
M&Aを実施すると、売り手と買い手の双方にさまざまな税金が発生する場合があります。どのような種類の税金が発生するのか、有効な節税対策はあるのかなどを知っておかなければ、後悔することになりかねません。そこで今回は、M&Aの実施によって発生する税金の種類および節税の方法などを徹底解説していきます。
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M&Aにおける税金は「売り手」と「買い手」で異なる
M&Aにおける税金は、売り手と買い手の双方に発生しますが、その種類や課税対象は大きく異なります。
売り手側に発生する税金
売り手側、つまり株式や事業を譲渡する側に発生する税金は、主に以下の2つのポイントを軸に考える必要があります。
- 譲渡企業の株主が個人なのか法人なのか
- M&Aのスキーム
ベースとして、前者の場合、株主が個人の場合は所得税や住民税、復興特別所得税が発生し、法人の場合は法人税、地方法人税、法人住民税、事業税、特別法人事業税などが発生します。後者に関しては、「株式譲渡」「事業譲渡」「組織再編(合併または会社分割など)」などのスキームがあり、それぞれで発生する税金が異なります。
買い手側に発生する税金
買い手側、つまり株式や事業を譲り受ける側に発生する主な税金は以下の通りです。
- 消費税:事業譲渡スキームの場合、買い手は譲渡企業から引き継ぐ資産(土地、有価証券、債権などを除く)に対して消費税を支払う必要があります。
- 不動産取得税・登録免許税:不動産を譲り受ける場合は、不動産取得税や登録免許税が発生します。
それぞれの税金について、さらに詳しく解説していきます。
M&A譲渡企業の株主の違いによる税金の違い
M&A譲渡企業の株主 | 発生する税金 | 税金の計算方法 |
個人 | ・所得税 ・住民税 ・復興特別所得税 |
株式売却による譲渡所得×20.315% |
法人 | ・法人税 ・地方法人税 ・法人住民税 ・法人事業税 ・特別法人事業税 |
(株式売却による課税所得と他の益金・損金の合計)×実効税率 |
続いては、M&A当事者が個人の場合と法人の場合とで、発生する税金にどのような違いがあるのかを説明していきます。
個人が株式や事業資産の売却益を得た場合にかかる税金
個人がM&Aで株式や事業資産の売却益を得た場合、前述の通り、次の3つの税金を納税する必要があります。
- 所得税
- 住民税
- 復興特別所得税
個人の所得は、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得、雑所得の10種類に分類されますが、売却益は、「譲渡所得」のうち「株式等に係る譲渡所得等」として扱われることになりまる。また、「株式等に譲渡所得等」は分離課税の対象となるため、税率は15.315%です。
住民税は5%、復興特別所得税は0.315%であることから、15.315%+5%+0.315%の合計20.315%の税金が課されることになります。
なお、株式等に係る譲渡所得は、所得税の3つの課税方法のうち「申告分離課税」に分類されます。申告分離課税とは、総合課税に含めることなく、独自の税率で個別に計算する方法をいいます。
また、未上場株式を売却した場合、売買契約書や譲渡対価の証明が必要となると同時に、確定申告も必要になります。
なお、株式ではなく事業資産を売却する「事業譲渡」の場合、事業譲渡益が「事業所得」や「雑所得」として課税される可能性もあります。また、親族間・同族会社への売却の場合、税務上、「時価」で評価される必要があります。
法人が株式や事業資産の売却益を得た場合にかかる税金
法人がM&Aで売却益を得た場合、他の営業活動などを通して得た利益と合算して法人税を計算します。そのため、M&Aで利益を得ていても、事業が赤字で通算するとマイナスになる場合、税金がかからないということになります。
法人にかかる税金は、前述の通り、次の5つです。
- 法人税
- 地方法人税
- 法人住民税
- 法人事業税
- 特別法人事業税
上記5つの合計として実際に支払う税率を「実効税率」といいます。ただし、実効税率は、それぞれの税率を足し算したものではありません。なぜかというと、法人事業税と法人特別事業税は損金算入されるため、損金算入による減税効果を考慮した数式で計算する必要があるためです。
具体的な実効税率は、資本金や所得額、属している自治体によっても異なりますが、概ね30%強です。
M&Aのスキームの違いによる税金の違い
続いては、M&Aのスキームの違いによる税金の違いをみていきましょう。M&Aには、「株式譲渡」「事業譲渡」「組織再編(合併または会社分割など)」などのスキームがあり、それぞれのスキームによって発生する税金が異なります。
株式譲渡における税金
M&A譲渡企業の株主 | 発生する税金 | 税金の計算方法 |
個人 | ・所得税 ・住民税 ・復興特別所得税 |
株式売却による譲渡所得×20.315% |
法人 | ・法人税 ・地方法人税 ・法人住民税 ・法人事業税 ・特別法人事業税 |
(株式売却による課税所得と他の益金・損金の合計)×実効税率 |
株式譲渡とは、譲渡企業の株式(議決権)の過半数を譲受企業に売却するスキームです。
なお、過半数に満たない株式を譲渡したうえで、譲渡企業と譲受企業が協力して事業をおこなう場合は、株式譲渡ではなく、「資本提携」ということになります。
株式譲渡においては、譲渡企業の株主が得る売却益が税金の対象となります。一方、譲受企業は対価を払う側であるため、税金の支払いは発生しません。
株式譲渡の株主が個人の場合
株主が経営者1人だけのオーナー企業である場合、株主が経営者とその親族である同族企業である場合、売却益に対して所得税と住民税、復興特別所得税がかかります。
株式譲渡の株主が法人の場合
親会社が子会社の株式を譲渡するようなケースの場合、株主は法人ということになります。株主が法人の場合、売却益は、他の営業活動などによって得た利益・損失と通算して、トータルの利益に対する法人税を支払うことになります。
【法人の株主にかかる税金と税率】
税金の種類 | 税率 |
法人税 | 原則として23.2% ただし、資本金の少ない会社や公益法人などはそれより少し低くなる |
地方法人税 | 10.3% |
法人住民税 | 自治体や資本金の額などによって異なる (例)東京23区内の法人の場合 均等割:7万円から380万円 法人税割:7%または10.4% |
事業税 | 資本金や業種によって異なる。資本割、所得割、付加価値割などの種類がある |
特別法人事業税 | 自治体によって異なる |
事業譲渡における税金
事業譲渡とは、事業を営むために必要な店舗や工場、設備、人材、在庫などを、譲渡企業から譲受企業に売却することです。これらの資産の売却益に対して税金がかかります。なお、“事業を引き継ぐこと”が目的なので、たとえば店舗や在庫を売却するだけの場合などは、事業譲渡には該当しません。
M&A譲渡企業の株主 | 発生する税金 | 税金の計算方法 |
譲渡側が個人の場合 | ・所得税 ・住民税 ・復興特別所得税 |
譲渡資産の種類による |
譲渡側が法人の場合 | ・法人税 ・地方法人税 ・法人住民税 ・法人事業税 ・特別法人事業税 |
(株式売却による課税所得と他の益金・損金の合計)×実効税率 |
譲受側 | 消費税 | 課税資産の譲受価額×10% |
また、個人の場合は所得税・住民税・復興特別所得税、法人の場合は法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税・特別法人事業税がかかる点は株式譲渡と同様ですが、売却する対象が異なることから、税金の計算方法が変わってきます。
加えて、売却する事業資産のなかに消費税の課税資産がある場合、譲受側が消費税を納める必要があります。
なお、事業譲渡においては事業資産を売却しますが、株式は売却しません。そのため、譲渡企業の株主は譲渡前と変わらず、たとえば譲渡企業が譲受企業の子会社になるといったことはありません。
また、譲渡企業が営んでいる全事業を譲渡する「全部譲渡」と、一部の事業だけを譲渡する「一部譲渡」があり、このうちどちらのケースであるかによって、かかる税金に違いが出てきます。
全部譲渡時の場合にかかる税金
全部譲渡においては、売却代金は譲渡側が受け取るため、譲渡側が法人の場合、売却によって得た利益に対して、譲渡側企業に法人税が課されます。売却金額のうち、譲り渡す事業資産と負債の差額を超えた範囲が、課税の対象となる売却益となります。
また、譲受側が受け取った資産に対しては消費税が課されます。消費税の計算方法は、事業資産の売却代金から、土地などの消費税対象“外”資産を差し引いた金額に、消費税率をかけた金額となります。
また、在庫などの棚卸資産に関しては、事前に売却代金を決定できないため、事業譲渡日の棚卸の結果によって、法人税も消費税も変わります。そのため、決算の期首に事業譲渡を実施することによって、決算までの時間を多く作ることも検討するといいかもしれません。
一部譲渡時の場合にかかる税金
全部譲渡時と一部譲渡時の税金に関する大きな違いは、まず、事業の一部を譲渡して残りの事業を承継した場合、相続税がかかるということです。なお、残りの事業を承継した際、元の業種から業種が変わると、自社株式の相続税評価が大きく変わる場合があります。
承継時の自社株評価は、取引相場のない株式の場合、「純資産価額方式」または「類似業種比率」算出されますが、一般的に類似業種比準方式のほうが低く算出されます。しかし、類似業種比準方式は同様の業種を経営する上場会社の株価を参考にする評価方法であるため、一部譲渡によって業種が変わると、税務署に否認される可能性があるのです。
また、事業譲渡代金を役員報酬で受け取る場合も、業務実態に合わない報酬であるとして、税務署に否認される可能性があります。
組織再編(合併または会社分割など)における税金
組織再編とは、会社法で定められている「合併」「会社分割」「株式交換」「株式移転」「株式交付」の総称です。組織再編は、資本力や競争力の強化、コスト削減、組織の効率化などを目的に主にグループ企業間でおこなわれます。なお、グループ企業同士でなくても組織再編をおこなうことは可能です。
前半で述べた通り、M&Aのスキームが組織再編の場合は課税されないケースがあります。どういう場合に課税されないかというと、「適格要件」という一定の要件を満たしている場合です。なぜ、的確要件を満たしている組織改編の場合は課税されないかというと、組織再編で資産を譲渡した際に譲渡益に課税されるとなると、組織再編をおこないにくくなるためです。
なお、適格要件を満たしている組織再編は、資産を薄価で譲渡できることから、差額が発生せず、税金がかからない一方、適格要件を満たしていない組織再編に関しては、薄価との差額に税金がかかります。
適格要件とは
適格要件(税金の適正価格の要件)は、組織再編を実施する譲渡側、譲受側の2者が、「完全支配関係」「支配関係」「支配関係なし」のいずれに該当するかによって変わります。「完全支配関係」とは、親会社が子会社の全株式を保有している関係を指し、「支配関係」とは、親会社が子会社の50%超え100%未満の株式を保有している関係を指します。
【適格要件一覧】
要件 | 完全支配関係 | 支配関係 | 支配関係なし |
再編後も支配関係が継続する | 必要 | 必要 | |
対価は株式のみで金銭などの交付はない | 必要 | 必要 | 必要 |
従業員の概ね80%以上が再編後も同じ業務に引き継がれる | 必要 | 必要 | |
移転された事業が再編後も引き続き営まれる | 必要 | 必要 | |
再編する2つの会社が営む事業に関連性がある | 必要 | ||
次のいずれかを満たす 再編する2つの会社の事業規模の差が概ね5倍以内である 再編する2つの会社の社長や副社長などの特定役員のいずれかが、再編後も引き続き特定役員となる |
必要 | ||
再編される会社の株主の80%以上が、再編の対価として得た株式を継続保有する | 必要 |
M&Aにおける節税対策は?
続いては、M&Aにおける節税対策としてできることを解説していきます。
売り手(譲渡側)の節税対策
(株式譲渡の場合)退職金を活用する
M&Aのスキームが株式譲渡の場合、譲渡側の株主が譲渡企業の社長や役員であるなら、対価の一部を退職金扱いにできるため、節税につながります。なぜかというと、退職金の税金は他の所得税より優遇されているため、株式の譲渡益にかかる税率より低くなる可能性が高いためです。ただし、退職金の税率は累進課税なので、退職金の額が大きい場合は、かえって損をする可能性もあるので、どちらが得であるかは要比較検討ということになります。
なお、退職金は損金算入できるため、譲渡企業だけでなく譲受企業にとっても節税効果があるということになります。
買収ニーズが高い資産のみ売却する
株式譲渡の場合、買収ニーズが低い資産をあらかじめ処分することで、株式の価値を下げてから譲渡すれば、譲渡所得が減るため節税が叶います。事業譲渡の場合、買収ニーズが高い資産のみ売却すれば、買収ニーズが低い資産を売却しないぶん、譲渡益が下がるため、結果的に税金が少なくなります。
第三者割当増資(だいさんしゃわりあてぞうし)をおこなう
第三者割当増資とは、売却する会社が新規に株式を発行して、買収する会社にその株式を購入してもらう方法です。株式の発行元を任意に指定することができるため、M&Aの相手企業を引受先とした新株を発行するだけで資本関係を構築することができます。
なぜ第三者割当増資をおこなうことが節税になるかというと、第三者割当増資は基本的に課税されないためです。ただし、有利発行で新株を引き受けた場合、既存株主が損して新株主が得することになるため、得したぶんの金額に対して、税務上、贈与であるとみなされて贈与税が発生する可能性があるので注意が必要です。
買い手(譲受側)の節税対策
事業譲渡で「のれん」を活用する 買い手側にとって、事業譲渡で発生する「のれん」は大きな節税効果をもたらす可能性があります。 のれん代とは、買収金額と、買収した事業の純資産価額との差額のことで、無形固定資産として会計処理されます。のれん代は原則として5年間にわたり均等償却することが認められており、のれん代の償却費は損金として計上できるため、法人税の課税所得を減らすことができます。
M&Aにおいて必要となる税務
続いては、M&Aが実施されたことで必要となる税務のうち、主に先に解説したもの以外について、当事者ごとの立場から説明します。
個人株主に必要な税務
個人株主にかかった税金は、M&Aのクロージング日の翌年2月16日から3月15日の期間に確定申告で納める必要があります。株式や事業などを取得するために取得費がいくらかかったか不明な場合、譲渡収入の5%を取得費として計上できます。
また、相続後3年10か月以内であれば、相続で承継した株式にかかった相続税を取得費に加算することが可能です。
なお、株式譲渡の対象企業の事業資産のうち、土地や借地権の保有割合が70%以上を占める場合、不動産の「短期譲渡所得」とみなされて課税される場合があります。
また、配当金を受け取った場合や、譲渡企業の株式を譲渡企業に売却した場合、配当所得に対して税金がかかります。また、配当金を受け取る際には、支払法人から配当額の20.42%の税金を差し引いた金額が支払われることになりますが、この金額が一定額を超える場合、翌年の確定申告で精算しなくてはなりません。
法人株主に必要な税務
法人株主は個人株主とは異なり、会計年度が終了した翌日から2か月以内に納税する必要があります。たとえば、会計年度が3月末に終了する企業であれば、納税期限は5月末ということになります。
ただし、上場会社や会計監査人が設置されている会社のように、会計処理が複雑で2か月以内の決算完了が困難な場合、申告期限の延長の特例手続きを申請することができます。
また、法人株主が配当金を受け取った場合や、譲渡企業の株式をその企業に売却した場合、発生した金額のうち一定額を非課税とすることができます。差し引かれた源泉徴収税額は法人税から控除できます。
なお、100%子会社から土地などの現物配当を受けた場合は、その全額が非課税となります。
役員に必要な税務
前述の通り、M&Aの対価の一部を役員の退職金扱いにすることは節税につながりますが、役員側からすると、受け取った退職金に対して、「(退職金-退職所得控除)×1/2(軽減措置)×累進税率」の個人住民税、所得税、復興特別所得税が課されることになります。ただし、役員が自ら支払うのではなく、企業が税金を差し引いた金額を支払うという形になります。
なお、勤続年数が5年以下の役員に退職金を支給する場合、軽減措置は適用されないため、「(退職金-退職所得控除)×累進税率」の計算式になります。
譲渡企業に必要な税務
前述の通り、譲渡企業は役員の退職金を適正額まで損金として計上できますが、損金が利益と相殺しきれない場合があります。この場合、繰越欠損金として翌期以降10年間繰り越すことが可能です。
なお、役員に退職金を支給した際は、源泉徴収をおこなって、役員の代わりに翌月10日までに納付する必要があります。配当金の支払い時や自己株買いをおこなった場合も同様に源泉徴収をおこない、翌月10日までに納付します。
また、譲受企業が連結納税適用グループで100%株式譲渡をおこなう場合には、土地などの含み損益を実現させなくてはなりません。
M&A税務で起こり得るリスクと対策
M&Aのプロセスでは、税務リスクを事前に把握し、適切に対策を講じることが不可欠です。
簿外債務・偶発債務の引き継ぎリスク
リスク:
買い手側は、売り手企業の帳簿に記載されていない簿外債務(未払残業代、環境汚染対策費用など)や、将来発生する可能性のある偶発債務(訴訟費用など)を、M&A後に引き継いでしまう可能性があります。これがM&A後に発覚した場合、想定外の費用負担が発生して、事業計画に大きな影響を与えることになります。
対策:
このリスクを回避するために、M&Aプロセスの中でも特に重要なのが財務デューデリジェンスです。専門家による財務調査を徹底し、潜在的な債務やリスクを事前に洗い出すことが不可欠です。
税務調査で過去の申告に誤りが見つかるリスク
リスク:
売り手企業の過去の税務処理に誤りがあった場合、M&A後に税務署から指摘を受け、追徴課税が発生するリスクがあります。これもまた、買い手側の想定外の費用負担につながります。
対策:
税務デューデリジェンスを実施することで、売り手企業の過去の税務申告が適正であったかを確認して、将来の税務リスクを事前に把握することが重要です。
不適正な時価や報酬と見なされるリスク
リスク:
事業譲渡における事業資産の売却価格や、役員への退職金が、税務署から不適正な時価や報酬であると判断された場合、否認されて追徴課税の対象となるリスクがあります。
対策:
資産の評価や報酬額の決定においては、客観的な根拠に基づいた適正な金額を設定することが重要です。この点についても、専門家である税理士に相談し、適切な評価方法を採用することが求められます。
これらのリスクと対策を理解することで、M&Aをより安全かつスムーズに進めることができるでしょう。
M&Aにおける税金に関するFAQ
続いては、M&Aに関してよくある質問とその答えをみていきましょう。
Q. M&Aの専門家(税理士・会計士など)にはいつから関与してもらうべきですか?
M&Aの専門家には、できる限り早い段階から関与してもらうことが望ましいといえます。具体的には、売却や買収の検討をはじめたタイミングで相談できるといいでしょう。
なぜかというと、早期に相談することによって次のようなメリットが得られるためです。
- 適切なスキーム設計が可能となる
- 事前に税務リスクを把握できる
- 財務・税務デューデリジェンスに対応できる
- 譲渡益課税の試算ができる
- 金融機関や仲介業者との連携がスムーズになる
なお、買収側は財務・税務デューデリジェンスを必ず実施する必要がありますが、デューデリジェンスに備えるためには、事前に必要要件を整理することが不可欠です。
Q. M&Aにおける財務・税務デューデリジェンスの費用はどのくらいですか?
M&Aにおける財務・税務デューデリジェンスの費用は、対象企業の規模、取引の複雑性、M&Aの期間と範囲、レポートの詳細度、依頼先の事務所の規模などによって大きく異なります。
目安としては、中小企業のM&Aの場合、地方の会計事務所に依頼すれば50~100万円、中堅の専門ファームだと100~200万円、BIG4などの大手系だと200万円以上といったところです。
Q. 国際的なM&Aの場合、税金はどうなりますか?
国をまたぐM&Aの場合、関係するすべての国の税制を考慮する必要があるため、非常に複雑になります。考え方としては、「どこで所得が発生して、どこで課税されるか」がポイントになります。
なお、国際的なM&Aの税務対応の流れは、売却側視点でみると次の通りです。
- 外国企業が売却候補としてあがった時点で税理士に相談する
- 対象国との租税条約を確認する(税理士に確認してもらう)
- 譲渡益課税(国内でいくら税金がかかるか)を試算する
- クロスボーダー(国際間取引)での資金移動や二重課税の有無を確認する
- 必要に応じて海外の税務専門家とも連携する
また、買収側視点でみた場合は、特にターゲット企業の税務リスク調査が重要になってきます。
M&A検討時には、M&A税務への理解を深めることも、専門家に相談することも大切
M&Aの税務は多岐にわたる検討が必要であるため、税理士や会計士などの専門家に相談することなしにはベストな結果を出せないでしょう。つまり、M&A自体は完了できたとしても、税務上、損をする可能性が高いということです。そのため、先に解説した通り、できるだけ早い段階で専門家に相談することが非常に大切ですが、同時に、M&A税務についてきちんと理解しようという姿勢を持つことも大切です。特に経営者であれば、M&A税務の概要を把握することは必須なので、専門家にも相談しながら、理解を深めていってくださいね。
M&A・事業承継で失敗したくないなら
ジョブカンM&Aは、経験豊富なアドバイザーが事業の売却・買収をトータルでサポートします。
「信頼できる相手を見つけたい」「交渉や手続きが不安」「適正な価格で取引したい」といった、M&Aに関するあらゆるお悩みを解決に導きます。
詳しいサービス内容を知りたい、気軽に相談したいという方は、下記サービスサイトをご覧ください。
この記事は、2025年8月時点の情報を元に作成しています。
執筆 ジョブカンM&A編集部 | ジョブカンM&A編集部
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