株式譲渡 vs 事業譲渡 完全比較|税金・手続き・リスクで選ぶべきケース

「会社を売るとき、株式譲渡と事業譲渡のどちらがいいですか?」

M&Aの相談でもっとも頻繁に出る質問のひとつだ。答えは単純ではない。税金だけ見れば売り手にとって株式譲渡が有利な場合が多い。しかし買い手の立場、売却したい事業の範囲、許認可の有無によっては事業譲渡を選ぶべきケースもある。

本記事では、株式譲渡と事業譲渡の違いを「税金・手続き・リスク」の3軸で徹底比較し、自社の状況にどちらが合っているかを判断できるよう解説する。


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目次
  1. まず押さえる:株式譲渡と事業譲渡、何が違うのか
    1. 譲渡する「対象」が根本的に異なる
  2. 税金の比較:手取りに大きく影響する最重要ポイント
    1. 株式譲渡の税金(個人オーナーの場合)
    2. 事業譲渡の税金(法人売り手の場合)
    3. 税負担の結論
  3. 手続きの比較:スピードと複雑さの違い
    1. 株式譲渡の手続きフロー
    2. 事業譲渡の手続きフロー
  4. リスクの比較:買い手・売り手それぞれの視点
    1. 買い手から見た違い
    2. 売り手から見た違い
  5. どちらを選ぶべきか?ケース別の判断基準
    1. 株式譲渡が向いているケース
    2. 事業譲渡が向いているケース
  6. よくある質問(FAQ)
  7. まとめ:判断の基準は「誰の利益を優先するか」

まず押さえる:株式譲渡と事業譲渡、何が違うのか

譲渡する「対象」が根本的に異なる

カテゴリ 株式譲渡 事業譲渡
譲渡の対象 会社の株式(会社ごと) 特定の事業・資産・負債(選択可)
法人格 買い手に移る 売り手会社は存続する
従業員 包括的に引き継ぎ 個別に同意が必要
取引先との契約 原則そのまま継続 個別に再契約が必要
許認可 原則そのまま引き継ぎ 買い手が新たに取得
簿外債務リスク 買い手が引き継ぐ 買い手は引き継がない
競業避止義務 なし 売り手に20年間適用

株式譲渡は「会社ごと売る」イメージだ。買い手は会社の良い面も悪い面も丸ごと引き受ける。手続きはシンプルで、中小企業のM&Aで最も多く使われる手法だ。

事業譲渡は「特定の事業だけ売る」イメージだ。売り手は会社を残しながら、一部の事業を切り離せる。買い手は必要な資産だけを選んで取得できる分、手続きは複雑になる。


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税金の比較:手取りに大きく影響する最重要ポイント

株式譲渡の税金(個人オーナーの場合)

個人が保有する株式を売却した場合、譲渡益に対して以下の税率が適用される。

税率:所得税15% + 住民税5% + 復興特別所得税0.315% = 合計 約20.315%(分離課税)


譲渡益 = 売却価格 ー (株式の取得費用 + 手数料等)
納税額 = 譲渡益 × 20.315%

【計算例】

  • 株式売却価格:3億円
  • 株式の取得費用:1億円
  • 譲渡益:2億円
  • 税額:2億円 × 20.315% = 約4,063万円
  • 手取り:約1億5,937万円
  • 個人オーナーが株式譲渡で得た利益は、他の所得と切り離して20.315%の一律課税となる。所得が高くても税率が変わらない点が有利だ。

    事業譲渡の税金(法人売り手の場合)

    事業譲渡では、利益が法人(会社)に帰属するため法人税等(実効税率約30%)が課される。さらに、土地以外の有形資産・棚卸資産・営業権(のれん)などの課税資産には消費税10%が加わる。

    
    法人税等 = (売却価格 ー 売却対象資産の帳簿価額) × 法人税実効税率(約30%)
    消費税 = 課税資産の売却価格 × 10%
    

    【計算例(同条件)】

  • 事業売却価格:3億円(うち課税資産2億円、非課税資産1億円)
  • 帳簿価額(純資産):2億円
  • 消費税:2億円 × 10% = 2,000万円(買い手が支払い、売り手が納税)
  • 法人税等:(3億-2億) × 30% = 3,000万円
  • 税引き後の法人の手残り:約5,000万円
  • さらにオーナーが法人から現金を取り出すには配当や役員報酬として支払うことになり、その際にも課税が生じる(二重課税構造)。

    税負担の結論

    カテゴリ 株式譲渡 事業譲渡
    課税主体 個人(株主) 法人
    税率目安 約20.315%(一律) 法人税30% + 消費税10%(課税資産に)
    手取り感 多くなりやすい 少なくなりやすい(二重課税リスクあり)

    売り手の立場では、税負担の面から株式譲渡が有利になることが多い。

    ただし、会社に多額の不要資産(土地・現預金等)がある場合は、事業譲渡で必要な部分だけ切り出すほうが全体の税コストを下げられる場合もある。税理士・M&Aアドバイザーへの相談を強く推奨する。


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    手続きの比較:スピードと複雑さの違い

    株式譲渡の手続きフロー

    株式譲渡は他のM&A手法と比べ、手続きがシンプルな点が最大の特徴だ。

    
    ①売買交渉・基本合意
    ②株式譲渡承認(取締役会 or 株主総会)
    ③デューデリジェンス(DD)
    ④株式譲渡契約書の締結
    ⑤クロージング(株式・代金の交換)
    ⑥株主名簿の書き換え
    

    中小企業の多くは「譲渡制限株式」を設けているため、取締役会または株主総会の承認が必要だ。ただし、それ以外に株主総会の特別決議は原則不要で、合併などと比べて手続きが少ない。

    標準的な期間:3〜6ヶ月程度(DDの規模によって前後)

    事業譲渡の手続きフロー

    事業譲渡は手続きが多く、時間がかかりやすい。

    
    ①売買交渉・基本合意
    ②株主総会の特別決議(事業の重要な一部以上の場合)
    ③デューデリジェンス(DD)
    ④事業譲渡契約書の締結
    ⑤各種個別手続き(従業員との再雇用契約、取引先への承諾取得、許認可の再取得)
    ⑥クロージング
    

    株主総会の特別決議が必要になるケース

  • 譲渡する資産の帳簿価額が、会社の総資産の1/5(20%)を超える場合
  • 特別決議には「出席株主の議決権の2/3以上」の賛成が必要だ。反対株主が多い場合や株主構成が複雑な場合はトラブルになりやすい。

    さらに許認可(飲食業の営業許可、建設業許可、医療法人認可等)は引き継がれないため、買い手が新たに取得する必要がある。許認可の取得に時間がかかる業種では、全体スケジュールが大幅に延びるリスクがある。

    標準的な期間:6ヶ月〜1年程度(許認可の再取得を含む)


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    リスクの比較:買い手・売り手それぞれの視点

    買い手から見た違い

    株式譲渡

  • 🔴 最大のリスク:簿外債務・偶発債務を引き継ぐ。買収後に未申告の税金、訴訟リスク、保証債務などが発覚するケースがある。DDで徹底的に洗い出すことが必須
  • 一方で、取引先との契約や許認可がそのまま継続するため、事業継続がスムーズ
  • 事業譲渡

  • 🟢 最大のメリット:必要な資産だけを取得でき、簿外債務を引き継がない
  • 取引先や許認可の引き継ぎが個別対応になるため、取引先に知られるリスクや、許認可再取得の手間が生じる
  • 売り手から見た違い

    株式譲渡

  • 🟢 税負担が少なく、手取りが多くなりやすい
  • 会社の全てを引き渡すため、売却後の関与が難しくなる
  • 競業避止義務は契約で定める場合はあるが、会社法上は存在しない
  • 事業譲渡

  • 🔴 競業避止義務が会社法で20年間自動適用される(同一市町村と隣接市町村での同業)。元の事業と同じ業種での起業・再開が長期間制限されるリスクがある
  • 一方、一部の事業だけを売り、会社は存続させたい場合は事業譲渡しか選択肢がない

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    どちらを選ぶべきか?ケース別の判断基準

    株式譲渡が向いているケース

    会社全体を売りたい、引退したい
    → 手続きシンプル、税負担が少ない

    許認可が事業の核になっている
    → 医療法人・建設業・飲食業など、許認可の再取得が困難な業種

    従業員の雇用をそのまま守りたい
    → 個別の再雇用契約が不要で、雇用条件が引き継がれやすい

    取引先との関係を維持したい
    → 取引先への個別通知・再契約が不要

    スピードを優先したい
    → 手続きが少なく、クロージングまでの期間が短い


    事業譲渡が向いているケース

    一部の事業だけを売りたい(会社は残したい)
    → 複数事業を持つ会社で不採算事業だけを切り離したい場合

    買い手がリスクを嫌がっている
    → 簿外債務リスクを避けたい買い手が多い業種では、事業譲渡のほうが交渉が進みやすい場合がある

    赤字事業・問題のある資産を切り離したい
    → 売り手が不要な負債・資産を切り落として、良い部分だけを売却できる


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    よくある質問(FAQ)

    Q. 株式譲渡と事業譲渡、どちらが多く使われますか?

    中小企業のM&Aでは株式譲渡が大多数を占める。手続きが簡便で、売り手の税負担が少ないため、非上場の中小企業オーナーにとって株式譲渡が最初の選択肢となることがほとんどだ。

    Q. 一人オーナーで全株を持っています。株主総会は必要ですか?

    株式譲渡の場合、譲渡制限株式に関する会社の「承認手続き」は必要だが、一人オーナーであれば実質的に自分で承認するだけで足りる。手続きは形式的にはあるが、複数株主によるトラブルは発生しない。

    Q. 買い手が「事業譲渡でないと買えない」と言ってきました。応じるべきですか?

    買い手側がDDで発見したリスク(簿外債務・訴訟等)を避けるために事業譲渡を希望するケースがある。この場合、売り手は税負担増・競業避止義務などのデメリットを負うことになるため、その分を売却価格に上乗せする交渉が必要だ。一概に応じる必要はなく、専門家とともに条件交渉することを推奨する。

    Q. 消費税の負担はどちらが重いですか?

    事業譲渡の場合、課税資産(土地を除く固定資産・棚卸資産・のれん等)に消費税10%が課される。買い手が消費税を支払い、売り手が納税する形になる。株式譲渡では株式自体は消費税の課税対象外であり、消費税は発生しない。


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    まとめ:判断の基準は「誰の利益を優先するか」

    株式譲渡と事業譲渡の選択は、「売り手の手取りを最大化するか」「買い手のリスクを最小化するか」のバランスで決まることが多い。

    観点 株式譲渡が優位 事業譲渡が優位
    売り手の税負担 ✅ 有利(約20%) ❌ 不利(30%+消費税)
    手続きの簡便さ ✅ シンプル ❌ 複雑・時間がかかる
    買い手のリスク ❌ 簿外債務あり ✅ 選択取得で回避可
    売り手の競業避止 ✅ 法定義務なし ❌ 20年間適用
    部分的な売却 ❌ 不可 ✅ 一部のみ売却可
    許認可の継続性 ✅ 原則引き継ぎ ❌ 再取得が必要

    多くの中小企業オーナーにとって株式譲渡が第一選択肢となるが、業種・事業構造・買い手の要望によって最適解は変わる。どちらが有利かは個別の状況によるため、M&Aアドバイザーや税理士に早めに相談し、シミュレーションを確認することが重要だ。

    ジョブカンM&A ジョブカンM&A編集部

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