債が消え、分子が増える 会社側は債務免除益が益金になる。他の株主への贈与とみなされる場合がある
役員貸付金を回収する 回収した資金で借入を返せば分母が減る 社長個人の資金手当てが必要になる

役員借入金の放棄には税務上の注意が要ります。会社にとって債務が無償で消える利益は、法人税法上、益金に算入されます(法人税法22条2項)。また国税庁の相続税法基本通達9-2は、同族会社の債務を対価なく免除したことで株式の価値が増えた場合、その増加分を他の株主が免除した人から贈与で取得したものとして扱うとしています。会社が資力を喪失した場合の例外(9-3)はありますが、単に一時的に債務超過になっている場合は該当しないと明記されています。

手をつける順番は、まず純資産の中身を確かめ、実態のない資産を正しく落としたうえで比率を見直すのが先です。見かけの比率を上げてから買い手のデューデリジェンスで減額されると、かえって信頼を失います。

譲渡前に自社で確認する自己資本比率のチェックリスト

買い手に決算書を出す前に、次の項目を自社で確かめておくと、交渉で説明に詰まりにくくなります。

  • 自己資本比率を直近3期分計算し、同業種・同規模の統計値と並べた
  • 売掛金に、1年以上回収できていない先や回収の見込みが立たない先がない
  • 棚卸資産に、売れない在庫や実在しない在庫が含まれていない
  • 有価証券・不動産の時価と帳簿価額の差(含み損・含み益)を把握した
  • 保険の解約返戻金など、貸借対照表に載っていない資産を洗い出した
  • 役員借入金・役員貸付金の残高、契約書、返済の実績を整理した
  • 借入に付いている経営者保証と担保の一覧を作った

よくある質問

自己資本比率が低いと会社は売れませんか。

売れないとは限りません。借入依存度が高くても、
安定したキャッシュフローや取引先基盤があれば評価対象になります。
比率は判断材料の一つであり、それだけで結論は出ません。

自己資本比率と流動比率は何が違いますか。

自己資本比率は長期的な財務の安定性、流動比率は短期の支払能力を見る指標です。
両方を合わせて確認するのが基本です。

何%あれば譲渡交渉で有利になりますか。

明確な基準はありません。同業種の平均を上回っているか、
純資産の中身に問題がないかの方が、単一の数値より重視されます。
中小企業実態基本調査の業種別・従業者規模別の値と並べ、上回っている理由を説明できるようにしておくと交渉材料になります。

まとめ

  • 自己資本比率 = 純資産 ÷ 総資産 × 100
  • 中小企業(法人)の平均は44.93%(令和6年度決算実績)。業種で31%台〜66%台と差が大きく、同業・同規模との比較が前提
  • M&Aでは比率そのものより、純資産の中身の健全性が確認される
  • 債務超過でも、時価で見直すと資産超過になる場合がある
  • 役員借入金・役員貸付金の整理は譲渡前に着手する。放棄は税務の論点を確認してから

まずは「自分の会社がいくらか」を知るところから

ジョブカンM&Aでは、専任アドバイザーが事業価値の簡易査定から成約まで一貫して伴走します。相談は無料。売却・買収のどちらでもお気軽にどうぞ。

参考

ジョブカンM&A ジョブカンM&A編集部

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