スタートアップが「事業譲渡」を選ぶ日 — スパイバー私的整理が示すディープテック企業の出口戦略

まずは「自分の会社がいくらか」を知るところから

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目次
  1. 国内5位のユニコーンが「私的整理」を選んだ
  2. スタートアップの「出口」はIPOだけではない
  3. ディープテック企業が陥りやすい「価値と現金の乖離」
    1. 研究開発から収益化までの時間が長い
    2. バリュエーションは「期待値」で決まる
    3. 「止まれないコスト」の問題
  4. 「事業譲渡」という選択が意味すること
  5. スタートアップ経営者が「今」考えておくべきこと
    1. 「黒字期」「成長期」こそ選択肢が広い
    2. VCのインセンティブと経営者のインセンティブは一致しない
    3. 事業譲渡は「敗北」ではない
  6. まとめ

国内5位のユニコーンが「私的整理」を選んだ

2026年3月、国内ユニコーン企業ランキング5位(企業価値1,695億円)だったスパイバーが、私的整理に入り事業譲渡を選択したというニュースが広まった。

スパイバーは慶應発のディープテック企業で、人工クモ糸タンパク質を素材とした繊維「Qmonos」の開発・量産化に取り組んできた。投資家から高い評価を受け、ユニコーン評価(非上場で企業価値1,000億円超)を獲得した国内スタートアップの代表格だった。

しかし、海外工場への投資費用が円安・物価高の影響で想定の3倍に膨らんだ。400億円の負債(返済期限2025年末)を抱え、ユニットエコノミクスが成立しないまま資金が尽きた。

技術力がある。投資家に高く評価されている。ブランドがある。それでも、商業化できなければ企業は続かない。

この事例が突きつける問いは、あらゆるスタートアップ経営者が向き合うべきものだ。


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スタートアップの「出口」はIPOだけではない

スタートアップ経営者の多くが「出口=IPO」と考えている。しかし現実のスタートアップの出口は複数あり、IPOはそのうちの一つに過ぎない。

出口の種類 概要 向いているケース
IPO 株式公開で市場から資金調達 継続的な成長が見込め、財務基盤が整っている
M&A(株式譲渡) 戦略的投資家・事業会社が株式を取得 買い手のリソースで事業拡大が見込める
M&A(事業譲渡) 事業・技術・資産のみを移転 負債を切り離して事業の価値を次に渡す
MBO 経営陣が投資家から株式を買い取る 独立性を保ちながら継続したい
廃業・清算 事業を終了する 事業価値がなくなった場合

スパイバーが選んだのは「事業譲渡(私的整理スキーム)」だ。私的整理とは、法的倒産手続き(民事再生・破産)を使わずに、関係者(債権者・投資家)と交渉して負債を整理するスキームだ。

事業の価値(技術・ブランド・人材)は保全しつつ、400億円の負債を切り離して事業を次の会社に引き渡す——これが私的整理×事業譲渡の組み合わせだ。


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ディープテック企業が陥りやすい「価値と現金の乖離」

ディープテック企業(素材・バイオ・量子・ロボットなど、長期の研究開発が必要な技術領域)は、特有の構造的リスクを抱えている。

研究開発から収益化までの時間が長い

素材・バイオ・医療機器などのディープテックは、研究開発から量産・商業化まで10〜20年かかることも珍しくない。その間、投資家から資金を調達し続けながら「将来の価値」を根拠に事業を続ける構造になる。

バリュエーションは「期待値」で決まる

IPO前のスタートアップの企業価値(バリュエーション)は、現在の収益ではなく「将来の期待値」に基づいて算出される。スパイバーが1,695億円の評価を受けたのも、人工タンパク質繊維の市場ポテンシャルへの期待があったからだ。

しかし、ユニットエコノミクス(1製品あたりの収益性)が成立しなければ、どれだけ高い評価がついても「現金は生まれない」。評価額と手元資金の乖離が大きくなるほど、外部環境の変化(コスト上昇・為替変動・市場の遅れ)に対する耐性が低くなる。

「止まれないコスト」の問題

スケールアップフェーズに入ったスタートアップは、工場投資・設備投資・採用など「止まると後退するコスト」を抱えることが多い。スパイバーも海外工場への投資を一度始めると、止めることは難しかった。


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「事業譲渡」という選択が意味すること

スパイバーの事業は、孫正義氏の長女・川名麻耶氏が設立した新会社「CRANE」に譲渡される見込みだ。この「有力な個人が受け皿会社を作って事業を引き継ぐ」というスキームは、日本のスタートアップ界に新たな買い手の存在を示している。

同時に、M&Aの視点からは「なぜ株式譲渡ではなく事業譲渡なのか」という点が極めて重要になる。これは実務上「第二会社方式(新旧分離)」と呼ばれるスキームだ。

買い手から見れば、事業譲渡を選択することで、旧会社が抱える多額の有利子負債や簿外債務、不要な契約を遮断できる。その上で、コアとなる特許、ブランド、優秀な研究員など、事業継続に必要な資産だけを選別(チェリーピック)して引き継ぐことが可能になる。

ディープテック領域は研究開発に膨大な時間と資金を要する。買い手(事業会社や投資家)にとって、資金ショートに陥ったディープテック企業の事業譲渡案件は、長年蓄積された「技術」と「時間」を、適正な価格でショートカットして獲得できる絶好のM&A機会となるのだ。


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スタートアップ経営者が「今」考えておくべきこと

スパイバーの事例が示す教訓を、スタートアップ経営者の視点で整理する。

「黒字期」「成長期」こそ選択肢が広い

私的整理の状態では、買い手は「安く買える」交渉力を持つ。売り手(スタートアップ)に交渉力が残っている「まだ余裕がある段階」の方が、より良い条件で・より良い相手に・より良いスキームで事業を引き渡せる可能性が高い。

「IPOを目指しているが、タイムラインが延びている」「次のラウンド調達が難しい状況になってきた」という段階で、早めにM&A・事業譲渡の選択肢を検討することは、経営者の選択肢を広げることになる。

VCのインセンティブと経営者のインセンティブは一致しない

VCは「IPOかラージM&A」による大きなリターンを期待する。経営者は「技術と事業を守り続けること」を優先したい場合がある。この目標のずれが、「廃業よりも条件の悪い売却」という結果につながることがある。

早い段階でVCと「IPO以外のシナリオ」を議論しておくことは、経営者が主体的に選択できる状況を作るために重要だ。

事業譲渡は「敗北」ではない

事業譲渡を選択することを「失敗」と捉える文化が日本には根強い。しかしスパイバーの場合、技術・人材・ブランドは次の会社に引き継がれる。廃業で「すべてが消える」のとは本質的に異なる。

「誰に、どのような条件で、事業を引き渡すか」を経営者が主体的に設計できるのが、私的整理・M&A・事業譲渡という手段だ。


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まとめ

スパイバーの事例は「ユニコーン神話の終焉」ではなく、「技術力と商業化は別の課題だ」というビジネスの本質を再確認させてくれる。

ディープテック・スタートアップが事業価値を守りながら「次のステージ」に移行するための出口として、M&A・事業譲渡は正当な選択肢だ。

「問題が起きてから動く」のではなく、「選択肢が残っているうちに動く」——この判断の速さが、技術と事業を守るためのスタートアップ経営者の責任だ。

まず「自社の現在の企業価値がどれくらいか」「どのような買い手候補がいるか」を把握することから始めてほしい。

ジョブカンM&A ジョブカンM&A編集部

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