
M&Aの買収は、「友好的買収」と「敵対的買収」の大きく2つにわけられますが、日本国内で実施されているM&Aでは、ほぼ友好的買収が採用されています。なぜ、友好的買収のほうが採用されることが多いのか、敵対的買収とはどんな違いがあるのか、それぞれの手法にはどんなメリット、デメリットがあるのかなどを詳しく解説していきます。
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- 友好的買収が日本で圧倒的に多い背景
- 友好的買収とは?
- 友好的買収と敵対的買収の違いとは?
- 友好的買収の手法は?
- 友好的買収のステップは?
- 友好的買収のメリットは?
- 友好的買収のデメリット・注意点は?
- 友好的買収を成功させるポイントは?
- 【実例】国内企業による友好的買収事例
- 友好的買収に関するFAQ
- 友好的買収における専門家の役割
友好的買収が日本で圧倒的に多い背景
次の3つの理由が挙げられます。
企業文化と商慣習
日本企業は、買収を「企業間の協調」と捉える傾向が強く、敵対的な手法は経営者や従業員の反発を招き、買収後の事業運営に悪影響を及ぼすと考えるのが一般的です。
売り手の意向
中小企業のM&Aでは、創業者や経営者が「長年育ててきた従業員の雇用維持」や「取引先との関係継続」を強く希望します。友好的な交渉を通じて、これらの条件を丁寧にすり合わせることが不可欠なためです。
買い手のリスク回避
敵対的買収は、交渉が長期化し、訴訟リスクや世間からの批判にさらされる可能性があります。友好的買収はこれらのリスクを回避し、スムーズな統合(PMI)を実現するため、買い手にとってもメリットが大きいのです。
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友好的買収とは?
友好的買収(Friendly Takeover)とは、買い手側企業と売り手側企業が合意したうえで、自主的に実施されるM&Aの手法です。買収実施、買収価格などの条件面に関して、買い手、売り手の双方が納得した状態で進めることができます。
なお、株式譲渡や第三者割当増資など買収手法には決まりはなく、シンプルに、対象企業の経営陣や株主との協議を経て、買い手と売り手との間で合意が取れていれば友好的買収ということになります。
なお、株式公開買い付け(TOB)の手法によって買収が実施された場合、「友好的TOB」と呼ばれることもあります。
また、買収後も、買い手企業と売り手企業の両者が協力関係を維持して、利益の最大化やシナジーの創出を目指すことが特徴です。たとえば、企業間で技術力を補完し合うことや、市場シェアの拡大を目的として、双方が買収に合意するケースもあります。
ただし、倍種後に経営方針の違いや文化の相違がネックとなり、協力関係がうまく機能せず、期待していたようなシナジー効果が生まれないこともあります。そうした事態を防ぐためにも、買収の実施前に十分協議を重ね、買収後の統合プロセス(PMI:Post-Merger Integration)を適切に実行することが大切です。
双方の合意があっても「友好的買収」とはみなされないケースもある
形式的には、買い手企業と売り手企業との間で合意が成立していたとしても、実質的に買い手企業が売り手企業に対して圧力をかけていたり強制していたりする場合、友好的買収とはみなされないのが一般的です。
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友好的買収と敵対的買収の違いとは?
友好的買収は、前述の通り、買い手企業と売り手企業が合意したうえで実施される買収ですが、これに対して敵対的買収(Hostile Takeover)は、対象企業の経営陣や親会社などの同意を得ることなく、進められる買収を指します。
敵対的買収の主な手法は、株式公開買い付け(TOB)を通じて株主から株式を取得して、1/3以上の株式を保有することによって株主総会の特別決議を阻止するか、もしくは過半数の株式を取得して経営権を掌握して子会社を目指すというものです。
そのほか、株式市場での買い集め(市場買い付け)という手段もあります。
敵対的買収においては、友好的買収の場合とは異なり、対象企業からの協力を得られないため、情報が制限されたり、買収後の統合が困難になったりすることが考えられます。加えて、買収に必要なコストが高額になりやすいというデメリットもあります。敵対的買収の対象となる企業が、「ポイズンピル」や「ホワイトナイト」などの防衛策を講じた場合、さらにプロセスが複雑化しがちです。
なお、ポイズンピル(Poison Pill)とは、敵対的買収における買収者が一定割合以上の株式を取得した場合、買収者以外の自社株主に新株予約権を、大幅に値段を下げた価格で発行する仕組みです。ポイズンピルが実施されると、発行される株式の数が増えて、買収者の持ち株比率が低下するため、買収コストが増大して、買収のハードルが上がります。
一方、ホワイトナイトとは、敵対的買収を仕掛けられた企業を救うために、友好的に買収または合併する会社のことです。
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友好的買収の手法は?
前述の通り、友好的買収にはさまざまな手法があります。具体的には、株式譲渡、第三者割当増資、株式移転、株式交換、株式交付、事業譲渡があります。それぞれ詳しく解説していきます。
株式譲渡
株式譲渡とは、売り手企業が保有する株式を買い手企業に譲渡して、その対価として現金を受け取ることによって経営権を移転する手法です。
株式譲渡では、法人格を維持したまま事業を承継することができるため、比較的手続きが簡単であることから、中小企業のM&Aで広く利用されています。また、後継者不在の解決策として、株式譲渡が採用されるケースも多いです。
法人格を維持したまま事業を承継できることもあり、従業員や取引先への影響は一般的には小さいものの、買い手企業による経営方針の変更や組織再編がおこなわれた場合は、影響が大きくなる場合もあります。また、買い手企業は売り手企業の簿外債務や過去の法的トラブル、法務リスクなどを引き継ぐ可能性があるため、デューデリジェンスを通してしっかりとリスクを見極めることが大切です。
第三者割当増資
第三者割当増資とは、売り手企業が新しく発行した株式を買い手企業が引き受けることによって、資本提供と同時に経営権の一部を取得する手法です。
買い手企業は新株を引き受けることによって議決権を獲得して、売り手企業の経営に参画することになります。まずは経営権の一部を獲得して、段階的に議決権を獲得しながら売り手企業との関係性を深めていくことができるため、長期的な視野で資本提携や経営統合を進めていきたい場合などに適しています。
ただし、第三者割当増資は、売り手企業が新しく発行した株式を買い手側が引き受ける手法であるため、既存株主の持ち株比率が低下するため、利益が損なわれた既存株主から反発されることがあります。特に、新しく発行された株式の価格や割当先が客観的にみて不公平だと判断される場合、トラブルに発展しやすいといえます。トラブルの勃発を防ぐためには、既存株主への十分に説明したうえで同意を得ることが不可欠です。
株式移転
株式移転とは、既存の会社のすべての株式を新たに設立する会社に移転して、その会社を完全親会社として企業再編をおこなう手法です。企業再編のほかに、グループ経営の効率化を目的としておこなわれることもあります。
株式移転には「単独株式移転」と「共同株式移転」があります。前者は、1社のグループ化に使われる手法で、後者は、2社以上の経営統合に使われる手法です。
いずれの場合も、既存の法人格を維持したままグループ化が可能で、完全親会社となる会社が発行する新株を対価として用いるという特徴があります。ただし、株主総会での特別決議や債権者保護手続きが必要となるため、手続きが面倒であることが難点です。
株式交換
株式交換とは、買い手企業が売り手企業のすべての株式を取得して、その対価として、買い手企業の株式を売り手企業の株主に交付する手法です。現金ではなく株式を対価とするため、資金に余裕がない場合でも実行しやすいですが、それによって株主構成に変化が生じるため、既存株主への影響を考えながら進めていくことが大切です。
また、法人格を維持したまま経営統合を進められるため、組織構造やブランドを一定程度保持した状態で段階的に統合できるというメリットもあります。
株式交付
株式交付は、買い手企業が自社の株式を対価として売り手企業の株式を取得して、子会社化を進めるM&Aの手法です。この手法は、2021年の会社法改正によって新たに誕生しました。
株式交換においては、買い手企業は売り手企業のすべての株式を取得して100%完全子会社化しますが、株式交付においては過半数以上取得すればOKです。そのため、買い手企業は段階的な出資を続けて、将来的に完全子会社化することも可能です。
事業譲渡
事業譲渡とは、企業が営んでいる事業の一部またはすべてを他の企業に譲渡するというM&Aの手法です。譲渡の対象範囲を柔軟に設定できますが、譲渡対象ごとに個別契約が必要です。たとえば、従業員や取引先との契約は再締結する必要がありますし、許認可は再取得する必要があります。
事業譲渡をうまく活用すれば、売り手企業は不要な部門を整理することが叶いますし、買い手企業は、必要な資産や人材のみを取得して、効率的に経営資源を獲得することができます。
そのため、事業譲渡は、譲渡範囲を柔軟に設定できる一方で、個別の契約再締結や許認可の再取得といった事務手続きが非常に煩雑になる点がデメリットです。特に、従業員との雇用契約を結び直す際には、個々の同意が必要となるため、従業員の動揺や反発を招く可能性も考慮しなければなりません。
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友好的買収のステップは?
先に解説した手法のうちどの手法を選んでも、友好的買収の大まかな手順は同じで、次の6つのステップを踏むことになります(ただし、細かなステップとなると手法ごとに異なってきます)
一つひとつの工程を詳しくみていきましょう。
買収相手の検討、必要書類の準備
買い手企業はまず、業種や売り上げ規模、エリアなどの希望条件をM&A仲介会社に伝えて、候補企業一覧を提示してもらいます。この時点では、候補企業の企業名などは伏せられており、大まかな企業概要や売却理由などの基本的なことのみ知ることができます。基本情報を確認して興味を覚える企業があれば、企業概要書(IM)などを開示してもらいます。
売り手企業は、M&A仲介会社と契約を結んで、買収条件を整理しながら、自社の情報を整理した資料を作成していきます。
秘密保持契約(NDA)締結
買収検討のために、買い手企業が売り手企業についての詳細な情報を得るには、秘密保持契約(NDA)を締結する必要があります。その後、トップ面談に進むことになりますが、トップ面談後にも、買い手企業が売り手企業に対してさらなる情報提供を求める場合もあります。
トップ面談実施
買収先の候補が絞られたら、買い手企業と売り手企業の経営陣同士によるトップ面談が実施されます。面談の実施は1回とは限りません。双方が納得できるまで何度も実施されるのが一般的です。面談では、経営への想いや事業の方向性、社風などについて相互理解が深められます。
買い手企業から売り手企業に意向表明書(LOI)提出
トップ面談を経て、買い手企業が正式に買収を進めたいと判断した場合、売り手企業に対して意向表明書(LOI)を提出します。意向表明書(LOI)には、買収条件の大枠やデューデリジェンスを実施するための合意について記します。
条件交渉と基本合意書の締結
意向表明書(LOI)をもとに、買い手と売り手は本格的な条件交渉に入ります。交渉の中心となるのは買収価格ですが、それ以外にも役員の処遇、従業員の雇用維持、買収後の経営方針など、多岐にわたる項目についてすり合わせをおこないます。 交渉がまとまると、その時点での合意内容をまとめた基本合意書(MOU)を締結します。基本合意書には、買収価格の目安、今後のスケジュール、デューデリジェンスへの協力義務、そして買い手に一定期間、他の候補と交渉しないことを約束させる独占交渉権などが盛り込まれます。 基本合意書の多くの条項に法的拘束力はありませんが、独占交渉権や秘密保持義務は例外的に法的拘束力を持たせることが一般的です。
基本合意書には原則として法的拘束力がありませんが、独占交渉権や秘密保持義務などの特定の条項に対して拘束力を持たせることは可能です。
デューデリジェンス実施
デューデリジェンスは、財務、法務、事業、ITなどの観点から買収対象企業について詳細に分析していく調査プロセスです。買い手企業が、弁護士や公認会計士などの専門家に依頼して実施します。
デューデリジェンスによって簿外債務や偶発債務、不正会計などのリスクが発覚した場合、買収価格や契約内容を見直します。もちろん、リスクが想定以上に大きければ、買収そのものを見直すこともあり得るでしょう。
最終契約書締結
デューデリジェンスを経て、買収に必要な条件やリスクが明らかになったら、買収対象や買収価格、表明保証、損害賠償、競業避止義務、クロージング条件などを具体的に記した最終契約書を締結します。
最終契約書は、買収の成否を分ける非常に重要な文書です。この契約書には、買収価格や対象資産の明記に加え、「表明保証」や「損害賠償」といった、買収後のリスクを軽減するための重要な条項が盛り込まれます。表明保証とは、売り手が自社の財務状況や法務リスクがないことなどを買い手に対して約束するものです。万が一、この約束に虚偽があった場合、買い手は損害賠償を請求することができます。これにより、デューデリジェンスでは見つけきれなかった潜在的なリスクに備えることができるのです。
クロージング
クロージングとは、買い手企業と売り手企業の双方が、最終合意書に基づいて、合意内容を履行するプロセスを指します。具体的には、買い手企業は買収対価の支払いなどをおこない、売り手企業は株式や資産の引き渡し、名義変更などをおこないます。
通常、最終契約書の締結からクロージングまでには一定の期間が設けられますが、クロージングまでに必要な手続きが既に完了している場合などは、契約日にクロージングの手続きをおこなうこともあります。
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友好的買収のメリットは?
友好的買収には、次のようなメリットがあります。
それぞれ詳しくみていきましょう。
成功する可能性が高い
先に解説した通り、友好的買収は買い手企業と売り手企業の双方が買収について合意したうえで進められるため、成功する確率が高いといえます。合意のうえであるため、買収価格の算定や、デューデリジェンスなどの手続きも問題なく進む場合がほとんどです。
これに対して敵対的買収は、買収対象企業の同意を得ないまま買収が進められるため、重要な情報が提供されなかったり、防衛策が講じられたりする可能性が高く、結果的に買収が失敗に終わるリスクが高いといえます。
売り手企業との協力することでシナジー効果が生まれやすい
買い手企業と売り手企業が協力的な関係を築いて経営統合を進めていくことから、買収によるシナジー効果が期待できます。
たとえば、大企業が中小企業を買収するケースにおいては、大企業側は、中小企業が有している独自の技術や革新的サービスを獲得して、競争力を高められるなどのメリットを享受できる一方、中小企業側は、大企業のブランド力や販売ネットワークを活用することで事業拡大を目指せるなどのメリットを得られます。
ただし、買収後の経営統合が適切に実施されなければ、経営方針や企業文化の違いがネックとなり、シナジー効果が十分に発揮されない場合もあります。
経営統合(PMI)がスムーズに進みやすい
友好的買収においては、買い手企業と売り手企業の双方が協力し合う関係のもとで経営統合が進められるため、システムの統合や人事制度の調整、業務フローの整備などに関しても、スムーズに合意形成に至りやすいといえます。
これに対して敵対的買収では、経営陣や従業員が否定的な姿勢を示すことが多いため、経営統合においても軋轢が生じやすいといえます。
取引先や金融機関からネガティブな印象を抱かれにくい
友好的買収における買い手側企業は、売り手側企業の取引先や従業員、金融機関などとも信頼関係を維持しやすく、ネガティブな印象を抱かれることもほとんどないと考えられます。
これに対して敵対的買収では、対象企業の意向に反して買収が進められることから、買い手側企業は、対象企業の取引先や金融機関、従業員からよくない印象を持たれる可能性が高いといえます。
従業員の雇用や文化、取引先との関係を維持しやすい
売り手企業の経営者にとって、従業員の雇用や長年築いてきた取引先との関係は非常に重要です。友好的買収では、こうした無形の資産を尊重する相手方と交渉を進めるため、買収後も雇用が維持され、既存の取引関係が継続される可能性が高まります。これにより、従業員や取引先の離反を防ぎ、事業価値の毀損を最小限に抑えることができます。
この点は特に、長年、事業を営んできた経営者にとって、友好的買収を選ぶ最大の理由となります。従業員は家族同然、取引先との関係も長年の信頼の上に成り立っています。友好的買収では、こうした「目に見えない無形の価値」を尊重し、買収後も維持することを条件として交渉を進めることが可能です。これにより、従業員の離職や取引先との関係悪化を防ぎ、事業価値の毀損を最小限に抑えることができます。
希望する相手に会社や事業を託すことができる
創業者や長年経営に携わってきた経営者にとって、会社は我が子のような存在です。友好的買収では、自社の事業や文化を理解して、今後の成長を託せると信頼できる相手を自ら選ぶことができます。価格条件だけでなく、経営理念やビジョンが一致する相手に承継させることで、経営者として納得感のあるM&Aを実現できます。
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友好的買収のデメリット・注意点は?
友好的買収のデメリット、注意点としては、次のようなことが考えられます。
それぞれ詳しくみていきましょう。
期待したシナジー効果が得られない場合がある
メリットで解説した通り、買収後の経営統合が適切に実施されなければ、経営方針や企業文化の違いがネックとなって、シナジー効果が十分に発揮されない場合があります。
実際に、経営統合をないがしろにした結果、業務の効率が落ちたり従業員の間で混乱が生じたりして、業績が悪化した事例も存在します。
交渉が長期化しやすい
友好的買収は、買い手企業と売り手企業の合意形成がなされた状態で進められますが、まず合意に至るまでに時間がかかる場合が多いです。両者の利害関係を確認して、経営方針や人事体制のすり合わせなどの経営準備を進め、法的手続きや独占禁止法の審査を経ての買収となると、膨大な時間を要す場合があります。
また、交渉・調整期間中に市場環境が変化して株価が変動したことによって、買収価格を再調整しなければならなくなる場合もあります。その場合、さらに交渉が長引くことになります。
株主が不利益を被る場合がある
友好的買収においては、買い手企業と売り手企業の経営陣が主導して話を進めることから、一般株主の利益が軽視される可能性があります。
実際に、経営陣や大株主が中心となって友好的買収を決定してしまい、少数株主には十分なプレミアムが提示されない事例もあります。
なお、上場を視野に入れる企業や外部株主が存在する企業において、株主の同意を得ることなく友好的買収を進めると、株主が反発して買収がとん挫してしまう可能性もあります。
買収後に想定外の支出が必要になる場合がある
友好的買収であっても、買収後、不正会計や簿外債務、偶発債務などが発覚する可能性はあります。これらの情報は帳簿には記載されていないため、買収前の調査で完全に把握することが難しいためです。
さらに、顧客への損害賠償や商品のリコールといった対応が必要になることもあります。そのため、想定外の支出に備えておくことも大切であるといえます。
より良い条件を提示する買い手候補を逃す可能性がある
売り手側が特定の買い手候補と友好的に交渉を進める中で、独占交渉権を与えることが一般的です。これにより、他の潜在的な買い手候補と接触する機会が失われます。もし、交渉相手以外に、より高い買収価格やより良い条件を提示する企業が存在したとしても、その機会を逃してしまう可能性があります。
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友好的買収を成功させるポイントは?
友好的買収で成功するためには、次のポイントをおさえておくことが大切です。
それぞれ詳しくみていきましょう。
買収の目的を明確にする
「何のために買収するのか」「どのような効果を期待するのか」が曖昧であれば、十分なシナジー効果を発揮できる企業を、買収対象企業として選定することができません。また、買収後の経営統合もベストなカタチで進めることができないため、買収によって企業の成長が見込めない可能性が高いでしょう。
企業価値を適切に評価する
企業価値を適切に評価するためには、財務諸表の数字や株価のみに依存せず、企業の将来性や競争環境まで多角的に分析することが不可欠です。
また、簿外債務や偶発債務、不正会計などのリスクの有無についてもしっかり確認することが大切です。
企業価値の評価には、DCF法や類似企業非核法などの手法を用いますが、自社で評価することは簡単ではないので、専門家に依頼することがおすすめです。
トップ面談を大切にする
トップ面談とは、買い手企業と売り手企業の経営陣が直接対話することで、この対話を通して、買収の目的や条件、統合後の方針、リスク管理などを確認し合います。トップ面談の実施をカタチだけのものにしてしまうと、信頼関係を構築することが難しいため、買収後にトラブルが起きる可能性が高まります。
そうならないよう、トップ面談の場では、価値観やビジョンの共有を重視しながらトップ同士が相互理解を深めることが大切です。そのうえで、従業員や取引先にも今後のビジョンなどについて丁寧に伝えることで、関係者の不安を軽減させます。
キーパーソンの処遇と引き継ぎを明確にする
特に中小企業のM&Aでは、社長個人への依存度が高いことが少なくありません。買い手にとって、買収後に社長や特定の役員・従業員(キーパーソン)がすぐに退職してしまうと、事業価値が大きく損なわれるリスクがあります。
そのため、交渉の早い段階で、キーパーソンに買収後も一定期間(例:1年~3年)は経営や業務の引き継ぎのために会社に残ってもらうことなど(キーマン条項/ロックアップ)に合意を得ておくことが重要です。これにより、スムーズな事業承継とPMIの成功確率が高まります。売り手側にとっても、自身の退職金や処遇を明確にする重要な交渉事項となります。
なお、「キーマン条項」とは、M&A成立後に事業の円滑な引き継ぎと継続を目的として、売り手企業の経営者や中心的な従業員(キーマン)に一定期間、会社に残留して業務に従事してもらうことを定めた条項です。また、「ロックアップ」とは、ロックアップとは、企業が株式を新規に公開(IPO)する際に、発行会社の大株主や役員などが一定期間、保有する株式を売却しないことを約束する契約です。
デューデリジェンスを入念におこなう
買収対象企業の財務状況や法務リスク、将来的な業績の見通しなどを多角的に調査することで、潜在的問題を洗い出すことができるデューデリジェンスは、M&Aを成功に導く大切なプロセスです。
デューデリジェンスが不十分であると、買収後に簿外債務や不正会計などの問題が発覚して損失を被る恐れもあるため、入念なデューデリジェンスが不可欠です。
最終契約書に適切な「表明保証」を盛り込む
デューデリジェンスをどれだけ入念におこなっても、売り手企業の内部情報を100%把握することは不可能です。そこで重要になるのが、最終契約書に盛り込む「表明保証(表明及び保証)」条項です。
これは、売り手が「自社の財務内容は正確である」「簿外債務は存在しない」「法的な紛争を抱えていない」といった内容が真実であることを表明し、保証するものです。万が一、契約後に表明保証の内容に違反する事実(例:未払いの残業代や訴訟リスクなど)が発覚した場合、買い手は売り手に対して契約に基づき損害賠償を請求できます。表明保証は、デューデリジェンスを補完する、買い手にとっての重要なリスクヘッジ手段です。
経営統合(PMI)を丁寧に進めていく
買収が成功しても、その後の経営統合に失敗すれば、想定していたようなシナジー効果が得られないばかりか、企業価値が毀損するリスクさえあります。そうした事態に陥るのを防ぐためにも、経営統合では、組織再編や人材配置、ブランドの統合、ITシステムの連携、業務プロセスの連携などのさまざまな要素を段階的に調整していきます。
加えて、従業員の反発や不安を抑えるために、十分にコミュニケーションをとっていくことも大切です。
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【実例】国内企業による友好的買収事例
続いては、国内企業による友好的買収の事例を紹介します。
【放送事業者×放送事業者】フジテレビジョンによるニッポン放送の買収(2005年)
フジテレビジョン(現フジ・メディア・ホールディングス)は、株式公開買い付け(TOP)によって日本放送を子会社化しています。
買収前、フジテレビジョンの筆頭株主であるニッポン放送のほうが規模が小さい「逆転構造」であったため、是正目的での株式公開買い付けでした。
しかし、ライブドアがニッポン放送の株式を大量に取得して「敵対的買収」を仕掛けたことで当初の予定が狂い、ニッポン放送はライブドアに対抗するために、フジテレビジョン向けの第三者割当増資をおこない、フジテレビジョンがその株式を引き受けることによって保有割合を引き上げました。これによって、フジテレビジョンはニッポン放送を子会社することに成功しました。
【電機大手×電機大手】パナソニックによる三洋電機の買収 (2008年~)
パナソニックによる三洋電機の買収は、2008年から2011年頃にかけて段階的に進められました。手始めに、2008年11月、パナソニックは三洋電機の大株主から株式を取得して、三洋電機の筆頭株主になっています。
翌2009年12月には、パナソニックは三洋電機に対して株式公開買い付け(TOB)を実施して、出資比率を70%に引き上げて連結子会社化。さらに2011年4月には完全子会社化に成功しています。
【持株会社×独立系ソフトウェア企業】NTTデータによるNJKの買収(2010年/2016年)
2010年、持株会社のNTTデータが、システム開発を専門に手掛けていたNJKに対して株式公開買い付け(TOB)を実施しました。両社はもともと事業パートナーで、ソフトウェア開発分野などで大きな実績を上げていましたが、この買収によって連結子会社化されています。
なお、その後、2016年にふたたび株式公開買い付けが実施されて、このタイミングでNTTデータがNJKを完全子会社化しています。
【IT大手×アパレル】ヤフーによるZOZOの買収 (2019年)
ヤフー株式会社(以下、ヤフー)が株式公開買い付け(TOB)を実施して、株式会社ZOZO(以下、ZOZO)の子会社化が進められました。ZOZO創業者の前澤友作氏が保有株の約37%を売却して経営から退き、ZOZOの経営は新体制へと移行しましたが、ZOZOのブランドや事業運営は維持されています。
ヤフーの買収の目的はEC事業の強化で、ZOZOは成長戦略の一環として力のあるパートナーを求めていたことから、両者の利害が一致することとなりました。
【製薬企業×製薬企業】武田薬品によるシャイアーの買収(2019年)
武田薬品工業株式会社が、アイルランドの大手製薬企業であるシャイアー社を買収して、完全子会社化した事例です。日本企業によるM&Aのなかでも最大規模の事例で、買収金額は約6兆8,000億円にものぼります。
買収の目的は、両者の得意分野を補完しあって、研究開発力および製品ポートフォリオを拡充させることで、買収に成功した結果、武田薬品は世界的な製薬メーカーとしての地位を確立するに至りました。
【金融持株会社×消費者金融大手】三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)によるアコムの買収(2008年)
三菱UFJファイナンシャル・グループ(MUFG)は、株式公開買い付け(TOB)によって議決権比率を40.03%に引き上げて、アコムを連結子会社化しています。
MUFGは、アコムの事業ノウハウを活用してクレジットカード事業強化や新たなサービス展開を目指した一方で、アコムはMUFGの支援を得たことで事業基盤の強化を実現できています。
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友好的買収に関するFAQ
続いては、友好的買収に関するよくある質問とその答えを紹介していきます。
Q. 友好的買収でも、交渉が破談になることはありますか?
友好的買収でも交渉が破談になることはあり得ます。
破談になる主な理由は次の通りです。
1. 価格面での折り合いがつかない
デューデリジェンスの結果、想定より業績や資産価値が低いと判明することがあります。また、買い手が提示価格を引き下げ、売り手が応じない場合にも破断することがあります。
2. 事業戦略や統合方針の不一致
「買収後もブランドを残すか」「従業員をどう処遇するか」などで意見が食い違った場合なども破断する可能性があります。
経営陣の将来の役割(残るか退任するか)でも摩擦が起きやすいといえます。
3. 独占禁止法(競争法)の規制
国内外の独禁当局が承認しない場合がこれに該当します。
特に、同業買収でシェアが高すぎるケースでは差し止められる可能性があります。
4. 株主やステークホルダーの反対
主要株主(ファンド、親族、創業家など)が納得しない場合がこれに該当します。
取引先や従業員の反発が強く、実質的に進められなくなることもあります。
5. 外部環境の変化
金融危機、為替変動、業界不況などにより買収の前提が崩れることがあります。
直近では、コロナ禍で交渉中のM&Aが延期・中止された事例が多数あります。
6. 買い手側の資金調達問題
想定していた銀行融資や市場調達が不可能になり、買収資金を確保できなくなることがあります。
Q. 友好的買収にかかる費用はどのくらいですか?
友好的買収にかかる費用は、買収そのものにかかる費用と、取引関連の諸費用に大別されます。
1. 買収金額(メインのコスト)
→ 対象会社の株価 × 買収株数
→ 譲渡対象事業の資産価値を基に算定
規模によって数億円~数千億円、場合によっては数兆円規模になります。
たとえば、前述のパナソニックによる三洋電機買収(2008~2011年)は 約6,000億円かかっています。
2. 買収関連の諸費用(取引コスト)
(1) 専門家費用
(2) デューデリジェンス(DD)費用
(3) ファイナンス関連費用
(4) 登記・手続き費用
(5) PMI(統合作業)費用
ざっくりとした目安
以上をもとに算出されるざっくりとした目安は次の通りです。
買収金額:数千万円~数億円
諸費用:数百万円~数千万円(買収額の5~10%が目安)
買収金額:数百億円~数兆円
諸費用:数十億円~数百億円(特にDDやFA報酬、PMIコストが膨らむ)
Q. 従業員にはどのタイミングで伝えるべきですか?
友好的買収において 従業員への伝達タイミング は、買収の規模や企業の形態(上場か非上場か)によって異なりますが、基本的な考え方は次の通りです。
【一般的な流れと伝えるタイミング】
1. 最終合意(基本合意ではなく)に近づいた段階
2. 上場企業の場合
3. 非上場企業の場合
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ジョブカンM&Aは、経験豊富なアドバイザーが事業の売却・買収をトータルでサポートします。
「信頼できる相手を見つけたい」「交渉や手続きが不安」「適正な価格で取引したい」といった、M&Aに関するあらゆるお悩みを解決に導きます。
詳しいサービス内容を知りたい、気軽に相談したいという方は、下記サービスサイトをご覧ください。
友好的買収における専門家の役割
友好的買収を成功に導くには、M&Aアドバイザー、弁護士、公認会計士といった専門家のサポートが不可欠です。彼らは、単に手続きを代行するだけでなく、以下のような重要な役割を担います。
適正な企業価値評価のサポート
DCF法や類似企業比較法などを用いて、客観的な企業価値を算出し、適正な買収価格を導き出します。
リスクの洗い出し
デューデリジェンスを通じて、簿外債務や法務リスクなど、自社だけでは把握が難しい潜在的な問題点を特定します。
円滑な交渉の仲介
買い手と売り手の間で、価格や雇用条件などの交渉を中立的な立場で仲介し、合意形成をサポートします。
法的トラブルの回避
最終契約書の作成やレビューを通じて、後々の法的トラブルを未然に防ぎます。
専門家は、単に手続きをスムーズに進めるだけでなく、買い手・売り手双方の利益を守るための重要なパートナーとなります。信頼できる専門家を見つけることが、友好的買収の成功確率を大きく高める鍵となるでしょう。
まとめ:友好的買収は、入念な準備と専門家の活用が成功の鍵
ここまで解説してきた通り、友好的買収は総じて成功しやすいことは間違いありませんが、よりしっかりとシナジー効果を実感するためにも、入念に準備を進めることや、専門家に相談することは不可欠であるといえます。「基本的に成功するなら、どんなふうに進めても結果は同じだろう」とたかをくくることなく、よりよいシナジー効果の創出を目指して、信頼できる専門家選びにも時間をかけることをおすすめしますよ!
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この記事は、2025年9月時点の情報を元に作成しています。
執筆 ジョブカンM&A編集部 | ジョブカンM&A編集部
ジョブカンM&Aは、株式会社DONUTSが運営するM&Aアドバイザリーサービスです。主に企業の事業承継、成長戦略、出口戦略(イグジット)といった多様なニーズに応えることを目的としています。最大の特徴は、累計導入社数20万社以上を誇るバックオフィス支援クラウドERPシステム「ジョブカン」の広範なネットワークを活用している点です。この強力な顧客基盤を生かし、効率的なマッチングを実現します。
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