非上場株式の売却で利益を得た場合、確定申告が必要かどうかは条件によって異なります。ただし、原則としては確定申告が必要です。では、どのような場合には確定申告が不要になるのでしょうか? 該当するケースについて詳しく解説していきます。
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非上場株式の譲渡とは?
非上場株式の譲渡とは、証券取引所に上場していない株式会社の株式の所有権を、元の株主から他の個人または法人に移転する行為のことです。一般的には、株式を金銭などの対価と引き換えに譲渡します。M&Aにおける株式売買の場合も同様です。
譲渡によって、株式の取得価額を上回る対価を得た場合、差額分が「譲渡所得」とみなされ、所得税の課税対象となります。
ただし、無償譲渡または元の株主の死亡に伴う移転(=相続)の場合、原則として所得税の対象にはなりませんが、無償譲渡であれば贈与税、相続であれば相続税が適用されることになります。
【結論】非上場株式の譲渡所得は「原則として確定申告が必要」
冒頭で述べた通り、非上場株式の売却によって譲渡益が生じた場合、原則として確定申告が必須です。これは、非上場株式の譲渡では、上場株式で利用できる「源泉徴収ありの特定口座」を利用できないためです。したがって、制度上の明確な「確定申告不要」のケースは存在しません。
【個人・法人別】非上場株式の譲渡益が出た場合に発生する税金
前述の通り、非上場株式を譲渡した場合、原則としては確定申告が必要になります。株式譲渡で得る利益は、個人の場合、「株式等に係る譲渡所得等」に該当することとなり、給与所得など他の所得とはわけて税額を計算する「申告分離課税」の対象となります。
具体的には次の3つの税金が課税されます。
【個人の場合に課される税金】
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法人が非上場株式を譲渡した場合の税金と確定申告
法人が非上場株式の譲渡によって譲渡益を得た場合、法人の他の損益を合算した利益に対して、法人税、法人住民税、法人事業税が課されます。
【法人の場合に課される税金】
非上場株式の譲渡によって発生する税金を抑えるには?
法人が非上場株式を譲渡する場合、譲渡のタイミングなどを調整することによって節税対策することが可能です。具体的には次のような方法が有効です。
それぞれ詳しく解説していきます。
赤字年度に譲渡して利益と相殺する
前述の通り、法人が非上場株式の譲渡によって譲渡益を得た場合、法人の他の損益を合算した利益に対して、法人税、法人住民税、法人事業税が課されます。つまり、“譲渡益以外の損益”がマイナスの場合、納税額を大幅に抑えられる可能性が高いということです。
研究開発費などの額が大きい年度に譲渡する
修繕費や研究開発費、税制優遇がある設備投資などで多額の支払いが発生する場合にも、全体の課税所得を圧縮することができます。
適正な譲渡価格に設定する
グループ会社などの関連当事者取引においては、税務上、譲渡価格が「適正な時価」であることが厳しく求められます。時価と比べて著しく低い価格で譲渡した場合、差額は「寄付金(みなし寄付金)」とみなされ、売り手法人に税金が課されるリスクがあります。譲渡価格と時価評価の整合性をとることは、税務調査におけるリスクを回避するために極めて重要です。
なお、譲渡価格が時価評価と比べて高すぎる場合は、買い手に対して「受贈益」として税金が課されることがあります。
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非上場株式の譲渡所得の計算方法
非上場株式の譲渡がおこなわれた際、譲渡収入金額がまるごと課税対象となるわけではありません。なぜかというと、売却する株式を過去に取得した際にかかった費用である「取得費」、株式を売却するために直接的にかかった費用である「譲渡費用」を差し引く必要があるためです。
つまり、計算式としては次の通りとなります。
譲渡所得=譲渡収入金額-(取得費+譲渡費用)
上記計算式によって算出された譲渡所得に対して、売却者が個人であれば、前述の通り、所得税、復興特別所得税、地方税が課されることになります。法人であれば、法人の他の損益に譲渡所得を合算したうえで、法人税な度を算出します。
なお、非上場株式の場合、取得時期が古いなどの理由から取得費が不明なケースがあります。そうした場合、次の方法で合理的に推定することになります。
証拠資料から取得費を推測できる場合
次のような書類が存在している場合、所有者本人が取得費を覚えていなかったとしても、そこに記された金額を取得費として使います。
など
証拠資料が存在せず取得費が不明な場合
証拠資料が一切存在しない場合、取得費は譲渡価額の5%とみなされます。なお、これは国税庁によって通達されています。
非上場株式の譲渡方法
非上場株式の譲渡方法はいくつかありますが、代表的な選択肢は次の3つです。
それぞれ詳しく解説していきます。
親族・知人への譲渡
経営者の親族や知人などの身近な相手に直接交渉して譲渡する方法は、事業承継、もしくは経営の引き継ぎを意識している場合などに検討されることが多いです。
信頼関係に基づいているため、比較的スムーズに交渉が進む可能性が高いというメリットがある一方、譲渡価格が客観的時価から大きくズレている場合、譲渡ではなく贈与だとみなされて、買い手に贈与税が課される可能性があります。これを回避するためにも、専門家に株価評価をおこなってもらうことが大切です。
従業員持株会への譲渡
「従業員持株会」とは、福利厚生の一環として、従業員が自社の株式を取得・保有できる制度です。毎月の給与や賞与から天引きする形で拠出した資金をもとに、会社が株式を共同購入することによって、従業員個人の財産形成を支援します。また、もともと株式を保有していたオーナー経営者などは株式を現金化できるため、従業員、オーナーの双方にとってメリットがあるといえます。
ただし、この方法を活用するためには、従業員持株会を設立する必要があります。
M&A仲介会社に売却を依頼
非上場株式を身内や社内関係者以外の第三者に譲渡したい場合、もしくは会社全体の売却を検討している場合は、M&A仲介会社に依頼するのが一般的です。企業価値の算定や条件交渉、契約書の作成・締結などのサポートを受けられるメリットがある反面、仲介手数料などのコストが発生するデメリットがあります。
非上場株式の譲渡に関して確定申告が必要なのに確定申告しなかった場合はどうなる?
非上場株式を譲渡したものの、「確定申告が不要なケースに該当すると思い込んでいた」もしくは「確定申告が必要だとは思わなかった」などの理由により、確定申告しなかった場合、税務署から「所得があったのに申告していない」と判断されて、ペナルティが課される場合があります。
ペナルティの具体的な内容は次の通りです。
原則15%の課税となります。確定申告の期限後に自主的に申告した場合は5%となります。一方、悪質な無申告だと判断された場合、20%の課税となります。
延滞税は、納付期限の翌日から納付までの日数に応じて加算されます。税率は概ね年2~8%です。
非上場株式の譲渡に関して確定申告しなかったらバレる?
市場に出回っていない非上場株式であれば、譲渡しても税務署にバレることはないのでは? と考える人もいるかもしれません。しかし、次のような経路をもとに、税務署が取引を把握する可能性は非常に高いといえます。
非上場株式の譲渡を実施したら、確定申告の要不要についても専門家に相談しよう
非上場株式の譲渡を実施しても確定申告が不要になるケースについては、先に解説した通りです。しかし、自分または自社がそれらのケースに該当するのかどうか判断できない場合もあるでしょう。そのため、本当に確定申告が不要かどうか確認するためにも、専門家に相談できると安心です。
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この記事は、時点の情報を元に作成しています。
執筆 ジョブカンM&A編集部
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