自社の事業のすべてあるいは一部の運営を続けていくことが困難になったとき、とるべき選択肢はいくつか考えられます。そのなかで代表的なものが、M&Aの手法である「事業譲渡」や「株式譲渡」、親族等へ継ぐ「事業承継」、そして会社を畳む「廃業」です。特にM&Aを検討する場合、**会社を丸ごと売るのか(株式譲渡)、事業のみを売るのか(事業譲渡)によって、手元に残る金額や手続きが大きく異なります。
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事業譲渡とは
事業譲渡とは、M&Aの手法のひとつで、企業が自社の事業の一部または全部を第三者に売却することをいいます。譲渡対象には、工場や機械設備、不動産、在庫をはじめとする有形資産のほか、負債、契約関係、従業員、ブランド、ノウハウなどが含まれることもあります。
事業譲渡の大きな特徴として、「個別承継」が挙げられます。個別承継とは、包括的に一括移転する「包括承継」ではなく、譲渡する対象ごとに譲渡契約を締結することをいいます。従業員を譲渡する場合は一人ひとりの同意が必要ですし、取引先との契約を譲渡する場合は相手方の承諾、債務を譲渡する場合は債権者の同意が必要です。なお、事業のすべてを承継する場合でも、個別承継で承継することになります。
こうした特徴があることから、事業譲渡は、不採算事業の整理・撤退、コア事業への集中、事業再生・再編、後継者問題の解決などを目的におこなわれることがあります。また、譲受する側は、新規事業への参入・事業規模の拡大、シナジー効果の追及などを目的に事業譲渡契約を締結します。
事業譲渡のメリット
事業譲渡のメリットは次の通りです。
(譲渡する側のメリット)
(譲受する側のメリット)
それぞれ詳しくみていきましょう。
事業を選別して売却できる
不採算事業や、将来性の低い事業のみを切り離して売却することが可能です。これによって、会社にとって必要な事業を残しながら、財務体質の改善を図れます。
不要な資産・負債を切り離すことができる
不要な事業だけでなく、不要な資産や負債も切り離すことが可能です。譲渡する側にとっては不要な資産・負債であっても、譲受する側にとってはメリットが大きい資産・負債ということはあり得るためです。
売却対価を得られる
売却対価は原則、現金とされています。対価として得た現金は、借入金返済や事業債投資などに活用することができます。
法人格が消滅しない
事業譲渡をおこなっても会社そのものは消滅しません。そのため、すべての事業を売却したとしても、新たな分野で事業を立ち上げることなどが可能です。
必要な資産・負債のみ承継することができる
譲受する側から見ると、自社に必要な資産や負債のみ引き継ぐことができるのは大きなメリットです。なお、なぜ負債を引き継ぐことが必要なのかというと、第一に、「引き継いだ事業をそのまま回すため」です。たとえば、リース料、外注費の未払い分、保守契約に基づく支払い義務、仕入れ代金の未払い金などがその例です。
また、従業員を引き継ぐ場合、未払い給与や未払い残業代などを引き継ぐというケースもあります。そのほか、長期リース契約やクラウド・ITサービスの利用契約など、契約上、負債とセットでないと引き継げないというパターンもあります。
新規事業へのスピーディな参入・規模拡大が叶いやすい
譲渡する側が有している顧客基盤や事業基盤、ノウハウを取得すれば、自社でセロから事業を立ち上げる場合と比べて、スピーディに新規事業に参入しやすいといえます。また、事業規模の拡大も叶いやすいです。
事業譲渡のデメリット
事業譲渡のデメリットは次の通りです。
(譲渡する側のデメリット)
(譲受する側のデメリット)
それぞれ詳しくみていきましょう。
個別承継の手続きが複雑
前述の通り、譲渡対象となる資産や負債は、個別承継によって移転させることになります。個別承継は包括承継と比べて準備や手続きに多くの時間を要します。
従業員を譲渡する場合、転籍手続きが必要
譲渡対象事業に従事する従業員が譲渡対象の場合、一人ひとりから転籍の同意を得なくてはなりません。もちろん、同意を得られない場合もあります。
競業避止義務が生じる
事業を譲渡した側が、譲渡後に同一の事業をおこなうことは、会社法第21条によって禁止されています。禁止されている期間は原則20年で、当事者間の合意次第では、最長30年まで延長することが可能です。
売却益に対して法人税が発生する
売却益には法人税が課されます。売却益の金額によっては、納税額が高額になります。
▲「手取り額」を左右する税率の違い
売却益にかかる税金は、手法によって大きく異なります。
許認可の再取得が必要な場合がある
譲渡対象事業に許認可が必要な場合、原則として、譲受した側で新たに許認可を取得し直す必要があります。許認可の種類によっては、取得までに時間がかかる場合や、費用がかかる場合があります。
不動産取得税や登録免許税などの税金が生じる
不動産や車両などの資産を譲り受ける場合、不動産取得税や登録免許税などの税負担がかかることになります。また、課税資産の譲渡部分に対して、消費税が課されることも覚えておきましょう。
手続きが煩雑
個別契約や従業員の転籍を実行するためには、専門的な知識が必要です。そのため、自社で手続きをとるのが難しい場合、M&Aや法務の知識が豊富な専門家を頼ることになります。
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事業承継とは
事業承継とは、会社の経営者が、自社の事業を次世代に引き継ぐことを意味します。
事業承継で引き継ぐ3つの要素
事業承継では、会社の「経営権」「経営資源」「物的資産」が後継者に引き継がれます。
経営権の承継とは
経営権の承継とは、会社における代表取締役という地位と役割を後継者に引き継ぐことを意味します。ただし、地位を引き渡すだけでは不十分で、経営権を引き継ぐに相応しい人材を探すことや、経営者として相応しい人材に育てていくことも大切です。
なお、経営権を継承する実質的な手続きとしては、株主総会を経て代表取締役を選任することと、役員変更登記などが必要になります。
経営資源の承継とは
会社の「経営資源」とは、経営理念や会社としての信用力、ブランド、独自に築いてきたノウハウ、技術、人材、人脈などを指します。経営権と併せて経営資源を引き継ぐことで、事業承継後も会社の経営状態を安定した状態に保ちやすくなります。
物的資産の承継とは
会社の「物的資産」とは、土地・建物、設備・運用資金、自社株式などを指します。なお、オーナー経営者が個人で事業用資産を所有して会社に貸している場合、承継前に移転しておくことが望ましいといえます。また、個人事業主の場合は、すべての事業用資産を個別に引き継ぐ必要があります。
なお、物的資産を承継するにあたっては、契約書の作成および税金の申告などの手続きが必要になります。場合によっては税金が高額になるため、節税対策について専門家に相談することをおすすめします。
事業承継の3つの種類
事業承継は、旧経営者と新経営者との関係性によって、次の3つの種類にわけられます。
それぞれ詳しくみていきましょう。
| 事業承継の種類 | メリット | デメリット |
| 親族内事業承継 | ・従業員または役員として準備期間を設けると、従業員や取引先に受け入れられやすい ・節税対策が叶う場合がある |
・事業承継を狙っていた身内が複数人いた場合、一人を選ぶことで親族内トラブルが生じる場合がある |
| 社内事業承継 | ・他の従業員から納得してもらいやすい ・自社の事業についてよく理解しているため、実務上の引継ぎが楽 ・自社株を売却によって承継する場合、旧経営者は売却益を得ることができる |
・候補となる役員または従業員が複数人要る場合、選ばれなかった人が会社を去る可能性がある ・「一従業員のままでいたい」「自社株式を買い取る資金を用意できない」などの理由で候補者から断られる場合がある ・そもそも適任者が見つからない場合もある |
| M&Aなどによる第三者への事業承継 | ・新経営者に自社株を売却するため、旧経営者は売却益を得ることができる ・M&Aによるシナジー効果などによって会社がさらに大きく成長する可能性がある |
・後継者として相応しい人物が見つかるとは限らない ・交渉が決裂するリスクや、希望額で売却できない可能性がある |
親族内事業承継
親族内事業承継とは、旧経営者の親族に事業を引き継ぐことです。多くの場合、事業を引き継いでもらいたい親族にまずは従業員または役員として会社に入ってもらい、経営資源および物的資産を数年かけて承継した後、経営権の承継のために社長交代を実施します。
前述の通り、多くの場合、社長交代前に従業員または役員としての期間を経て会社を承継することから、従業員や取引先も心の準備ができており、受け入れられやすいといえます。ただしもちろん、従業員や取引先と良好な関係を築くことができなかった場合、従業員離れ・顧客離れの原因となり得ます。
また、贈与や相続関連の制度を活用することで、節税対策が叶う場合があります。
デメリットとしては、親族内トラブルが生じやすい点が挙げられます。後継者に選ばれなかった人物がある程度の株式を保有している場合などは、意思決定上の効力が発生する可能性があるため、特に注意が必要です。
社内事業承継
社内事業承継とは、信頼できる役員や従業員などの社内の人間に、会社を引き継いでもらうことです。後継者として白羽の矢を立てた人物に、経営理念やマネジメントなどを覚えてもらいながら経営資源の承継を進め、十分に準備できたら、経営権および物的資産を承継します。
なお、自社株式に関しては、旧経営者から新経営者に売却(譲渡)するのが一般的ですが、贈与あるいは遺贈という形で承継することもあります。
社内事業承継は、他の従業員から納得してもらいやすいうえ、実務上の引継ぎが楽であることがメリットです。また、自社株を売却した場合、旧経営者が売却益を得ることができる点もメリットであるといえます。
ただし、後継者候補が複数いた場合、選ばれなかった役員・従業員が離職する可能性があることや、逆に選ばれた側が周囲の目を気にして辞退する可能性があることはデメリットであるといえます。そのほか、旧経営者が自社株を売却したいという考えであったとしても、株式の取得価額が数千万円から数億円であることから、目ぼしい人物が購入資金を用意できないというケースも考えられます。
また、そもそも適任者が見つからない可能性も考えられます。その場合、次に紹介するM&Aなどを検討したほうがいいかもしれません。
M&Aなどによる第三者への事業承継(※「中小企業のM&Aでは『株式譲渡』が主流)
M&Aなどによる第三者への事業承継とは、後継者に相応しい第三者を見つけて、事業を引き継ぐことです。経営権・経営資源・物的資産の3つの要素をいちどきに承継するケースもあれば、M&Aの手続き実施前後に、半年から1年程度の期間を設けて、技術やノウハウなどの経営資源を承継していくケースもあります。後者のケースにおいては、経営権と物的資産の承継は同じタイミングでおこなうのが一般的です。
なお、自社株式は売却することになるため、旧経営者は売却益を得ることになります。また、身内や社内の人間にしばられることなく候補者を選ぶことによって、自分が育ててきた会社がさらに大きくなる可能性があります。特に、自社事業との相乗効果を期待して事業承継を希望する経営者に引き継ぐ場合などは、その可能性が高いといえるでしょう。
ただし、自社を承継してもらうのに相応しいと判断できる人物が見つからない可能性もゼロではありません。シナジー効果を見越して事業承継を希望する経営者などの場合、文化やシステムの統合を丁寧に進められる相手であるかどうかを慎重に見極める必要があります。また、交渉がまとまらない可能性、希望額で売却できない可能性があることも頭に入れておいたほうがいいでしょう。
長期的な視野で見れば、事業譲渡した後、経営方針が承継した側に委ねられる点もデメリットとなる可能性があります。その点についても、事前に見極めが必要です。
※実務上、中小企業の会社売却では、手続きが簡便で税負担の軽い「株式譲渡」が多く選ばれます。一方、特定の不採算部門だけを切り離したい場合には「事業譲渡」が選ばれます。
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廃業とは
廃業とは、経営者の自発的な意志によって、自社の事業を終了させることを意味します。
事業譲渡、事業承継とは異なり、事業を終了させることになるため、「廃業」という言葉にマイナスなイメージを持っている人もいるかもしれませんが、負債を資産ですべて返済できる状態でおこなうものなので、実態としてはネガティブではありません。
ちなみに、後継者不在などの理由から、財務状況が健全な黒字企業が事業を畳むことは「円満廃業」といいます。
倒産、解散・清算との違いは?
廃業と似たイメージを持たれやすい言葉に「倒産」がありますが、実際はこの2つの言葉には大きな違いがあります。前述の通り、廃業は経営者が自発的におこなうものであるのに対して、倒産は、債務超過などによって経営が立ち行かなくなり、客観的にみて事業の継続が不可能になることを意味します。
また、「解散・清算」は、株式会社などの法人が廃業する際には、会社法で定められた一連の法的手続きをとる必要がありますが、この手続きのことを指す言葉です。
廃業のメリット
会社を廃業するメリットは次の通りです。
それぞれ詳しくみていきましょう。
破産を回避できるため信用情報を守れる
前述した「倒産」に至ると、事業を集結させる「破産」「特別清算」、事業を継続させる「民事再生」「会社更生」のいずれかの手続きをとることになります。
このうち、「破産」手続きをとることになった場合で、経営者が個人保証をしていて、経営者自身も自己破産した場合、経営者個人の信用情報に破産した旨が登録されます。俗にいう“ブラックリストに載る”ということです。
また、「特別清算」の場合、基本的には会社自体は倒産処理をおこなうものの、経営者個人の信用情報には影響が及びません。ただし、金融機関借入に代表者保証がある場合や、保証債務が履行できない場合など、経営者が個人保証をしている状態で個人破産が発生すると、ブラックリスト入りする可能性があります。
ブラックリストに載ると、将来的に住宅ローンを組んだり、クレジットカードを新たに作ったりすることが難しくなります。
廃業であれば、そうしたリスクを避けることができます。
経営のプレッシャーから解放される
事業の将来性に対する不安や、従業員の生活を守る責任などから解放されると、晴れやかな気持ちで第二の人生をスタートさせることができます。特に、年齢や健康上の問題があって事業を続けることが難しいものの、後継者が見つからない不安がある場合などは、事業を畳む決断をすることによって、大きなプレッシャーから解放されやすいでしょう。
個人資産を残しやすい
前述の通り、破産手続きをとることになった場合、経営者個人が会社の連帯保証人になっているケースにおいては、個人資産から借金を返済しなくてはならなくなります。つまり、将来のために残しておいた個人資産がゼロになる可能性があるということです。
一方、会社の資産ですべての債務を完済できるうちに廃業手続きをとれば、経営者保証による個人資産への影響を最小限に抑えることができます。しかも、会社の債務をすべて返済した後に財産が残っていれば、株主である経営者自身にも分配されることになるため、個人資産が増える可能性もあるということになります。
「借金・連帯保証」の解除条件
廃業のデメリット
会社を廃業するデメリットは次の通りです。
それぞれ詳しくみていきましょう。
営業権や事業資産が消滅する
廃業手続きをおこなうと、長年の取引で得た顧客リストや、取引先との信頼関係、会社のブランドイメージなども失うことになります。また、独自の技術や製造ノウハウを活かす機会もなくなります。
廃業手続きをおこなうための費用を用意しなければならない
廃業するためにはまとまった費用が必要です。
具体的に必要な費用は次の通りです。
これらすべてを正確に見積もって資金計画を立てておかなかった場合、清算途中で資金不足に陥ってしまう可能性があります。
従業員や取引先をはじめとするステークホルダーに影響が及ぶ
自社の事業に関わっている人の生活や事業に影響が及びます。
まず、従業員は職を失うことになります。なお、会社側は労働基準法に基づいて、原則として30日以上前に解雇予告をおこなうか、不足日数分の解雇予告手当を支払う必要があります。
取引先は、廃業する会社との取引がなくなることから、売り上げが低下する可能性があるため、可能な限り事前に相談して、在庫調整の期間を設けたり、代替取引先を紹介したりすることを検討します。
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事業譲渡 or事業承継 or廃業 の判断基準
事業譲渡・事業承継・廃業で迷ったときは、次のポイントを整理すると迷いが激減します。
これらのポイントについてどういうことを考えればいいのかを詳しくみていきましょう。
【徹底比較】出口戦略による違いまとめ
| 比較項目 | 事業譲渡(M&A) | 株式譲渡(M&A) | 親族・社内承継 | 廃業 |
|---|---|---|---|---|
| 売却益の帰属 | 会社 | オーナー個人 | オーナー個人(譲渡の場合) | 残余財産(株主) |
| 主な税金 | 法人税(約30%〜) | 所得税(約20%) | 贈与・相続・所得税 | 所得税(配当所得) |
| 従業員の雇用 | 全員と再契約が必要 | そのまま継続 | そのまま継続 | 全員解雇 |
| 連帯保証 | 売却代金で完済 | 買い手が肩代わり/解除 | 後継者が引き継ぐ | 完済しない限り残る |
| 手取り額 | 中(二重課税に注意) | 高(税率が低い) | 中 | 低(清算コスト大) |
目的(=なぜ手放すのか)
まず、事業の一部あるいはすべてを手放す理由が、次のうちどれなのかを考えてみましょう。
「従業員や取引先を守る」「家業・ブランドを残したい」などは、一見、手放したいという気持ちと矛盾しているようにみえますが、自身が高齢あるいは経営を続ける体力・気力がないものの、後継者が見つからない場合、事業を引き継いでくれる人がいなくては、目的を叶えることができません。
これら目的のうち、どれが自分にとって一番大切なのかを考えたら、「目的×選択肢」の相性をみてみます。
| 目的 | 向いている選択 |
| 現金化したい | 事業譲渡 |
| 家業や、それにまつわる想いを残したい | 事業承継 |
| とにかく終わらせたい | 廃業 |
| 従業員を守りたい | 事業譲渡/事業承継 |
| 個人保証を切りたい | 事業譲渡(ただし、条件次第) |
赤字・黒字・停滞などの事業の状態
続いて、事業の状態をもとにした現実的な選択肢は次の表の通りです。
| 状態 | 現実的な選択 |
| 黒字・将来性あり | 事業譲渡/事業承継 |
| 赤字だが改善の余地あり | 事業譲渡(限定的) |
| 赤字で改善が困難である | 廃業 |
先に改善した通り、「赤字で改善が困難である」場合に廃業の選択肢をとれるのは、負債を資産で清算できる間であることに注意しましょう。
後継者または買い手の有無
後継者または買い手の有無による、ベストな選択肢は次の通りです。
| 状況 | 選択肢 |
| 後継者がいる | 事業承継 |
| 買い手候補が市場にいる可能性が高い | 事業譲渡 |
| 後継者も買い手候補も見つかりそうにない | 廃業 |
時間的余裕
時間的余裕によっても、とるべき選択肢は変わってきます。
| 時間 | 有利な選択肢 |
| 1~3年以上余裕がある | 事業承継/事業譲渡 |
| 半年~1年程度の余裕ならある | 事業譲渡(条件の調整が必要) |
| 現状、もう限界である | 廃業 |
時間に余裕があるかないかは、実のところ、大変重要なポイントです。「そのうち決まるだろう」とずるずると先延ばしにした結果、ギリギリ破産にならないレベルでの廃業となる可能性があります。そのため、現状の資産状況や、手続きにかかる費用などを細かく計算して、時間的にどのくらいの余裕があるのかを事前に確認することが大切です。
誰がリスクを負うのか
リスクはなるべく背負いたくないと考えて当然ですが、現実問題として、この点についてもきちんと考える必要があります。下記の表を参考に、手続きをとることによるリスクについても考えてみましょう。
| 観点 | 事業譲渡 | 事業承継 | 廃業 |
| 経営リスク | 買い手 | 後継者 | なし |
| 個人保証 | 交渉次第 | 残ることが多い | 清算 |
| 簿外債務 | 原則として売主 | 引き継がれる場合が多い | 清算 |
| 精神的負担 | 中 | 高 | 低 |
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事業譲渡・事業承継・廃業に関するFAQ
続いては、事業譲渡・事業承継・廃業に関するよくある質問とその答えをみていきましょう。
Q. 小規模な飲食店や零細企業でも、事業譲渡・事業承継の相手は見つかりますか?
条件次第では見つかる可能性があります。たとえば、月商100~300万円、従業員0~5人などの小規模飲食店や零細企業であっても、事業譲渡または事業承継が成立している事例は、実際のところかなり多いです。
なぜ、買い手が見つかる可能性があるかというと、たとえば、脱サラして飲食店を持ちたい人や、独立後にすぐに自分の店をはじめられる状態を求めている料理人などがいるためです。こうした買い手の場合、中規模以上の事業より、むしろ小さい店舗などのほうを買いたいと考えるものです。
買い手が見つかりやすいパターン
では、どういう条件が整っていれば買い手が見つかりやすいかというと、次のような条件が挙げられます。
など
なお、必ずしも黒字でないと買い手が現れないということはありません。たとえば、月10万円程度の赤字、オーナーの人件費を入れると赤字といった場合、オーナー交代やメニュー変更、営業時間調整などによって即改善できる見込みが高いと判断されて、譲渡対象になることが多いためです。
買い手が見つかりにくいパターン
逆に、買い手が見つかりにくいのは次のようなケースです。
この場合、廃業が現実的な選択肢であるといえます。
事業譲渡・事業承継のどちらがいいかで迷ったときの判断基準
また、事業譲渡と事業承継のどちらがいいかで迷った場合、たとえば小規模飲食店だと、状況ごとに、次の表のような選択が向いているといえます。
| 状況 | 向いている選択 |
| 親族や社員に後継者がいる | 事業承継 |
| 後継者がいない | 事業譲渡 |
| 少しでも早く辞めたい | 事業譲渡 |
| 想いを残したい | 事業承継(ただし、レシピ伝授などの時間が必要) |
事業譲渡・事業承継の相場
小規模飲食店や零細企業の事業譲渡・事業承継の相場感は次の通りです。
0円やマイナスであっても、「原状回復費用が浮く」と考えると総合的に得である場合が多いです。
Q. 事業譲渡・事業承継・廃業の事実を従業員にどのタイミングで伝えればいいですか?
事業譲渡・事業承継・廃業の事実を従業員に伝えるタイミングについて、まず覚えておくべきことは次の通りです。
逆にいうと、「(事業譲渡などを)検討中です」などの伝え方をすることはもっともよくありません。従業員の不安を煽る形となるので絶対にやめましょう。
事業譲渡の事実を伝えるベストなタイミング
事業譲渡の事実を伝えるベストなタイミングは、基本合意(LOI)締結後から来週契約前までの間です。これより早い段階に伝えると、従業員の離職や動揺、情報漏洩の可能性があるだけでなく、買い手側が手を引いてしまう可能性も考えられます。反対に、これより遅いタイミングになると、従業員から引継ぎを拒否される可能性などがあります。
事業承継の事実を伝えるベストなタイミング
事業承継の事実を伝えるベストなタイミングは、後継者がほぼ確定したタイミングです。なお、事業承継の場合は、①幹部・キーパーソン⇒②全従業員⇒③取引先 の順番で段階的に伝えることが大切です。伝える際には、「なぜこの後継者を選んだか」を説明することも大事です。
廃業の事実を伝えるベストなタイミング
廃業の事実を伝えるベストなタイミングは、廃業方針が確定して、資金繰りが読めた段階です。廃業を実行すると、従業員は仕事を失うこととなり、再就職の準備をする必要が生じるため、事業譲渡・事業承継の場合と比べて早い段階で事実を伝えることがなにより大切です。実務的な目安としては、正社員であれば3~6か月前、パート・アルバイトであれば1~3か月前となります。
Q. 廃業の手続きの途中に、事業譲渡・事業承継に切り替えることはできますか?
廃業の手続きの途中であっても、事業譲渡・事業承継に切り替えることはできます。実際に、廃業手続きの途中に事業譲渡または事業承継に切り替えて成功している事例はあります。なぜ、途中で切り替えることになるかというと、廃業から事業譲渡への切り替えに関しては、「原状回復費用が結構な痛手であることに気が付いた」「連保の立地やブランドに価値があることに気が付いた」「従業員を守ることができないかと再度考えた」などのケースが多いようです。廃業から事業承継への切り替えに関しては、廃業の手続きを進めている事実を知った親族や従業員が、後継者として名乗りを上げたケースなどがあります。
なお、「どこまで廃業の手続きが進んでいるか」によって、廃業の手続きから事業譲渡・事業承継への切り替えの難易度は大きく変わります。
特に重要なポイントは次の3つです。
3つのポイントをベースに、切り替えの難易度をみていきます。
切り替えが「比較的楽」な段階
廃業を検討中で、原状回復や解約に未着手であり、従業員・取引先に見通知の段階であれば、比較的楽に切り替えることが可能です。事業譲渡、事業承継のどちらに切り替えることも楽であると考えられます。
条件付きで可能な段階
従業員に廃業を通知済みで、退職日が決まっている段階、一部契約を解約済みである段階で切り替えるためには、「事業の再構築」が不可欠となります。実務上は、再雇用の打診、取引先への再交渉、契約の復活または再締結などが必要になります。なお、この段階であっても、小規模飲食店や零細企業に関しては、成功している事例が少なくありません。
ほぼ不可能な段階
店舗や事務所の明け渡しが完了している、設備売却・廃棄済み、許認可返上済みなどの場合は、原則として事業譲渡・事業承継への切り替えは不可能であるといえます。
ベストな選択は「一番かっこいい選択」ではなく「一番後悔が少ない選択」
事業譲渡・事業承継・廃業で迷ったときに、「周囲からみて一番かっこいい選択肢・理想的な選択肢は?」と考えてしまうことがあるかもしれませんが、そうした考えによって選択を誤ってしまうのはとてももったいないことです。また、「廃業=失敗」と考えてしまうこともあるかもしれませんが、ここまでにも再三説明してきた通り、廃業できなくなるほど遅い判断になってしまうことが失敗であって、廃業自体は失敗ではありません。これらのことを念頭に置いたうえで、「一番かっこいい選択肢」ではなく、「一番後悔が少ない選択肢」をとることを心がけてくださいね。
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この記事は、時点の情報を元に作成しています。
ジョブカンM&A ジョブカンM&A編集部
ジョブカンM&Aは、株式会社DONUTSが運営するM&Aアドバイザリーサービスです。主に企業の事業承継、成長戦略、出口戦略(イグジット)といった多様なニーズに応えることを目的としています。最大の特徴は、累計導入社数20万社以上を誇るバックオフィス支援クラウドERPシステム「ジョブカン」の広範なネットワークを活用している点です。この強力な顧客基盤を生かし、効率的なマッチングを実現します。
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