赤字企業でも会社は売れる——M&Aで買い手がつく「赤字企業の条件」と売却価格の考え方

「赤字が続いているから、もうM&Aで売ることはできない」

そう判断して、廃業の準備を始めているオーナー経営者がいる。しかしこの思い込みは、多くの場合間違いだ。

赤字企業でもM&Aが成立するケースは、実際に多い。問題は「赤字かどうか」ではなく、「何を持っているか」だ。買い手が欲しいのは、必ずしも過去の利益ではない。それ以外の価値——許認可、顧客基盤、技術、地域シェア、人材——が評価される場面は少なくない。

本記事では、赤字企業でもM&Aが成立する理由と、反対に「本当に売れない赤字企業」との違いを整理する。


まずは「自分の会社がいくらか」を知るところから

ジョブカンM&Aでは、専任アドバイザーが事業価値の簡易査定から成約まで一貫して伴走します。相談は無料。売却・買収のどちらでもお気軽にどうぞ。

目次
  1. なぜ赤字企業でもM&Aが成立するのか
    1. M&Aの本質:「過去の利益」ではなく「将来の価値」を買う
    2. 赤字の「種類」が重要
  2. 赤字企業でも買い手がつく6つのパターン
    1. パターン①:許認可・免許を持っている
    2. パターン②:長期取引の顧客基盤がある
    3. パターン③:独自技術・特許を持っている
    4. パターン④:特定地域でのブランド・シェアがある
    5. パターン⑤:優秀な人材・チームが揃っている
    6. パターン⑥:不動産・設備などの実物資産を持っている
  3. 本当に売れない赤字企業の特徴
    1. 特徴①:売上の構造的な縮小が続いている
    2. 特徴②:オーナーに依存した属人的な経営
    3. 特徴③:債務超過が深刻
  4. 赤字企業の売却価格はどう決まるか
    1. 決算書の赤字=実態の赤字ではない(アドバックの重要性)
    2. 純資産価格が「下限」になる
    3. 無形資産が「上乗せ」になる
    4. 売却条件の工夫で価格を上げる余地がある
  5. まず取るべきアクション:「売れるかどうか」を専門家に確認する
  6. まとめ

なぜ赤字企業でもM&Aが成立するのか

M&Aの本質:「過去の利益」ではなく「将来の価値」を買う

M&Aで買い手が評価するのは「これから自分たちが持ったときに何ができるか」だ。過去の決算書が赤字であっても、自分たちの経営・販路・技術と組み合わせることで黒字化できる——そう判断すれば買い手はつく。

この考え方を理解すると、「赤字だから売れない」という発想が変わる。

赤字の「種類」が重要

赤字企業を一括りにすることは間違いだ。赤字には様々な種類がある。

赤字の種類 M&Aへの影響
一時的な要因(設備投資・訴訟費用等)による赤字 △ 本業の収益力は維持されている可能性あり
後継者不在・経営者高齢化による経営ガバナンスの低下 △ 経営を立て直せば価値が出る可能性あり
コロナ禍・特定顧客離脱などの外部要因による一時的な落ち込み △ 構造的問題ではない可能性がある
売上自体の構造的な減少(市場縮小・競合劣位) ✕ 改善が困難な場合は評価が厳しくなる
負債が資産を大幅に上回る債務超過 ✕ 売却より他の手段(事業再生等)が必要になることも

「赤字か黒字か」ではなく、「なぜ赤字になっているか」が重要だ。


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赤字企業でも買い手がつく6つのパターン

パターン①:許認可・免許を持っている

建設業許可、運送業許可、医療機器販売業、産廃処理業、金融ライセンス——参入障壁となる許認可を持つ企業は、赤字でも買い手がつきやすい。

許認可の新規取得には時間(数ヶ月〜数年)・費用・実績要件が必要だ。これをゼロから取得しようとすると多大なコストがかかる買い手にとって、「すでに許認可を持つ赤字企業を買収してすぐ事業を始める」方が合理的なケースがある。

具体例:建設業許可を持つ工務店が、業績悪化で赤字に転落。許認可と職人の人材を目当てに、大手ゼネコン系の企業が買収した。

パターン②:長期取引の顧客基盤がある

売上は落ちていても、大手企業との安定した取引関係・長年のリピート顧客・地域での顧客リストを持つ企業は評価される。

買い手にとって、顧客基盤を一から作るコストは膨大だ。既存の顧客関係を「買う」ことで、販路拡大の費用と時間を大幅に短縮できる。

具体例:製造業者への部品サプライヤーが、採算悪化で赤字に。大手自動車部品メーカーとの取引実績を評価した同業他社が、シェア拡大目的で買収した。

パターン③:独自技術・特許を持っている

他社が容易に真似できない製造技術・独自のノウハウ・特許を持つ企業は、赤字でも買い手の関心を集める。

特に2026年の市場では、地政学リスクを背景とした国内製造回帰の動きがあり、国内の技術を持つ中小製造業が買収対象として浮上するケースが増えている。

具体例:レアアース加工の独自技術を持つ中小メーカーが、後継者不在で業績が低迷。大手素材メーカーが技術獲得目的で買収した。

パターン④:特定地域でのブランド・シェアがある

全国での知名度がなくても、特定エリアでの知名度・ブランド力・販売網は価値を持つ。地域に根ざした商圏を持つ企業が、同地域への進出を狙う企業に買収されるケースがある。

具体例:地方の食品メーカーが、原材料高騰で赤字に。同地域への進出を狙う大手食品会社が、地元ブランドの獲得と地域チャネルを目当てに買収した。

パターン⑤:優秀な人材・チームが揃っている

特定分野の専門技術者、業界に精通した営業チーム、希少な国家資格保有者——人材を「資産」として買収するケースがある。

人材採用が困難な業種(IT、医療、建設)では、すでに人材が揃っている企業をM&Aで取得する方が、採用活動よりも効率的と判断されることがある。

具体例:ITサービス会社が、受注減少で赤字に。希少な資格保有エンジニアチームを目当てに、大手SIerが人材目的のM&Aを実施した。

パターン⑥:不動産・設備などの実物資産を持っている

本業の収益力がなくても、立地の良い不動産・専用設備・機械装置などの実物資産の価値がある場合、買い手がつくことがある。

ただしこの場合は「M&A」というより「資産売却」に近い判断になることもある。不動産や設備の簿価と時価の差(含み益)を確認することが重要だ。


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本当に売れない赤字企業の特徴

一方で、いくら無形資産があっても難しいケースもある。

特徴①:売上の構造的な縮小が続いている

市場そのものが縮小しており、主力商品・サービスの需要が右肩下がりで回復の見込みがない場合、買い手が価値を見出しにくい。

「今後10年で市場が半分になる業種で、さらに競合に負けている」という状況では、無形資産があっても引き合いが限られることが多い。

特徴②:オーナーに依存した属人的な経営

「社長が辞めたら顧客も取引先も去る」という状況は、買い手にとってリスクが高い。特定の人物に依存した顧客関係・営業力・技術は、承継後に価値が消えてしまう可能性がある。

M&Aを考える前に、仕組み化・マニュアル化・権限委譲を進めることが、売却価格の最大化につながる。

特徴③:債務超過が深刻

資産より負債の方が大きい「債務超過」の状態が深刻な場合、通常のM&Aでは難しくなる。事業再生専門の投資家や、特定の資産だけを切り出す「事業譲渡」の形が現実的になる。


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赤字企業の売却価格はどう決まるか

決算書の赤字=実態の赤字ではない(アドバックの重要性)

価格算定の前提として知っておくべきは、中小企業の「見かけの赤字」と「実態の赤字」は違うということだ。過大な役員報酬、オーナーの私的な経費、過度な節税対策(保険料の支払い等)によって意図的に赤字になっているケースは多い。

M&Aの評価では、こうした事業継続に無関係な経費を利益に足し戻す「アドバック(修正)」を行い、本来の「正常収益力」を算出する。アドバックの結果、実態が黒字であれば、通常の黒字企業と同様の基準で評価される。

純資産価格が「下限」になる

赤字企業の売却価格を考える際、まず「純資産価格」(資産から負債を引いた簿価上の価値)が一つの基準になる。

不動産・設備・在庫・売掛金などの資産合計から、借入・買掛金などの負債合計を引いた額だ。これが「会社の帳簿上の価値」であり、売却価格の下限の目安になることが多い。

ただし簿価と時価が大きく乖離する場合(不動産が含み益を持つ、逆に設備が陳腐化している)は、調整が必要だ。

無形資産が「上乗せ」になる

パターン①〜⑥で挙げた無形資産は、純資産価格に「プレミアム」として上乗せされる形で評価される。このプレミアムの部分を「のれん」とも呼ぶ。

赤字企業の場合、EBITDAがマイナスまたはゼロに近いため、通常の「EBITDA×倍率」という計算式では評価できない。代わりに「再調達コスト」(買い手が同等の資産・ライセンス・顧客基盤を自分でゼロから作ったらいくらかかるか)で評価されることが多い。

売却条件の工夫で価格を上げる余地がある

  • アーンアウト条項:売却後の業績に応じて追加対価を受け取る仕組み。買い手のリスクを下げることで、トータルの売却価格を上げられることがある
  • 役員継続:売却後も一定期間は経営に関与することを約束する。事業継続リスクを下げるため、買い手が高い評価額を出すことがある
  • 段階的な持分譲渡:一気に全株を売るのではなく、段階的に株式を譲渡することでリスク分散しながら全体の対価を確保する

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まず取るべきアクション:「売れるかどうか」を専門家に確認する

「自社は赤字だから」と諦める前に、まず現状を専門家に見てもらうことだ。

M&A仲介会社・アドバイザーへの相談は、多くの場合は初回無料または低コストで行える。決算書・会社概要・主な事業内容をまとめて持参するだけで、「売れる可能性があるか」「どのような買い手がいるか」の大まかな見通しが得られる。

廃業の手続きを進める前に、一度確認することで選択肢が増える可能性がある。


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まとめ

「赤字企業はM&Aで売れない」は思い込みだ。赤字でも買い手がつくのは、許認可・顧客基盤・技術・地域シェア・人材・実物資産のいずれかが価値を持つ場合だ。

売れない赤字企業との違いは「なぜ赤字なのか」にある。構造的な市場縮小・属人的な経営・深刻な債務超過は売却を難しくするが、一時的な要因や外部環境によるものであれば可能性は残っている。

重要なのは「自社の価値が何か」を正確に把握することだ。廃業を決断する前に、M&Aの可能性を専門家に確認することを強く勧める。

ジョブカンM&A ジョブカンM&A編集部

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