後継者不在は「失敗」ではない——今の中小企業の実態
「自分の代で会社を終わらせてしまうのか」と、夜中に一人で考え込む経営者は少なくない。
しかし、それは特別な失敗ではない。今や日本の中小企業の過半数が、同じ問題を抱えている。
帝国データバンクの調査によると、2024年時点で全国の後継者不在率は52.1%に達した(出典:帝国データバンク「全国後継者不在率動向調査 2024年」)。つまり、中小企業の2社に1社は、いま後継者が決まっていない計算になる。
ピーク時(2017年)の66.5%と比べれば改善しているが、それでも半数超が「誰に引き継ぐか、まだわからない」状態だ。
なぜこれほど多いのか。理由はシンプルで、「子どもが継がない」「継いでくれる人材が社内にいない」「そもそも後継者を探す時間がなかった」——この三つが重なるケースが大半だ。
後継者がいないことは、経営者の責任ではない。時代と構造の問題だ。だからこそ、「どう向き合うか」を冷静に考える必要がある。
まずは「自分の会社がいくらか」を知るところから
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選択肢①: M&A(第三者への事業譲渡)
会社を「売る」のではなく、「託す」という発想
M&Aと聞くと、大企業同士の合併劇を想像する人が多い。しかし近年、中小企業の事業承継手段としてのM&Aは急速に広がっている。
2024年の経営者就任経緯を見ると、内部昇格(36.4%)に次いでM&A等(20.5%)が続いており、親族承継(24.4%)と肩を並べる水準になっている(出典:帝国データバンク)。
M&Aを一言で言えば、「自社の経営権を、自分よりも会社を伸ばせる相手に渡す」という行為だ。工場を捨てるのではなく、次の人に工場の鍵を手渡す——そういうイメージに近い。
M&Aのメリット
従業員の雇用を守れる。
廃業すれば全員が職を失う。M&Aなら、買い手企業がそのまま雇用を引き継ぐことが多い。長年一緒に働いてきた社員への責任を果たせる。
オーナーは対価を受け取れる。
株式譲渡の場合、オーナーは株式の対価を現金で受け取る。長年かけて築いた企業価値が、きちんとお金に換わる。
事業・ブランドが存続する。
何十年も守ってきた技術、地域との関係、屋号。M&Aならこれらが消えずに続く可能性が高い。
経営者保証(個人保証)から解放される。
中小企業の多くは、金融機関からの借入に対して経営者個人の連帯保証(経営者保証)がついています。M&Aによって買い手企業に経営権が移る際、この個人保証も買い手に引き継がれるか、借入金が完済されて保証が解除されるのが一般的です。借金や個人資産への不安から解放され、安心したリタイア生活を迎えることができます。
M&Aのデメリット・注意点
相手探しに時間がかかる。条件が合わなければ、数ヶ月〜1年以上を要することもある。
また、売り手・買い手双方の条件が合致して初めて成立するため、「いくらで売れるか」「誰が買ってくれるか」は事前には確定しない。
M&Aの交渉プロセスは、大まかに以下の流れをたどる。
1. 自社の現状把握・売却価値の試算
2. M&A仲介会社やアドバイザーへの相談
3. 買い手候補のマッチング・秘密保持契約(NDA)の締結
4. 条件交渉・基本合意書の締結
5. デューデリジェンス(Due Diligence:買い手による詳細調査)の実施
6. 最終契約・クロージング
相談から最終契約まで、一般的に6ヶ月から1年程度が目安だ。早めに動くほど、選択肢が広がる。
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選択肢②: 内部昇格(従業員への承継)
会社をよく知る人間に任せる
「部長なら任せられる」「創業から一緒にやってきた幹部に継いでほしい」——そう思う経営者は多い。従業員への事業承継(MBO:マネジメント・バイアウト、あるいは社内昇格)は、そのニーズに応える選択肢だ。
MBOとは、既存の経営幹部や従業員が、オーナーから株式や事業を買い取って経営権を引き継ぐスキーム(仕組み)のことを指す。
内部昇格のメリット
事業の継続性が高い。
社内事情を熟知した人物が継ぐため、経営の空白期間が短く、顧客や取引先への影響も限定的だ。
文化・価値観が引き継がれやすい。
長年ともに働いてきた人間が後を継ぐため、「会社の色」が急変することが少ない。
オーナー・従業員ともに納得感が生まれやすい。
誰もが知る人物への承継は、組織内の安心感につながりやすい。
内部昇格のデメリット・注意点
最大のハードルは「資金」だ。後継候補者が、自力で株式を購入できるだけの資金を持っていないケースが多い。
この場合、金融機関からの融資(LBO:レバレッジド・バイアウトと呼ばれる手法)や、オーナーが分割払いを受け入れる形での対応が必要になります。また、金融機関からの借入に対する「経営者保証(個人保証)」を後継者である従業員が引き受けられるかどうかも、大きな障壁となります。
また、後継者本人が「経営者になる覚悟があるか」「リーダーとして組織を引っ張れるか」という見極めも重要だ。優秀な従業員が、必ずしも優れた経営者になるわけではない。
さらに、後継者として指名された人物以外の幹部が離職するリスクもある。透明な情報共有と丁寧なコミュニケーションが、プロセス全体を通じて求められる。
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選択肢③: 廃業・清算という選択
「やめる」ことも、れっきとした決断だ
M&Aも内部承継も難しい、あるいは「自分の代で完結させたい」という思いがある——そういうケースでは、廃業・清算という選択肢が現実的なものになる。
廃業とは、事業活動を停止して会社を解散・清算することだ。マイナスのイメージを持たれがちだが、計画的に行えば、負債を残さず、関係者への影響を最小限に抑えることができる。
廃業のメリット
経営者としての責任を、きれいな形で終えられる。
借金を抱えたまま倒産するのではなく、計画的に清算すれば、取引先・従業員・金融機関への対応を丁寧に行える。
精神的な区切りがつく。
「いつまでも引きずらない」という観点では、決断することそのものが、経営者にとっての解放になることもある。
廃業のデメリット・注意点
従業員の雇用が失われる。これが最大の課題だ。採用・育成にかけてきた人材が散る。
また、廃業には手続き上の費用と時間がかかり、税務申告や債権債務の整理など専門家のサポートなしには進められません。さらに見落としがちなのが「税金」の問題です。M&A(株式譲渡)で得た利益にかかる税金は約20%(分離課税)ですが、廃業して会社資産を現金化し、配当として受け取る場合は総合課税となり、最大で約55%の税金がかかる可能性があります。結果的に、M&Aよりもオーナーの手元に残る資金が大幅に減ってしまうリスクに注意が必要です。
「廃業するくらいなら、M&Aで会社を残す選択を先に検討してみよう」と考えが変わる経営者もいる。廃業を「最後の手段」として考える前に、他の選択肢を一度試してみることを勧める。
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3つの選択肢を比較する前に確認すべきこと
選択肢の優劣は、会社の状況によって大きく変わる。比較する前に、以下の点を自問してほしい。
1. 事業に「価値」はあるか
M&Aが成立するには、買い手にとって「買う理由」が必要だ。安定したキャッシュフロー、独自の技術・ノウハウ、顧客基盤、ブランド力——これらのどれかがあれば、買い手は見つかりやすい。
「うちなんか買い手がいない」と思い込む前に、専門家に相談することを勧める。意外な価値に気づくことも多い。
2. 残したいのは「会社」か「事業」か「資産」か
会社(法人)ごと引き継いでほしいのか、事業だけ渡せればいいのか、それとも不動産などの資産を精算したいのか——目的によって、最適な手段は変わる。
3. 時間はどれくらいあるか
体力・健康・年齢。経営者として動ける時間は有限だ。M&Aには準備から完了まで最低でも半年かかる。「あと2〜3年は動ける」なら、今すぐ動き始めることが現実的な選択だ。
4. 後継者候補は「本当にいない」のか
社内に「経営者の素質があるが本人が気づいていない人材」がいるケースもある。一度立ち止まって、幹部社員の可能性を丁寧に評価してみることも有効だ。
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まず何から始めればいいか
「選択肢はわかった。でも、何から手をつければいいのか」——その問いへの答えは、一つだ。
現状を把握することから始める。
具体的には、次の3ステップが出発点になる。
ステップ1: 自社の財務状況を整理する
直近3期分の決算書・税務申告書を手元に揃える。M&Aでも廃業でも、財務の実態が出発点になる。
ステップ2: 後継者候補の有無を確認する
家族・社内幹部・業界内の知人——誰かに相談できる人がいるかを確認する。候補がいれば、早期に意向を確認することが重要だ。
ステップ3: 専門家に相談する
M&A仲介会社、事業承継専門の公的機関(各都道府県の事業承継・引継ぎ支援センター等)、税理士などに相談することで、自社に合った選択肢が絞られてくる。
事業承継は、準備を始めるのが早ければ早いほど、選べる手段が増える。5年後、10年後に「あのとき動いておけば」と思わないために、今日の一歩が重要だ。
この記事は、時点の情報を元に作成しています。
ジョブカンM&A ジョブカンM&A編集部
ジョブカンM&Aは、株式会社DONUTSが運営するM&Aアドバイザリーサービスです。主に企業の事業承継、成長戦略、出口戦略(イグジット)といった多様なニーズに応えることを目的としています。最大の特徴は、累計導入社数20万社以上を誇るバックオフィス支援クラウドERPシステム「ジョブカン」の広範なネットワークを活用している点です。この強力な顧客基盤を生かし、効率的なマッチングを実現します。
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