株式や不動産と同じように、webサイトも、売買可能な資産です。しかも、webサイトによってはかなり高額な値段で取引されるケースもあるため、事業の成長戦略や出口戦略(イグジット)の一環として、法人・個人問わず、昨今、サイト売却に関心を持つ人が増えています。そこで今回は、サイト売却を成功させるためのポイントや、売買の際の注意点などを詳しく解説していきます。
M&A・事業承継で失敗したくないなら
ジョブカンM&Aは、経験豊富なアドバイザーが事業の売却・買収をトータルでサポートします。
「信頼できる相手を見つけたい」「交渉や手続きが不安」「適正な価格で取引したい」といった、M&Aに関するあらゆるお悩みを解決に導きます。
詳しいサービス内容を知りたい、気軽に相談したいという方は、下記サービスサイトをご覧ください。
サイト売却とは?
「サイト売却」とは、企業や個人が運営しているwebサイトを他社・他者に売却することで、事業の一部または全部を譲渡するM&A(サイトM&A)の一種です。特に法人間では、この後の手順やリスクが大きく変わります。
「サイト売却」という言葉を頻繁に見聞きするようになったのはここ数年だというイメージを抱いている人もいるかもしれませんが、意外と歴史が長く、最初にサイト売却がおこなわれたのは2003年頃とされています。
サイト売却の「取引スキーム」:事業譲渡と株式譲渡
サイト売却はM&Aの一種であるため、法人間の取引においては主に「事業譲渡」か「株式譲渡」のいずれかのスキームが用いられます。
事業譲渡(個人/法人の一部売却で一般的): Webサイトやドメイン、顧客情報、ノウハウといった「資産」を個別に売買する手法。売り手は税務申告や契約移管の手間がかかる一方、買い手は引き継ぐ負債を選べるためリスクを限定しやすいというメリットがあります。
株式譲渡(法人/事業会社ごと売却): Webサイトを運営する会社(または子会社)の株式を丸ごと売却する手法。手続きは簡素ですが、簿外債務を含む会社全体の権利義務が買い手に引き継がれるため、買い手側のデューデリジェンス(後述)が極めて重要になります。
サイト売却の方法
サイト売却の方法は大きく2種類あります。
1つは、個人間・企業間で直接売買する方法で、もう1つは仲介会社を利用する方法です。
※ただし、さらに細かくわけると、仲介会社を通さないという意味では前者にまとめられるものの、マッチングサービスやオークションサイトを利用するという選択肢もあります。
【売り手側にとってのメリット・デメリット】
| メリット | デメリット | |
| 個人間・企業間での売買 | ・手数料がかからない | ・自分(自社)でwebサイトの評価をおこない、売却価格を決めなければならないため、相場より安い値段で売ってしまう可能性がある |
| 仲介会社を利用 | ・webサイトの価値を見定めてもらえる ・買い手とのやりとりや交渉も任せられる ・エスクローサービスを利用できる |
・手数料がかかる |
【買い手側にとってのメリット・デメリット】
| メリット | デメリット | |
| 個人間・企業間での売買 | ・手数料をとられない | ・webサイトの価値を見定められず、相場以上の値段で購入してしまう可能性がある ・webサイトの構造に問題があっても見過ごしてしまう可能性がある |
| 仲介会社を利用 | ・売り手とのやりとりや交渉も任せられる ・エスクローサービスを利用できる |
・手数料がとられる |
個人間での売買
個人間での売買の場合、手数料がかからない反面、最初から最後まで自己責任でおこなう必要があるため、手間がかかるうえ、リスクが高くなるデメリットがあります。リスクに関しては、約束通り支払われないなど、相手に問題がある可能性もあれば、webサイトの構造に問題がみつかってクレームが入るなど、責任問題となるケースも考えられます。
反対に、価値の高いwebサイトであったとしても、販売価格を適切に設定できず、相場より安く売ってしまう可能性も考えられます。
なお、前述の通り、個人間での売買に関しては、希望者に直接売却する場合もあれば、オークション形式で出品して売却する場合やマッチングサービスを利用する場合もあります。
仲介会社を通しての売買
仲介会社を利用すれば、売り手側・買い手側の双方ともに、売買に伴うリスクを回避できます。webサイトの査定も、売買相手とのやりとりも交渉も任せることができるため、お互いに安心できるでしょう。
また、サイト売買に関する契約を締結した後、仲介会社やサイト売却サービスが買い手から譲渡金を一時的に預かり、すべての取引が完了した後に、預かっていた譲渡金を売り手に振り込む「エスクローサービス」、別名「第三者信託」を利用することができるため、金銭トラブルや詐欺を未然に防ぐことができます。
ただし、安全・安心と引き換えに手数料を支払うことになります。
M&A・事業承継で失敗したくないなら
ジョブカンM&Aは、経験豊富なアドバイザーが事業の売却・買収をトータルでサポートします。
「信頼できる相手を見つけたい」「交渉や手続きが不安」「適正な価格で取引したい」といった、M&Aに関するあらゆるお悩みを解決に導きます。
詳しいサービス内容を知りたい、気軽に相談したいという方は、下記サービスサイトをご覧ください。
仲介会社を利用した場合のサイト売却の流れ
仲介会社を利用した場合のサイト売買の流れは次の通りです。
なお、契約内容によっては、譲渡後、一定期間にわたって売り手がwebサイトのアフターケアをおこなう場合があります。
サイト売買のメリット、デメリット
続いては、サイト売買のメリット、デメリットを、売り手・買い手それぞれの目線で確認していきましょう。
売り手にとってのサイト売買のメリット、デメリット
売り手にとってのメリット、デメリットは次の通りです。
メリット
最大のメリットは、まとまった資金を調達できることです。たとえば、月間営業利益が50万円あるECサイトなら、750万円程度で売れる可能性が高いと考えられます。なぜかというと、webサイトの売買価格は査定額によって異なるため、明確な相場はないものの、一般的には、直近半年の月間営業利益平均値×15か月分が譲渡金額相場と考えられているためです。
なお、ページビュー数・ユニークユーザー数が高く、売上が好調なwebサイトであれば、相場より高い値段で買い手がつくケースが多いため、これ以上のキャッシュが手に入る可能性も高いといえます。もっとも価値が高いwebサイトであれば、数千万円~数億円で売却できるケースもあるため、そのレベルになると、売却できた時点でセミリタイアしても十分生活していくことができるでしょう。
また、参考までに、webサイトのジャンル別の相場は次の表の通りです。
| ジャンル | 相場 |
| ECサイト | 月間営業利益平均×7~20か月 |
| アフィリエイトサイト | 月間営業利益平均×10~20か月 |
| マッチングサイト | 月間営業利益平均×24~36か月 |
| ポータルサイト | 月間営業利益平均×36~60か月 |
なお、ブログサービス、サブドメインのwebサイトに関しては、売買が禁止されているケースがほとんどです。
デメリット
まず、自分で作成したwebサイトを売却するとなると、後ろ髪を引かれてしまうことがあるかもしれません。また、前述の通り、個人間でやりとりする場合は、譲渡金を回収できない可能性などもあるため、リスクヘッジのための対策を講じることが不可欠です。
買い手にとってのサイト売買のメリット、デメリット
買い手にとってのメリット、デメリットは次の通りです。
メリット
売上が好調なwebサイトを手に入れることができれば、一定の収入が確保されることになります。
また、管理画面や運営方法も譲渡されるため、webサイトに関する貴重なノウハウもまとめて手に入れられることになります。
さらに、不動産や株式などへの投資と比較して回収期間が短く、短期間で投資額を回収できることも、メリットと考えられます。しかも、不動産や株式と比べて、少ない金額で投資することもできます。
デメリット
購入後、Googleのアルゴリズム変動によって検索順位が著しく下落する可能性がゼロではありません。
特に収益規模の大きなサイトや法人格ごとの買収(株式譲渡)の場合、対象サイトや会社の法的、財務的、ビジネス的なリスクを精査するデューデリジェンス(DD)が必要です。このプロセスは買い手側の費用と負担で行う必要があり、サイトの収益性や法的な問題点(景表法違反、著作権侵害など)が発覚した場合は、交渉決裂のリスクも伴います。
また、特に個人間でのやりとりの場合、事前に説明を受けていた内容とは異なるなど、詐欺まがいのトラブルに巻き込まれる可能性があります。そのため、取引相手と信頼関係がある場合、もしくは自分の知識に自信がある場合を除き、仲介会社を利用することが賢明であるといえます。
市場価値の高いサイト、低いサイトの特徴は?
サイト売買市場において、価値が高いと評価されるwebサイトには次のような特徴があります。
【市場価値の高いサイト】
一方、価値が低いと評価されるwebサイトには次のような特徴があります。
【市場価値が低いサイト】
著名な人物のネームバリューによって売り上げやアクセスが伸びているサイトは、運営者が変わることによって売り上げやアクセス数が落ちる可能性が高いことから、市場価値が低いと判断されます。
また、前述の通り、ブログサービスやサブドメインのwebサイトは、市場価値が低いかどうか以前に、売買が禁止されている場合がほとんどです。
サイト売却を成功させるポイント
サイト売却を成功させるためには、次に挙げるポイントを踏まえたうえで、売却手続きを進めていくことが大切です。
それぞれ詳しく解説していきます。
サイト売却経験者に話を聴く、もしくはサイト売却経験者のインタビュー記事などを読む
サイト売却の方法や流れなどは、各種媒体の記事などでも確認できますが、正しい流れで売却を進めていったとしても、思わぬトラブルに巻き込まれるなどする可能性はあります。事前にサイト売却経験者の体験談に触れておけば、どんなことが起きる可能性があるかを知ることができるため、トラブルが起きた場合などに慌てず対処しやすくなります。
高い成果を狙えるアフィリエイトサイトを制作する
売却目的でサイトを制作するなら、需要を考えて制作することが大切です。ゼロから作って成果を出すことを目指すなら、アフィリエイトサイトが最適ですが、アフィリエイトサイトで高い成果を出すためには、訪問者を商品購入まで誘導できる確率が高い商材を選ぶことが重要です。
初期段階でマネタイズを意識する
webサイトの収益モデルには、次のようなものがあります。
これらをどのように盛り込み、どのように運営していくかをきちんと考えてサイトを構築していくことで、収益性の高いサイトを生むことができます。
コンテンツ作りにこだわる
独自の価値を提供できるコンテンツを有したwebサイトは、高い査定金額となりやすいです。まずは、Googleが重視している「E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)」を兼ね備えたコンテンツを目指すといいでしょう。
ライターやデザイナーと組む
独自の価値を提供できるコンテンツを制作するためには、ライターやデザイナーとタッグを組むことが一番です。仮に、文章執筆やデザインに自信があったとしても、一人でいくつものコンテンツを作るとなると膨大な時間を必要とするため、限界を迎えてしまうでしょう。また、記事の構成や整合性を追求するために、編集者にも加わってもらえるとベストです。
SEO対策を講じてアクセス数を最大化する
コンテンツ内容が魅力的であっても、アクセス数を稼げていなければ、高い評価を得ることができません。アクセス数を高めるためには、きちんとSEO対策を講じることが不可欠です。
サイト売却のベストタイミングを見逃さない
webサイトを売却するベストなタイミングは、PV/UUが多く、売り上げが好調で、将来性が見込めるタイミングです。そうした状態のwebサイトは、相場より高い値段でもすぐに買い手がつきます。売り時を誤ると、相場より低い金額しかつかない可能性が高いため注意が必要です。
複数のM&A仲介会社やサイト売買プラットフォームで査定してもらう
webサイトの査定額は、算出方法や評価基準によって大きく異なるため、査定は必ず複数社に依頼することが大切です。査定のみであれば無料で利用できるところが多いので、まずは査定してもらうことで、現時点での自社サイトの価値を把握しましょう。
なお、サイト価値を算定する主な方法は次の3つです。これらのうち、どの方法を採用しているかは、仲介会社やサービス事業者によって異なります。
信頼できるサイト売却サービスを利用する
無料査定を実施しているサイト売却サービス事業者のなかには、相場より低い価格を出して買い叩くところもあります。そのため、複数社とやりとりすることで、信頼できるサービス事業者を見極めることが大切です。
webサイトを売却する際の注意点
webサイトを売却するにあたっては、次のことに注意することも必要です。
それぞれ詳しく解説していきます。
クレーマー対策
webサイトの買い手は、必ずしも誠実であるとは限りません。なかには、契約後に不合理な要求をしてくる買い手、譲渡後の通常のサポート範囲を超えた協力を要求してくる買い手もいます。そのようなクレーマーにwebサイトが渡る可能性があることから、マッチングサイトやオークションサイトを通して、素性のわからない相手と取り引きすることはあまりおすすめできません。
不本意な価格で売却となる可能性
前述の通り、不当に安い価格を査定額として提示してくるサービス事業者は少なからず存在します。そうしたサービス事業者がいることを十分理解したうえで、複数社に査定を出してもらい、不本意な価格を提示してくる事業者にはさっさと見切りをつけましょう。
税金対策
webサイト売却時には税金が発生します。
法人が、会社は売却せずにwebサイトのみ売却した場合、売却で得た収益は、その年の法人税等の対象となります。資本金1億円以下の外形標準課税不適用法人の場合、実行税率は約37%です。資本金1億円超の外形標準課税適用法人の場合、実効税率は約31%です。
個人がwebサイトを売却した場合、原則として「譲渡所得」に該当しますが、継続的なサイト売買目的でサイトを作成・所有している場合、売却時には「事業所得」を得るということになります。逆に言うと、自身が運営するためにwebサイトを制作したものの、なんらかの理由で売ることになった場合は、事業所得ではなく「譲渡所得」になる可能性が高いというとこです。
【譲渡所得の場合の税率】
サイト売却による譲渡所得は、他の所得と合算して課税される「総合課税」の対象です。特に、サイトの保有期間が5年を超えるかどうかで税額が大きく異なります。
いずれにしても、どちらの場合も税金が発生することは確かであるため、売却にあたっては、どの程度の税金が発生するのかを事前に算出して、必要な資金をプールしておくことをおすすめします。必ず事前に税理士に相談しましょう。
サイト売却は正しいプロセスで進めていくことが肝心
前半で述べた通り、サイト売却はM&Aの一種ですが、株式譲渡や合併をはじめとする、企業同士のM&Aとは異なり、初心者の個人でも成功させることができるM&Aです。ただし、そのためには、サイト売却の仕組みをきちんと理解して、正しい手続きを進めていくことが大切です。手塩にかけて育てたwebサイトの価値を正しく理解してくれる買い手に、適切な価格で購入してもらうためにも、まずは一連のプロセスへの理解を深めるところからはじめてくださいね。
M&A・事業承継で失敗したくないなら
ジョブカンM&Aは、経験豊富なアドバイザーが事業の売却・買収をトータルでサポートします。
「信頼できる相手を見つけたい」「交渉や手続きが不安」「適正な価格で取引したい」といった、M&Aに関するあらゆるお悩みを解決に導きます。
詳しいサービス内容を知りたい、気軽に相談したいという方は、下記サービスサイトをご覧ください。
この記事は、時点の情報を元に作成しています。
執筆 ジョブカンM&A編集部
ジョブカンM&Aは、株式会社DONUTSが運営するM&Aアドバイザリーサービスです。主に企業の事業承継、成長戦略、出口戦略(イグジット)といった多様なニーズに応えることを目的としています。最大の特徴は、累計導入社数20万社以上を誇るバックオフィス支援クラウドERPシステム「ジョブカン」の広範なネットワークを活用している点です。この強力な顧客基盤を生かし、効率的なマッチングを実現します。
他の関連記事はこちら