介護施設の買収|指定を引き継げるかどうかで、譲渡のやり方が決まる

介護施設を譲るとき、最初に決まるのは価格ではない。指定を引き継げるかどうかである。

ここが決まると、株式譲渡でいくのか事業譲渡でいくのかが決まり、手続きの期間も、従業員の扱いも、そこから逆算される。

まずは「自分の会社がいくらか」を知るところから

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目次
  1. 「指定」とは何か
  2. 株式譲渡が選ばれやすい理由
  3. 買い手が必ず確認する4点
    1. ① 人員基準を満たしているか
    2. ② 加算の算定状況
    3. ③ 実地指導・監査の履歴
    4. ④ 稼働率と要介護度の分布
  4. 譲る側が先に整理しておくこと
    1. 人員配置の記録
    2. 加算の届出内容と算定実績
    3. 利用者との契約書
    4. 従業員への説明の段取り
  5. 譲るか、続けるか
  6. よくある質問
    1. 株式譲渡と事業譲渡、どちらがよいですか。
    2. 事業譲渡の場合、指定はいつ切り替わりますか。
    3. 処遇改善加算は引き継げますか。
    4. 職員にはいつ伝えるべきですか。
  7. まとめ
  8. 出典

「指定」とは何か

介護保険サービスを提供して介護報酬を受け取るには、都道府県知事または市町村長から事業所ごとの指定を受ける必要がある(介護保険法)。

指定は事業者と事業所の組み合わせに対して与えられる。つまり、事業者が変われば原則として指定は引き継がれない。

手法 指定の扱い
株式譲渡 法人格が変わらないため、指定は原則そのまま継続。株主が変わるだけ
事業譲渡 事業者が変わるため、譲受側が原則あらためて指定を受ける
合併・会社分割 手続きにより扱いが異なる。事前に確認が必要

🔴 事業譲渡では、指定の空白が生じるとその期間の介護報酬を請求できない。 譲渡日と指定の効力発生日を合わせる設計が要る。

自治体によって申請の締切と処理期間が異なるため、検討段階で管轄の指定権者に確認するのが最短になる。

株式譲渡が選ばれやすい理由

指定が継続するため、次が同時に引き継がれる。

  • 事業所の指定
  • 各種加算の算定要件(体制届の内容)
  • 従業員の雇用契約
  • 利用者との契約
  • 賃貸借契約・リース契約

事業譲渡ではこれらを個別に巻き直す必要がある。手続きの量が桁で違うため、法人単位で譲れるなら株式譲渡が選ばれやすい。

ただし株式譲渡には、簿外債務を含めて引き継ぐという側面がある。買い手は労務・税務のデューデリジェンスを行う。

買い手が必ず確認する4点

① 人員基準を満たしているか

介護サービスは、サービス種別ごとに人員基準が定められている。基準を割ると、指定の効力に関わるだけでなく、介護報酬の減算対象になる。

買い手は次を見る。

  • 常勤換算での配置が基準を満たしているか
  • 管理者・サービス提供責任者・生活相談員など、専任要件のある職が埋まっているか
  • 直近で欠員期間がなかったか

🔴 譲渡の公表で職員が離職すると、人員基準を割ることがある。 公表のタイミングは、契約が固まる直前に置くのが一般的である。

② 加算の算定状況

介護報酬は基本報酬に各種加算が乗る構造で、加算の有無が収益を大きく左右する。

  • 処遇改善加算(職員の賃金改善が要件。算定区分により率が変わる)
  • サービス提供体制強化加算
  • 特定事業所加算 など

加算は事業所単位で届け出て算定しているため、事業譲渡では届け直しになる。要件を満たせない期間があると、その分の収益が落ちる。

処遇改善加算については、賃金改善の実施が要件である以上、譲渡後も同じ水準を維持できるかが問われる。

③ 実地指導・監査の履歴

過去に指定権者から指導・監査を受けていないか、返還が発生していないかを確認する。過誤調整や返還金は、譲渡後に表面化することがある。

④ 稼働率と要介護度の分布

売上は「定員 × 稼働率 × 単価」で決まり、単価は利用者の要介護度に影響される。

  • 稼働率が下がっている … 原因が立地か、人員か、評判かで見立てが変わる
  • 要介護度が軽い利用者に偏っている … 単価が低くなる

定員だけを見ても収益は読めない。

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譲る側が先に整理しておくこと

人員配置の記録

常勤換算の計算根拠、シフト、資格証の写しを揃えておく。買い手のデューデリジェンスで最初に求められるのがここで、揃っていないと期間が延びる。

加算の届出内容と算定実績

体制届の控えと、算定している加算の一覧。処遇改善加算については、賃金改善計画と実績報告も揃える。

利用者との契約書

重要事項説明書と契約書の様式。指定の切り替えに伴い、利用者と契約を巻き直す必要が生じる場合があるため、様式の確認が要る。

従業員への説明の段取り

介護は人がサービスそのものである。離職が起きれば人員基準に直結するため、伝え方と時期を譲受側と事前に合意しておく。

譲るか、続けるか

次のいずれかがあると、譲渡の難易度は上がる。

  • 人員基準をぎりぎりで満たしている(欠員が出れば減算)
  • 稼働率が下がり続けている
  • 建物が賃借で、契約の承継が認められない

一方、次があれば譲れる可能性は高い。

  • 人員が定着し、常勤換算に余裕がある
  • 処遇改善加算を含む加算を継続して算定している
  • 稼働率が安定している
  • 法人単位で譲れる(株式譲渡が選べる)

よくある質問

株式譲渡と事業譲渡、どちらがよいですか。

指定・加算・契約を引き継げる点で、株式譲渡のほうが手続きは少なくなります。ただし簿外債務を含めて引き継ぐため、買い手のデューデリジェンスは深くなります。法人が複数事業を持ち、一部だけを譲る場合は事業譲渡が選ばれます。

事業譲渡の場合、指定はいつ切り替わりますか。

譲受側があらためて指定を受ける必要があり、申請から効力発生までの期間は自治体により異なります。空白期間が生じると介護報酬を請求できないため、管轄の指定権者に事前確認してください。

処遇改善加算は引き継げますか。

事業譲渡では届け直しになります。賃金改善の実施が要件であるため、譲渡後も水準を維持できるかが問われます。

職員にはいつ伝えるべきですか。

契約が固まる直前が一般的です。離職が人員基準に直結するため、伝え方と時期は譲受側と事前に合意しておきます。

まずは「自分の会社がいくらか」を知るところから

ジョブカンM&Aでは、専任アドバイザーが事業価値の簡易査定から成約まで一貫して伴走します。相談は無料。売却・買収のどちらでもお気軽にどうぞ。

まとめ

介護施設のM&Aは、指定を引き継げるかどうかで手法が決まる。

  • 株式譲渡 … 指定・加算・雇用・契約がそのまま継続する
  • 事業譲渡 … 原則あらためて指定を受ける。空白が生じると報酬を請求できない

買い手が見るのは4点。人員基準/加算の算定状況/実地指導の履歴/稼働率と要介護度の分布。

そして最大のリスクは価格ではなく離職である。公表のタイミングを誤って職員が抜けると、人員基準を割り、減算に直結する。伝え方の設計まで含めて譲渡の準備になる。

出典

  • 介護保険法
  • 厚生労働省「介護給付費算定に係る体制等に関する届出」
  • 厚生労働省「介護職員等処遇改善加算」

※ 本記事は2026年9月時点の情報にもとづきます。指定・加算の取扱いは自治体および年度の制度改正により異なるため、管轄の指定権者にご確認ください。

ジョブカンM&A ジョブカンM&A編集部

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