経営者保証ガイドラインとは?保証を外す3要件と、事業承継で二重徴求を避ける特則

中小企業が借入をするとき、社長個人が連帯保証人になるのが長く当たり前だった。この慣行を見直すために作られたのが、経営者保証に関するガイドラインである(2013年12月公表)。

法律ではない。金融機関や中小企業団体が自主的に定めたルールで、法的拘束力は無い。それでも金融機関はこれに沿って判断するため、実務上の基準として機能している。

まずは「自分の会社がいくらか」を知るところから

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目次
  1. なぜ事業承継・M&Aで問題になるのか
  2. 保証を外すための3要件
    1. 1. 法人と経営者の関係が明確に区分・分離されている
    2. 2. 財務基盤が強化されている
    3. 3. 財務状況が適時適切に開示されている
  3. 事業承継時の特則
    1. 二重徴求の原則禁止
    2. 後継者への保証を当然としない
  4. 譲渡のときに保証が残る典型
  5. 保証債務を整理する仕組みもある
  6. 相談先
  7. よくある質問
    1. ガイドラインに従わない金融機関もありますか。
    2. 3要件を満たしていないと、絶対に外せませんか。
    3. 新規の借入でも保証なしにできますか。
    4. 個人保証を外すのに費用はかかりますか。
  8. まとめ
  9. 参考

なぜ事業承継・M&Aで問題になるのか

個人保証が残っていると、会社を譲っても社長個人の責任が消えない。

  • 株式を譲渡して経営から退いても、保証契約はそのまま残る
  • 後継者が保証を引き受けたがらず、承継そのものが止まる
  • 廃業を選んだ場合、保証債務が個人の生活を圧迫する

「後継者がいない」の理由のひとつが、この保証である。事業は引き継ぎたいが、個人保証まで背負うのは避けたい——という判断は珍しくない。

保証を外すための3要件

ガイドラインは、次の3つを満たしていれば、保証を求めない可能性があるとしている。

1. 法人と経営者の関係が明確に区分・分離されている

  • 会社の資産と社長個人の資産が混ざっていない
  • 社長個人名義の不動産を会社が使っているなら、賃貸借契約を結んで賃料を払っている
  • 社長個人への貸付金・仮払金が残っていない
  • 役員報酬が、社会通念上適切な水準に収まっている

ここがいちばん引っかかる。中小企業では、会社と個人の財布が実質的に一体になっていることが多い。整理には時間がかかるので、承継を考え始めた時点で着手する。

2. 財務基盤が強化されている

  • 法人のみの資産・収益力で返済が可能と判断できる
  • 業績が安定し、内部留保がある

赤字が続いている状態では、この要件は満たせない。

3. 財務状況が適時適切に開示されている

  • 決算書だけでなく、月次の試算表を提出している
  • 金融機関からの求めに、正確に応じている
  • 経営の透明性が確保されている

3つのうち1つでも欠けると難しいが、すべてを完璧に満たす必要は無い。金融機関は総合的に判断する。満たしている項目を具体的に説明できる状態にしておくことが実務的である。

事業承継時の特則

2019年12月に「事業承継時に焦点を当てた特則」が公表され、2020年4月から適用されている。

二重徴求の原則禁止

前経営者と後継者の双方から保証を取ることは、原則として禁止された。

以前は、承継のときに後継者から新たに保証を取りつつ、前経営者の保証も残す扱いが行われていた。特則はこれを認めない。

例外として双方から取れる場合が定められている。

  • 前経営者が実質的な経営権を持ち続けている場合
  • 経営者の健康上の理由で、事業承継予定者が保証人となる場合
  • 前経営者が法人から、社会通念上適切な範囲を超える借入等を行っている場合

つまり、前経営者がきちんと退けば、保証は外れる方向で判断される。

後継者への保証を当然としない

後継者に保証を求めるかどうかも、上の3要件に照らして判断する。「承継したのだから当然」という扱いはしない。

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譲渡のときに保証が残る典型

第三者へ譲渡した場合でも、手続きを踏まないと保証が残る。

型 何が起きるか
契約書に「解除する」と書いただけ 保証契約の相手は金融機関である。売り手と買い手の合意だけでは解除されない
クロージング後に手続きするつもりだった 買い手が動かず、放置される。期限を切って書面で確認する
借入を買い手が引き継いだが、保証はそのまま 債務者が変わっても、保証契約は自動では消えない
複数の金融機関から借りている 1行だけ解除して、残りを忘れる

必ず「金融機関から保証解除の書面を受け取る」ところまでを、契約とスケジュールに入れる。「解除される予定」で終わらせない。

保証債務を整理する仕組みもある

廃業や再生の場面で、保証債務を整理するための手続きがガイドラインに定められている。

  • 一定の生活費(華美でない自宅を含む)を残せる場合がある
  • 早期に事業再生や廃業を決断した場合、残す資産の範囲が広がる扱いがある
  • 信用情報機関へ事故情報として登録されない

「早めに相談したほうが有利になる」設計になっている。支払いが完全に行き詰まってからでは、選べる手続きが減る。

相談先

相談先 何ができるか
取引のある金融機関 保証の解除・軽減の相談。まずここ
事業承継・引継ぎ支援センター 各都道府県にある公的機関。承継の相談
経営者保証コーディネーター 保証を外せる状態かの確認、金融機関との調整
中小企業活性化協議会 再生・廃業を含む相談

「保証を外したい」と自分から言わないと、金融機関からは切り出されない。要件を満たしているのに保証が続いているケースがある。

まずは「自分の会社がいくらか」を知るところから

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よくある質問

ガイドラインに従わない金融機関もありますか。

法的拘束力が無いため、対応に差はある。ただし金融庁が金融機関に対し、ガイドラインの趣旨を踏まえた対応を求めている。応じてもらえない場合は、理由の説明を求める。

3要件を満たしていないと、絶対に外せませんか。

総合的な判断になる。すべてを満たしていなくても、代替の手段(追加の担保、財務制限条項など)で調整される例がある。まず相談してみる価値はある。

新規の借入でも保証なしにできますか。

できる場合がある。保証を求めない融資の取り扱いは増えている。創業時の保証を不要とする制度もあるので、条件を確認する。

個人保証を外すのに費用はかかりますか。

保証料や手数料が発生する仕組みもある。保証を外す代わりに、信用保証協会の制度を使う形などである。費用と、保証を負い続けるリスクを比べて判断する。

まとめ

  • 経営者保証ガイドラインに法的拘束力は無いが、金融機関の判断基準として機能している
  • 保証を外す3要件は、法人と個人の分離/財務基盤の強化/適時適切な情報開示
  • いちばん引っかかるのは1つめ。会社と個人の資産・貸付金の整理には時間がかかるので早く着手する
  • 2020年4月からの特則で、事業承継時に前経営者と後継者の双方から保証を取ることは原則禁止になった
  • 譲渡しても、金融機関から書面で解除を受けるまで保証は残る。契約書の合意だけでは消えない

参考

ジョブカンM&A ジョブカンM&A編集部

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