存続会社とは? 吸収合併の手続き・登記・税務などについて徹底解説

吸収合併とは、M&Aの手法の一つです。吸収合併においては、複数の会社のうち、いずれか一つが「存続会社」となり、それ以外の会社は「消滅会社」となりますが、それぞれ具体的にどういう会社であるのかを詳しく解説していきます。また、吸収合併において必要な手続きや、吸収合併を実施するにあたっての注意点なども解説していきます。

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目次
  1. 吸収合併とは
    1. M&Aの8種類の手法とは?
    2. 合併の種類とは?
  2. 吸収合併の対価(合併交付金)とは? スキーム決定の核
  3. 吸収合併における「存続会社」「消滅会社」とは?
    1. 存続会社とは
    2. 消滅会社とは
  4. 吸収合併における存続会社の手続きは?
    1. 吸収合併契約書の作成・吸収合併契約の締結
    2. 吸収合併契約書などの事前開示
      1. 開示内容
      2. 開示期間
    3. 株主総会での承認
      1. 株主総会承認の省略(簡易/略式合併)
    4. 官報公告
    5. 株主を保護する措置
    6. 債権者を保護する措置
    7. 登記手続き
    8. 事後開示書面の備置
  5. 吸収合併における消滅会社(売り手)の手続き・注意点は?
  6. 吸収合併における消滅会社の株主(売り手)への課税は?
  7. 吸収合併における存続会社の登記手続き
    1. 存続会社の登記手続きに必要な書類一覧
      1. 消滅会社に関する必要書類
    2. 存続会社の登記手続きに必要な登録免許税
  8. 吸収合併における存続会社の資本金に関するルール・注意点は?
    1. 消滅会社の資本金は存続会社の資本金に合算される
      1. 合併後の資本金の計算方法・課税率
      2. 第三者間(支配取得)における適格合併の主要要件
      3. 消滅会社が子会社の場合or子会社同士の合併の場合
    2. 資本金にかかる税金を節税する方法はいくつかある
      1. 「資本剰余金」に大きく割り振る
      2. 資本金の1/2を超えない金額を「資本準備金」として計上する
    3. 消滅会社が債務超過の場合、存続会社の資本剰余金の額を減らすことで債務超過分を充当する
  9. 吸収合併における存続会社の会計処理方法
    1. 「取得」とは
    2. 「逆取得」とは
  10. 吸収合併をスムーズに進めるためには専門家の協力が不可欠

吸収合併とは

吸収合併とは、M&Aの8種類の手法のうち、「合併」に該当する手法、二社以上の会社のうち一社が「存続会社」となり、それ以外の会社である「消滅会社」の資産および負債などの権利義務をすべて引き継ぐ手法をいいます。
「消滅会社」は、吸収合併を通して解散して、「存続会社」と合併することになります。一般的には、業績のよい企業が「存続会社」となり、業績の悪い企業を「消滅会社」として吸収合併するケースが多いです。

M&Aの8種類の手法とは?

なお、M&Aの8種類の手法は次の通りです。

  • 株式譲渡
  • 第三者割当増資
  • 株式交換
  • 株式移転
  • 事業譲渡
  • 合併
  • 会社分割
  • 合弁会社設立
  • 合併の種類とは?

    また、合併には「吸収合併」と「新設合併」の2種類の方法があります。既存の会社一社の法人格を残す吸収合併に対して、新設合併は、新しく設立した会社に法人格を統合するという手法になります。
    なお、実際のところ、新設合併のスキームが採用されるケースは少なく、M&Aの手法として合併が選択される場合、概ね吸収合併のスキームが用いられます。

    吸収合併の対価(合併交付金)とは? スキーム決定の核

    吸収合併においては、存続会社が消滅会社の株主に対し、その保有する株式の対価として、合併交付金(対価)を交付します。この対価の種類は、合併スキーム全体、特に売り手株主の税務に重大な影響を及ぼす決定事項です。

    対価には主に以下の種類があります。
    ・存続会社の株式:最も一般的な形態。組織再編税制の「適格合併」要件を満たすために重要。
    ・現金:現金対価の場合、原則として「非適格合併」となり、売り手株主への課税が発生します。
    社債や新株予約権など:ケースに応じて利用されます。
    対価の決定は、M&Aの交渉段階で最も重要なポイントの一つです。

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    吸収合併における「存続会社」「消滅会社」とは?

    ここで再び、「吸収合併」に話を戻して、吸収合併における「存続会社」「消滅会社」について詳しく説明していきます。

    存続会社とは

    存続会社とは、吸収合併において、売り手企業(=消滅会社)の資産、負債、権利義務のすべてを引き継ぐ買い手企業を意味します。
    存続会社は、吸収合併において、売り手企業の技術やサービス、人材などを自社に統合することができるため、業界シェアの拡大、販売網の拡張を目指すことができます。さらに、他社を吸収合併したという事実そのものが、会社の資本力や成長性の証明になるというメリットもあります。

    消滅会社とは

    消滅会社とは、吸収合併において、自社の資産や負債、権利義務のすべてを買い手企業(=存続会社)に承継する企業のことです。
    吸収合併の効力発生日を迎えると、消滅会社は解散となり、存続会社に統合されることとなります。一般的には存続会社のほうが大きい規模であることが多いため、消滅会社はこれまでの法人格を失うことにはなるものの、存続会社のブランドイメージや信用力を手にできることが大きなメリットとなる場合が多いです。
    また、親会社が子会社を吸収する、グループ会社内の吸収合併の場合、親会社が存続会社として負債や従業員も引き継いでくれるため、子会社は吸収合併を「事業承継」と捉えて利用することもあります。

    吸収合併における存続会社の手続きは?

    吸収合併においては、存続会社は次の手続きをおこなう必要があります。

  • 吸収合併契約書の作成・吸収合併契約の締結
  • 吸収合併契約書などの事前開示
  • 株主総会での承認
  • 官報公告
  • 株主を保護する措置
  • 債権者を保護する措置
  • 登記手続き
  • 事後開示書面の備置
  • それぞれ詳しくみていきましょう。

    吸収合併契約書の作成・吸収合併契約の締結

    吸収合併を実施することに対して、存続会社、消滅会社の双方の合意を得ることができたら、吸収合併契約書を作成して、その内容に基づき、取締役会で吸収合併することに対しての承認を請います。承認を得られたら、両者の間で吸収合併契約を締結します。

    吸収合併契約書などの事前開示

    合併契約書が締結されたら、存続会社と消滅会社の双方は、吸収合併契約書などの開示書類を会社の本店に備置(びち)しなくてはなりません。なぜかというと、債権者を保護する必要などがあるためです。開示内容および開示期間についても、法令によって定められています。

    開示にあたっては、吸収合併契約書のほかに、事前開示書面、決算報告書などを用意する必要があります。

    開示内容

  • 吸収合併契約の概要
  • 合併対価の相当性に関する事項
  • 新株予約権の定めの相当性に関する事項
  • 消滅会社の財産状況・計算書類に関する事項
  • 存続会社の財産状況・計算書類に関する事項
  • 吸収合併効力発生日以降の、存続会社の債務の履行の見込みに関する事項
  • 開示期間

    事前開示書類の備置は、株主総会の2週間前までに開始します。
    開示期間は、存続会社に関しては、備置開始日から吸収合併の効力発生日の6か月後までとなります。ただし、正確には、効力発生日以降は、「事前開示書類」ではなく、「事後開示書類」ということになります。
    一方、消滅会社における開示期間は、備置開始日から吸収合併の効力発生日までとなります。

    株主総会での承認

    吸収合併の効力発生日前日までに、株主総会を開いて、吸収合併することに対して株主から承認を得る必要があります。
    株主総会への招集通知は、通常、株主総会開催日の1週間前までとされていますが、上場企業など株主数が多い企業は、2週間前までに通知する必要があります。
    また、書面投票や電子投票による承認にする場合も、開催日の2週間前までに通知します。吸収合併の告知と株主総会の招集通知をまとめても構いません。
    なお、消滅会社は、株主へ通知すると同様に、新株予約権者にも吸収合併する旨を通知する必要があります。

    株主総会承認の省略(簡易/略式合併)

    なお、以下の要件を満たす略式合併や簡易合併の場合、株主総会での特別決議による承認が不要となり、手続きを大幅に簡略化できます。

  • 簡易合併(存続会社側):存続会社が交付する対価の帳簿価額が、存続会社の純資産額の20%以下である場合。
  • 略式合併(存続会社側):消滅会社が存続会社の 90%以上 の議決権を保有している(親子会社間の合併)場合。
  • 官報公告

    吸収合併することを官報公告に掲載して、債権者に周知します。この際、債権者からの異議申し立てを受け付ける旨も掲載します。なお、官報公告と電子公告の両方に掲載した場合、債権者に個別に通知する必要はありませんが、確実な周知のために、個別通知もおこなっても構いません。

    株主を保護する措置

    吸収合併の承認は多数決によっておこなわれるため、吸収合併が決定しても、反対株主が存在する可能性はあります。そのため、反対株主を保護する措置をとる必要があり、反対株主には、保有株式の買取を請求する権利も与えられています。

    債権者を保護する措置

    前述の通り、吸収合併の当時会社は官報公告や電子公告、債権者への個別通知によって、債権者からの異議申し立てを受け付けることを明記する必要があります。その結果として、債権者からの異議申し立てがあった場合、債権者の保護手続きをおこなうことが必要です。
    なお、債権者からの異議申し立てを受け付ける期間として、公告から1か月以上の期間を確保する必要があります。
    期限内に異議申し立てがない場合、吸収合併は承認されたものをみなすことができます。

    登記手続き

    吸収合併の効力発生日から2週間以内に、登記申請手続きをおこなう必要があります。登記申請手続きの際は、各種書類を提出する必要があるほか、登録免許税の支払いや収入印紙の購入も必要になります。なお、提出が必要な書類については後述します。
    消滅会社の場合、解散登記の申請をして、法務局に30,000円を支払うことで登記手続きが完了となります。ただし、吸収合併後に資本金が増加した場合、金額が異なります。詳しくは後述します。
    また、清算人を選任している場合、清算人の登記申請および9,000円の支払いも必要です。

    事後開示書面の備置

    前述の通り、存続会社においては、事前開示書類の備置開始日から吸収合併の効力発生日の6か月後まで、吸収合併の内容について記した書類を備置することが必要ですが、効力発生日以降は、この書類は「事後開示書類」と呼ばれます。事前開示書類と事後開示書類に記載する内容は概ね同じといえます。
    効力発生日、消滅会社の法的手続きに関する事項、対価の相当性に関する事項、変更登記日、権利義務、その他、法務省令で定めされた事項などについて記します。

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    吸収合併における消滅会社(売り手)の手続き・注意点は?

    消滅会社は存続会社と比べて手続き項目は少ないですが、会社法上の義務を履行する必要があります。

    ・吸収合併契約書の作成・締結:存続会社と同様に契約内容を合意します。
    ・吸収合併契約書などの事前開示:株主総会開催の2週間前までに、本店に開示書類を備え置きます。
    ・株主総会での承認:効力発生日の前日までに、株主総会の特別決議による承認を得る必要があります。
    ・債権者・株主を保護する措置:存続会社と同様に、官報公告や個別通知による債権者保護手続きを行い、反対株主には株式買取請求権を付与します。
    ・登記手続き:効力発生日から2週間以内に、解散の登記を申請します。この登記によって法人格が消滅します。
    ・事後開示書面の備置:効力発生日まで、吸収合併の内容を記した書類を備え置きます。

    吸収合併における消滅会社の株主(売り手)への課税は?

    消滅会社の株主は、合併対価として受け取った財産に対して課税されるかどうかが、M&Aの成否に影響します。

    ●対価が株式のみの場合(適格合併)
    存続会社の株式のみが交付され、かつ合併が「適格合併」と認められた場合、株主は株式の譲渡損益の計上を繰り延べ(課税なし)できます。

    ●対価に現金等が含まれる場合(非適格合併):
    対価として現金や存続会社以外の財産が交付された場合、または「非適格合併」と判断された場合、株主は保有していた消滅会社株式を「みなし譲渡」したとされ、譲渡所得として課税されます。

    吸収合併における存続会社の登記手続き

    前述の通り、吸収合併を実施する場合、存続会社は吸収合併の効力発生日から2週間以内に登記手続きをおこなわなくてはなりません。
    効力発生日の設定について決まりはありませんが、効力発生日を4月1日に設定すると、中途半端な時期に決算をする必要がないことから、4月1日を効力発生日として、同日に登記申請も済ませるパターンが多いです。

    存続会社の登記手続きに必要な書類一覧

    存続会社が登記手続きをおこなうにあたって提出が必要になる書類は、次の表の通りです。

    書類名または書類の説明 内容
    株式会社合併による変更登記申請書 登記申請の署名
    吸収合併契約書 吸収合併の契約の内容証明。次の事項を記載
    ・存続会社と消滅会社の商号と住所
    ・消滅会社の株主に渡す対価
    ・消滅会社が新株予約権を発行している場合は吸収合併後の新株予約権の数や金額・算定方法
    ・効力発生日
    合併に関する株主総会議事録 株主総会において、吸収合併契約に関して承認を得たことの証明となる議事録。次の事項を記載
    ・いつどこで株主総会を開催したか
    ・株主総数
    ・出席株主数
    ・議決権の数
    など
    なお、取締役やその他役員の署名捺印が必要
    株主リスト 株主の氏名・名称、住所、株式数、議決権数、議決権数の割合をまとめた書面
    取締役会議事録 取締役会の承認を得たことの証明
    略式合併または簡易合併の要件を満たすことを証明する書類 略式合併または簡易合併の要件を満たすことを証明する書類
    合併の効力発生日の前日までに、存続会社の株主総会で承認されていることを示す書類 合併の効力発生日の前日までに、存続会社の株主総会で承認されていることを示す書類
    (簡易合併に反対の意思を示した株主がいた場合に添付)
    公告および催告を実施したことを証明する書類 債権者への広告、個別公告を実施したことを証明できる書類
    合併への異議申述書、弁済金受領証書 異議を述べた債権者に対して、弁済もしくは担保を供したか、もしくは信託したこと、または合併をしてもその者を害する恐れがないことを証する書面
    消滅会社の登記事項証明書 消滅会社に関する登記事項の証明
    株券提供公告を実施したことを証明する書面 株主に株券提供を求める公告を実施したことの証明
    新株予約権証券提供公告を実施したことを証明する書面 株主に新株予約権証券の提供を求める公告を実施したことの証明
    資本金の額の計上に関する証明書 (合併によって資本金の額が増加する場合に添付)
    登録免許税法施行規則第12条第5項の規定に関する証明書 (合併によって資本金の額が増加する場合に添付)
    取締役および監査役の就任承諾書 株主総会で取締役や監査役に選ばれたことの承諾書
    印鑑証明書 印鑑証明
    本人確認証明書 本人であることを証明する書類
    許可書、または許可書および認証がある謄本 許可証
    委任状(必要に応じて) 変更登記申請の権限委任

    上記に合わせて、消滅会社に関する次の書類についても、存続会社が提出する必要があります。

    消滅会社に関する必要書類

  • 消滅会社の登記事項証明書
  • 株主総会議事録、取締役会議事録
  • 債権者保護手続き書面
  • なお、前述の通り、消滅会社自身がおこなうべきことは、解散の登記申請および30,000円の支払いのみです。清算人を選定している場合、別途、清算人の登記申請および9,000円の支払いも必要になります。

    存続会社の登記手続きに必要な登録免許税

    登記申請書を提出するにあたっては、申請書に登録免許税の収入印紙を貼り付けて、管轄の税務署に支払う必要があります。
    登録免許税の支払額は、吸収合併によって存続会社の資本金が増加しなかった場合、一律30,000円とされています。
    吸収合併によって資本金が増加した場合は、資本金の増加分に1,000分の1.5を掛けた金額が登録免許税となります。資本金増加額が消滅会社の資本金を超えた場合、超えた分の資本金に対して1,000分の7を掛けて支払額を算出します。
    たとえば、消滅会社の資本金が3,000万円で、吸収合併後に増加した資本金が3,500万円となった場合、3,000万円には1,000分の1.5を掛けて、500万円には1,000分の7を掛けた額を支払います。

    吸収合併における存続会社の資本金に関するルール・注意点は?

    続いては、吸収合併における存続会社の資本金に関するルールや注意点を解説していきます。

    消滅会社の資本金は存続会社の資本金に合算される

    消滅会社の資本金は、会社法第445条および会社計算規則第36条に基づき、存続会社の資本金に合算されることになります。合併後の資本金は、存続会社と消滅会社との関係が支配取得にあたるかどうかなどによって、会社法の計算規則に従って計算されます。

    合併後の資本金の計算方法・課税率

  • 消滅会社が外会社の場合
  • 消滅会社が外会社の場合、支配取得にあたる合併ということになり、消滅会社の資産と負債を時価で計算する必要があります。
    また、支配取得にあたる合併の場合、税法上の要件を満たしている「適格合併」なのか、適格合併以外の「非適格合併」なのかによって課税条件が変わります。
    適格合併に該当すると税務上のメリットが大きくなる一方、非適格合併と判断された場合、合併当時会社のみならず株主の税負担も大きくなります。そのため、吸収合併を実施するほとんどの企業は、適格合併だとみなされるよう手続きを進めます。

    第三者間(支配取得)における適格合併の主要要件

    独立した第三者間の合併(支配取得)で適格合併と認められるためには、主に株式対価であることに加え、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。

  • 事業関連性:合併前後の事業が相互に関連していること、かつ合併後も主要な従業員が従事し続けること。
  • 事業規模要件:いずれかの事業規模が概ね5倍超の差がないこと。
  • 役員引継ぎ要件:合併法人の役員の20%以上が被合併法人から引き継がれること。
  • 消滅会社が子会社の場合or子会社同士の合併の場合

    消滅会社が子会社の場合、または子会社同士の合併の場合、共通支配下の合併ということになり、簿価で計算する必要があります。
    また、共通支配下の合併の場合、法人税は課税されません。

    参照:会社法

    参照:会社計算規則

    資本金にかかる税金を節税する方法はいくつかある

    法人税の資本金には税金がかかります。
    法人税法では、資本金が1億円以下の会社を「中小企業」と定めており、法人税法上、中小企業と判断されれば、年間800万円までの軽減税率が適用されます(ただし、大企業の子会社の場合、1億円を下回っていても中小企業とみなされません)
    つまり、節税のためには資本金が1億円を下回るほうが有利ということになりますが、次の対策を講じることによって、資本金を1億円に抑えられる可能性があります。

    「資本剰余金」に大きく割り振る

    「資本剰余金」とは、会社設立時に株主から集めた資金のうち、「資本金」にしなかった資金を指します。言い換えると、資本金以外の元手資金ということになります。
    吸収合併における資本剰余金と資本金の割り振りについては、当時会社同士で決めることができます。つまり、資本金を1億円以下にするために、資本剰余金を大きくみせても構わないということです。
    ただし、資本金が極端に少ないと、金融機関や取引先からの信用を得にくいなどのデメリットが生じます。

    資本金の1/2を超えない金額を「資本準備金」として計上する

    会社法によって、資本金の1/2を超えない金額であれば、資本金“以外”の「資本準備金」として計上できると定められています。つまり、資本金の1/2以下の金額を資本準備金として計上したことによって、資本金として計上する額が1億円未満になると、税務上のメリットが大きいということになります。

    消滅会社が債務超過の場合、存続会社の資本剰余金の額を減らすことで債務超過分を充当する

    消滅会社が、資本の総額を超えた負債を抱えている「債務超過」である場合、存続会社の資本剰余金の額を減らすことによって、債務超過分に充当させることになります。資本剰余金を充当してもプラスにならない場合、その他利益剰余金を減らすことによって、債務超過分を埋め合わせることになります。
    なお、消滅会社が債務超過である場合、その事実を株主総会において説明しなければなりません。株主総会において、債務超過の会社を吸収合併することについて承認を得ることができれば、債務超過であっても吸収合併することは可能です。
    消滅会社が債務超過の場合、基本的に存続会社の資本金は増加することはないのに、なぜ吸収合併するケースがあるかというと、たとえば、子会社が債務超過である場合、親会社が吸収合併することによって、消滅会社の従業員や販売網、サービスなどを維持できるためです。

    吸収合併における存続会社の会計処理方法

    吸収合併における存続会社の会計処理方法は、合併が「取得」であるのか「逆取得」であるのかによって異なります。

    「取得」とは

    存続会社が消滅会社の支配権を獲得して、実質的にも支配する場合、会計上は「取得」とみなされます。
    この場合、「パーチェス法」に基づいて会計処理をおこなうことになります。パーチェス法では、消滅会社の資産および負債は市場価格に基づいて再評価することとなり、時価と再評価後の純資産額の差額は「のれん」として計上します。たとえば、簿価4億円の会社が5億円で吸収合併された場合、差額の1億円が「のれん」ということになります。
    なお、消滅会社は、吸収合併の効力発生日前日を最終決算日として、通常の決算手続きを実施することが必要です。
    パーチェス法においては、吸収合併を“事業の一括購入”ととらえて、消滅会社の純資産を公正価値で評価します。なお、存続会社は消滅会社の権利および義務のすべてを引き継ぐことになるため、消滅会社の決算公告についても引き継ぐ必要があります。

    「逆取得」とは

    逆取得とは、形式上は存続会社が残るものの、実質的には消滅会社が合併後の支配権を握ることを意味します。逆取得は、「逆さ合併」とも呼ばれます。逆取得のメリットは、合併差損を回避できることや、繰越欠損金を控除できることにあります。また、非上場の大規模会社が、上場している小規模会社を逆取得することによって、上場にかかる期間とコストを抑えるといったケースもあります。
    逆取得においては、資産評価は簿価でおこなわれるため、通常の買収で発生する「のれん」は個別財務諸表上計上されることがありません。
    個別財務諸表上では、存続会社は消滅会社の資産および負債について、合併前の適正な帳簿価額で引き継ぐことになります。
    消滅会社は、吸収合併の効力発生日前日を最終決算日として、通常の決算手続きを実施することが必要である点は、「取得」の場合と同様です。

    吸収合併をスムーズに進めるためには専門家の協力が不可欠

    吸収合併における存続会社は、吸収合併契約手続きから登記手続きまで、さまざまな手続きをおこなう必要があります。しかも、ここまで解説してきた通り、支配関係などによって会計処理や税務上の影響が異なることから、正しい手続きを理解すること自体に時間がかかる可能性があります。そのため、吸収合併をスムーズに進めたいなら、法務・会計・税務の各専門家にサポートしてもらうことが得策です。相談だけなら無料で受け付けているM&A仲介サービスも多いので、まずは気軽に相談してみることをおすすめしますよ。

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    執筆 ジョブカンM&A編集部

    ジョブカンM&Aは、株式会社DONUTSが運営するM&Aアドバイザリーサービスです。主に企業の事業承継、成長戦略、出口戦略(イグジット)といった多様なニーズに応えることを目的としています。最大の特徴は、累計導入社数20万社以上を誇るバックオフィス支援クラウドERPシステム「ジョブカン」の広範なネットワークを活用している点です。この強力な顧客基盤を生かし、効率的なマッチングを実現します。


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