PEファンド(プライベート・エクイティ・ファンド)とは、投資家から集めた資金で、非上場企業の株式を取得して企業価値を高めた後、その株式を売却してリターンを得ることを目的としたファンドのことです。投資家や企業はどのようにPEファンドを活用すればいいのか、また、活用するメリット、デメリットとしてはどんなことが考えられるのかなど解説していきます。
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PEファンドとは? わかりやすく仕組みを解説
PEファンド(プライベート・エクイティ・ファンド)とは、非公開株式に投資するファンドのことです。冒頭で述べた通り、投資家から集めた資金で、非上場企業の株式を取得します。「投資家」は個人の場合もあれば、事業会社や年金基金、機関投資家の場合もあります。
非公開株式に投資する目的は、非上場企業の価値を高めてから株式を売却することによって、利益を得ることです。売却の手法としては、IPO(株式公開)やM&Aなどが挙げられます。
もちろん、株式を取得しただけでは企業の価値は上がらないため、投資先企業に対して、経営のノウハウやネットワーク、人材などを提供して、経営に積極的に関わっていきます。投資先企業は、運用会社のファンドマネージャーが発掘します。
PEファンドの主なターゲットは?
PEファンドは、すべての非上場企業をターゲットにしているわけではありません。
PEファンドが主に投資する先は、後継者不在のオーナー企業、事業再生を必要としている企業、大企業の子会社などで、成長の見込みおよび安定した利益がある企業に投資する傾向にあります。
ただし、後述しますが、業績不振に陥っている企業、経営破綻寸前または既に経営破綻している企業にターゲットを絞って投資するPEファンドも存在します。特にこうした企業への投資は、必ずしも回収できるとは限らないため、リスクが大きいと言えます。これに関しても詳しくは後述します。
PEファンドの投資期間は?
前述の通り、PEファンドの目的は、非上場企業の価値を高めてから株式を売却して利益を得ることなので、一定期間投資する必要があります。しかし、10年を超える長期間にわたって投資し続けるとなると、売却して利益を得るという目的をなかなか達成できないことになります。
では、一般的にはPEファンドの投資期間はどのくらいかというと、3年から5年程度です。ただし、投資する企業の経営状況によっては10年以上の長期にわたって投資する場合もあります。無論、その間もPEファンドは企業の成長支援を続けるため、投資家は高いリターンを期待できるということになります。
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PEファンドの種類
PEファンドは、大きく次の4種類にわけることができます。
それぞれ詳しく解説していきます。
VC(ベンチャーキャピタル):創業~成長期の企業が対象
VC(ベンチャーキャピタル)とは、創業から間もないスタートアップや、成長段階にある企業への投資を専門におこなっているPEファンドです。
「スタートアップ」とは、革新的な技術やビジネスモデルを基盤に、短期間での急成長と社会価値の創造を目指す新しい企業のことです。一般的な新規事業や中小企業との違いは、「新規性」「イノベーション」「急成長」の3つの要素を要していることで、既存の市場にない価値を提供して、M&AやIPOをゴール(=イグジット)としています。
こうした特徴があるため、将来的に大きく成長することが見込めれば、VCとしては初期段階から投資したいと考えるものですが、実績が不足していることから、一般的な銀行融資は受けるのが難しい傾向にあります。
また、実績だけでなく、ノウハウや人材も不足しているスタートアップ、成長段階の企業にとっては、VCからの経営面に対する手厚いサポートは大変有意義なものになります。たとえば、経営陣へのアドバイス、ビジネスパートナーの紹介、マーケティング戦略の立案などに関しての支援をしてもらえるほか、VCから役員を派遣してもらえることもあります。
バイアウトファンド:安定・成熟期の企業が対象
バイアウトファンドとは、株式の取得によって企業の経営権を取得したうえで、経営改革を実施して企業価値を高め、最終的に売却して利益を得るタイプのPEファンドです。
バイアウトファンドが投資の対象としている主な企業は、すでに一定程度成長しているものの、そこから伸び悩んでいる企業です。また、親会社から独立する子会社などもターゲット企業となります。
この手の企業の価値を向上させるためには、経営陣の刷新、経営戦略の立案と実践、成長の妨げとなっている要因の分析および除去などが必要です。たとえば、無駄なコストが発生していることで、必要なところに十分な予算をかけられていないことが判明した場合、無駄なコストの削減をおこないますし、必要に応じて、不採算部門の整理や新規事業への投資などをおこなうこともあります。
(企業)再生ファンド:衰退・再成長期の企業が対象
(企業)再生ファンドとは、業績不振に陥っている企業の経営の立て直しを目的としたPEファンドです。売り上げの低迷や赤字が続いているものの、再生の可能性がある企業が主なターゲットで、早期に経営改善することによって、健全な経営状態に戻すことを目指します。そのため、既に倒産の危機にある企業は対象とはなりません。
ただし、100%の確立で健全な状態に戻すことができるというわけではなく、経営状況が改善しなければ倒産する可能性はあるため、投資のリスクは比較的高いといえます。
再生ファンドは、事業の選択と集中、資金繰りの改善、組織のスリム化をはじめ、それぞれの企業の状況に応じた再生プランを策定して実践していきます。
ディストレストファンド:破綻寸前または破綻した企業が対象
英語で「困窮した」「苦しんでいる」を意味するディストレスト(Distressed)は、金融や不動産の分野では、「経営難に陥った」「財政的に困窮した」を意味します。つまり、「ディストレストファンド」とは、経営破綻寸前または既に破綻している企業の再建や株式を安値で取得して、経営再建後の価値上昇を狙うPEファンドのことです。
経営破綻によって企業価値が大幅に下落していることから、少ない投資額で大きな持分を獲得することが可能で、再建に成功した場合のリターンが格段に大きくなる可能性があります。ただしもちろん、債権が失敗する可能性もあります。
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PEファンドの運用ステップ
PEファンドの運用ステップは大きく次の6つにわけられます。
それぞれ詳しくみていきましょう。
ファンドレイズ(資金調達)
ファンドの運営者であるGP(ゼネラル・パートナー)がPEファンドを組織して、投資家から出資を募るステップです。
なお、PEファンドなどにおける投資家は、GPに対して「LP(リミテッド・パートナー)」と呼ばれることがあります。GPは、資金調達から投資先の選定、価値向上、売却に至るまでのファンド運営に対して無限責任を負っている一方、LPは、出資額を上限として責任を負う「有限責任組合員」ということになります。
このステップでは、ファンドの投資方針決定後、LP候補にアプローチして投資を打診します。この際、GPはLP候補に対して、投資方針に加えて、目標リターンや運用期間なども明確に提示して、賛同を得る必要があります。
投資家からの投資額が目標金額に到達するまでには、数か月から1年以上かかることもあります。GPに実績がある場合などは、早期に目標金額に達する場合もあります。
ソーシング(投資先の発掘)
ソーシング(sourcing)は、英語で、製品の原材料や部品、サービスなどの調達先を特定・評価・選定して取引条件を確定するプロセスを意味します。投資においては、投資対象となる案件を発掘するプロセスを指し、具体的には次のような手法が使われます。
M&A仲介会社からの案件紹介
M&A仲介会社から紹介を受けた案件のなかから、PEファンドの投資方針に合致する投資先を見つけます。
金融機関からの紹介
金融機関に持ち込まれる事業承継に関する相談案件から、PEファンドのターゲット像に合う企業を見つけます。
オーナー社長へのアプローチ
後継者不在に悩んでいるオーナー社長に対して、事業承継問題の解決や相続税対策にPEファンドを活用することを提案します。
企業へのアプローチ
特定の事業部門や子会社を本体から切り離して、分社化または他社へ売却する事業再編手法である「カーブアウト」を検討している企業に対して、PEファンドの有している経営ノウハウなどを活用する方法を提案します。
エグゼキューション(案件の実行)
エグゼキューション(Execution)とは、「実施・実行」を意味する英語で、M&Aやマーケティング戦略、投資においては、計画を実際に進めていく実行段階のプロセス全体を指します。
具体的には、企業価値算定、デューデリジェンス、交渉など、投資を実行するために必要な実務すべてが含まれます。デューデリジェンスに関しては、財務状況、法務リスク、事業の将来性などを詳細に調査することで、企業をしっかり分析していきます。
全ての実務が完了したら、最終契約を交わします。
バリューアップ(運用)
バリューアップとは、企業価値を向上させるために、さまざまな施策を講じるステップです。
利益率の改善といった「守り」だけでなく、DX(デジタルトランスフォーメーション)の導入による業務効率化、アドオン買収(同業他社の買収)による規模の経済の追求、海外販路の開拓など、多角的な施策を通じて「攻め」の企業価値向上を図ります。
売上高を上げるために実践することは、製品単価の引き上げ、製品ラインナップの強化、店舗拡大、新規出店などです。利益率改善のためにおこなうことは、利益率の低い製品やラインナップの見直し、オンライン化などです。これらを実践することで、各部門における不要な経費を削減できます。
また、必要に応じて、不採算事業からの撤退、新規事業への参入などの戦略転換をおこなうこともあります。
イグジット(投資資金回収)
企業価値が十分に高まったら、保有株式を売却して投資資金を回収する「イグジット」を実行に移します。
イグジットの代表的な方法は、IPO(株式公開)による市場での売却、M&Aによる他の企業への売却ですが、最近では、別のPEファンドへ売却する「セカンダリーバイアウト」も一般的です。これは、「中堅から大手へ」「国内から海外へ」といった、企業の成長ステージに合わせた次の支援者にバトンを繋ぐという意味合いが強まっています。
これらのうちどの方法を採用するかは、市場環境や期待リターン、企業の状況などを鑑みて総合的に判断します。
収益分配
イグジットによって得られた資金は、まず、投資家(LP)が出資元本を全額回収した後、残りの利益部分がLPとGPで分配されることになります。このうち、GPへの成功報酬は「キャリード・インタレスト(Carried Interest)」と呼ばれます。キャリード・インタレストは、PEファンドの重要な収益源です。
なお、PEファンドは一般的に複数の案件を同時に運用しますが、すべての投資案件をイグジットさせて投資家への分配が完了した時点で、PEファンドとしての一つのライフサイクルが終了したことになります。PEファンドの一つのライフサイクルは約10年間で、運用期間が終わりを迎えると、新たなPEファンドの組成へと向かうことになります。
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PEファンドの同時運用案件数は?
PEファンドはなぜ、一般的に複数の案件を同時運用しているかというと、1社のみへの投資だとリスクが大きすぎるからです。そのため、複数社に分散投資することで、ポートフォリオ全体でリスク管理をおこなうのが一般的です。
投資先の数としては5~15社程度で、投資期間の目安は3~5年、回収期間の目安は5~10年です。もちろん、すべての投資先の株式取得やイグジットなどがまったく同じタイミングでおこなわれるわけではなく、“すべての案件が終わるまでに10年程度かかる”ということになります。
なお、一般的には複数案件を同時運用しますが、カーブアウト案件専用ファンドなどの場合、単一案件のみを扱うこともあります。
PEファンドを活用するメリット
PEファンドを活用するメリットとしては、次のようなことが考えられます。
【企業にとってのメリット】
【投資家にとってのメリット】
それぞれ詳しくみていきましょう。
【企業にとってのメリット】
企業価値向上が期待できる
PEファンドの目的は、投資先の企業価値を向上させて売却することなので、企業価値が向上する可能性は高いといえます。PEファンドからの出資を受けると、ファンド側から、業務改善・経営改革に必要な専門家や役員が派遣されるため、新たな管理体制・経営手法によって業務が効率化されることが期待されます。
資金提供を受けられる
PEファンドは複数の投資家から資金を調達しているため、潤沢な資金を提供してもらえます。しかも、ファンドからの出資金は株式資本(エクイティ)に該当するため、返済義務および金利負担がありません。
企業文化を維持しやすい
事業継続が困難となった企業が生き残りを目指すための選択肢としては、PEファンドの活用以外に、競合他社からの買収を受け入れることが考えられますが、後者の場合、買収側の企業文化や経営方針に従わなければならない可能性が高いといえます。一方、PEファンドに出資してもらう場合、契約締結後の経営方針について、共同で考えられる場合があります。そのため、自社の企業文化を保ちやすいといえます。また、出資にあたって提示された条件に従えない場合、出資を断って、他のPEファンドと契約を締結することも可能です。
後継者問題の解決につながる
後継者が見つからないことから、いずれは自社を売却したいと考えている企業の場合、PEファンドを活用して売却というイグジットに向かうことで、後継者問題も解決できます。しかも、出資するPEファンドは、可能な限りよい条件で売却できるよう努めるため、企業にもメリットが大きいといえます。
自社に足りない部分を補ってくれる人材を紹介してもらえる
PEファンドは、投資先企業にどのような人材が必要であるのかを見極めたうえで、適任者を紹介してくれる場合があります。優秀な人材の紹介は、企業価値向上にもつながります。
【投資家にとってのメリット】
高いリターンが期待できる
上場株式への投資は、基本的に市場全体の動向や個々の企業の業績にリターンが左右されますが、PEファンドに投資する「PE投資」の場合、PEファンドが経営に深く関与してバリューアップ活動をおこなっていくため、株式市場の平均を上回る高いリターンが期待できます。なお、市場平均を上回る超過収益・異状リターンのことを「アルファ(Alpha)」といいます。
買収側が買収資金確保のために金融機関からの融資を受けるにあたって、対象企業が保有している資産および将来的なキャッシュフローを担保する仕組みであるLBO(レバレッジド・バイアウト)を活用した場合、レバレッジ効果によってさらにリターンが増幅される可能性もあります。
分散投資効果が期待できる
PE投資の対象である未公開企業の価値は、株式市場の動向に直接的には連動していません。上場株式市場は短期的なニュースや市場心理で大きく変動する性質がある一方、PE投資の価値は、投資先企業の中長期的なファウンダメンタルズの改善によって決まるのです。
そのため、ポートフォリオの一部にPE投資を組み入れると、市場全体の暴落時にも、資産価値の目減りを抑制することができます。
投資先の成長に直接関与できる
投資家は、自分が出資した資金が、企業の成長や再生、または新しい産業の創出にどんなふうに役立てられているのかを、GPからのレポートを通じて知ることができます。VC(ベンチャーキャピタル)であれば、自分の出資金が革新的な技術を持つスタートアップの支援に使われることがありますし、再生ファンドであれば、自分が出資したことで、経営難に陥っている企業が救われたことを知る機会もあります。そのため、投資に対する満足感や手ごたえを得やすいでしょう。なお、社会や経済にポジティブなインパクトを与える投資のことを「インパクト投資」といいますが、PE投資にはまさしくそうした側面があります。
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PEファンド選びで失敗しないための「相性」のチェックポイント
PEファンドはどこも同じではありません。以下の3点は、契約前に必ず確認すべき重要事項です。
過去の投資実績(トラックレコード): 同業種や似た規模の企業の支援経験があるか。
担当者のコミットメント: 月に数回会議に来るだけなのか、常駐に近い形でハンズオン支援を行うのか。
ファンドの「色」: コストカットによる利益捻出が得意な「財務系」か、事業成長を重視する「事業系」か。
PEファンドを活用するデメリット・注意点
PEファンドを活用するデメリット・注意点は以下の通りです。
【企業にとってのデメリット・注意点】
【投資家にとってのデメリット・注意点】
それぞれ詳しくみていきましょう。
【企業にとってのデメリット・注意点】
経営の自由度が低くなる場合がある
PEファンドからの出資を受けている以上、経営方針に関してはファンド側の意向に従う必要があります。PEファンドは、基本的に利益に直結する選択をするため、たとえ社内で大事にされてきた事業であっても、利益が見込めないと判断すれば、縮小・廃止の判断を下すことがあります。つまり、経営の自由度が制限されるということです。
従業員のリストラがおこなわれる場合がある
利益を追求するうえでは、必要に応じて従業員をリストラすることがあります。その可能性があることを理解したうえで契約を締結しなければ、後々、PEファンドと衝突する可能性があります。
借入金の返済が必要な場合がある
前述の通り、PEファンドからの出資金は株式資本(エクイティ)に該当するため、基本的には企業側には返済義務および金利負担がありません。
ただし、PEファンドがLBOでの買収を検討している場合、対象企業側に借入金の返済義務が生じるため注意が必要です。LBOの融資は事業融資よりも高額ですが、同様に金利も高いのが一般的であるため、返済義務が生じることによって、資金繰りが悪化したり運転資金の確保が困難になったりする可能性があります。
そうした事態に陥ることを防ぐためにも、PEファンドがLBOの活用を視野に入れている場合、契約を締結すべきかどうか重々考えることが必要です。また、投資を受けた後の財務状況を予測したうえで、投資を受けるかどうかを考えることも大切です。
LBOによる買収は、実質的に「自社の信用と資産で借金を背負う」仕組みです。 買収後のキャッシュフローの大半が元利金の返済に充てられるため、新規の設備投資や研究開発が制限されるリスクを強く認識しておく必要があります。
支援が受けられない場合がある
企業側がPEファンドからの支援を希望していても、PEファンド側から「この企業に投資しても利益を出すことは難しいだろう」と判断された場合、支援を受けられない可能性が高いといえます。そのため、後継者問題の解決のためにPEファンドの活用を検討している場合などは、別の選択肢についても考えることが必要です。
短期的な利益を追求される場合がある
PEファンドは、おおよそ3年~10年のうちに投資を回収してリターンを確定させる必要があります。そのため、PEファンド自体にも、「企業の持続的な成長を成功させたい」という思いがあったとしても、出口戦略が最優先となり、長期的な視点での成長戦略は後回しにされる傾向にあります。たとえば、研究開発費や設備投資をはじめとした、将来への投資は抑制されて、短期的な利益の捻出に力を入れるようプレッシャーをかけられることもあります。
自社の規模や業種に適したPEファンドを見極める必要がある
先に解説した通り、PEファンドは得意とする分野・専門とする分野などによって大きく4種類にわけられます。また、運用の仕方などに対する考え方やノウハウは各PEファンドによって異なるため、まずは自社の規模や業種に適しているファンドであるかどうか、目指すイグジットが納得できるものであるのかどうかなどを確認することが不可欠です。こうした確認を怠ったまま契約を締結すると、自社の企業価値が向上しないまま終わってしまう可能性も否めません。
なお、企業自ら、自社に適したPEファンドであるかどうかを見極めるのは至難の業です。ファンドの見極めは、M&A仲介業者、税理士、会計士などの外部の専門家に依頼するのが一番です。
最終的にイグジットしなければならない
PEファンドを活用する以上、イグジットは必須です。イグジットすれば、経営権は新たな株主に移るため、イグジット後の経営を見据えて計画を立てていくことが必要です。また、イグジットによって経営権が新たな株主に移る前提だと、従業員のモチベーションが低下する可能性があります。それを見越したうえで、社内組織への配慮および整備をおこなう必要があります。
【投資家にとってのデメリット・注意点】
投資先によってはリスクが高い
基本的に投資にはリスクがつきものですが、PE投資に関しても、高いリターンが期待できる一方、リスクも高い投資先があります。
投資のハードルが高い
PEファンドへの主旨は、金融商品取引法などの規制によって、一定の資産を有している「特定資産家」あるいは「適格機関投資家」などに限定されている場合がほとんどです。なぜかというと、投資家保護の観点から、PE投資のリスクの高さや複雑性を十分に理解したうえで、損失を許容できる投資家のみ参加を認める措置が取られているためです。
そもそも、PE投資の最低投資金額は非常に高額です。一般的に、機関投資家向けファンドの場合、数億円から数十億円の出資が求められますし、富裕層向けの場合でも、数千万円から一億円以上での出資が求められます。
こうした理由から、資金力だけでなく、投資家としての適性も兼ね備えている投資家であることが参加の必須条件となります。
流動性(換金性)が低い
前述の通り、PEファンドの投資期間は一般的に10年未満です。案件がイグジットするまでは、投資家は出資持分を中途解約することも、現金化することも認められていません。上場株式や投資信託であれば、市場で自由に売買することができますが、PE投資はそうはいかないため、急に現金が必要になった場合でも簡単に引き出すことができません。
なお、近年は投資家の持分を売買する「セカンダリー市場」も形成されてきていますが、セカンダリー市場の規模は今のところ限定的で、希望する価格やタイミングで売却できるとは限りません。つまり、当面使う予定のない余裕資金がなければ、PE投資は難しいということになります。
情報開示が限定的である
PEファンドの投資対象は未公開企業です。そのため、上場企業のように、四半期ごとに詳細な財務状況や経営状況を確認することができません。ただし、PEファンドの運営者であるGPは、投資家であるLPに対して説明責任を負っており、四半期や年次のレポートを通して、ポートフォリオ全体の状況や個別の投資先企業の進捗を説明します。しかし、GPによる評価額(時価評価)が妥当であるかどうかは、外部から検証することは難しく、LPはGPの能力と誠実性については信頼するほかありません。
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PEファンド、PE投資に関するFAQ
ここからは、PEファンド、PE投資に関するよくある疑問とその答えをみていきましょう。
Q. LBO(レバレッジド・バイアウト)、MBO(マネジメント・バイアウト)の違いは?
先に述べた通り、LBO(レバレッジド・バイアウト)とは、買収側が買収資金確保のために金融機関からの融資を受けるにあたって、対象企業が保有している資産および将来的なキャッシュフローを担保する仕組みで、特に、バイアウトファンドが企業を買収する際に使われる手法です。
一方、MBO(マネジメント・バイアウト)とは、企業の経営陣がPEファンドなどの金融支援者と協力して、既存の株主から自社の株主を買い取って、企業のオーナーとなる手法です。経営陣(Management)による買収(Buyout)であるため、この名で呼ばれています。
LBOの詳しい仕組み、MBOのプロセスは次の通りです。
LBOの仕組み
MBOのプロセス
Q. 個人の投資家はどうすればPEファンドに投資できるのですか?
前述の通り、PE投資は基本的に機関投資家や超富裕層をはじめとするプロ向けの市場です。そのため、一般の個人投資家が参加するケースは極めて少ないといえます。ただし、「絶対にできない」ということはなく、たとえば次のような方法で投資することは可能です。
PEファンドに直接出資する
PEファンドは私募形式で資金を募るため、出資するためには、GPから直接または仲介者を通じて勧誘される必要があります。そのため、勧誘されない限り、この方法で出資することはできません。
さらに、前述の通り、投資金額は最低でも数千万円必要で、金融商品取引法上の「適格機関投資家」または「特定投資家(いわゆる富裕層)」としての要件を満たす必要があるため、あまり現実的な方法とはいえないかもしれません。
PEファンドに投資する公募投資信託を購入する
PEファンドに投資する公募投資信託を購入する方法は、一般の個人投資家にとってもっとも現実的です。この形式は「ファンド・オブ・ファンズ」と呼ばれるもので、投資信託が投資家から集めた資金を、さらに複数のPEファンドに分散して投資するという仕組みで成り立っています。
公募投資信託は、証券会社によっては数万円程度の少額から購入可能です。しかも、大手証券会社や銀行窓口、またはネット証券を通じて手軽に購入できるうえ、投資するPEファンドは、投資信託を運用する専門家が吟味してくれるため安心です。
ただし、通常の株式投信とは異なり、購入後数年間は解約できない「ロックアップ期間」が設けられているケースがほとんどであることや、投資信託の運用会社に支払う信託報酬のほかに、PEファンドが徴収する管理報酬や成功報酬も発生することなどはデメリットであると感じる人もいるかもしれません。
証券会社や銀行を通して投資する
大手証券会社や銀行のなかには、自社で選定したPEファンドを、顧客である個人投資家に対して小口で販売しているところがあります。特に、富裕層向けのサービスを提供しているプライベートバンク部門には、こうした商品が用意されているケースが多いでしょう。
ただし、“個人投資家”とはいえ、基本的には金融機関との取引額が大きい富裕層顧客向けのサービスであるあめ、利用のハードルは高いといえます。
投資助言会社を通して投資する
近年、個人投資家がPE投資にアクセスするための有力なチャネルとなりつつあるのが、個人向けにもPE投資、ヘッジファンド、不動産などのオルタナティブ投資への投資機会を提供している、投資助言会社や、専門のプラットフォームです。
この方法なら、特定の金融機関に縛られることなく、幅広い選択肢のなかからファンドを比較検討することができます。ただし、こうした投資助言会社や専門のプラットフォームを利用する場合も、一定の金融資産は求められます。
Q. 日本国内にはどんなPEファンドがありますか?
国内の代表的なPEファンドは次の通りです。
株式会社アドバンテッジパートナーズ
1992年に設立された「株式会社アドバンテッジパートナーズ」は、日本国内におけるPE投資の草分け的存在です。消費財、ヘルスケア、IRなど多岐にわたる業種の企業への投資実績を有しています。主に、日本国内の大手・中堅企業を対象としたバイアウト投資、カーブアウト案件、事業承継案件などを手掛けていますが、近年はアジアでの投資活動も展開しています。
日本産業パートナーズ株式会社(JIP)
企業から事業再編のために分社化(戦略的カーブアウト)された事業部門・子会社等のほか、事業再構築に取り組む企業、市場環境に合わせて事業構造・ビジネスモデルの転換に努める企業などを投資の対象としています。グローバル競争のなかで、日本産業の構造転換や事業再編が進行すれば新たな事業機会も得られるとの考えのもと、既存事業・産業を変革する意志をもった企業家・経営陣と協力。時代の要請に合致した新たな事業・産業を構築することによって、本来その事業・産業が有していた潜在的な力を引き出せるよう支援することを事業目的としています。
インテグラル株式会社
「Trusted Investor=信頼できる資本家」を目指して、資本家(キャピタル)と経営者(イノベーション)が強い信頼関係のもと、共通の目標を持って、時代の変化に立ち向かい続けることによって、企業を発展に導いているPEファンドです。投資ファンドからの出資(エクイティ投資)と、同社自らの資金を使う「プリンシパル投資」を組み合わせた投資に特徴があります。
J-STAR株式会社
「優れた経営者・幹部社員の存在」「J-STARが関与することによる付加価値増大」「ビジネスモデルの特異性・優位性」を投資基準として、投資先企業の状況に合わせて柔軟なソリューションを提供しています。ニッチな製造業や、特定市場に強いブランド、海外での事業展開が可能な技術力などを投資テーマとして、事業会社等の第三者への譲渡、マネジメント・バイアウト、IPOなどをおこなっています。
ポラリス・キャピタル・グループ株式会社
「日本のプライベートエクイティ市場の中心的な役割を果たすと共に日本企業の再編・再構築の道しるべとなる」を目標に、北極星を意味する「ポラリス」を社名として採用。金融グループ発の独立系プライベート・エクイティ・ファームとして、金融グループ系の強みである「ネットワーク力」を有効活用。国内外のさまざまな金融グループ、プロフェッショナルファーム、経営者などとの間で独自のネットワークを構築して、事業承継、カーブアウト、成長支援などのニーズに対応しています。
Q. PEファンドへの就職・転職は難しいですか?
PEファンドへの就職・転職は一般的に難易度が高いといわれています。なぜかというと、第一に、採用人数が極端に少なく、1ファンドあたり年に1名~数名というケースがほとんどで、しかも「欠員が出た場合のみ採用」であることが挙げられます。
また、PEファンドの仕事は「投資して・企業の価値を上げて・売却する」ことなので、財務・会計・企業価値評価、M&A実務、経営改善・ハンズオン支援など幅広い知識やスキルが求められます。しかも、入社初日からこれらの能力が期待されます。ポテンシャル採用はほぼありません。
さらに、上記に紹介した、日本国内の代表的PEファンドのメンバーをホームページで見てもわかる通り、投資銀行(IBO)、戦略コンサル、総合商社などの出身であるか、もしくは他のPEファンドを経験している人がほとんどです。一般事業会社の経歴しかない場合、難易度はかなり高いといえるでしょう。
そのため、なんとしてもPEファンドで活躍したいという強い思いがあるなら、まずは戦略コンサルあるいはM&Aポジションなどについて知識やスキルに磨きをかけて、チャンスが訪れるのを虎視眈々と待つのが近道だといえます。あるいは、PEが投資した会社のCFO/経営企画などの座に就き、「投資先からファンド側へ」という逆流ルートを狙う手もあります。
もうひとつの方法としては、再生(Turnaround)、医療・IT・製造などの業界特化、データ・DX強化要員など、なんらかの専門性を身に付けると、特定のPEファンドからは興味を持ってもらえる可能性もあります。
まとめ:PEファンドは企業の「第2創業」を支えるパートナー
ここまで解説してきた通り、個人投資家がPEファンドに投資するハードルは高いですが、企業にとっては、PEファンドを活用するハードルは高くはありません。ただし、前述の通り、企業の経営状況によっては投資してもらえないこともありますが、資金調達や経営支援、事業承継問題の解決などを目指しているなら、活用を検討するといいでしょう。PEファンドは企業にとっての「第2創業」を支えるパートナーとなり得るので、二人三脚で企業を再生していけるよう、自社のニーズに合うファンドを選んでくださいね。
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この記事は、時点の情報を元に作成しています。
ジョブカンM&A ジョブカンM&A編集部
ジョブカンM&Aは、株式会社DONUTSが運営するM&Aアドバイザリーサービスです。主に企業の事業承継、成長戦略、出口戦略(イグジット)といった多様なニーズに応えることを目的としています。最大の特徴は、累計導入社数20万社以上を誇るバックオフィス支援クラウドERPシステム「ジョブカン」の広範なネットワークを活用している点です。この強力な顧客基盤を生かし、効率的なマッチングを実現します。
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