【後継者がいない社長へ】会社を存続させる3つの事業承継方法とM&Aのリアル

会社を長きにわたって存続させるためには、次世代へ引き継いでいくことが不可欠です。そのため、会社を引き継ぐ後継者が決まっていない場合、然るべきタイミングが訪れたら後継者を探す必要があります。具体的にどのようにして後継者を探して、事業を承継していけばいいのか、改めて確認していきましょう。

まずは「自分の会社がいくらか」を知るところから

ジョブカンM&Aでは、専任アドバイザーが事業価値の簡易査定から成約まで一貫して伴走します。相談は無料。売却・買収のどちらでもお気軽にどうぞ。

目次
  1. 後継者がいない…「黒字廃業」を選ぶ前に知ってほしいこと
    1. 廃業への罪悪感は不要。M&Aは「前向きな選択」
    2. 事業承継の準備には「5~10年」かかる現実
    3. 経営者の年齢別ロードマップ(60代・70代の壁)
      1. 50代:最も自由度が高い“黄金期”
      2. 60代:現実的な「ラストチャンス期」
      3. 70代:一気に難易度が上がる“壁”
  2. 黒字廃業になりやすい会社の特徴
    1. 経営者依存が極端に強い会社(ワンマン型)
    2. 利益は出ているが「再現性」がない会社
    3. 財務・契約が“どんぶり勘定”の会社
    4. ニッチすぎて“引き継げない”ビジネス
    5. 設備・人材の老朽化が進んでいる会社
  3. 事業承継「3つの方法」を徹底比較! 自社に合うのはどれ?
    1. 親族内承継(子ども・親族に引き継ぐ)
      1. メリット
      2. デメリット
      3. 向いている会社
    2. 役員・従業員承継(社内承継・MBOなど)
      1. メリット
      2. デメリット
      3. 向いている会社
    3. M&A・第三者への譲渡(外部に引き継ぐ)
      1. メリット
      2. デメリット
      3. 向いている会社
    4. 事業承継方法の選び方に関する「実務的な考え方」
  4. 事業承継で起こりやすい成功パターン・失敗パターン
    1. 親族内承継の成功・失敗事例
      1. 成功事例:計画的に“経営者育成”をしたケース
      2. 失敗事例:親の“思い込み承継”
    2. 役員・従業員承継の成功・失敗事例
      1. 成功事例:右腕幹部への“実質的な事前承継”
      2. 失敗事例:いい人だけど“経営者ではなかった”
    3. M&A(第三者承継)の成功・失敗事例
      1. 成功事例:シナジー重視で“相手を選んだ”ケース
      2. 失敗事例:高値だけを追った売却
    4. 共通する“成功と失敗の分岐点”
      1. 事業譲渡に成功する会社の共通点
      2. 失敗する会社の共通点
    5. 「事業承継の方法選択」に関して、事業承継を成功に導く重要ポイント
  5. 会社を高く譲渡するための「磨き上げ」とM&Aのステップ
    1. 自社の魅力を高める「磨き上げ」とは?
      1. 収益の質を上げる
      2. 属人性の排除(経営者依存の解消)
      3. 財務・契約の“見える化”
      4. 成長ストーリーの明確化
    2. 企業価値(バリュエーション)はどのように決まるか
      1. 企業価値の2つの考え方
      2. 未来を重視するケース・現在を重視するケース
    3. 基本合意からデューディリジェンス、クロージングまでの流れ
      1. 基本合意(LOI:意向表明)
      2. デューディリジェンス(DD)
      3. 最終契約(SPA)
      4. クロージング
  6. 知らないと損する! 事業承継税制と頼れる相談先
    1. 相続税・贈与税を猶予する「事業承継税制」
      1. 事業承継税制の種類
      2. 法人版事業承継税制の主な要件
    2. まずは「事業承継・引継ぎ支援センター」や専門家へ相談を
  7. 事業承継に関してよくある質問(FAQ)
    1. Q. 事業承継の意思を従業員に伝えるタイミングはいつが適切ですか?
    2. Q. M&A仲介手数料や税理士報酬の相場感はどれくらいですか?
    3. Q. 赤字や債務超過でもM&Aの引き手は現れますか?
  8. 後継者探しは「自社の価値」を再発見する旅

後継者がいない…「黒字廃業」を選ぶ前に知ってほしいこと

後継者がいないことを理由に、「黒字廃業」を選ぶ経営者は一定数います。

しかし、黒字廃業は「やむを得ない選択」ではなく、本来は回避できるケースも多いです。それを踏まえたうえで、まずは、後継者がいない経営者が知っておくべきことを解説していきます。

廃業への罪悪感は不要。M&Aは「前向きな選択」

多くの経営者が黒字廃業を選ぶ背景には、「会社を手放す=逃げ・裏切りではないか」という心理的ハードルがあります。

しかし実際には、次の理由から、M&Aはポジティブな意思決定であるということができます。

  • 従業員の雇用を守ることができる
  • 取引先との関係を継続できる
  • 自社の技術・ブランドを次世代に残せる
  • 経営者自身の人生の選択肢が広がる
  • 一方、「黒字廃業」という選択肢をとると、次のような事態を招くことから、社会的損失が大きいといえます。

  • 従業員の離職
  • 取引先の損失
  • 社会的価値の消失
  • まとめると、「廃業=美学」「売却=ネガティブ」という認識は誤りで、M&Aは“責任ある経営の一部”と捉えることが重要だということです。

    事業承継の準備には「5~10年」かかる現実

    このポイントは非常に重要であるのに、しばしば見落とされがちです。

    事業承継(特にM&A)は、思いついてすぐ実行できるものではありません。平均的に、「5~10年」の歳月が必要です。なぜそんなに時間がかかるのかというと、次のような準備が必要だからです。

  • 1 会社の“磨き上げ”
  • 収益構造の安定化
    特定人物依存の解消
    財務の透明化

  • 2 リスクの整理
  • 簿外債務の洗い出し
    労務・契約の整備
    許認可の整理

  • 3 引き継げる体制作り
  • 権限委譲
    マニュアル化
    管理職育成

    これら3つの準備は短期で整うものではありません。

    特に1つめの「収益構造の安定化」「特定人物依存の解消」などは、年単位の時間を要すこともあります。また、3つめの「管理職育成」も同様です。

    そのため、「そろそろ引退したい」と思った時点からの準備では遅いケースが多く、結果として、“間に合わず黒字廃業”という結果に陥ってしまうのです。

    経営者の年齢別ロードマップ(60代・70代の壁)

    年齢によって、取るべき戦略は大きく変わります。

    50代:最も自由度が高い“黄金期”

    M&A・親族承継・社内承継のすべてを選択すること可能で、企業価値を高める時間も十分にあります。そのため、この時期に動けるかどうかで結果が決まるケースが多いといえます。

    60代:現実的な「ラストチャンス期」

    買い手がもっとも気にするのは、「引き継ぎ可能性」です。経営者依存が強いと評価が下がることになりかねません。「まだ元気だから大丈夫」と先送りした結果、いざというときに準備不足で条件が悪化します。そうならないよう、遅くとも60代前半までに道筋を決めるのが理想です。

    70代:一気に難易度が上がる“壁”

    70代になると、突発的な健康リスク、意思決定の遅れ、買い手から見た“引き継ぎ不安”などが生じやすくなります。結果として、M&Aが成立しにくく、成立したとしても条件が大きく悪化しがちです。最悪、黒字廃業するしか選択肢がなくなります。基本的に、70代に入ってからの検討は“時間との戦い”と思っておいたほうがいいでしょう。

    まずは「自分の会社がいくらか」を知るところから

    ジョブカンM&Aでは、専任アドバイザーが事業価値の簡易査定から成約まで一貫して伴走します。相談は無料。売却・買収のどちらでもお気軽にどうぞ。

    黒字廃業になりやすい会社の特徴

    前述の通り、70代に入ると、黒字廃業するしかなくなるケースが増えます。後継者候補がいないにもかかわらず、事業承継の準備を早めに進めなかった結果として、黒字廃業になるというパターンです。

    また、「動き出すのが遅い」以外に、次のような特徴がある会社も、黒字廃業となる可能性が高いといえます。つまり、次に挙げる特徴のうち当てはまるものがあるなら、より早めに動き出したほうがいいということです。

    経営者依存が極端に強い会社(ワンマン型)

    もっとも典型的で、かつ致命的な特徴です。

    (例)

  • 社長しか営業できない
  • 社長しか意思決定できない
  • 社長しか人脈を持っていない
  • この状態だと、買い手から見ると「社長が抜けたら終わる会社」となり、企業価値がほぼゼロ評価になります。また、このパターンにおいては、「後継者が育たない」ことも大きな問題となりやすいです。

    利益は出ているが「再現性」がない会社

    一見黒字でも、「たまたま儲かっているだけ」の会社です。

    よくあるパターンは次の通りです。

  • 特定の大口顧客1社に依存
  • 一時的な特需(補助金など)
  • 社長の個人スキル頼み
  • 買い手は、「将来も同じ利益が出るか」を最重視します。そのため、過去は黒字であっても評価されず、デューディリジェンスでリスク認定されます。

    財務・契約が“どんぶり勘定”の会社

    中小企業に非常に多いのがこのパターンです。

    よくある問題点は次の通りです。

  • 決算書が実態とズレている
  • 個人と会社のお金が混在
  • 契約書が未整備(口約束)
  • 買い手からすると、「地雷が埋まっている可能性」が大きいといえます。特に怖いのは、簿外債務、未払残業代、税務リスクです。基本的に、リスクが読めない会社は買われないと考えておいたほうがいいでしょう。

    ニッチすぎて“引き継げない”ビジネス

    専門性が高いこと自体は強みですが、行き過ぎると弱点になります。

    (例)

  • 特殊技術が属人化している
  • 地域密着すぎる商売
  • 独自ルール・独自オペレーション
  • 外部から見ると、「理解できない」「再現できない」となり、買い手が限られるか、あるいは見つからないという結果に陥りがちです。

    設備・人材の老朽化が進んでいる会社

    黒字でも、「必要な将来投資が多すぎる会社」は敬遠されます。

    よくあるケースは次の通りです。

  • 設備が古く更新費用が高額
  • ベテランばかりで若手がいない
  • IT化が遅れている
  • 買い手にとっては、「買った後に大きな出費が必要」ということになるため、価格がつかない or 見送られるという結果になりがちです。

    まずは「自分の会社がいくらか」を知るところから

    ジョブカンM&Aでは、専任アドバイザーが事業価値の簡易査定から成約まで一貫して伴走します。相談は無料。売却・買収のどちらでもお気軽にどうぞ。

    事業承継「3つの方法」を徹底比較! 自社に合うのはどれ?

    事業承継は大きく次の3つにわけられます。

  • 親族内承継(子ども・親族に継がせる)
  • 役員・従業員承継(社内承継・MBOなど)
  • M&A・第三者への譲渡(外部に引き継ぐ)
  • このうち、どの方法が向いているかは、「何を優先するか」などによって異なります。自社に合う方法を考えるためにも、それぞれの方法のメリット、デメリットなどを確認していきましょう。

    親族内承継(子ども・親族に引き継ぐ)

    メリット

    長期的な安定性が高い

  • 家業として継続しやすい
  • 経営理念・文化が維持されやすい
  • 社内外の理解を得やすい

  • 従業員・取引先が安心しやすい
  • 「オーナー家が続く」ことへの信頼感
  • 株式移転の自由度がある

  • 贈与・相続などで柔軟に移転可能
  • 税制優遇(事業承継税制)を使えるケースあり
  • デメリット

    後継者の“適性問題”

  • 経営能力があるとは限らない
  • 本人に継ぐ意思がないことも多い
  • 相続・税務の問題が複雑

  • 株式評価が高いと相続税負担が重い
  • 親族間トラブルのリスク
  • 承継に時間がかかる

  • 教育・経験に長期間(5~10年)
  • 向いている会社

  • 親族に有能で意欲のある後継者がいる
  • 中長期でじっくり引き継げる
  • 役員・従業員承継(社内承継・MBOなど)

    メリット

    事業の連続性が最も高い

  • 業務・顧客・社風を熟知している
  • 引き継ぎがスムーズ
  • 従業員の安心感が強い

  • 内部昇格なので心理的抵抗が少ない
  • 離職リスクが低い
  • 情報漏洩リスクが低い

  • 外部に情報を出さずに進められる
  • デメリット

    資金面のハードルが高い

  • 株式買取資金を用意できないことが多い
  • 借入(LBO)などで負担が重くなる
  • 経営者としての器が不足するリスク

  • “優秀な社員”と“経営者”は別能力
  • 意思決定の重さに耐えられないケースも
  • 権力構造の変化で社内摩擦

  • 他の役員との関係悪化
  • 派閥化の可能性
  • 向いている会社

  • 優秀で信頼できる幹部がいる
  • 組織として自走できる状態
  • M&A・第三者への譲渡(外部に引き継ぐ)

    メリット

    後継者不在でも承継可能

  • 親族・社内に候補がいなくても成立
  • 創業者利益(売却益)を得られる

  • 数千万円~数億円規模になることも
  • 老後資金・次の事業資金に活用可能
  • 会社の成長加速が期待できる

  • 大手資本・シナジー
  • 人材・資金・ノウハウの注入
  • 個人保証(経営者保証)から解放される

  • 会社の借入に対する社長個人の連帯保証を買い手が引き継ぐ、あるいは一括返済する
  • 個人資産(自宅など)の担保提供が解除され、真の意味でリタイアできる
  • デメリット

    統合リスク(PMI)がある

  • 文化の違い
  • 従業員の不安・離職
  • 希望通りの条件にならないことも
    (価格、雇用維持条件、ブランド維持など)

    情報管理が難しい

  • 交渉過程での情報漏洩リスク
  • 向いている会社

  • 後継者がいない
  • 成長のために外部資本を入れたい
  • 現金化(リタイア)を重視
  • 以上をまとめた比較表は次の通りです。

    観点 親族内承継 社内承継 M&A
    後継者の見つけやすさ
    事業の安定性
    スピード
    資金回収(創業者)
    社内の安心感
    成長余地

    事業承継方法の選び方に関する「実務的な考え方」

    3つの方法のメリット・デメリットや向き・不向きは前述の通りですが、実際のところは、「自社の状況で現実的に成立する選択肢はどれか」という観点にまず目を向けるほかありません。

    特に最近は、親族に後継者候補がおらず、社内にも適任者がいないケースが増えています。そのため、最初からM&Aを含めて並行検討するのが合理的となっています。

    まずは「自分の会社がいくらか」を知るところから

    ジョブカンM&Aでは、専任アドバイザーが事業価値の簡易査定から成約まで一貫して伴走します。相談は無料。売却・買収のどちらでもお気軽にどうぞ。

    事業承継で起こりやすい成功パターン・失敗パターン

    続いては、3つの事業承継の方法それぞれにおける、よくある成功パターン・失敗パターンを紹介していきます。

    親族内承継の成功・失敗事例

    成功事例:計画的に“経営者育成”をしたケース

    (状況)

  • 50代社長が息子を後継者に指名
  • 10年かけて段階的に権限委譲
  • 外部(他社・金融機関)で修行経験あり
  • (結果)

  • 社内の信頼を得てスムーズに承継
  • 先代より業績拡大
  • (成功のポイント)

  • 「血縁」ではなく能力で育てた
  • 早期着手(10年前から準備)
  • 周囲(幹部・取引先)への事前根回し
  • 失敗事例:親の“思い込み承継”

    (状況)

  • 「長男だから」という理由だけで後継者に
  • 現場経験・経営経験がほぼゼロ
  • 社長が直前まで権限を握り続けた
  • (結果)

  • 就任後に幹部が大量退職
  • 業績悪化 → 最終的に売却 or 廃業
  • (失敗の本質)
    後継者を“選んだだけ”で育てていない

    役員・従業員承継の成功・失敗事例

    成功事例:右腕幹部への“実質的な事前承継”

    (状況)

  • No.2の役員が10年以上経営に関与
  • すでに現場・経営の両方を掌握
  • 株式は金融機関支援で取得(LBO)
  • (結果)

  • 代表交代しても社内外の混乱なし
  • 業績も安定継続
  • (成功のポイント)

  • 実質的に「すでに経営していた」状態
  • 金融スキームの活用で資金問題を解決
  • 他幹部との関係性も良好
  • 失敗事例:いい人だけど“経営者ではなかった”

    (状況)

  • 人望のある部長を後継者に指名
  • プレイヤーとしては優秀
  • だが意思決定経験が不足
  • (結果)

  • 判断遅れ・責任回避が増加
  • 組織が迷走 → 業績悪化
  • (失敗の本質)
    「優秀な社員 ≠ 経営者」であることを理解できていなかった

    M&A(第三者承継)の成功・失敗事例

    成功事例:シナジー重視で“相手を選んだ”ケース

    (状況)

  • 同業大手に売却
  • 人材・顧客・技術の相互補完あり
  • 社長が1~2年残って引き継ぎ
  • (結果)

  • 売上・利益ともに成長
  • 従業員の待遇も改善
  • (成功のポイント)

  • 「価格」より相手との相性(シナジー)重視
  • PMI(統合)を見据えた設計
  • 引き継ぎ期間を確保
  • 失敗事例:高値だけを追った売却

    (状況)

  • もっとも高い買収額を提示した企業に売却
  • 異業種で文化が大きく違う
  • 早期に創業者が退任
  • (結果)

  • 社内文化が崩壊
  • 従業員離職 → 業績悪化
  • 数年後に再売却
  • (失敗の本質)
    価格だけで相手を選んだ

    共通する“成功と失敗の分岐点”

    3つの方法に共通している本質は極めてシンプルです。

    事業譲渡に成功する会社の共通点

  • 早く動いている(5~10年前から準備)
  • 人(後継者)に投資している
  • 「引き継げる状態」を作っている
  • 失敗する会社の共通点

  • 直前まで何もしていない
  • 属人化が強い
  • 「なんとかなる」と思っている
  • 「事業承継の方法選択」に関して、事業承継を成功に導く重要ポイント

    実は多くの会社では、「親族・社内でいけると思っていたが、失敗して余計な時間だけかかってしまい、M&Aの条件が悪化してしまった or 廃業してしまった」という結果を辿っています。

    これを防ぐために、次の3つを同時に進めていくことが、もっとも成功確率を高められる戦略であるといえます。

  • 親族承継を第一希望にしつつ
  • 社内承継もできるよう社内のキーパーソンを育成しながら
  • 同時にM&Aも視野に入れる
  • まずは「自分の会社がいくらか」を知るところから

    ジョブカンM&Aでは、専任アドバイザーが事業価値の簡易査定から成約まで一貫して伴走します。相談は無料。売却・買収のどちらでもお気軽にどうぞ。

    会社を高く譲渡するための「磨き上げ」とM&Aのステップ

    会社を「より高く」「納得感を持って」譲渡するためには、①事前の磨き上げ ②価値の理解 ③プロセス管理 の3点すべてがそろう必要があります。

    それぞれのポイントを実務目線で整理していきます。

    自社の魅力を高める「磨き上げ」とは?

    「磨き上げ」とは、一言でいうと、買い手から見て「安心して引き継ぐことができて、成長できる会社」にすることです。単なる業績改善ではなく、「売れる状態」に整えることが本質です。

    なお、磨き上げには最低でも1~3年かけるのが理想です。短期でできるのは「見せ方の整理」までで、本質改善には時間が必要です。

    磨き上げの主なポイントをみていきましょう。

    収益の質を上げる

  • 一過性売上 → ストック型へ(例:定期契約)
  • 大口依存 → 顧客分散
  • 原価・人件費の適正化
  • 「来年も同じ利益が出るか?」が評価の核心となります。

    属人性の排除(経営者依存の解消)

  • 営業・意思決定の分散
  • マニュアル化・権限委譲
  • 幹部育成
  • 「社長が抜けても回る会社=価値が高い会社」であるといえます。

    財務・契約の“見える化”

  • 正確な決算書
  • 契約書整備(取引先・従業員)
  • 簿外債務の解消
  • 「よく分からない会社」は、それだけで減点となります。

    成長ストーリーの明確化

  • 市場の成長性
  • 自社の強み(差別化)
  • シナジー(買収後にどう伸びるか)
  • 買い手は、“未来”にお金を払うということを念頭に置いておきましょう。

    企業価値(バリュエーション)はどのように決まるか

    企業価値の2つの考え方

    企業価値の基本的な考え方は、大きく次の2つにわかれます。

  • 1 インカムアプローチ(収益ベース)
  • 将来どれだけ稼ぐかで価値を決める方法です。
    「企業価値=収益力×倍率」となります。

    この考え方を使って算定する方法は「EBITDA倍率法」というもので、もっとも一般的な算定方法です。

    具体的には、「EBITDA(営業利益+減価償却)× 数倍」で算定します。

    (例)
    EBITDA 3,000万円 × 4倍 = 1.2億円

  • 2 コストアプローチ(資産ベース)
  • 今ある資産で価値を決める方法です。
    「純資産+α(営業権)」となります。
    「純資産(資産−負債=現在の価値)+のれん(将来利益)」という構造です。

    未来を重視するケース・現在を重視するケース

    「EBITDA倍率法」「純資産+営業権」はそれぞれ次のようなケースで使われることが多いです。

  • EBITDA倍率法が使われるケース
  • 利益が安定している
    成長性がある
    サービス業・ITなど

  • 純資産+営業権が使われるケース
  • 中小企業全般
    資産が多い(不動産など)
    利益が不安定

    ただし、実際のM&Aでは、「EBITDA倍率法」「純資産+営業権」の両方で算定して、レンジ(幅)を作るケースが多いです。

    (例)
    EBITDA法での算定結果:1.2億円
    純資産+営業権での算定結果:0.9億円

    0.9~1.2億円の間で交渉

    基本合意からデューディリジェンス、クロージングまでの流れ

    基本合意からデューディリジェンスを経てクロージングするまでの流れは次の通りです。
    【全体像(期間目安:3~6ヶ月)】

  • 1 基本合意(LOI)
  • 2 デューディリジェンス(DD)
  • 3 最終契約(SPA)
  • 4 クロージング
  • 基本合意(LOI:意向表明)

    内容

  • 買収価格(目安)
  • スキーム(株式譲渡など)
  • 独占交渉権
  • ポイント
    この時点では“仮条件”ですが、ここでの印象が後工程に大きく影響します。つまり、「ここで高い評価を引き出せるか」が重要ということです。

    デューディリジェンス(DD)

    買い手が、会社について徹底的に調査します。

    DDの主な種類

  • 財務DD(数字の正確性)
  • 法務DD(契約・訴訟リスク)
  • 労務DD(未払残業など)
  • ビジネスDD(成長性)
  • DDで発覚することが多い問題

  • 簿外債務
  • 契約未整備
  • 想定より利益が不安定
  • 問題が発覚した場合、価格引き下げ(リトレード)が生じる可能性が高く、最悪の場合、破談となります。

    最終契約(SPA)

    内容

  • 最終的な価格
  • 表明保証(問題があった場合の責任)
  • クロージング条件
  • 最終契約を結んだら、基本合意(LOI)とは異なり、法的拘束力があるということになります。

    クロージング

  • 株式・資金の受け渡し
  • 経営権移転
  • クロージングまで完了すると、PMI(統合プロセス)がスタートすることになります。

    まずは「自分の会社がいくらか」を知るところから

    ジョブカンM&Aでは、専任アドバイザーが事業価値の簡易査定から成約まで一貫して伴走します。相談は無料。売却・買収のどちらでもお気軽にどうぞ。

    知らないと損する! 事業承継税制と頼れる相談先

    事業承継は3つの方法のうち「役員・従業員承継」と「M&A・第三者承継」は「売買」によって事業を承継することになりますが、「親族内承継」は、相続あるいは贈与(生前贈与)によって事業を承継することになります。つまり、相続税または贈与税が発生するということになります。

    会社の資産によっては、相続税にしろ贈与税にしろかなりの金額になりますが、「事業承継税制」を利用すると、税負担を軽減することができます。

    相続税・贈与税を猶予する「事業承継税制」

    事業承継税制とは、非上場会社の株式を後継者に引き継ぐ際の、相続税・贈与税の納税を猶予する制度です。

    「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(経営承継円滑化法)」に基づき、2009年4月に施行された「非上場株式等についての贈与税の納税猶予の特例」と「非上場株式等についての相続税の納税猶予の特例」の2つを併せて、「事業承継税制」といいます。

    事業承継税制では、一定の条件を満たせば、税金の支払いが猶予されます(納税猶予)。さらに、条件を満たし続ければ、最終的に支払いが免除となります(納税免除)。

    納税免除となるタイミングは次の通りです。

    【相続税が免除となるタイミング】

  • 後継者の死亡時
  • 後継者が次の代へ事業承継税制を使い事業承継したとき
  • 【贈与税が免除となるタイミング】

  • 先代経営者の死亡時
  • 後継者の死亡時
  • 後継者が次の代へ事業承継税制を使い事業承継したとき
  • このほか、後継者がやむを得ず会社の代表権を手放して、次の代の後継者へと贈与して、その後継者が納税猶予を受ける場合なども納税免除の対象となります。

    【猶予されていた税金の一括納付が必要になるケース】
    後継者の死亡時などによって、相続税・贈与税が免除となることがある一方、猶予されていた税金を一括納付しなければならなくなるケースもあります。

  • 1 要件を満たさなくなった場合
  • 具体的には、まず、下記のうちどれか1つでも要件を満たさなくなった場合、猶予されていた税金を一括納付する必要が生じます。

  • 事業承継後5年以内に後継者が代表者ではなくなった場合
  • 後継者が保有している自社株を譲渡し手放した場合
  • 事業承継した会社が資産管理会社に該当した場合
  • 会社が解散した場合
  • 会社の年間収入が0円になった場合
  • 2 継続届出書を出し忘れた場合
  • 事業承継税制を利用するためには、「継続届出書」を決められたタイミングで提出しなければなりません。具体的には、「(特例)経営(贈与)承継期間」である最初の5年間は毎年、その後は3年おきに提出する必要があります。

    この提出を忘れた場合も、納税猶予が終了となり、税金を納める必要性が生じます。

    事業承継税制の種類

    事業承継税制には、次の2つの種類があります。

  • 法人版事業承継税制
  • 中小企業の後継者が、「円滑化法」の認定を受けた非上場会社の株式などを贈与や相続によって取得した場合において、その非上場株式等に係る贈与税・相続税について、一定の要件のもと、納税を猶予して、かつ、後継者の死亡などによって、納税が猶予されている税額の納付が免除される制度です。

    法人版事業承継税制には、「一般措置」と「特例措置」の2つの措置があります。一般措置では、対象となる株式数と猶予される税額の割合が決まっていますが、特例措置では、すべての株式が猶予の対象となっています。

    ただし、特例措置の適用期限は令和9年12月31日までです。

  • 個人版事業承継税制
  • 「円滑化法」の認定を受けた後継者が、青色申告に係る一定の事業をおこなっていた贈与者などから、その事業に係る一定の資産を平成31年1月1日から令和10年12月31日までの贈与・相続などによって取得した場合において、その資産に係る贈与税・相続税について、一定の要件のもと納税を猶予して、後継者の死亡などにより 、納税が猶予されている税額の納付が免除される制度です。

    参照:国税庁「事業承継税制特集」

    法人版事業承継税制の主な要件

    法人版事業承継税制は、先に解説した通り、「中小企業」のみを対象としています。それだけでなく、その企業は次の要件を満たしていなければなりません。

  • 非上場企業である
  • 医療法人や風俗営業会社ではない
  • 常時使用従業員が1名以上いる
  • 資産管理会社(資産保有型会社・資産運用型会社)ではない
  • 一定の事業年度の総収入金額が0円より多い
  • 拒否権付株式(黄金株)を発行しているなら後継者や、先代経営者から贈与・相続・遺贈などで株式を取得した人のみが保有している
  • 現物出資等資産の割合は70%未満
  • また、先代経営者は会社の「代表者」であったことが求められます。さらに、贈与や相続の直前には、先代経営者と同族関係者で50%を超える株式を保有しており、「筆頭株主」であることも求められます。贈与の場合、贈与するときに代表権を後継者へ譲っていることも必要です。

    一方、後継者は次の要件を満たしている必要があります。

  • 贈与直後に会社の代表権を持っている(相続の場合は相続開始の日の翌日から5か月以内に会社の代表権を持っている)
  • 贈与直後(相続開始時)に同族関係者内で株式の50%超を持っている
  • 贈与直後(相続開始時)に筆頭株主である(後継者が複数人なら2位・3位も可能だが、最低10%は保有する)
  • 18歳以上である(相続の場合は年齢制限なし)
  • 贈与の直前に会社の役員である(※相続の場合、相続開始の直前に会社の役員である)
  • まずは「事業承継・引継ぎ支援センター」や専門家へ相談を

    事業承継税制の利用を含めて、事業承継について第三者に相談したい場合、まずは「事業承継・引継ぎ支援センター」に問い合わせるのがおすすめです。後継者が不在の場合、譲受企業を紹介してもらうことも可能ですし、親族内承継の支援をおこなってもらうこともできます。

    参照:事業承継・引継ぎ支援センター

    あるいは、民間のM&A専門家(M&A仲介会社やFA)に相談するのも一つの手です。ただし、ここで知っておくべき「M&Aのリアル」があります。

    M&Aの専門家には、売り手と買い手双方から手数料を受け取る「仲介」と、売り手(または買い手)の一方のみに立って交渉を行う「FA(ファイナンシャル・アドバイザー)」が存在します。仲介はスピーディーに円滑な成約を目指すのには向いていますが、構造上、利益相反(買い手寄りの条件でまとめようとするリスク)の懸念があることも事実です。

    信頼できる専門家を見極めるためには、自社の利益を最優先に考えてくれるか、リスクやデメリットについても隠さず説明してくれるかなど、複数の専門家に相談(セカンドオピニオンの活用)したうえで慎重にパートナーを選定することが重要です。

    まずは「自分の会社がいくらか」を知るところから

    ジョブカンM&Aでは、専任アドバイザーが事業価値の簡易査定から成約まで一貫して伴走します。相談は無料。売却・買収のどちらでもお気軽にどうぞ。

    事業承継に関してよくある質問(FAQ)

    続いては、事業承継に関してよくある質問とその答えをみていきましょう。

    Q. 事業承継の意思を従業員に伝えるタイミングはいつが適切ですか?

    基本合意(LOI)締結後~最終契約前がもっとも現実的かつ安全です。これより早い“検討時期”に噂が広がると、従業員が不安になって離職する可能性が高いだけでなく、取引先にも影響が及ぶ可能性があります。反対に、クロージング直前などの遅すぎるタイミングだと、「聞いていない」と反発する人が現れたり、キーパーソンが「裏切られた」と考えて離職したりといった可能性があります。また、クロージング後のPMI(経営統合)が失敗しやすくなります。

    また、基本合意より後のタイミングなので、基本的には事業承継することは確定しているということになるため、雇用維持の方針を明確にして、買い手企業のメリットを具体的に説明することも大切です。「会社がよくなるための選択」であることをしっかり伝えましょう。

    Q. M&A仲介手数料や税理士報酬の相場感はどれくらいですか?

    M&A仲介手数料は、一般的には「レーマン方式」で決めます。レーマン方式では、M&Aの取引金額などに一定の報酬率を掛けて支払金額を算出します。

    売却額に対する成功報酬の報酬率は次の通りです。

  • 5億円以下:5%
  • 5~10億円:4%
  • 10~50億円:3%
  • 中小企業だと、最低報酬は500~2,500万円程度となる場合が多いです。

    また、その他費用として、着手金(0~200万円程度)、月額報酬(0~50万円程度)がかかることもありますが、最近は「完全成功報酬型」も増加しています。

    税理士・専門家報酬の目安は次の通りです。

  • 税務アドバイス:50~200万円
  • スキーム設計・申告:100~300万円
  • 中小企業のM&Aの場合、実務的な総額イメージは次の通りです。

  • 仲介:1,000万前後
  • 税理士:100〜300万
  • その他(弁護士など):100〜300万
  • Q. 赤字や債務超過でもM&Aの引き手は現れますか?

    成立するケースはあるものの、条件は厳しくなります。

    買い手が現れやすいケースは次の通りです。

  • 1 将来性がある
  • 一時的な赤字
    成長市場にいる

  • 2 シナジーが強い
  • 買い手の販路で売上拡大できる
    コスト削減できる

  • 3 技術・人材・顧客に価値がある
  • 優秀な人材
    独自技術
    優良顧客

    反対に、成立しにくいケースは次の通りです。

  • 慢性的な赤字(回復見込みなし)
  • 債務超過+資金繰り悪化
  • 訴訟・コンプラリスクあり
  • また、赤字企業の場合、売却できたとしても価格は低いか、あるいは0円であるケースが多いです。場合によっては、持参金付き売却(債務引き受け)となります。

    まずは「自分の会社がいくらか」を知るところから

    ジョブカンM&Aでは、専任アドバイザーが事業価値の簡易査定から成約まで一貫して伴走します。相談は無料。売却・買収のどちらでもお気軽にどうぞ。

    後継者探しは「自社の価値」を再発見する旅

    後継者を確保するためには、まず、後継者候補に対して、自社を引き継ぐことの魅力を伝えることが不可欠です。そのためにも、まずは経営者自身が、自社の魅力・自社の価値を客観的に確認する必要があります。企業価値を算定するだけでなく、自社の強みや誇れる点、将来性などを改めて書き出すことによって、自社の価値を「再発見」することから始めましょう。

    ジョブカンM&A ジョブカンM&A編集部

    ジョブカンM&Aは、株式会社DONUTSが運営するM&Aアドバイザリーサービスです。主に企業の事業承継、成長戦略、出口戦略(イグジット)といった多様なニーズに応えることを目的としています。最大の特徴は、累計導入社数20万社以上を誇るバックオフィス支援クラウドERPシステム「ジョブカン」の広範なネットワークを活用している点です。この強力な顧客基盤を生かし、効率的なマッチングを実現します。


    他の関連記事はこちら