個人で会社を買う動きは、近年、活性化しつつあります。少子高齢化に伴い、中小企業の後継者不足が深刻化しているため、事業承継のニーズが高まっていることなどが大きな理由です。そのため、個人M&Aの案件を多く扱うマッチングサイトや仲介サービスの成立件数も伸びています。とはいえもちろん、M&Aは必ず成功するものではありません。そこで今回は、個人M&Aで成功するために必要なステップと、失敗のパターンについて詳しく解説していきます。
まずは「自分の会社がいくらか」を知るところから
ジョブカンM&Aでは、専任アドバイザーが事業価値の簡易査定から成約まで一貫して伴走します。相談は無料。売却・買収のどちらでもお気軽にどうぞ。
起業 vs M&A — ゼロから始めるか、既にある事業を引き継ぐか
個人がM&Aを検討する理由は人それぞれ。「サラリーマンとして働き続けるのはつまらない」「人に使われるのではなく、使う人になりたい」「正社員以外の働き方を経験してみたい」などの理由から、会社の購入を検討し始めるパターンなどがあるでしょう。
また、M&Aを検討したことがある個人の多くは、「起業」という選択肢についても考えてみたことがあるのではないでしょうか。
起業とM&Aの違い
起業とM&Aは、自身が会社の所有権と経営権を握り、意思決定をおこなっていくという点においては共通しています。しかし、出発点が違います。
起業は、ゼロから会社を立ち上げて、理念および商品やサービス、それを流通させるための仕組みまで自分で設計して、動かしていく方法です。登記手続きを経て会社を設立して、資本金を払い込んで事業をスタートすることになります。
一方のM&Aは、既に走っている会社を譲受して、その実績ごと受け取って経営していく方法です。譲受が成立したら、従業員、取引先、顧客、許認可に加えて、現金や預金も移転することになります。そのため、「ゼロイチ」の局面を乗り越えていく必要がありません。ただし、負の遺産も受け取ることになるリスクがあります。
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起業とM&Aの比較
続いては、メリット・デメリットを含め、起業とM&Aの両者を比較していきましょう。
初期費用
| カテゴリ | 初期費用 |
| 起業 | 株式譲渡対価、専門家報酬が中心 |
| M&A | 設立コスト、資本金・運転資金が必要 |
まず、初期費用を比べていきます。
起業する場合の初期費用は、会社を設立する場合、登録免許税約15万円、定款認証約16万円、印紙代約4万円などで合計30万円程度かかります。資本金は1円でも登記可能とされていますが、それ以外に事業開始後の運転資金なども必要となることを考えると、少なくとも数百万円はみておいたほうがいいでしょう。なお、オフィスが必要な事業の場合、オフィス取得費用や家賃などもかかりますし、自宅を拠点とする場合も、ゼロからのスタートとなるため、広告宣伝費などは見積もっておいたほうがいいでしょう。
これに対して、M&Aを実施するにあたって必要な支出は主に3つあります。まず必要なのが株式譲渡対価です。なかには、1円譲渡という案件もあるものの、これはかなり特殊で、一般的には数百万円~と考えておくといいでしょう。また、M&A仲介会社への報酬も、相場としては数百万円となります。さらに、デューディリジェンスを実施する場合は、その費用がかかりますし、最終譲渡契約書のリーガルチェック、役員変更登記などの総額も100万円程度かかる場合があります。
メリット・デメリット
| カテゴリ | メリット | デメリット |
| 起業 | ・ゼロイチの楽しさを味わえる | ・顧客・取引先開拓が難航する場合がある ・事業がなかなか軌道に乗らない場合、資金が減り続ける |
| M&A | ・従業員や顧客などを引き継げるため、立ち上がりから事業拡大を目指せる | ・簿外債務などを引き継いでしまうリスクがある ・従業員や顧客が離れていくリスクがある ・連帯保証の負担が大きい場合がある |
起業のメリット・デメリット
起業する場合、基本的にゼロから商品やサービスを開発して、流通の仕組みを作っていくことになるため、ゼロイチの過程を楽しめる人にとっては大きなメリットとなり得るでしょう。M&Aとは異なり、従業員や既存の顧客に気を遣う必要もないため、自分の思い通りの事業展開を実現できます。
逆にいうと、ゼロイチを楽しめない人には、ゼロから商品やサービスを作り上げなくてはならないことがデメリットといえます。顧客・取引先開拓が難航する場合もあるでしょう。また、事業がなかなか軌道に乗らず、資金が減り続ける一方となることも。
M&Aのメリット・デメリット
前述の通り、M&Aにおいては、従業員、取引先、顧客、許認可などを一括で引き継ぐことになるため、立ち上がりから事業拡大フェーズに集中することも可能です。場合によっては、前経営者が一定期間伴走してくれることもあります。
一方、事業承継後にデューディリジェンスで発見できなかった簿外債務が発覚するリスクや、前経営者への信頼のもと働いていた従業員や顧客が、M&Aを機に離れていくリスクもあります。また、M&Aにおいては借入金の個人連帯保証を引き継ぐことが一般的であるため、買収資金の借入と合わせて二重の負担になる可能性もあります。
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数字で見る、起業vs個人M&A
開業から5年を経過した企業の生存率は80.7%
中小企業庁が公表している「2023年版 中小企業白書」によると、日本では、開業から5年を経過した企業の生存率は80.7%とされています。逆にいうと、起業から5年以内に、約2割の企業は倒産・廃業しているということになります。
M&Aは引継ぎ1日目から黒字となる場合が多い
一方、M&Aの5年後生存率に関しては正式なデータは存在しません。しかし、既に顧客がついていることから、“理論上は”初日から売り上げが立つということになります。
ただし、たとえば1,000万円で買収しているのに、年間営業利益が300万円、借入返済が年間250万円などの場合、会社としては黒字であっても、オーナー個人のキャッシュフローは赤字ということになります。
また、設備更新、IT導入、人件費見直し、広告費増加など、買収後にテコ入れししたことで、初年度は赤字になるケースも普通にあります。
そのため、1日目から安定した黒字をキープし続けられるかどうかは、諸条件によって変わってくると思っておいたほうがいいでしょう。
「スモールM&A」の取引価格帯は300万円~
先程解説した通り、M&Aの取引価格帯は少なくとも数百万円ですが、業種によって大まかに次のような目安となります。
| 価格帯 | 案件イメージ | よくある業種 |
| 〜300万円 | 赤字・後継者不在の小規模事業、居抜き | 小売、飲食(小箱)、個人サロン |
| 300万〜1,000万円 | 年間利益100〜300万円規模 | 学習塾、訪問看護、Web制作、EC販売 |
| 1,000万〜3,000万円 | 年間利益300〜800万円規模 | クリニック、地域サービス、B to B下請け |
| 3,000万〜5,000万円 | 小規模法人の本格承継 | 医療法人、建設業、介護 |
このうち、これまで企業に勤めていたサラリーマンなどがチャレンジするとしたら、飲食、個人サロン、Web制作、EC販売あたりが多いでしょう。
そうなると、300万円弱~1,000万円弱が相場であるといえます。つまり、手ごろな案件だと、SUVあたりの中古車を買う感覚でM&Aにチャレンジできるということになります。
なお、案件によっては300万円を大きく下回るものもあります。
たとえば、東京都内のカフェの居抜き譲渡に関しては、売上高1,000~3,000万円の事業が希望譲渡価格220万円で売り出されているケースがあります。
参照:BATONZ 【内装改装済/SNS運用◎】キャストの採用力が強いコンセプトカフェの居抜き譲渡
ECサイトを利用したネット販売事業だと、売上高1,000~3,000万円の事業が希望譲渡価格300万円で売り出されているケースがあります。
参照:BATONZ 【1日1時間〜】国内・海外ECサイトを利用したネット販売事業の売却
参考までに、上記案件が紹介されている「BAZONZ」ては、希望譲渡価格0円の案件も多数掲載されています。
ここで1点、予算に関して大きな注意点があります。
300万円の案件を買う場合、事業の買収資金に加えて「M&A仲介会社・プラットフォームへの手数料」が発生します。多くの仲介会社では、手数料の割合計算とは別に「最低手数料(最低報酬額)」が設定されており、これが100万円〜300万円程度かかるケースも珍しくありません。つまり、「300万円で会社を買う」場合でも、手数料や専門家費用(デューディリジェンス費用など)を含めた総予算は500万〜600万円程度になる可能性がある**ことを念頭に置いておきましょう。
■個人M&Aを成功させるためのポイントは?
続いては、個人M&Aのステップごとに、M&Aを成功させるために必要なポイントを確認していきましょう。
各ステップにおける重要なポイントは次の通りです。
「何を買いたいか」を明確にする
まずは、「自分はどんな事業を買いたいのか」を明確にします。その際、「自分のスキル、培ってきた経験が活かせる領域」を考えるだけでなく、「自己資金+融資で確保できる総額はいくらであるのか」「週末のみの“副業型”で稼ぐことを目的としているのか、会社を辞めてフルタイムで事業に携わる“独立型”がいいのか」についても考えます。
加えて、サラリーマンが個人M&Aを検討するにあたり、**勤務先の就業規則の確認は絶対に避けて通れません。副業禁止規定に抵触しないか、他社の代表取締役や役員への就任が認められているかを事前に必ず確認してください。本業の収入という生活基盤を失うリスクを排除してから、M&Aの検討を進めましょう。
案件を探す
購入する事業の理想が固まったら、いざ案件を探し始めます。案件を探すためのもっとも一般的な方法は、M&Aマッチングサイトを活用する方法です。
マッチングサイトを活用するにあたっては、売上・利益・売却理由・従業員の有無などを必ずチェックすることが重要です。また、1件に絞り込む前に、10件以上は資料請求するようにしましょう。
代表的なM&Aマッチングサイトは次の通りです。
BATONZ(バトンズ)
登録専門家1,800社以上、新着案件毎月約800件以上の、日本最大級のM&Aマッチングプラットフォームです。利用料が発生するのは成約時のみで、成約時利用料は成約価格の2%(税込2.2%)です。M&Aが初めてでも安心して利用できるよう、取引条件・手続きのチェックや決済サポート、表明保証保険の自動付帯、安価なデューディリジェンスなどのサポートが充実しています。
TRANBI(トランビ)
挑戦したい個人・中小企業のための、M&Aや事業開発を中心とするイノベーションプラットフォームです。M&A案件掲載数2,000件以上、未経験者によるM&A成約率約75%、今すぐ交渉できる500万円以下の案件は200件超です。月額3,980円(税込4,378円)Noプレミアム会員になれば、売却希望価格500万円以下の案件に関しては、交渉権数制限なし、成約手数料無料となります。
M&A Cloud
買い手自ら売り手にコンタクトをとることができる、M&Aマッチングプラットフォームです。直接交渉可能なので、納得いくまで話し尽くすことができるのは大きなメリットですが、案件規模が大きめで、数千万円~数億円規模が中心の価格帯となるため、個人でスモール案件を探している場合は、情報収集のためにサイトを利用するのがいいかもしれません。
match.asia
英語が堪能で、グローバルに事業展開したいという思いがあるなら、アジア圏の事業売買プラットフォームを活用するのも一手です。一例として、「match.asia」は、国内外の中小企業・スモール案件を多彩に扱っています。
売り手と面談・交渉
興味のある案件が固まったら、売り手との面談・交渉をスタートします。
初回面談で投げかけるべき5つの質問
初回面談では、最低限、次の5つについては確認することが大切です。
✓なぜ今売るのか?
✓本当に引退? それとも業績悪化?
✓他に買い手候補はいる?
「後継者不在」は健全ですが、「資金繰りが厳しい」は要注意です。
また、売り手が答えた理由と決算内容が一致しているかもチェックします。
✓売上の何%がオーナー経由?
✓キーマンは誰?
✓引継ぎ期間はどれくらい可能?
特にスモールM&Aでは、オーナーが抜けた瞬間に売上が落ちるケースが多いため、その可能性があるのかどうかはしっかり確認しましょう。
✓売上推移
✓営業利益推移
✓一過性利益はないか
「黒字です」との答えだったとしても、「役員報酬が極端に低い」「修繕費を先送りにしている」というケースもあります。そのため、それらのポイントについても直接聞き出すことが望ましいといえるでしょう。
✓銀行借入残高
✓リース残債
✓未払残業代
✓訴訟・トラブルの有無
特に小規模企業は、社長個人の保証付き借入が多いので、これらは要確認ということになります。
✓従業員の勤続年数
✓退職予定者はいないか
✓売上上位3社の依存度
売上の50%以上が1社依存なら高リスクであるといえます。
【できれば聞きたい質問】
また、聞けるようなら、次の点についても聞いておくと安心です。
✓価格の根拠(=なぜこの金額なのか?)
✓運転資金はいくら必要か
✓引継ぎ後の関与意向
✓設備の前回更新時期
【面談で見るべき“数字以外”】
面談の際には、質問の答え以外に次の点についても目を見張らせることが大切です。
✓売主の誠実さ
✓話の一貫性
✓従業員への向き合い方
✓将来の不安をどう語るか
これらの質問への回答に対して違和感を覚えた場合は、なんらかの問題があると考えてほぼ間違いないでしょう。
価格交渉の基本: 年間利益の2~3年分が相場
個人M&Aにおける価格交渉の相場は、「年間利益の2~3年分」とはよくいわれます。ただし、“絶対ルール”ではなく、業種・安定性・リスクなどによって変動します。
まず、なぜ「2~3年分」といわれるかというと、スモールM&Aは投資というより「何年で元が取れるか」で考えるのが基本であって、個人にとって心理的に許容しやすい水準が3年以内と考えられるためです。
また、日本政策金融公庫の創業・事業承継融資などをはじめとする金融機関の融資年数は、5~7年程度の返済期間が一般的であるため、3年分であれば、返済しながらでもキャッシュが残りやすいことなども一つの理由といえます。
実際の相場レンジとしては、
を目安とするといいでしょう。
また、一般に「3年待てば事業の本質が見える」といわれることから、3年以内に改善できないとなると構造上の問題がある可能性が高いため、事業を続けていくうえでは「3年」は一つの大きな壁であるととらえることができます。
「なぜ売るのか?」の裏を読む方法
先に解説した通り、初回面談では、「なぜ今売るのか?」と直接売り主に問いかけることが重要です。しかし、この質問を投げかけたとしても、100%本音が返ってくるとは限りません。そのため、これも先に解説した通りですが、売り手が答えた理由と決算内容が一致しているかなどを厳しい目を持ってチェックする必要があります
「回答と決算内容が一致しているか」を含め、「なぜ売るのか?」の裏を読む方法は次の通りです。
売り手の説明が、たとえば「後継者不在」だった場合、直近3期の数字を確認して、利益の急減や借入の急増、売上の右肩下がりなどがないかどうかを確認します。
次のようなタイミングである場合、必ずそこに「売りたい理由」があると考えられます。
次のような「感情」が見て取れた場合、早く手放したい心理の現れであるといえます。
逆に、次のような「感情」が見て取れた場合、健全な承継の可能性が高いといえます。
などの質問で、売り手が何を残したいと思っているのかについての本音を探ります。
✓相場より安い
✓値下げにすぐ応じる
✓他候補がいない
→上記項目に該当する場合、資金繰り・健康に問題がある可能性が高いと考えられます。
✓高値で強気
✓時間をかける姿勢
→本当に急いでいない可能性が高いと考えられます。
典型的な“裏の理由”のパターンは次の表の通りです。
| 表の理由 | 裏で多い理由 |
| 後継者不在 | 実は収益悪化 |
| 高齢引退 | 実は設備老朽化 |
| 新事業挑戦 | 本業伸び悩み |
| 選択と集中 | キャッシュ不足 |
売り手は、うそをつくというより、「都合の悪いことを言わない」だけである場合がほとんどです。そのため、「質問の角度を変える」ことを意識することが大切です。
デューディリジェンスを実施する
個人M&Aの場合も、最低限のデューディリジェンスは実施することが大切です。“最低限”とは具体的にどんなポイントをチェックすればいいかというと、財務と法務です。
財務デューディリジェンス
財務デューディリジェンスでチェックすべきは、
です。
それぞれ詳しくみていきましょう。
【実質的なオーナーキャッシュフロー】
営業利益だけでなく、次の要素を足し引きします。
✓オーナー報酬(プラス)
✓減価償却(プラス)
✓設備更新必要額(マイナス)
✓正常化人件費(マイナス)
また、
✓オーナーが低報酬で利益を出していないか
✓将来の設備投資は必要ないか
などもチェックすることが大切です。
【売上の質】
✓売上上位3社依存度
✓単発かリピートか
✓契約書の有無
売上の50%以上が1社に依存している場合は要注意です。
【運転資金の実態】
✓売掛金回収サイト
✓在庫回転日数
✓買掛支払サイト
などをチェックします。
黒字でも運転資金で資金ショートはよくある話です。
【借入・簿外債務】
次の点についてチェックします。
✓銀行借入残高
✓リース債務
✓未払残業代
✓税金未納
✓個人保証の扱い
「保証引継ぎ条件」は必ず確認することが必要です。
【修繕・更新の先送り】
次の点についてチェックします。
✓設備更新時期
✓車両・IT機器の耐用年数
✓内装老朽化
これらをきちんとチェックしていないと、買収した直後に数百万円が必要となって泣きを見る場合もあります。
法務デューディリジェンス
法務デューディリジェンスでチェックすべきは、
です。
それぞれ詳しくみていきましょう。
【株式の帰属】
✓株主は誰か
✓名義株はないか
✓株券発行会社か
スモール企業は、株式管理がずさんなことが多いので要注意です。
【契約関係】
✓主要取引契約
✓解除条項
✓チェンジオブコントロール条項
特に、「代表が変わると契約解除」条項は要注意であるといえます。
【労務リスク】
✓就業規則の有無
✓未払い残業代
✓社会保険未加入
✓退職予定者
スモール案件は、ここが一番のトラブルの元となり得ます。
【許認可】
医療・介護・建設などの案件の場合、特に重要なポイントです。
例:
厚生労働省管轄の事業の場合、次の点について必ず確認する必要があります。
✓代表変更時の届出
✓承継可否
✓指定取消リスク
【訴訟・トラブル】
次のような問題がないかをチェックします。
✓現在進行中の訴訟
✓クレーム履歴
✓近隣トラブル
小規模M&Aでも損害賠償は致命的です。
デューディリジェンスの費用を抑えるコツ
本格的なデューディリジェンスは、数百万円~数千万円かかりますが、個人M&Aの場合、そこまでの費用をかけることはできません。では、どうすればいいかというと、税理士に「簡易デューディリジェンス(簡易DD)」を依頼するといいでしょう。
「簡易デューディリジェンス」とは、短期間・低コストで“致命的なリスクがないか”を確認する調査です。
目的は次の通りです。
✓買ってはいけない案件を除外する
✓価格交渉の材料を得る
✓本格的なデューディリジェンスを実施したほうがいいかを判断する
なお、「簡易デューディリジェンス」の費用は30万円弱で、所要日数は1日~2週間程度となります。確認の範囲としては、“致命傷がないかどうか”に重点を置いたざっくりとしたものになるため、専門家を使わないこともあります。
「簡易デューディリジェンス」の中身は次の通りで、さきほど解説した「財務デューディリジェンス」と「法務デューディリジェンス」の重要ポイントを押さえたものだといえます。
【財務の簡易確認(最重要)】
✓直近3期決算書
✓試算表
✓総勘定元帳(主要科目)
✓借入一覧
見るポイントとしては、「売上の急減はないか」「不自然な経費増減がないか」「役員報酬の調整」「キャッシュ残高の推移」となります。
【キャッシュフロー再計算】
営業利益ではなく、「実質オーナーキャッシュフロー」をざっくり算出します。
算出方法は次の通りです。
✓減価償却を足す
✓不要経費を除く
✓将来投資を差し引く
【借入・保証確認】
✓借入残高
✓個人保証
✓リース残債
【売上依存度確認】
✓上位顧客比率
✓契約書の有無
売上50%依存の場合、要再考と覚えておきましょう。
【法務の最低限チェック】
✓株主構成
✓許認可
✓訴訟有無
✓未払残業代
スモール案件では、労務リスクが最も爆発しやすいといえます。
契約・引継ぎ
「株式譲渡契約書」または「事業譲渡契約書」を作成して、M&Aの契約を締結します。引継ぎ期間の目安は3か月程度ですが、事業タイプなどによって次のように異なります。
| 事業タイプ | 引継ぎ期間の目安 |
| オーナー非依存(仕組み型) | 1~2か月 |
| 一般的な小規模事業 | 3か月 |
| オーナー営業型 | 3~6か月 |
| 医療・介護などの許認可系 | 6か月前後 |
| 高度専門職(士業など) | 6~12か月 |
引継ぎ期間が短すぎると、次のようなリスクが生じ得ます。
また、実務でよく使われる形としては、「3か月フル関与」のあとに「3か月スポット対応」の「3+3方式」です。後者の3か月に関しては、「困ったことがあったときなどに対応してもらう」ということになります。
なお、目安としては先に解説した通りですが、これだけの期間を要していればいいというわけではなく、もっとも重要なのは「密度」です。期間が長い・短いにかかわらず、次の点をおさえることが重要です。
クロージング後の「100日プラン」
契約・引継ぎが終わった後の「100日プラン」についてもあらかじめ考えておくことが大切です。
「100日プラン」を立てる目的は次の通りです。
「100日間で絶対に守るべき3原則」は次の通りです。
「100日プラン」を立てておらず、失敗する人のパターンは次の通りです。
→ 離職+売上減少のコンボの可能性が高まります。
「100日後の理想の状態」は次の通りです。
これらを踏まえたうえで、100日の間に実施する具体的なことをみていきましょう。
0~30日:安定化フェーズ
目標「何も壊さない」
「安定化フェーズ」において改革を始めると、失敗率が跳ね上がるので注意が必要です。
やること
-毎週資金繰り確認
-売掛・買掛の回収状況確認
-銀行面談実施
-全従業員と1on1
-不満・退職リスク把握
-評価制度の急変更禁止
-売主同席で紹介
-契約継続の確認
-不安のヒアリング
-業務フローを書き出す
-売主依存業務を洗い出す
「安定化フェーズ」において改革を始めると失敗率が跳ね上がるので要注意です。
30~60日:構造理解フェーズ
目標「どこが儲かっているかを知る」
やること
-商品別
-顧客別
-サービス別
→ 赤字部門を特定
-不要サブスク
-外注費
-家族給与
許認可系業種なら厚生労働省や自治体への届出確認
60~100日:改善開始フェーズ
目標「小さな成功体験を作る」
やること
例:価格改定/仕入れ交渉/広告最適化/業務効率化
大改革はNGです。
-月次売上
-粗利率
-営業キャッシュフロー
-決算説明
-将来計画共有
まずは「自分の会社がいくらか」を知るところから
ジョブカンM&Aでは、専任アドバイザーが事業価値の簡易査定から成約まで一貫して伴走します。相談は無料。売却・買収のどちらでもお気軽にどうぞ。
個人M&A 3つの失敗パターン
個人M&Aの代表的な失敗パターンは次の3つです。
それぞれ詳しくみていきましょう。
「隠れ負債」を見落とした
デューディリジェンスを省略した結果、税金未払い、残業代未払いなどの「隠れ負債」が、M&A契約締結後に発覚することがあります。
これを回避するためには、言わずもがな、簡易デューディリジェンスでも構わないので、デューディリジェンスを実施することが重要です。
売り手の「属人的な事業」を引き継げなかった
前オーナーの人脈・信頼に依存した売上が消えた結果、売上が大幅にダウンする可能性があります。
これを回避するための大原則は、「前オーナーについている売り上げを奪うのではなく、まずは共有しながら、徐々に移行させていく」ことです。
実務テクニックとしては、「三段階移行法」が役立ちます。
【三段階移行法】
1か月目:売主9割・あなた1割
2か月目:売主5割・あなた5割
3か月目:あなた8割
また、次の6つのポイントも重要になります。
最初の1か月は“影武者”になる
やること:
この時期は発言少なめにして、「空気を読む」ことに主眼を置きましょう。
売主からの“公式紹介”を必ず作る
重要なのは形式です。次のポイントをおさえて、「この人が後継者です」と売主の口から言ってもらいます。
✓書面通知
✓メール一斉連絡
✓同席訪問
顧客別に戦略を変える
A:売主信者型
→ 3~6か月並走します。
B:合理型(価格・品質重視)
→ 早期移行が可能です。
C:担当者ベース型
→ 現場責任者との関係構築が重要です。
顧客のタイプを分けないと失敗する確率が上がります。
“小さな約束”を守り続ける
信頼は、劇的な提案ではなく、次のポイントによって成り立つものです。
改革は最低3か月凍結
オーナー営業型ですぐ価格改定や商品変更をすると、「やっぱり前の社長がよかった……」ということになりかねません。これを防ぐため、100日間は守備に入ります。
売主を“味方”にし続ける
引継ぎ期間中は、次の点を守ることは鉄則です。
買い手がこれらを守っていないことから、買い手の心象が悪くなり、売主が裏で悪口を言うと、売上は一瞬で落ちます。
買収後の運営リソースを甘く見ていた
「副業のつもりが本業以上の時間を要求された」などがよくあるパターンです。
これを防ぐためには、次の3つが重要です。
それぞれ詳しくみていきましょう。
オーナー依存度を可視化する
面談で次のポイントを必ず聞きます。
✓売主の1週間のスケジュール
✓毎日必ずやっている業務
✓売主しかできない仕事
✓クレーム対応は誰がやるか
次のような答えが返ってきた場合、「危険サイン」だととらえることができます。
こうした案件の場合、副業向きではない可能性が高いといえます。
時間DD(タイムデューディリジェンス)を実施する
通常の財務DDではなく、「この事業は週何時間必要か?」を検証します。
やりかたは次の通りです。
A:自分しかできない
B:従業員に任せられる
C:外注可能
目安としては、週10時間以内であれば「副業安全圏」であると考えられます。
買う前に“自分が抜ける設計”を作る
まず、副業M&Aの鉄則として、「オーナー=プレイヤーの案件は危険」ということを覚えておきましょう。
理想の形は次の通りです。
上記をクリアできない場合、買取と同時に採用予算を組むことが必要です。
なお、副業難易度が高い業種は次の通りです。
反対に、副業に向いている業種は次の通りです。
■個人M&Aで使える資金調達方法
個人M&Aにはある程度の資金が必要です。ここで覚えておきたいのは、サラリーマンの最大の武器は「毎月の安定した給与収入による高い信用力(与信)」であるということです。ゼロから起業するよりも、この与信を活かして日本政策金融公庫などの金融機関から融資を引き出しやすいのが、サラリーマンM&Aの強みです。主な資金調達方法は次の通りです。
貯蓄や退職金などで全額賄えない場合、融資や補助金を活用することになりますが、どういった融資、どういった補助金があって、自分に向いているのはどういう方法であるのかがわからない場合、ジョブカンM&Aにお気軽にご相談ください。
この記事は、時点の情報を元に作成しています。
ジョブカンM&A ジョブカンM&A編集部
ジョブカンM&Aは、株式会社DONUTSが運営するM&Aアドバイザリーサービスです。主に企業の事業承継、成長戦略、出口戦略(イグジット)といった多様なニーズに応えることを目的としています。最大の特徴は、累計導入社数20万社以上を誇るバックオフィス支援クラウドERPシステム「ジョブカン」の広範なネットワークを活用している点です。この強力な顧客基盤を生かし、効率的なマッチングを実現します。
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