MBOとは、「Management Buyout(マネジメント・バイアウト)」の略称で、企業の経営陣が自社の株式や一部の事業部門を買い取ることによって、経営権を取得することをいいます。MBOを実施するための資金はどのようにして調達するのか、具体的にどのような費用がかかるのかなど、MBOについて詳しく解説していきます。
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MBOの目的は?
冒頭で述べた通り、MBOは企業の経営陣自ら、自社の経営権を取得することを意味します。目的はさまざまですが、そのなかでもよくある目的は次の通りです。
経営権強化
既存の株主から株式を買い戻すことによって、経営陣が主体的に企業を運営できるようになります。意思決定もスピーディになるため、競争の激しい市場環境のもと、柔軟に対応していくことができます。
後継者問題解決
経営者の高齢化や後継者不足が課題である企業は、MBOを通じて既存の経営陣にオーナーシップを移転させることで、円滑な事業承継を目指すことがあります。
敵対的買収の回避
企業にとって望ましくない相手から買収されそうな場合、それを防ぐために、経営陣自ら株式を買い取ることもあります。これによって、企業は独立性を維持して、長期的経営戦略に基づいて会社を成長させていくことができます。
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M&A、EBO、MEBO、TOB、自社株買いとの違いは?
続いては、MBOと混同されやすい、M&A、TOB、自社株買いとの違いを確認していきましょう。
M&Aとの違い
MBOはM&Aの一つの形態です。
しかし、一般的なM&Aとは異なり、“買収をおこなう主体”が自社の人間ということになります。
前述の通り、MBOは自社の経営者が買い手となるため、企業文化やこれまでの経営方針を維持しやすいといえます。一方、一般的なM&Aは外部の第三者による企業の合併・買収であるため、新しい経営方針が導入されることになります。これによって従業員や取引先が離れていくリスクがありますが、M&Aを機に企業が大きく成長する可能性もあります。
EBOとの違い
EBOは「Employee Buyout(エンプロイーバイアウト)」の略称で、従業員が株式を買い取って、経営権を取得することを意味します。
つまり、MBOは経営陣が買収主体で、EBOは従業員が買収主体であるという点において異なります。
また、MBOの場合、MBOが実施される前も後も経営陣が経営権の手動を握ることになりますが、EBOの場合、社内の人間による買収ではあるものの、経営陣が変わることになるため、組織文化などが変わる可能性があります。
MEBOとの違い
MEBOは「Management and Employee Buyout(マネジメント・アンド・エンプロイ・バイアウト)」の略称で、経営陣と従業員が共同で自社の株式を買い取ることによって、経営権を取得する手法です。いわば、MBOとEBOを掛け合わせた手法ということになります。
MBOやEBOと比べて株主の人数が多くなるため、MEBOを実施する場合は、SPC(特別目的会社:Special Purpose Companyの略称)などの受け皿会社を作ったうえで株式の買取をおこなうのが一般的です。
なお、後述しますが、SPCはMBOを実行するためにも活用されることがあります。また、EBOでもSPCを使うことはありますが、従業員が買収資金を負担することは難しいことなどから、EBOでSPCが使われるケースは多くはありません。
※SPCについては追って詳しく解説していきます。
TOBとの違い
TOBとは「Takeover Bid(テイクオーバー・ビッド)」の略称で、日本語にすると「株式公開買付け」となります。TOBは主に上場企業を対象におこなわれる買収手段で。買付価格や期間を公表することによって株式を取得する方法です。
つまり、MBOが「誰が株式を買収するか」に焦点を当てているのに対して、TOBは「どのような方法で株式を買収するか」に焦点を当てているということになります。
なお、MBOを実行する方法としてTOBが使用されることもあります。
自社株買いとの違い
MBOと自社株買いは、どちらも自社の株式を買い戻す行為ですが、この2つは目的が異なります。
MBOの目的は、前述の通り、経営陣が自社の経営権を取得することにあります。
これに対して自社株買いの目的は、自社株の株価の上昇や、1株あたりの利益向上です。企業が株式市場から一部の自社株式を買い戻すことによって、市場に出回っている自社株式が少なくなることから、株価の上昇や1株あたりの利益向上が見込めるというわけです。
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MBOのメリット・デメリット
続いては、MBOのメリット・デメリットを解説していきます。
MBOのメリット
MBOのメリットは次の通りです。
それぞれ詳しくみていきましょう。
中長期的経営が可能になる
株主や投資家が複数人いる場合、経営を進めるうえにあたっては、彼らの意見を取り入れる必要がありますが、多くの株主は中長期的な視点を大切にすることはなく、短期的な業績向上による利益を求めます。そのため、経営陣が中長期的視点を大切にしたいと考えている場合、意見が対立することがあります。
一方、MBOを通して「株主=経営陣」となると、中長期的な視点を重視して事業を展開していくことが叶います。
意思決定スピードや経営の自由度が上がる
株主が複数いる場合、重要な経営意思決定が必要となるたびに、会社法に従って株主総会の開催・決議などの手続きを踏む必要があります。一連の手続きを踏むとなると、最終的な決定・実行までに一定の時間を要すため、どうしても意思決定スピードが落ちてしまいます。
一方、MBOを経て経営陣が株式を保有している状態であれば、スピーディな意思決定が叶い、経営の自由度が上がります。
後継者不在問題を解決できる
後継者が見つからないことから、信頼できる現経営陣に会社を承継してもらうためにMBOに踏み切ることがあります。なお、経営陣で株式取得のための資金を用意することが難しい場合、MEBO実行時同様、SPCが利用されることがあります。
敵対的買収を回避できる
「MBOの目的」でも述べた通り、MBOを実行することによって、外部の第三者に株式を取得されるTOBを回避することができます。
従業員から反発が起きにくい
外部の第三者に経営権を取得される一般的なM&Aの場合、雇用条件や経営の方向性などが変わる可能性が高いことから、従業員の反発が起きやすくなります。一方、MBOによるM&Aであれば、雇用条件や経営の方向性などの変化は起きにくいため、従業員から反感を買いにくいといえます。
上場維持コストを削減できる
企業が上場すれば、知名度が上がるだけでなく、人材確保や資金調達がしやすくなるなど、さまざまなメリットを享受できます。ただし、上場を維持するためには、監査法人への報酬や証券代行費用などを支払い続ける必要があります。
そのため、MBO実行前は上場企業である企業が、上場維持コストをかけて上場企業であり続けることをさほど望んでいないなら、MBOを通して非上場化することによってコストを削減したほうがメリットが大きいといえます。
MBOのデメリット
MBOのデメリットは次の通りです。
それぞれ詳しくみていきましょう。
構造的な利益相反による既存株主との対立リスク
MBOの最大の特徴であり課題でもあるのが「利益相反」の発生です。会社の内部情報を熟知している経営陣が「買い手」となるため、「できるだけ安く買いたい」経営陣と、「高く売りたい」既存株主(特に情報を持たない少数株主)との間で構造的な対立が生じます。
そのため、特に上場企業や株主が複数いる企業のMBOでは、独立した社外取締役などで構成される「特別委員会の設置」や、第三者機関による買付価格の妥当性を示す「フェアネス・オピニオン(公正性意見書)」の取得など、少数株主を保護するための厳格な手続きが求められます。これを怠ると、株主から訴訟を起こされるリスクが高まります。
既存株主に反対される可能性がある
第一に考えられるデメリットが、既存株主からの反発リスクです。MBOに反対の株主は、売却価格を釣り上げてくる場合もあります。既存株主としては、どうせ売るならできるだけ高く売りたいと考えて当然ですが、買取金額の高騰を防ぐためにも、既存株主との交渉は専門家に相談しながら進めることが大切です。
経営陣による主観的な経営が会社にとってよい結果をもたらすとは限らない
経営陣が自社株式をすべて取得すると、外部からの客観的な意見に耳を貸さなくてよくなることから、経営陣による主観的な経営になりがちです。経営陣の方針に従業員や顧客も賛成である場合はいいですが、経営陣のみが先走ってしまった場合などは、従業員も顧客も離れていく可能性があります。
買収資金を調達した結果、多額の債務を抱える可能性がある
前述の通り、MBOに反対の株主は、売却価格を釣り上げてくることがあります。そのため、用意していた資金を買取金額が上回る可能性があります。その結果、金融機関や投資ファンドからの借入に頼ることになると、多額の債務を抱えてしまう可能性があります。
また、MBOを実行しようとしたものの、多額の負債を抱える結果が目に見えたことから、MBOを断念するケースも多いです。
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MBOに必要な費用の内訳は?
MBOを実行するにあたっては、自社株式を買い戻すための資金以外に、多くの専門家費用や金融費用が発生します。
必要な費用の内訳は次の通りです。
それぞれ詳しくみていきましょう。
買収資金
もっとも大きな費用が、自社株式を取得するための費用です。たとえば、株価が1,000円でTOB価格が1,300円の場合、300円のプレミアム部分は、株式取得資金と別途必要な買収コストということになります。
アドバイザー費用
MOBは自社の株式を買い取る手法であるため、アドバイザーは必要ないように思えます。実際、アドバイザーを入れる義務はなく、経営陣・株主・銀行のみでも取引は成立します。
ただし、売り手である株主が、買い手である経営陣に反発する可能性が高く、結果的に少数株主に対して不公平な取引となる可能性があります。そのため、第三者としての視点を持ち合わせたアドバイザーの存在が重要になってきます。
また、特に上場企業の場合、株主や投資家、規制当局に対して、価格の妥当性を説明する必要があります。そのため、投資銀行やM&Aアドバイザーに株価評価をおこなってもらうことが有効であるといえます。
もう一つの理由としては、MBOは通常、SPC設立やTOBなどを組み合わせておこなうため、スキームが複雑になります。そのため、M&Aの全体設計にはFA、法務には弁護士、税務には税理士など、個別に専門家が関わる必要がある場合が多いといえます。
以上の理由から、上場企業のMBOにおいてはアドバイザーを入れることが必須であるといえます。中小企業のMBOの場合、税理士のみの関与、銀行主導などのケースもありますが、最近はM&Aアドバイザーを入れるケースが増えています。
デューディリジェンス(DD)費用
経営陣は会社の内情をよく知っているため、MBOを実行するにあたってデューディリジェンス(DD)は不要に思われがちです。しかし実情としては、デューディリジェンス(DD)は必ずおこなわれています。
なぜかというと、まず、銀行や投資家がリスクを確認する必要があるためです。MBOでは通常、買収資金の多くを銀行融資や投資ファンドからの融資でまかないます。そのため、借主に返済能力があるのかどうかを、第三者視点で確認する必要があるのです。特に重要なデューディリジェンス(DD)は、法務DD(将来性・キャッシュフロー)、ビジネスDD(事業の将来性)、法務DD(契約・訴訟リスク)となります。
また、「買い手=経営陣、売り手=株主」という構造になることから、株主は「安く買い叩いているのでは?」という疑念を抱きます。その疑念を払しょくするために、独立した専門家の評価を提示することで、公平性を担保する必要があります。
さらには、「経営者自身のリスク確認」という意味合いもあります。どういうことかというと、経営陣とはいえ、会社を買う以上、個人の資金にもリスクが及ぶ可能性があるため、簿外債務、税務リスク、訴訟リスクを確認しておくことが大切になるのです。
なお、前述の通り、上場企業の場合はアドバイザーの投入が必須ですが、デューディリジェンス(DD)の実施に関しても、少数株主保護の観点からも、上場企業においては必須であるといえます。
資金調達費用
MBOでは一般的に、買い取り対象企業の資産やキャッシュフローを担保に借入金を活用して企業を買収する手法である「LBO(レバレッジド・バイアウト/Leveraged Buyout)」を活用します。そのため、銀行融資手数料、金利、アレンジメントフィー(融資組成手数料)、コミットメントフィー(融資枠維持費用)などが発生します。
アレンジメントフィーとは
アレンジメントフィーとは、融資の幹事金融機関(アレンジャー)がおこなう業務にかかる手数料です。「幹事金融機関」とは、株式や債券の発行などにおいて中心的な役割を担う金融機関のことです。
コミットメントフィーとは
コミットメントフィーとは、銀行がコミットメント契約を締結した際、企業が銀行に支払う手数料です。「コミットメント契約」とは、銀行が一定期間内に設定した融資枠の範囲で、顧客の請求に応じて融資することを約束する契約です。なお、コミットメントフィーは、融資が実行されるかどうかに関わらず発生します。
SPC設立費用
SPC(特別目的会社)を使う場合、SPCの会社設立費用、登記費用、事務管理費などで総計数十万円~数百万円がかかります。
※なお、詳しくは後述しますが、MBOを実行するにあたっては、SPCを設立するケースがほとんどです。
※また、これも詳しくは後述しますが、前述の「LBO」とSPCはセットで使われるケースがほとんどです。
(必要に応じて)TOB関連費用
上場企業のMBOの場合、TOBをおこなうために、証券会社手数料、公開買付代理人費用、開示書類作成費用などが生じます。これらの総計は数千万円~数億円となります。
税務関連費用
MBOにおいては税務設計も重要です。組織再編税制の検討、株式移転などのために税務アドバイザーを活用すると、数百万円~数千万円の費用が必要となります。
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SPCとLBOの関係とは?
ここからは、既に何度か出てきた「SPC(特別目的会社)」と「LBO(レバレッジド・バイアウト)」お関係について説明していきます。
SPCとLBOの関係は、簡単にいうと、「SPCはLBOを実行するための会社」であるのが基本です。
SPCの特徴
SPCとは、特定の目的だけのために作られる会社で、次のような特徴があります。
【特徴】
M&Aでいうと、次のような目的で設立されることがあります。
LBOの特徴
一方のLBOは、借入金を使って会社を買収する手法で、次のような特徴があります。
【特徴】
SPCとLBOの関係
SPCとLBOの関係は、前述の通り、「SPCはLBOを実行するための会社」ですが、さらに詳しく解説すると次のような特徴があります。
【特徴】
なぜLBOでSPCを使うのか
LBOを実施するためにSPCを使う理由は次の3つです。
詳しく解説していきます。
リスクを回避するため
SPCを設立すると、投資家の出資は、まずSPCが借入したうえで対象会社の買収に役立てることになるため、投資家と対象会社が直接関わることがありません。つまり、借入リスクはSPCが負うことになります。
銀行融資のため
銀行は、買収対象・キャッシュフロー・担保をベースに融資するため、SPCを借入主体にしたほうが、融資を受けやすいようにお金の流れを整理しやすいといえます。
M&Aの実務上の標準構造である
前述の通り、MBOを実行するにあたっては、SPCを設立することがほとんどです。
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MBOの流れ
MBOの基本的な流れは次の通りです。
それぞれ詳しく解説していきます。
企業価値の算定
まず、対象企業の価値を算定するところからスタートします。算定結果に基づいて株式の取得金額を決定することになるため、これは非常に重要なステップです。元の株主に対して、株式買取価格の妥当性を示すためにも、重要なステップであるといえます。なお、著しく安い金額で株式を取得した場合、税務上の課税リスクが発生する可能性があります。
算定法は、DCF法や純資産価額法、EV/EBITDA倍率法、類似会社比準法などいくつかありますが、もっとも使われることが多いのは、将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いて計算する「DCF法」です。ただし、より精緻な評価のために、EV/EBITDA倍率法や類似会社比準法が補完的に用いられることもあります。
SPCの設立
SPCの設立手続きは、法律や規制に従って進める必要があります。専門知識が必要な領域であるため、まずは、適切なアドバイザーを選定することが肝心です。アドバイザー選定後、SPCの法人格を取得したら、資本金や株主構成を決定します。
資金調達
設立したSPCが金融機関などから株式取得資金を借り入れるか、あるいは自己資金を投入するなどします。複数の資金調達方法を組み合わせることもあります。
主な資金調達方法は次の通りです。
銀行融資
MBOの資金調達においてもっとも一般的な方法です。信用直が高い企業であれば、銀行からの融資を受けやすいだけでなく、低金利で借入できるメリットもあります。
PEファンド
主に機関投資家などから集めた資金で未上場企業の株式を取得して、経営に関与して企業価値を高めた後、売却して高いリターンを得ることを目的としたPEファンド(プライベート・エクイティファンド)から投資を受ける方法もあります。
なお、PEファンドを活用する場合、ファンド側は慈善事業で資金を出すわけではなく、3〜5年後に「再上場(IPO)」や「第三者への企業売却(M&A)」をおこない、利益を確定させる「出口戦略(イグジット)」を前提としています。経営陣はファンドからの経営支援を受けられる一方で、イグジットに向けた企業価値向上の強いコミットメントが求められる点を理解しておく必要があります。
社債発行
社債発行は、投資家に対して一定の利益を約束することによって資金を調達する方法で、高い信用力が求められます。
なお、社債発行は、SPCを通す場合と通さない場合があります。基本的にはSPCが社債を発行して、投資家が社債を購入、その資金で買収という形になりますが、対象会社が社債を発行して、その資金で直接自社株式を取得するか、あるいはSPCを通して株式を取得する場合もあります。
ベンチャーキャピタル
革新的な技術やビジネスモデルを有している企業であれば、ベンチャーキャピタルからの資金調達も有効な手段です。
なお、ベンチャーキャピタルを利用する場合も、通常はSPCを通します。
自己資金投入
経営陣が自己資金を投入する場合も、通常はSPCを通します。経営陣の自己資金は「SPCへの出資(エクイティ)」として扱うのが一般的です。
なぜ、自己資金もSPCを通すのかというと、1つには、買収主体をSPCに統一するためです。また、一般的に、出資方法はいくつかの方法を組み合わせて使うことになるため、たとえば銀行融資と組み合わせる場合、銀行側が「SPCへの融資」という前提でいるため、自己資金もSPCに入れたほうが資本構造を整理しやすいといえます。
ただし、銀行融資などを利用する必要がなく、自己資金のみでMBOが完了する場合はもちろん、SPCを通す必要がないどころか、SPCを設立する必要もありません。小規模MBOの場合や、非上場企業のMBOの場合は、自己資金のみでまかなえることもあると考えられます。
SPCによる株式買取
SPCは、調達資金を用いて、TOB(株式公開買付け)や市場外での交渉を通じて、既存の株主から株式を購入します。株式の買取が完了すると、SPCが起業の経営権を掌握したということになります。
SPCと対象企業の合併
SPCが既存株主から株式を取得して、MBOが完了した時点では、SPCが対象会社の親会社(ホールディング会社)です。
しかし、そのままの状態だと、借入しているのはSPCなのに、キャッシュフローを生むのは対象会社という構造になり、借入を返済しにくいといえます。そこで、ほとんどのMBOでは、SPCを消滅会社、対象会社を存続会社とする吸収合併をおこないます。これによって、会社のキャッシュフローと借入返済が一致します。
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MBOに関するFAQ
続いては、MBOに関してよくある質問とその答えをみていきましょう。
Q. 既存株主がどうしても株式を売らないと拒否する場合はありますか?
既存株主が売却を拒否することはあります。よくある理由は次の3つです。
MBOでは経営陣が自社株式を買い求めることから、既存株主は「安く買い叩いているのでは」「将来価値を経営陣だけが得るのでは」と考えがちです。
株主が、「今後株価が上がる」と期待している場合、売却を拒否することがあります。
対象企業が上場企業の場合、価格引き上げや条件変更を求めて売却を拒否することがあります。
では、既存株主が売却を拒否した場合、どうすればいいかというと次の通りです。
上場企業の場合
上場企業の場合、通常、TOB(株式公開買付け)によって株式を取得します。TOB(株式公開買付け)を実施すると、一定割合の株式は取得できるため、TOBを通して、MBOを実行している経営陣は大株主になることができます。
その後、「スクイーズアウト(強制買収)」によって、少数株主の株式を強制的に買い取ることができます。
※スクイーズアウトに関しては後述します。
非上場企業の場合
非上場企業のMBOにおいて、既存株主がどうしても株式を売らないと拒否した場合、既存株主がそのまま残る場合があります。
つまり、MBO完了後の株主が、「経営陣+投資ファンド+既存株主」という構造になる場合があるということです。
Q. MBOにおけるスクイーズアウトの手法は?
MBOのスクイーズアウトには、主に3つの手法があります。
株式等売渡請求(特別支配株主制度)
株式等売渡請求とは、議決権の90%以上を保有する「特別支配株主」が、残りの株式の取得を請求できる仕組みです。つまり、TOB(株式公開買付け)によって90%以上の株式を集めることができている場合、この手法を用いることができます。
株式併合
株式併合とは、発行済株式数を一定割合減少させる手続きをいいます。減少させるために、たとえば「1,000株を1株に併合する」などと定める方法ですが、この手続きを実施すると、1,000株未満しか有していない株主の株は、1株未満の“端数株”になります。株式併合の結果、“端数株”が生じた株主に対しては、端数に相当する金銭が交付されるという仕組みです。
より具体的に説明すると、たとえば、発行済の株式に対して議決権の過半数を保有している「支配株主」と、「少数株主」が保有している株式の数がそれぞれ10,000株、1株の場合において、「10,000株を1株に併合する」という株式併合を実施すると、支配株主の保有株は1株、少数株主の保有株は0.0001株になります。この場合、少数株主には0.0001株に相当する金銭が交付されると同時に、少数株主は株主の地位を失います。
株式併合を実施するためには、株主総会の特別決議において3分の2以上の賛成を得る必要があります。賛成株主が3分の2に満たない場合や、反対株主の影響が強い場合には実施が難しくなります。
全部取得条項付種類株式
全部取得条項付種類株式とは、株式を発行している会社から請求された場合、強制的に発行会社に対して売却しなければならない株式のことです。
全部取得条項付種類株式を発行するためには、株主総会の特別決議で承認を得て定款に定める必要があります。さらに、効力を発揮させるためにも株主総会の特別決議で承認を得る必要があるため、非常に手間がかかる手法であるといえます。
※なお、MBO“以外”で使われるスクイーズアウトの手法としては、このほか、株式の交換によって相手企業を完全子会社化する手法である「株式交換」などもあります。
Q. LBOでの買収後、借入返済を会社のキャッシュフローでまかなえるかどうか不安な場合、どんな対策をとればいいですか?
キャッシュフローに不安がある場合、次の対策を検討するといいでしょう。
それぞれ詳しく解説していきます。
借入額(レバレッジ)を下げる
もっとも基本的な対策がこれです。具体的には、「経営陣の自己資金を増やす」「PEファンドの出資を増やす」「社債などをエクイティに近い資金にする」などして借入を減らします。
たとえば、通常であれば、銀行借入:70%、エクイティ:30%としたいところを、銀行借入:50%、エクイティ:50%などの割合に調整します。これによって、返済負担を軽くすることができます。
メザニンファイナンスを使う
メザニンファイナンスとは、従来、金融機関が取り組んでいる「シニアローン」(通常借入)と、普通株式による「エクイティファイナンス」の中間的な金融手法です。
代表例としては、元利金返済の優先順位が一般社債より低い無担保の貸出債権である「劣後ローン」、企業倒産時に、一般の社債と比較して弁済順位が劣る債権である「劣後社債」などが挙げられます。
返済スケジュールを長期化する
金融機関との交渉によって、返済期間を伸ばしたり、元本据置期間を設けたりすることによって、MKBO直後の資金圧力を軽減できます。
コベナンツ(財務制限条項)を調整する
融資によって資金を調達する際、契約書に記載されている債務者側の義務や制限などの特約条項のことを「コベナンツ」といいます。
このコベナンツを緩めに調整してもらうことによって、キャッシュフローの不安を軽減できる場合があります。
事業改善をおこなう
PEファンドが関与するMBOでは、買収後の利益改善計画を作成するのが一般的です。たとえば、コスト削減、不採算事業の整理、価格改定、生産性改善などの施策を打ち立てますが、これによって、EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)を増やして返済余力を高めることを狙います。
資産売却(アセットリストラクチャリング)をおこなう
会社の資産を売却することによって、借入を減らす方法です。
たとえば、不動産や遊休資産、非コア事業などの売却が考えられます。
配当を制限する・内部留保を確保する
LBO後は、通常、配当制限、利益の内部留保をおこない、まずは返済に回します。
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MBOを成功させるための筋道はいくつもある
経営権強化、後継者問題解決、敵対的買収の回避などを目的にMBOを実行したいという気持ちがあるものの、資金調達、あるいは調達後の返済に不安があることから、最初の一歩を踏み出せずにいる経営陣もいるかもしれません。しかし、ここまで解説してきた通り、資金調達には複数の選択肢がありますし、返済の不安を軽減する方法もいくつもあります。まずは、それぞれの選択肢を採用した場合の、資金調達の可能性や、返済にかかる期間について考えるところからスタートしてみてはいかがでしょうか?
この記事は、時点の情報を元に作成しています。
ジョブカンM&A ジョブカンM&A編集部
ジョブカンM&Aは、株式会社DONUTSが運営するM&Aアドバイザリーサービスです。主に企業の事業承継、成長戦略、出口戦略(イグジット)といった多様なニーズに応えることを目的としています。最大の特徴は、累計導入社数20万社以上を誇るバックオフィス支援クラウドERPシステム「ジョブカン」の広範なネットワークを活用している点です。この強力な顧客基盤を生かし、効率的なマッチングを実現します。
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