民事再生とは、経済的に困難な状況にある法人や個人事業主が、然るべき手続きをとることで債務を大幅に減額させて、事業を継続しながら再建を目指す法的整理です。しかし、資金繰りの悪化や過剰な借り入れなどにより、事業の存続が難しくなった場合の選択肢は民事再生だけではありません。その他の選択肢とは何が違うのか、どういうケースにおいては民事再生の選択が適しているのかなどを詳しく解説していきます。
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民事再生とはー法的整理のなかでの位置づけー
冒頭で述べた通り、民事再生とは、経済的な理由から事業存続が困難になった場合の法的整理のひとつです。
また、「法的整理」とは、裁判所の関与のもと、法律に定められた手続きに則って、借金を減額あるいは免除してもらうか、または返済スケジュールの猶予を受ける「倒産手続き」で、民事再生のほかに、「破産」「会社更生」「特別清算」を含む4つにわけることができます。
なお、経済的な理由から事業存続が困難になった場合にとる手続きとしては、法的整理のほかに「私的整理」もあります。法的整理と私的整理の違いは、裁判所を通すか通さないかです。
代表的な私的整理は次の通りです。
- 任意整理:裁判所を通さず、弁護士や司法書士が賃金業者と直接交渉して、将来利息のカットや長期の分割払いを実現する債務整理手続き
- ADR(Alternative Dispute Resolution:裁判外紛争解決):裁判所を通さず、公正中立な第三者を当事者間に入れて、話し合いを通じて解決を図る手続き
- 銀行との返済リスケジュール
など
ここまでを整理すると、次のような図解で示すことができます。
倒産手続き
├─ 法的整理(裁判所あり)
│ ├─ 破産
│ ├─ 民事再生
│ ├─ 会社更生
│ └─ 特別清算
│
└─ 私的整理(裁判所なし)
├─ 任意整理
├─ ADR
└─ リスケジュール
なお、「倒産手続き」と聞くと、「倒産だから会社がなくなる」と考えるかもしれませんが、これは間違いです。倒産手続きは、「会社を清算して終わらせるタイプ=清算型」と「会社を残して立て直すタイプ=再建型」にわけられます。
法的整理の4つは、それぞれ次のタイプに該当します。
法的整理
├─ 清算型(会社を終わらせる)
│ ├─ 破産
│ └─ 特別清算
│
└─ 再建型(会社を残す)
├─ 民事再生
└─ 会社更生
法的整理の4つの手続きについて解説していきます。
破産とは
会社の財産を処分して、会社を終わらせる手続きです。「もう事業継続は不可能なので、資産を売って借金を整理する」といったイメージです。
破産は、「破産法」に基づいて手続きが進められます。
- 【特徴】
- 会社は最終的に消滅
- 破産管財人が財産を管理する
- 債権者へ公平に配当される
- 【この手法が使われるケース】
- 赤字が深刻
- 再建見込みがない
- 資金繰り不能
など
特別清算とは
株式会社が解散後におこなう、比較的簡易な清算手続きです。「会社をたたむことは決まっているので、穏便に整理する」といったイメージです。
特別清算は、「会社法」に基づいて手続きが進められます。また、株式会社にしか利用できない制度であることも大きな特徴です。
- 【特徴】
- 株式会社のみ利用可能
- すでに解散していることが前提
- 破産より簡易
- 債権者の協力が得られやすい場合に使う
- 【この手法が使われるケース】
- 親会社主導で子会社を整理
- 資産負債が比較的シンプル
- 関係者間の合意がある
など
民事再生とは
会社を残しながら借金を減額して、再建を目指す手続きです。「借金を減らして、営業を続けながら立て直す」といったイメージです。手続き開始後も、もともとの経営陣が引き続き経営の指揮を執るケースが多いです。なお、民事再生などにおいて、元の経営者が退陣せず、そのまま経営を継続しながら再建を目指す方式を「DIP型(Debtor In Possession)」といいます。
民事再生は、「民事再生法」に基づいて手続きが進められます。
- 【特徴】
- 経営者が続投しやすい
- 雇用を維持しやすい
- 比較的使いやすい
- 中小企業が使うケースが多い
民事再生において経営陣退任・交代が起こるケース
前述の通り、民事再生においてはもともとの経営陣が引き続き経営の指揮を執るケースが多いですが、次のような場合は、経営陣退任・交代が起こります。
- 1 粉飾決算・不正がある
粉飾、横領、不適切会計、資金流用などがあると、「この経営陣では再建を信用できない」と判断されやすくなります。
すると、スポンサー企業、銀行、裁判所、債権者から退任要求が出ることがあります。
- 2 債権者の信頼を失っている
たとえ違法行為がなくても、放漫経営、無謀投資、ガバナンス不全などで信用が失われていると、続投が難しくなります。
- 3 スポンサー企業が入る
詳しくは後述しますが、民事再生では、再建のために他社が支援することがあります。たとえば、投資ファンド、同業他社、大企業などです。こうしたスポンサー企業は、資金を出す条件として、「経営陣交代」を求めることがあります。
- 4 裁判所が監督強化する場合
民事再生は通常、経営者主導ですが、問題が大きい場合は、監督委員、管財人が強く関与します。場合によっては、事実上経営権を失います。
会社更生とは
民事再生の主な対象が中小企業であるのに対して、会社更生は大企業が使う手法です。また、民事再生においては基本的に引き続きもともとの経営陣が経営の指揮を執りますが、会社更生においては経営陣が刷新されて、管財人に経営が引き継がれるという違いもあります。そのため、会社更生においては、債務の返済プランを立案するのも外部の専門家ということになります。
会社更生は、「会社更生法」に基づいて手続きが進められます。
- 【特徴】
- 非常に厳格
- 裁判所の管理が強い
- 経営は管財人に引き継がれる
- 大企業向け
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自社に適した倒産手続きを選ぶポイントは?
4つの倒産手続きからどれを選ぶべきか迷った場合、まずは次の点について自問自答してみる必要があります。
- 「会社を残したいのか」
- 「借金を整理して再建したいのか」
- 「もう事業継続が難しいのか(=まだ事業継続資金があるのか)」
- 「スポンサーや資金支援があるのか」
これらをベースにしながら、いくつかの判断軸ごとに選択肢を整理していきましょう。
会社を残したいか
残したい →再建型
- 従業員を守りたい
- ブランドや取引先を維持したい
- 黒字事業がある
- スポンサー候補がいる
これらに当てはまる場合、再建型(民事再生・会社更生)の選択を第一に考えるといいでしょう。
残したくない or 残せない→清算型
- 債務超過が深刻
- 事業継続で赤字が増える
- 資金繰りが完全に停止
- 再建支援が見込めない
これらに当てはまる場合、清算型(破産・特別清算)が現実的です。
経営陣が続投したいか・経営陣を残したいか
「経営陣が続投したい」「経営陣が続投できないなら清算させたい」などもわかりやすい判断軸になります。
| 手続き | 現経営陣 |
| 民事再生 | 残れる場合が多い |
| 会社更生 | 原則退任 |
| 破産 | 経営修了 |
| 特別清算 | 清算人へ移行 |
会社規模
再建型の2つに関しては、会社規模によって選択肢を考えるのも一手です。
中小企業に多い→民事再生
- 理由:
- 手続きが比較的柔軟
- 経営陣が残りやすい
- コストが比較的低い
- 典型例:
- 地方企業
- 中堅メーカー
- 飲食チェーン
- 医療法人関連会社など
大企業に多い→会社更生
- 理由:
- 強力な法的保護
- 金融機関調整がしやすい
- 大規模債務処理向き
- 会社更生のデメリット:
- 手続きが重い
- 時間と費用がかかる
- 経営権を失いやすい
上記理由から、会社更生は「最後の大型再建手段」に近い位置づけであると捉えておくといいでしょう。
資金繰りの深刻度
まだ事業継続資金がある→ 再建の可能性あり
- 選択肢:
- 民事再生
- 私的整理(銀行との任意交渉)
資金が完全枯渇→ 清算型になりやすい
- 選択肢:
- 破産
- 特別清算
特に、「給与が払えない」「税金滞納」「手形不渡り」まで進んでいる場合、再建難易度は大幅に上がります。
株主・銀行・取引先の協力が得られるか
倒産手続きは「法律」だけでなく、関係者調整が非常に重要です。
協力が得られる場合
下記選択肢が現実的です。
- 民事再生
- 特別清算
対立が強い場合
下記選択肢など、裁判所主導の強い手続きが必要になるケースが多いでしょう。
- 会社更生
- 破産
各手続きが「向いているケース」
それぞれの手続きが向いているケースをざっくりまとめると次の通りです。
| 手続き | 向いているケース |
| 民事再生 | 事業価値はあるが借金が重い |
| 会社更生 | 大企業・金融債務が巨大 |
| 破産 | 再建可能性が低い |
| 特別清算 | 閉業は決定済みだが円滑に清算したい |
決断の「タイミング」によっても選択肢が変わる
また、倒産手続きを決めるうえでは「タイミング」も非常に大切です。
まだ現金がある段階、税金滞納前、給与遅配前などであれば選択肢が増えますが、資金が尽きてからだと、次のようなことが起こり得ます。
- 民事再生したくても運転資金が足りない
- スポンサーが離脱
- 従業員が流出
その結果として、破産しか選べなくなるケースも多いです。
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民事再生より「M&Aによる事前売却」を選んだほうがいいケースとは?
事再生をはじめとする法的整理(倒産手続き)を検討する前に、**M&Aスキーム(事業譲渡や株式譲渡)を用いた「事前売却」**を選択したほうが、経営者や従業員にとってメリットが大きいケースが多くあります。
まず、民事再生と事前売却の根本的な違いは次の通りです。
- 民事再生→裁判所の関与のもとで債務をカットし、会社を再建する
- M&Aによる事前売却→倒産(法的整理)の事実が公表される前に、スポンサー(買い手企業)へ事業や会社を譲渡し、その対価で債務を整理する
その他の違いは次の表の通りです。
| 項目 | M&A事前売却 | 民事再生 |
| 社会的信用 | 比較的維持 | 大きく低下 |
| 会社存続 | 可能 | 可能 |
| 債務整理力 | 弱い | 強い |
| スピード | 比較的速い | やや長い |
| 経営者保証整理 | 条件次第 | 残りやすい |
| 従業員維持 | しやすい | ケース次第 |
| 法的強制力 | 弱い | 強い |
こうした違いがあることから、特に近年は、雇用やブランドを維持したい場合など、「まずはM&Aを検討する」という流れが強まっています。
具体的に、M&Aによる事前売却を選んだほうがいい典型的なケースをみていきましょう。
本業は黒字・事業価値がある
会社全体は苦しくても、事業自体には価値がある場合、スポンサー企業が現れやすいことから、M&Aが成立しやすいといえます。
たとえば、次のようなケースがこれに該当します。
- 技術力がある
- 顧客基盤が強い
- 地域シェアがある
- 人材が優秀
- ブランドがある
など
資金ショート前で、まだ時間がある
M&Aを成功させるためには、タイミングを見誤らないよう注意する必要があります。
資金が完全に尽きてしまうとタイムアウトとなりますが、そうなる前なら、「買い手が冷静にデューディリジェンスで見極められる」「従業員流出を防ぎやすい」「条件交渉できる」などの条件がそろっており、企業価値が残っています。
一方、タイミングが遅すぎると、給与遅配、税金滞納、手形不渡り、主要取引先離脱などが起きるため、“再建可能会社”から“危険会社”へと変わってしまいます。こうなると、M&A価格は急低下します。
社会的信用低下を避けたい
民事再生は「法的倒産手続き」です。官報掲載、信用不安、取引停止、銀行管理強化などが起きます。
一方、通常のM&Aは事業承継や資本提携といった形で進められるため、対外的ダメージを抑えやすいといえます。
従業員や取引先を守りたい
民事再生では次のようなことが起こりやすいです。
- 取引先離脱
- 仕入れ停止
- 人材流出
一方、M&Aにおいては、買い手企業の信用力を活用することができるため、雇用維持、取引継続、給与維持などが叶いやすいです。
そのため、「従業員を路頭に迷わせたくない」「取引先との良好な関係をキープしたい」という理由でM&Aを選ぶ中小企業オーナーも多いです。
経営者保証問題を整理したい
中小企業においては社長保証が重たいため、民事再生に成功して会社が再建しても、社長個人は金銭的には救済されない可能性があります。
一方、M&Aで売却代金を得ることができれば、銀行返済、保証圧縮、保証解除交渉などを実現しやすいです。
民事再生コストに耐えられない
民事再生は実はかなりお金がかかります。
具体的には次のような費用を用意することが必要です。
- 弁護士費用
- 予納金
- 監督委員報酬
- デューディリジェンス費用
- 資金繰り維持
など
しかも、民事再生の手続き中に現金が尽きると、破産に移行しなければならなくなる場合があります。
そのため、「再生資金が持たない」との判断から、早期M&Aを決断する会社も多いです。
≪民事再生のほうが向いているケース≫
逆に、民事再生のほうが向いているのは次のようなケースです。
- 債務が巨大
- 買い手がいない
- 不採算部門整理が必要
- 債権カットが必要
など
これらに該当する場合、M&Aでは借金問題を処理しきれず、裁判所の法的整理が必要になることがあります。
実務では「組み合わせ」も多い
なお、最近では、「民事再生+スポンサー型M&A」の組み合わせも多く採用されています。
つまり、
- 民事再生で債務整理
- スポンサー企業が支援
- 事業譲渡・株式取得
という形です。
この組み合わせは、主に大企業の再建で使われています。
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買い手(スポンサー)視点から見る民事再生・事前売却案件の評価ポイント
M&Aによる事前売却やスポンサー型民事再生を成功させるためには、「買い手(スポンサー)が再生案件をどのように見ているか」を知っておくことが非常に重要です。買い手企業は、主に次のような視点で買収を検討しています。
買い手にとってのメリット
- 通常のM&Aに比べて、比較的安価に事業や資産(技術、人材、顧客基盤など)を取得できる可能性がある。
- 民事再生手続を利用する場合、裁判所の関与によって過去の債務やしがらみが断ち切られた状態で事業を引き継げるため、クリーンな再スタートが切りやすい。
買い手が懸念するリスク(デューディリジェンスの焦点)
- 簿外債務や偶発債務のリスク: 帳簿に載っていない借金や未払い残業代などがないか、買い手は厳しくチェックします(※事前売却の場合は特に重視されます)。
- 従業員や取引先の離反: 「会社が身売りする」「民事再生になった」という事実によって、優秀な人材や主要な取引先が離れてしまえば、買収する意味がなくなってしまいます。
このように、買い手は「リスクを最小限に抑えつつ、価値ある事業を引き継ぎたい」と考えています。だからこそ、従業員や取引先の離反が起きる前、かつ簿外債務などのリスクを買い手が冷静に見極められる「資金ショート前」の事前売却が、双方にとって最も合理的な選択になりやすいのです。
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民事再生を実施する3つの方法
民事再生を実施する方法は、先に触れた「スポンサー企業に支援してもらう」方法を含めて大きく下記の3つにわけられます。
- 自力再建型
- スポンサー型
- 清算型
それぞれ詳しく解説していきます。
自力再建型
自力再建型とは、呼び名の通り、自社の企業努力のみで債務返済・再建を目指す方法です。
スポンサー型
スポンサー型とは、大手企業や金融機関、ファンドなどにスポンサーとなって出資してもらうことで、再建を目指す方法です。
民事再生の申立て後にスポンサーを選定するパターンと、民事再生申立てにあたって、あらかじめスポンサーを決めておいて、申立てと同時にスポンサーによる支援を発表するパターンがあります。
前者の場合、公平性を担保するために、スポンサーを入札によって選定するのが一般的です。
後者は、スポンサー企業の信用性を担保にすることで、民事再生を申し立てた会社の社会的信用低下を最小限に抑えることができます。ただし、スポンサー企業の選定経緯や資金額によっては、公平性を欠くと判断されて裁判所の認可を得られない場合があります。なお、後者のスポンサー型は「プレパッケージ型」と呼ばれます。
清算型
清算型とは、事業譲渡や会社分割などによって、民事再生申立てをおこなう会社の事業を別の会社に移して、申立て会社を清算する方法です。申立て会社が営む事業自体には価値がある場合、譲渡益を債務の返済に充てられることから、この方法が適合しやすいといえます。
なお、申立て会社が清算される点は破産手続きと共通していますが、破産手続きとは異なり、事業自体は存続します。
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民事再生の申請から認可までの流れ
民事再生の申請から認可までの大まかな流れは次の通りです。
事前準備
↓
裁判所に民事再生を申立て
↓
保全処分・監督委員選任
↓
債権者への説明
↓
民事再生手続き開始決定
↓
債権届出・調査
↓
再生計画案の作成
↓
債権者による決議
↓
裁判所の認可決定
それぞれのステップについて詳しく解説していきます。
事前準備
事前準備の段階では、まず、次の点について検討します。
- 本当に再建可能か
- 資金繰りは維持できるか
- スポンサー候補はいるか
また、倒産・事業再生に強い弁護士を「申立代理人」として選任します。
そのうえで、裁判所に申立てをおこなうために、次のような準備を進めていきます。
- 財務分析
- 債権者一覧作成
- 資産調査
- 資金繰り表作成
- 従業員対応準備
- メイン銀行との調整
など
裁判所に民事再生を申立て
本店所在地を管轄する地方裁判所に必要書類・資料を提出します。主な提出物は次の通りです。
- 申立書
- 財産目録
- 債権者一覧
- 資金繰り資料
など
同時に、裁判所に「予納金」を納付します。
予納金とは
予納金とは、法的手続きを開始するタイに、裁判所に支払う初期費用です。なぜ申立て時点で納める必要があるかおいうと、手続きを円滑に進めるために必要な費用を前もって確保するためです。“必要な費用”とは、具体的には、破産管財人や個人再生委員への報酬、債権者への通知郵便費用、官報公告を出す費用などです。
なお、申立て時に予納金の用意が必要であることは、民事再生法第24条において定められています。
保全処分・監督委員選任
申立て後、裁判所は通常、保全処分を出します。
保全処分とは債権者による差押えや回収を止める措置です。これによって、「一部債権者だけが回収する」「銀行が口座を差押える」などを防ぐことができます。
また、一般的に、保全処分と同じタイミングで、裁判所によって「監督委員」が選任され、再生を目指す会社は、監督委員による監督に服することになります。監督委員とは、裁判所が選ぶ弁護士などで、財産処分、資金管理、手続進行などを監督する役割を果たします。
債権者への説明
債権者への説明は、法律で決められているものではありません。しかし、民事再生は債権者の理解がなければ進めることができないため、債権者にきちんと状況を伝えておくことが大切です。そのため、監督委員が選任されて、債務者の財産処分行為や借入行為などが監督下に置かれた時点で説明会を開催するのが一般的です。
民事再生手続開始決定
裁判所が、提出書類および予納金の支払いによって「再建可能性がある」「手続要件を満たす」と判断すると、「開始決定」が出ます。
申立てから開始決定までにかかる期間は、通常1〜2週間程度とされています。裁判所の開始決定をもって初めて、正式に民事再生手続がスタートします。
債権届出・調査
債権者は、「いくら貸しているか」を裁判所へ届け出ます。
民事再生を申し立てた会社側はその内容を確認して、「認める」「金額に相違がある」などを整理します。
並行して、資産調査、財産評定、事業継続可能性分析も進められます。
再生計画案の作成
民事再生をおこなう会社は、主に次の点についてまとめた「再生計画案」を作成します。
- 借金をどれだけ減額するか
- 何年で返済するか
- 事業をどう立て直すか
-
内容例:
- 債務80%カット
- 残りを5年分割返済
- 不採算事業撤退
- スポンサー支援受入れ
など
債権者による決議
債権者集会や書面投票によって、「この再生計画に賛成するか」を決議します。
民事再生では通常、議決権者の過半数、議決権総額の1/2以上などの要件を満たす必要があります。
裁判所の認可決定
最後に裁判所が、「法律違反がないか」「実現可能性があるか」を確認して、問題がなければ「認可決定」が出されます。これによって、再生計画が正式に確定します。
その後は、計画に沿って返済・再建を進めていきます。
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経営者にとっての民事再生——個人保証・代表権・信用情報はどうなるか
民事再生は「会社を残しながら再建を目指す」制度ですが、経営者個人への影響も非常に大きい手続きです。経営者が特に気にすることが多いのは次の3点でしょう。
- 個人保証はどうなるのか
- 社長を続けられるのか
- 個人の信用情報(ブラックリスト)はどうなるのか
これらについて詳しく解説していきます。
個人保証はどうなるのか
まず、結論としては、会社が民事再生しても、経営者の保証債務は原則そのまま残ります。
中小企業では、社長が銀行借入の「連帯保証人」になっているケースが非常に多いです。そのため会社が民事再生をおこなうと、銀行は経営者個人へ保証履行を請求できます。つまり、「会社の借金が減額されても、社長個人の保証責任は消えない」のが基本です。
では、手元に残ってしまった保証債務に対してどう対応すればいいかというと、多くの場合、次の2つのうちのいずれかが選択されます。
- 1 個人でも債務整理をおこなう
- 2「経営者保証に関するガイドライン」を使う
それぞれ詳しく説明していきます。
個人でも債務整理をおこなう
これはそのまま、経営者本人が、個人破産、個人再生、任意整理などを検討するということになります。
「経営者保証に関するガイドライン」を使う
「経営者保証ガイドライン」とは、経営者保証に関する課題を軽減するために、全国銀行協会および日本商工会議所が策定した“自主的な”ルールです。つまり、法的拘束力はないということになりますが、中小企業・経営者・金融機関が自発的に遵守することが期待されています。
ガイドラインの主な内容は、「経営者保証なしに金融機関から新規融資を受けられる」「既にある経営者保証を見直してもらえる」「会社の債務を整理する際、経営者負担を軽減してもらえる」となります。
保証債務整理には一定の要件を満たしている必要がありますが、適応となれば、自宅を一部残せる可能性や、自由財産を多めに確保できる可能性があります。また、個人破産を回避できる可能性もあります。
参照:一般社団法人全国銀行協会「経営者保証に関するガイドライン」とは
社長を続けられるのか
2つめの疑問に関しては先に解説した通りですが、倒産手続きのうち民事再生は、「社長が残れることが多い」という特徴があります。
ただし、粉飾決済、不正流用、税金問題、資産隠しなどがあった場合や、銀行やスポンサーが交代を要求している場合は、社長の座を明け渡す必要があります。特にスポンサー型債権の場合、旧経営陣は退任となり、スポンサー主導で民事再生を進めていくケースが多いです。
個人の信用情報(ブラックリスト)はどうなるのか
まず、倒産手続きを進めた場合の、会社の信用と個人の信用には次のような違いがあります。
会社の信用
民事再生は公開手続きであるため、社会的には「倒産」と認識されて、会社の信用は事実上、大きく低下します。具体的には次のようなことが起きます。
- 銀行融資停止
- 与信縮小
- リース契約困難
- 取引先警戒
- 帝国データバンク等へ掲載
経営者個人の信用情報
経営者個人に関しては、保証債務を延滞・整理した場合に、信用情報に事故情報が登録される可能性があります。いわゆる「ブラックリストに載った」という状態です。
これによって、住宅ローンやクレジットカードの審査に通りにくくなり、新規借入が困難となる場合があります。ただし、経営者個人が連帯保証人となっていない場合などは、経営者個人の信用情報に傷がつくことは基本的にはありません。
あるいは、先に解説した「経営者保証に関するガイドライン」を活用することによって、ブラックリスト入りを避けられる可能性があります。
ちなみに、ほとんどの中小企業は、融資を受ける際には経営者個人を連帯保証人としていますが、「経営者保証に関するガイドライン」が普及したことによって、“経営者保証なし融資”をおこなう金融機関が増えてきています。また親会社やグループ会社、関連会社が連帯保証人になっていることや、少数例ですが、共同経営者や役員が連帯保証人になっているケースもなくはありません。
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民事再生に関するFAQ
続いては、民事再生に関してよくある質問とその答えをみていきましょう。
Q. 民事再生すると会社名は変わりますか?
通常は変わりません。法人格自体は残るため、商号、ブランド、店舗名などを維持することができます。ただし、スポンサー支援後にブランド変更するケースはあります。
Q. 従業員の給料は支払われますか?
通常、申立て後の給与は「共益債権」として優先度が高く扱われます。そのため、民事再生開始後の給与、手続き中の必要経費に関しては比較的保護されやすいです。ただし、申立て前の未払い給与に関しては別扱いになることがあります。
Q. 取引先への支払いは止まりますか?
原則として、申立て前の債務は一時停止されます、つまり、申立て前の買掛金に関しては、「すぐには払えない」ということになります。ただし、民事再生手続きが始まったら、再生計画に基づいて減額・分割返済されることになります。
Q. 銀行口座はどうなりますか?
一時的に凍結されることがあります。特に借入銀行からは、相殺・引落停止・管理強化がおこなわれる場合があります。そのため実務においては、申立て前に「どの口座を使うか」を慎重に考えて準備を進める必要があります。
Q. 民事再生の申立てから認可が下りるまでの期間は?
一般的には、申立てから認可まで約5~6か月とされています。ただし、大型案件の場合、1年以上かかることもあります。
Q. 民事再生すれば必ず再建できますか?
再建に失敗して、途中で破産に移行となるケースがあります。失敗要因として多いのは、資金繰り悪化、売上回復不足、スポンサー不在、取引先離脱などです。
Q. 民事再生において一番大切なことは何ですか?
実務上は、「資金が尽きる前に動くこと」です。先にも解説した通り、民事再生においては、申立て費用、運転資金、従業員の給与支払いなどに現金が必要です。完全に資金がショートした状態では、手続きを始めることさえできません。
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清算or再建or事前売却の判断は早いほど成功率が高くなる
ここまで解説してきた通り、会社の経営が立ち行かなくなった際の選択肢は、民事再生だけではありません。ただし、決断のタイミングによっては、選択肢が少なくなるどころか、「破産の道以外選ぶことができない」ということもあり得ます。そうした状況を避けるためにも、経営が悪化して巻き返すことが難しくなった場合、少しでも早い段階で、自社がとれる選択肢についてよく調べたうえで、自社にとってもっともよい方法を選ぶことが大切です。従業員や取引先の未来だけでなく、自分や家族の未来についてもよく考えて、ベストな選択をするよう心掛けてくださいね。
この記事は、時点の情報を元に作成しています。
ジョブカンM&A ジョブカンM&A編集部
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