株式交換とは? メリット・デメリットから手続き税務上の留意点までわかりやすく解説

株式交換とは、株式会社が発行済の株式すべてを、他の株式会社または合同会社に取得させるM&Aの手法です。株式交換をおこなうメリット・デメリットや、具体的な手続きの流れ、税務上の留意点などについて詳しく解説していきます。

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目次
  1. 株式交換とは
    1. 三角株式交換とは
  2. 株式交換比率とは?
  3. 株式交換、株式移転、株式交付の違いは?
  4. 買い手企業・売り手企業にとっての株式交換をおこなうメリットは?
    1. 買い手企業にとってのメリット
    2. 売り手企業・売り手企業の株主にとってのメリット
  5. 買い手企業・売り手企業にとっての株式交換をおこなうデメリットは?
    1. 買い手企業にとってのデメリット
    2. 売り手企業・売り手企業の株主にとってのデメリット
  6. 株式交換の流れ
    1. 【親会社】【子会社】基本合意・デューデリジェンス(DD)・株価算定
    2. 【親会社】【子会社】取締役会での決議
    3. 【親会社】【子会社】株式交換契約の締結
    4. 【親会社】【子会社】事前開示書類の作成・本店への備置、(必要に応じて)有価証券届出書の提出・適時開示
    5. 【親会社】【子会社】株主総会の特別決議で承認を得る ※省略できる場合あり
      1. 簡易株式交換とは
      2. 略式株式交換とは
    6. 【親会社】反対株主からの株式買取請求に対応する
    7. 【親会社】債権者保護手続きを実施する
    8. ≪株式交換の効力発生≫【親会社】【子会社】株主名簿の書き換えなどの事務手続き
    9. 【親会社】【(必要に応じて)子会社】法務局での変更登記手続き
    10. 【親会社】【子会社】事後開示書類を作成・本店への備置
  7. 適格株式交換・非適格株式交換とは?
    1. 「完全支配関係」「支配関係」「共同事業目的」のケース別適格要件
  8. 適格株式交換の税務処理
    1. 完全親会社の税務処理
    2. 完全子会社の税務処理
    3. 完全子会社の株主の税務処理
  9. 非適格株式交換の税務処理
    1. 完全親会社の税務処理
    2. 完全子会社の税務処理
    3. 完全子会社の株主の税務処理
  10. 株式交換に関するFAQ
    1. Q. 債務超過の会社でも株式交換はできますか?
  11. 株式交換検討時には、他の選択肢にも目を向けよう

株式交換とは

冒頭で述べた通り、株式交換においては、株式会社の発行済株式すべてを他の株式会社または合同会社に取得させます。株式をすべて取得させるということはつまり、完全子会社化されるということになり、対象会社に対して100%の完全支配関係が生じることになります。

なお、完全親会社の株式を完全子会社の株主に交付することが一般的ですが、株式の代わりに現金などを交付することや、“完全親会社の親会社(=最上位の親会社)の株式”を交付することも認められています。

三角株式交換とは

“完全親会社の親会社の株式”を交付することは「三角株式交換」といいます。通常の株式交換は二社間でおこなわれますが、これに対して、完全親会社の親会社が関与することから、「三角株式交換」と呼ばれています。

三角株式交換は、クロスボーダーM&Aにおいて活用されることが多いスキームです。「クロスボーダーM&A」とは、国境を越えておこなわれるM&Aのことです。

たとえば、外国企業が日本法人を通じて日本企業を買収する場合に、日本法人の株式を対価として交付するのではなく、外国の親会社の株式を対価として交付するケースなどがこれに該当します。

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株式交換比率とは?

株式交換を行う際、最も重要な取り決めとなるのが「株式交換比率」です。これは、「子会社の株式1株に対して、親会社の株式を何株割り当てるか」という交換レートのことです。

たとえば、株式交換比率が「1:10」の場合、子会社の株式を1株保有している株主は、親会社の株式を10株受け取ることになります。

この比率は、両社の株価や将来性、資産価値などを総合的に評価して決定されますが、客観的な公正性を担保するために、第三者機関(会計事務所やM&A専門会社など)による「株価算定(バリュエーション)」の結果をもとに交渉して決めるのが一般的です。

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株式交換、株式移転、株式交付の違いは?

株式交換と似たスキームとして、「株式移転」「株式交付」がありますが、この3つは、スキームの利用目的や取引主体、株式取得方法などに次の表のような違いがあります。

株式交換 株式移転 株式交付
対象(親会社) 既存企業(株式会社または合同会社) 新設会社 既存企業(株式会社のみ)
利用目的 ・完全子会社化
・企業譲受
持株会社の新設(ホールディングス化) ・少数持分の取得
・グループ化
取引主体 企業同士 既存企業と新設会社 企業と株主
株式取得方法 株式交換契約を締結して、買い手が売り手の全株式を取得する 既存会社の発行済全株式を、親会社を新設してその会社に移転させる 買い手が売り手株主のなかから保有株式の譲渡に合意する者を募り、株式を取得する
効力発生のタイミング 株式交換契約書で定めた効力発生日 新設会社の設立日 株式交付計画で定めた効力発生日
対価 自社株+一部現金等OK 新設会社の株式 自社株+一部現金等OK

上表の通り、株式交換と、株式移転・株式交付を比べたときの特徴はいくつかあります。

なかでも重要なポイントは、株式交換においては株式を100%取得する場合にのみ活用できるスキームであることです。つまり、完全子会社ではなく単に子会社化したい場合や、議決権の2/3を取得したい場合に活用されることはありません。

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買い手企業・売り手企業にとっての株式交換をおこなうメリットは?

続いては、買い手企業・売り手企業にとっての株式交換をおこなうメリットをみていきましょう。

買い手企業 ・買収資金を準備する必要がない
・株主全員の同意を得る必要がない
・経営統合を緩やかに進められる
売り手企業 ・株式交換後も法人格は維持される
・(売り手企業の株主)買い手企業の株式を受け取れるため、利益を得られる可能性がある(=キャピタルゲインやインカムゲインを狙える)
・(売り手企業の株主)買い手企業の経営に参加できる可能性がある

買い手企業

  • 買収資金を準備する必要がない
  • 株主全員の同意を得る必要がない
  • 経営統合を緩やかに進められる
  • 売り手企業

  • 株式交換後も法人格は維持される
  • (売り手企業の株主)買い手企業の株式を受け取れるため、利益を得られる可能性がある(=キャピタルゲインやインカムゲインを狙える)
  • (売り手企業の株主)買い手企業の経営に参加できる可能性がある
  • 買い手企業にとってのメリット

    買い手企業は、売り手企業の株式を取得する対価として自社の株式を新たに発行すればいいため、買収のために現金を用意する必要がないので、資金力に限りがある企業であっても、スピーディにM&Aを進められます。なお、前述の通り、株式の代わりに対価の一部または全部を現金とすることもできます。

    また、株主総会の特別決議で議決権の3分の2以上の賛同を得たら株式交換を実行できるため、反対株主がいた場合も、比較的スムーズに株式交換を進められます株式譲渡の場合、反対株主は株式を保有し続けることになる可能性がありますが、株式交換の場合、特別決議で承認されれば、少数株主が保有する株式を強制的に取得できるため、完全子会社化を達成できるというわけです。なお、少数株主の株式を強制的に買い取って、経営権を100%集約する手法のことは「スクイーズアウト」といいます。

    そのほか、株式交換においては子会社の法人格が消滅せず、独立した会社として存在し続けることから、急進的に両社を統合させる必要がないため、現場の衝突や混乱を防ぐことができます。

    売り手企業・売り手企業の株主にとってのメリット

    株式交換を実施すると、売り手企業は買い手企業の完全子会社となりますが、会社の法人格は消滅しないため、独立した法人として存続することになります。また、事業譲渡などとは異なり、雇用契約や取引先との契約関係も原則としてそのまま引き継がれます。従業員一人ひとりから個別に転籍の同意を得る手続きが不要であるため、スムーズに統合を進めやすく、従業員の不安やモチベーション低下も抑えやすいといえます。

    また、売り手企業の株主は、自身が保有している株式と引き換えに、買い手企業の株式を受け取ることができます。つまり、親会社の株主になれるということになるので、間接的に親会社の経営に参加できるということになります。また、株式交換後にグループ全体として成長して株価が上昇した場合のキャピタルゲインや、配当金(インカムゲイン)などの利益を得られる可能性があるということになります。

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    買い手企業・売り手企業にとっての株式交換をおこなうデメリットは?

    続いて、買い手企業・売り手企業にとっての株式交換をおこなうデメリットをみていきます。

    買い手企業 ・手続きが煩雑
    ・既存株主の議決権への影響力が弱くなる可能性がある
    ・株価が下落するリスクがある
    売り手企業 ・手続きが煩雑
    ・株価が下落するリスクがある
    ・親会社が非上場企業の場合、株式の現金化が難しい

    買い手企業

  • 手続きが煩雑
  • 既存株主の議決権への影響力が弱くなる可能性がある
  • 株価が下落するリスクがある
  • 売り手企業

  • 手続きが煩雑
  • 株価が下落するリスクがある
  • 親会社が非上場企業の場合、株式の現金化が難しい
  • 買い手企業にとってのデメリット

    株式交換を実行するためには、会社法に定められた厳格な手続きを踏まなくてはならず、株式交換の検討からクロージングまで数か月以上かかることもあります。なお、手続きが煩雑であることから、実行するうえでは、弁護士や会計士などの専門家の協力が必須です。

    また、対価として自社の株式を新規に発行する場合、既存の株主の持ち株比率が相対的に低下して、株主構成が変化します。これによって、既存株主の議決権への影響力が弱まり、経営の意思決定に影響が及ぶ場合があります。創業者や経営陣の持ち株比率が下がることになる場合は、経営の安定性が脅かされる可能性もあります。

    さらに、株式交換のために新株を発行すると、一株あたりの利益が減少する「株式の希薄化」が起こることもデメリットであるといえます。なぜかというと、株式の希薄化や、株式交換後の統合がうまくいかないリスクを懸念した投資家たちが、買い手企業の株式を売りに出す可能性があるためです。その結果、株価が下落するリスクがあることを理解したうえで、投資家の信頼を得られるよう、M&Aによる成長戦略を市場に明確に提示することが必要です。

    売り手企業・売り手企業の株主にとってのデメリット

    手続きが煩雑で、踏まなければならないステップが多いことに関しては、買い手企業同様です。株価が下落した場合、売り手企業の株主も不利益を被る可能性が高くなります。

    また、親会社が非上場企業である場合、受け取った株式を簡単には現金化できないこともデメリットとして挙げられます。上場株式の場合、市場でいつでも売却することができますが、非上場企業株式の場合、流動性がないことから買い手を見つけることが難しいためです。このことから、株主が現金化を望んでいる場合、換金性の低い株式を保有し続けることに対して不満の声が上がる可能性があります。

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    株式交換の流れ

    前述の通り、株式交換の手続きは非常に煩雑ですが、どんなステップを踏むことになるのかをよく理解して、必要な準備を早めに進めていくことができれば、スムーズに手続きできる可能性が高まります。

    必要な手続きは次の通りです。

  • 基本合意・デューデリジェンス(DD)・株価算定
  • 取締役会での決議
  • 株式交換契約の締結
  • 事前開示書類の作成・本店への備置、(必要に応じて)有価証券届出書の提示・適時開示
  • 株主総会の特別決議で承認を得る ※省略できる場合あり
  • 反対株主からの株式買取請求に対応する
  • 債権者保護手続きを実施する
  • ≪株式交換の効力発生≫株主名簿の書き換えなどの事務手続き
  • 法務局での変更登記手続き
  • 事後開示書類を作成・本店への備置
  • 【親会社】【子会社】基本合意・デューデリジェンス(DD)・株価算定

    正式な契約に進む前に、まずは両社で「基本合意書(MOU)」を締結します。その後、買い手企業による「デューデリジェンス(買収監査)」がおこなわれます。これは、売り手企業の財務・法務・ビジネス等のリスクを詳細に調査する手続きです。

    並行して、株式交換比率を決定するための根拠資料として、第三者機関による「株価算定」を実施します。これらの結果を踏まえて、最終的な条件交渉をおこないます。

    【親会社】【子会社】取締役会での決議

    完全親会社となる会社、完全子会社となる会社の双方で、取締役会において、株式交換をおこなうことに対して決議を得る必要があります。取締役会設置会社出ない場合、株主総会での決議が必要です。

    【親会社】【子会社】株式交換契約の締結

    両社の取締役会で承認を得るか、あるいは株主総会で決議された場合、両社間で株式交換契約を締結します。株式交換契約の契約書には、当時会社の商号と住所、株式交換比率、効力発生日、株主総会の開催日などを記します。契約書には不備がないよう、法務・財務の専門家にしっかりチェックしてもらうことが大切です。

    参照:e-GOV「会社法」第767条

    【親会社】【子会社】事前開示書類の作成・本店への備置、(必要に応じて)有価証券届出書の提出・適時開示

    親会社、子会社の両社は、法務省令で定められた事項である、株式交換契約の内容や交換比率の算定根拠、当時会社の財産状況などを記載した「事前開示書類」を作成して、それぞれの本店に一定期間備え置く必要があります。備置期間は、株主総会の2週間前、あるいは株主への通知・公告のいずれか早い日から効力発生日後6か月を経過する日までと定められています。

    参照:e-GOV「会社法」第782条
    なお、株式交換によって新規に株式を交付する株主が50人以上になる場合をはじめ、特定の条件に該当する場合は、有価証券届出書も提出する必要があります。上場企業の場合、適時開示も求められます。「適時開示」とは、投資家の判断に重要な影響を与える情報を、速やかかつ正確に公表する義務のことをいいます。

    参照:日本取引所グループ「適時開示制度の概要等」

    【親会社】【子会社】株主総会の特別決議で承認を得る ※省略できる場合あり

    当時会社双方の株主総会において、原則として効力発生日の前日までに、特別決議による承認を得ることが必要です。議決権を行使できる株主の過半数が出席した特別決議において、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要とされています。

    参照:e-GOV「会社法」第794条

    なお、「簡易株式交換」あるいは「略式株式交換」に当てはまる場合、株主総会での承認手続きは省略可能です。

    簡易株式交換とは

    完全子会社の株式に対する対価の帳簿価額の合計額が、完全親会社の純資産額の5分の1を超えない場合、あるいはこれを下回る割合を定款で定めている場合はその割合を超えない場合、完全親会社となる会社側での株主総会の承認決議を省略できます。この制度を「簡易株式交換」といいます。

    ただし、この要件を満たしている場合であっても、株式交換によって親会社が差損を被る場合、あるいは非公開会社が譲渡制限株式を対価として交付する場合などは、簡易株式交換の適用対象外となります。さらに、一定数の株主が株式交換に反対した場合も、株主総会の決議が必要になります。

    略式株式交換とは

    「略式株式交換」とは、完全親会社となる会社が、完全子会社となる会社の総株主の議決権の90%以上を保有している場合、あるいはこれを上回る割合を定款で定めている場合はその割合を保有している場合、完全子会社側の株式総会決議を省略できる制度です。こうした支配関係にある場合、親会社が圧倒的多数の議決権を持っているため、子会社の株主総会を開いたところで決議の結果が明らかであるためです。

    略式株式交換は、既に親子関係にある企業間で完全子会社化を目指す場合や、同じ親会社を持つ兄弟会社同士で組織再編をおこなう場合などに活用される制度です。ただし、子会社が非公開会社で、譲渡制限株式が対価である場合には適用されません。

    【親会社】反対株主からの株式買取請求に対応する

    株式交換に反対する株主の利益を保護するために、反対株主から株式買取請求があった場合、これに応じる必要があります。なお、株式交換をおこなう会社は。株主総会の開催に先立ち、すべての株主に対して、株式交換をおこなう旨と、買取請求権を行使できる旨を通知する必要があります。株式交換に反対の株主は、株主総会に先立って反対の意思を会社に通知したうえで、株主総会で反対票を投じて、効力発生日の20日前から前日までに買取請求をおこなうことになります。買取価格は基本的に、株主と会社との協議によって決定しますが、協議が整わない場合、裁判所が価格を決定することになります。

    【親会社】債権者保護手続きを実施する

    完全親会社が完全子会社の株主に、自社の株式ではなく社債などを交付する場合、あるいは完全子会社が保有する新株予約権付社債を完全親会社が承継する場合などは、会社の財産状況が変動して、債権者が利害を被る可能性があるため、債権者保護手続きが必要となります。

    具体的な手続きとしては、官報への公告と、把握している債権者に対しては個別に通知をおこなうことになります。官報公告や通知をおこなってから一定期間内に債権者から異議があった場合、会社は「弁済」「担保の提供」「信託会社への財産信託」のいずれかの対応をとることになります。

    ≪株式交換の効力発生≫【親会社】【子会社】株主名簿の書き換えなどの事務手続き

    株式交換契約で事前に定めておいた、株式交換の効力発生日を迎えると、株式交換の法的な効力が生じます。この日をもって、完全子会社の株主が保有していた株式はすべて完全親会社に移転され、その対価として、完全子会社の元株主は完全親会社の株主となります。

    効力発生日以降は、株主構成の変更に伴う株主名簿の書き換えをはじめとする事務手続きをおこなう必要があります。

    【親会社】【(必要に応じて)子会社】法務局での変更登記手続き

    完全親会社、法務局で登記事項の変更登記をおこないます。変更登記手続きは、効力発生日から2週間以内に、本店所在地を管轄する法務局でおこないます。

    完全親会社は、資本金の額や発行済株式総数の変更などを登記します。完全子会社は、株式の譲渡制限に関する定款の定めを変更した場合、あるいは新株予約権が消滅した場合などに変更登記をおこなう必要があります。

    【親会社】【子会社】事後開示書類を作成・本店への備置

    株式交換の効力発生後、法務省令で定められた事項である、株式交換の効力日、反対株主からの株式買取請求の経過、移転した完全子会社の株式数、その他株式交換に関する重要な事項などを記した「事後開示書類」を作成して、両社それぞれの本店に備え置きます。備置期間は、効力発生日から6か月間です。

    なお、完全親会社が取得した完全子会社株式の取得価額は、会計上は、原則として対価として交付した自社株式の時価となります。ただし、事後開示書類には、効力発生日における子会社の資産および負債の帳簿価額なども記します。

    参照:e-GOV「会社法」第791条

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    適格株式交換・非適格株式交換とは?

    株式交換には、適格株式交換と非適格株式交換があります。

    適格株式交換とは、親会社の子会社に対する支配力の程度に対して、一定の要件を満たしている株式交換のことです。適格株式交換の要件を満たしていると、税制上の優遇措置を受けることができます。

    一方、要件を満たしていない場合の株式交換は「非適格株式交換」となり、税制上の優遇措置は受けることができません。
    なお、適格要件を満たしている場合と、非適格要件を満たしている場合、税務上の優遇措置以外には次のような違いがあります。

    条件 適格要件 非適格要件
    課税 課税は発生しない 譲渡損益が発生すると課税される
    資産の移転 朝護価額で実施 時価で実施されるとみなされる
    譲渡損益等の課税関係 繰り延べ 即時に課税される
    税施錠の優遇措置 適用可 不可

    「完全支配関係」「支配関係」「共同事業目的」のケース別適格要件

    株式交換の適格要件で満たすべき条件は、親会社が子会社の株式を直接または間接的に100%保有している「完全支配関係」、親会社が子会社の株式を50%以上保有している「支配関係」、株式の保有割合が50%以下であっても、他の会社と共同して事業をおこなう目的がある「共同事業目的」の3パターン別に異なります。

    満たさなければならない条件は、次の表で〇がついている項目です。

    完全支配関係 支配関係 共同事業目的
    完全支配関係の継続あるいは支配関係の継続
    株式以外の不交付
    従業員の引継ぎ
    事業の継続
    事業の関連性
    株式の継続保有
    規模または経営参画

    ここで多くの人が疑問に思うのは、「株式交換は、株式を100%取得して完全支配関係にならなければ成立しないのでは?」ということでしょう。

    なぜ、株式交換なのに、完全支配関係ではない場合の適格要件が設定されているのかというと、株式交換において、100%の株式取得は会社法上必須であるものの、税法の適格要件で言うところの「支配関係」は、「交換の前後を通じた実質的な支配の継続」に当てはめて考えられているためです。

    つまり、会社法においては、“株式交換の結果”時点で100%株式を取得している必要があるとしている一方、税法においては、“株式を売ったのか、(支配下のグループ内で)持ち替えたのか”に焦点を当てているということです。

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    適格株式交換の税務処理

    適格株式交換の場合、親会社、子会社、子会社の株主に税法上のメリットがあります。具体的には、次のような税務処理をおこなうことになります。

    完全親会社の税務処理

    完全親会社は、完全子会社の株式を簿価で取得したものとして扱います。つまり、子会社の純資産を簿価で引き継ぐことになるため、時価評価による課税が発生することはありません。

    ただし、完全子会社の株主数が50人以上か50人未満かによって、株式の取得価額が変わることは理解しておく必要があります。

    株式交換前の完全子会社の株主数が50人未満の場合、株式交換する直前において、各株主が保有している株式の帳簿価額を合計して、さらにそこに必要経費を加えた金額を取得価額とします。

    一方、株式交換前の完全子会社の株主数が50人以上の場合、前期末の簿価純資産価額に必要経費を加えた金額を取得価額とします。「簿価純資産価額」とは、貸借対照表に記されている資産から負債を引いた額です。

    完全子会社の税務処理

    完全子会社が保有する資産の時価評価がおこなわれることなく、簿価のまま引き継がれるため、含み益のある資産を保有していた場合も、譲渡損益が発生しないため、課税されません。繰越欠損金に関しても、一定の条件下で引き継がれます。

    完全子会社の株主の税務処理

    完全子会社の株主は、自身が保有していた完全子会社の株式を完全親会社の株式に交換します。この譲渡に伴う損益は認識されないため、株式の売却益に対する課税は、将来その株式を売却する時点まで繰り延べられることになります。たとえば旧株式の取得価額が100万円で、株式交換で受け取った親会社株式の時価が300万円の場合、親会社株式を受け取った時点では課税されないものの、将来その株式を売却した際には、「売却価格-100万円=譲渡所得」に対して課税されるということです。

    つまり、税金が免除されるわけではなく、課税が先送りされるということになります。

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    非適格株式交換の税務処理

    続いては、非適格株式交換の場合の、親会社、子会社、子会社の株主の税務処理について解説していきます。

    完全親会社の税務処理

    適格株式交換の場合と同じく、完全親会社には税金はかかりません。ただし、取得した完全子会社の株式取得価額の計算方法が、適格要件の場合とは異なります。適格翌要件を満たしている場合、前述の通り、株式交換前の完全子会社の株主数が50人未満であれば帳簿価額、50人以上であれば簿価純資産価額によって算定しますが、非適格要件の場合、時価で算定します。

    完全子会社の税務処理

    完全子会社は、時価評価損益に対して課税されることになります。時価評価の対象となる資産は、固定資産、土地(土地のうえに存する権利を含む)、有価証券、金銭債権、繰延資産の5つです。

    一方、売買目的の有価証券、含み損益が1,000万円以下の資産、帳簿価額が1,000万円以下の資産については時価評価資産の対象とはなりません。そのほか、条件によっては含み損のある子会社株式が除外される場合もあります。

    完全子会社の株主の税務処理

    非適格株式交換において交付されるものが、完全親会社の株式のみの場合、完全子会社の株主に対して税金が課されることはありません。一方、交付されるものに金銭が含まれている場合は、親会社から交付される対価と、親会社に渡した子会社株式の時価との差額が利益とみなされることになります。株主が個人の場合、その利益に対して所得税が、株主が法人の場合、その利益に対して法人税が課されます。

    株主が個人の場合、株式に課される所得税は総合課税にもできますが、基本的には分離課税となり、所得税・住民税・復興特別所得税を合わせて20.315%の税率となります。

    株主が法人の場合、株式交換で得た譲渡益を他の事業所得と損益通算したトータルの所得に対して、法人税が課されることになります。そのため、株式交換で譲渡益が出ていたとしても、他の事業が赤字で相殺される場合、法人税がかからないということになります。なお、法人税のほかに、地方法人税、住民税、事業税、復興特別所得税が課されるため、総合すると約37%の税金がかかることになります。

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    株式交換に関するFAQ

    続いては、株式交換に関するよくある質問とその答えをみていきましょう。

    Q. 債務超過の会社でも株式交換はできますか?

    株式交換は、いわば「株式を対価として支配関係を形成する組織再編」であるため、負債が資産より大きい債務超過の会社であっても、”定期を満たしている”という意味において実行可能であるといえます。

    ただし、株式価値は理論上、ゼロまたはマイナスとなるため、「交換比率をどう設定するのか?」が大きな問題となる可能性が高いといえます。また、既存株主への説明責任が非常に重たくなります。「債務超過会社の株主に対して、なぜ、自社の価値ある株式を渡すのか?」と問われた場合に、期待されるシナジー効果や再建計画の合理性をしっかりと説明する必要があるということです。さらに、債務超過会社が絡むと、適格株式交換にならないケースが多いため、売り手株主には即時課税が発生する可能性が高く、買い手側は、「のれん」「負ののれん」の複雑な処理をおこなわなければならなくなり、税務リスクが高まります。

    ただし、「スポンサー支援型再生」「事業価値はあるが財務だけが傷んでいる」「銀行などの債権者の同意を得たうえでの再編」などの場合、債務超過会社であっても、株式交換の対象となることがあります。無論、このバイアも株式価値はほぼゼロなので、交換比率は形式的に決める形になります。

    なお、債務超過の度合いが重たい場合、株式交換に替わる手段として、第三者割当増資(スポンサー引受)、事業譲渡、会社分割+株式譲渡、DES(債務の株式化)などの手法が選ばれることがあります。

    株式交換検討時には、他の選択肢にも目を向けよう

    前述の通り、債務超過の度合いによっては、株式交換の代替手段がとられることがありますが、そうでない場合に関しても、株式交換が最善の策であるのかについてはよく考える必要があります。また、株式交換を実行すると決めた場合は、煩雑な手続きに悩まされることがないよう、必要な準備を早めに進めていくことが大切です。ただし、専門的知識がなければスムーズに手続きを進めていくことは至難の業となるため、会計士や税理士などの専門家のサポートを受けることは必須です。

    まずは「自分の会社がいくらか」を知るところから

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    執筆 ジョブカンM&A編集部

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